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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
ダンジョン都市アルトゥール

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開放的

「えっと、階段の先はと…うわぁ~!すっごく見晴らしのいい草原!」


「なにっ!?」


「あっ、リック!」


 私の言葉に反応してリックさんが飛び出す。


「これは…」


「どうしたんだい、急に駆け出して?」


「いや、間違いなくこのフロアは”モンスターフロア”だ」


「モンスターフロアって何ですか?」


「フロア全体の仕切りがなく、すべての魔物が自由に行き来するんだ。草原だとそこまで思わないかもしれないが、岩などの障害物も一切なく魔物もこちらを見つけたら一気に襲ってくるぞ!」


「厄介だねぇ。どうする?」


「ひとまずバリアを張りましょう。それで近づいてくる魔物を順番に倒すしか…」


「それより降りた方が賢明かもしれないですね。リックさん、どうなんですか?」


「降り階段の位置は固定だ。一番魔物が集中しているところ、そこになる」


「うげっ!?そいつは面倒だねぇ」


「もう、威力のある魔法で一気にやっちゃいますか?」


「後、7階層だしそれもありかもね。とりあえず、その魔物が集中している位置を見つけないと…」


「そうだねぇ。それさえ分かれば一気に行くか!」


「分かりました」


 方針は決まったので、まずは魔物の集中している地点を探すため、探知魔法を使用する。


「ウィンドサーチ」


 風を広げてどんどん索敵していく。


「うっ、かなりの数がいます。階段方向と思われるところには30匹はいますね」


「どうする?」


「おびき出した方が賢明か…しかし、釣り出しても他がついてきたら同じだしな」


「そうだね。慎重に行くか」


 まずは階段方向だと思われる方へと向かっていく。そこには6匹ほどの魔物の反応があった。


 グルルルル


「あれは…!」


 目的地に到着すると、目の前では子どものガンドンとローグウルフが争っていた。とはいっても、子どものガンドンではローグウルフの爪に耐え切れず、かなりのケガだ。


「危ない!フレイムブラスト」


 ガイドの火せんがガンドンとローグウルフの間に入り、相手が硬直したところに魔法を撃ち込む。本来はそのまま直線的に攻撃する魔法だが、魔力操作のお陰で多少は動かすことができるのだ。


 ギャン


 突然の炎を受け、さっきまでガンドンの子どもを襲っていた2体のローグウルフが炎に包まれる。


「リック、行くよ!」


「ああ」


 続いてジャネットさんたちも駆けていく。突然の横やりと仲間がやられたショックでたちまち残っていた3体も倒すことができた。


「ふ~、不意を突いたとはいえ運が良かったね。アスカ、あんまり無茶はするなよ?」


「ごめんなさい、つい…」


 自分でもガンドンを狩ったこともあるし、身勝手だと思うけどなんか嫌だったのでつい手を出してしまった。


 フ~


「わっ!?威嚇しないで、別に取って食おうってわけじゃないからね。エリアヒール」


 私は風の回復魔法でガンドンの傷を癒してやる。全体にケガをしていたのでこれが一番いいだろう。


 フ~?


「うう~ん、ガンドンの言うことは分からないなぁ。ティタ、お願い」


「どうしてそんなことをするのかと言っております」


「あ~、まあ、そうだよね。う~~~~ん、気が向いたから?なんとなく?分かんないや」


 実際、ここはダンジョンだし、いい答えが自分でも見つけられなかったのでそのまま答える。


 …フ~


 すると、ガンドンの子どもは頭を下げて私に近づく。


「ん?どうしたの?」


 ちなみに子どもと言っているけど、ガンドン自体大型の魔物だ。大人の全高は2m、全長4mを超えるようなものも普通にいる。この子でも全高1.2m、全長2m近い。


 フ~


「わっ!?」


 頭を低くしたガンドンが私の前で急に頭を上げる。その勢いで体を持ち上げられた私はぽ~んと宙に舞い、気づけばこの子の背に乗っていた。


「アスカっ!?」


「びっくりした。乗せてくれるの?」


 フ~


「どうやらそのようです」


 ティタにも説明してもらって、私はガンドンの背中をさする。


「うわぁ~、結構冷えてる。気持ちいいけど、寒くないのかなぁ?」


「ガンドンの体温は人より低く、また皮も分厚いためそのように感じられるのです」


「ふ~ん、そっかぁ~。よかった、ケガのせいじゃなくて」


 それから少しだけガンドンの背に乗って降りようとするも、中々降ろしてくれない。


「乗っててもいいの?」


 フ~


 どうやら、このまま乗っていてもいいというので、簡単にひもで作った手綱もどきを使って騎乗する。


「よ~し!それじゃあ、階段に向かって行くよ~」


「はぁ~、全くこの子ときたら」


「大丈夫なのか?従魔になっていないようだが?」


「ここはダンジョン内だよ?できるはずないっての」


「それもそうか。俺も何を言っているんだろうな」


「リックさんもいずれ染まるんですね」


「怖いことを言わないでくれ、リュート君」


「それより、警戒しながら行くよ。相手の数は多いんだから」


「そうですね」


 キリッと意識を前に集中させて、私は前に進む。まぁ、進むといっても歩いているのはガンドンなんだけどね。



「そろそろ、気づかれずに近づける限界位置です」


「了解。そんじゃ、さっきの打ち合わせ通りアスカの魔法を皮切りに一気に制圧する。いいね?」


「ああ」


「はい」


「という訳だ。ここはダンジョンだし遠慮はいらないよ」


「はいっ!行きますよ…火よ、風よ!二つの力よ、合わさり吹きすさべ!ヒートブレス」


 私の両手から大きな火と風が合わさった渦が放たれる。それはいまだ視界に入らない魔物たちの群れへと向かって行く。


「これが上手く行けば、呼吸器系をやられてまともに動けないはず」


「よしっ!乗り込むよ」


 ジャネットさんの言葉を合図に私たちは一気に魔物の視界に入る。どうやらさっきのヒートブレスの影響で、戦闘状態を取れない魔物も多くいるようだ。それ以前に仲の悪い魔物同士、争っていたような形跡もある。ダンジョン内だからといって、全く野生の環境と異なるわけではないようだ。


「ほらよっ!」


「せやっ!」


「はっ!」


「うんうん、うちの前衛はみんなすごいなぁ。おっと」


 キン


 いつものように後衛を狙ってきたローグウルフの攻撃をバリアで防ぐ。いつもなら避けるところだけど、今回はガンドンに騎乗しているからバリアなのだ。


「お返し!ストーム」


 ガンドンの背にまたがっている私に攻撃をするため、ローグウルフは飛びかからなければならない。私はバリアで弾いたあと、その着地を狙うだけだ。


 ギャン


「さて、まだまだいることだし、一気に行くよ!火球よ、螺旋を描き我が前の敵を穿て!ファイアブレイズ」


 小さな火球を大量に作り出し勢いよく放つ。普段なら地形を考えて抑えるところだけど、今は遠慮はいらない。私はどんどん発動させて手当たり次第に攻撃していく。


「なぁ、アスカって好戦的なのか?」


「切り替え上手って言って欲しいねぇ、おっと!」


 ガッ


 ジャネットさんがガークローで攻撃を防いで、そのまま反撃に移る。これまでも何度か使って分かったことだけど、どうやらDランクに位置しているのも魔法が込められないという欠点からのようで、それ以外はCランクといってもいいような武器だ。


「リュート!」


「うん!」


 そして、私はリュートに声をかける。狙うはやや後ろにいる一団だ。


「「ウィンド」」


 リュートと2人で威力を弱めた風の魔法を放つ。その狙いはさっきのファイアブレイズで草原に付いた火を拡大させることだ。魔法があるこの世界でも、草原などに生息する魔物が火を恐れるのは変わらない。ガーキャットも夜行性で野営地を襲うものの、火自体には恐れを抱いているのだ。


 グルルル


 突然勢いを増した火に魔物たちがおののく。こうして前後を分断したあとは遠距離攻撃の独壇場だ。


「リュートも準備はいい?」


「うん!ウィンドブレイズ」


 私はガンドンの上から矢を、リュートは風の魔法でどんどん後ろにいる魔物を攻撃する。今見える範囲では遠距離攻撃ができる魔物はいないので、これなら容易く倒せるだろう。


「それにしても狙いやすいなぁ。ガンドンの高さを入れると、2m近い視点から狙えるのは有利だね」


 ガンドンにまたがった私の視点はいつもより数十cm高いので、簡単に狙いを付けられる。それに、弓も上を向けず平行に構えられるのもいい感じだ。


 ヒュン ヒュン


 狙いを付けてはどんどん魔物を射っていく。


「なんだか騎馬弓兵になった気分。ありがとう」


 フ~


 ガンドンにお礼を言いながら戦闘を続ける。そして、しばらくして魔物を一掃出来た。


「終わりましたね」


「ああ、途中で少し離れたところからも加わったけど、なにもなくてよかったねぇ」


「それよりどうする?探索を続けるか?」


「う~ん。まだ、階層に魔物は残ってますし、先に行きましょう」


 そう、この階層は遮蔽しゃへい物がないだけでなく、魔物の数自体が多い。恐らく、通常フロアの倍近いのではないだろうか?戻ってくる前に復活しても嫌だし、できるだけ安全に進みたい。


「そうだね。まだ、初回の探索だし先に進むとするか」


「僕も賛成です。ちょっと疲れましたし」


「なら、少しここで休もう。降りたらまた…なんてこともあるかもしれないからな」


「こ、怖いこと言わないでくださいよ」


「だが、可能性はあるだろう?ダンジョンとはそういうものだ」


「それはそうかもしれませんけど…」


 フ~


「おわっ!?暴れるな」


「リックがアスカを不安にさせるからだよ。なあ、ティタ」


「全くです。付き合いの短い魔物に思いやりで負けるとは…」


「き、厳しいね。ふたりとも」


 そんなわけで、次の階層に降りる前に少しだけ私たちは休憩をすることにした。


「は~い。これでも食べててね~」


 ガンドンは草食なので、休憩の間にご飯をあげる。さっきまで傷ついていたので、少しリラ草を混ぜたものだ。


 ピィ


「ん?アルナも食べたいの?仲良くね」


 そして、10分ほど休んだあとはいよいよ次のフロアへ向かうのだった。





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― 新着の感想 ―
[一言]  わー、このアスカを乗せたガンドンは特殊個体になりそうですわー。
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