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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
ダンジョン都市アルトゥール

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20Fボスフロアにて

「いよいよ16Fですね。ここまでは順調でしたけど、どうでしょうか?」


「ま、相手を見てからだね」


 ということで少し動き回って魔物の姿を探す。どうやらここは砂漠というか乾燥地帯のようだ。


「いた…しっぽだけが出てますけどあれですね」


「しっぽ?ああ、あれの事か。よく気づいたな、アスカ」


「まあ、このフロアからは一応探知も軽く使ってますからね」


「見た感じポイズンスコーピオンか。砂漠から乾燥地帯を縄張りにする魔物だね」


「ということはトレニーみたいなのもいるかなぁ?」


「トレニー?」


 隠れて様子見のポイズンスコーピオンを視界にとらえながら話す。


「前にダンジョンで出会った子なんです。消えちゃいましたけど、とっても懐いてたんですよ」


「ふむ。興味深い話だな。帰ったら聞かせてもらおう。まずはあいつを叩かないとな」


「そうですね。巻き上げますか?」


「他にはいないのかい?」


「単体ですね」


「なら頼む」


「了解です!ウィンドカッター、ストーム!」


 私は立て続けに魔法を放つ。まずはポイズンスコーピオンが隠れている周囲をウィンドカッターで抉り、ストームで巻き上げるのだ。


 シャァァァ


 周囲の土が抉られ、対応しようとするがすでに体は宙に浮いている。


「えいっ!」


 そしてそのままストームの刃に斬り裂かれ、ポイズンスコーピオンは倒れた。


 コロン


「あっ!?ドロップですね。なんでしょうか?」


 私はポイズンスコーピオンが落としたビンを拾う。その中には紫色の液体が入っている。


「えっと、図鑑を取り出してと…」


 前に買っておいたダンジョンアイテムを鑑定できる図鑑を取り出す。これはDランク以下のアイテムを自動で鑑定・登録できる優れものだ。それ以外にも鑑定できないことでCランク以上だという判定もできるから、とても助かっている。


 猛毒治療薬:ランクD。猛毒にかかったものを治療できる。ただし、無毒状態の物には毒


「うぇっ!?」


「どうしたアスカ?変なものだったのか?」


「変といえばそうですね。これ見てください」


「ん?なんだこれは。扱いに困るものだな。低階層の物だから鑑定をしたことはなかったが、こういう効果のものだとは…」


「なんだいリック。ああ~、こいつは扱いに困るね。2本ぐらいなら持っててもいいと思うけどね」


「そうですね。毒状態と分かっていれば有用そうですし、いったん私のマジックバッグに入れておきますね」


 ちなみにドロップの配分は私のマジックバッグが有用そうなものや持ち帰り確定の物。ジャネットさんがCランク以上、リュートのものが売却用だ。リックさんはそれぞれのものがあふれた時のスペアとなっている。今一番多いのはリュートのマジックバッグだ。私たちのランクと階層を考えたらしょうがないけどね。


「でもさっきの魔物で分かるのはDランク相当の魔物がメインってことだね。そろそろ固まって動くべきだね」


「そうですね。アルナもここからはあんまり飛んでいかないでね」


 ピィ


 これまでは魔物も弱く、ある程度好き勝手にさせていたアルナにも注意を促す。キシャルはというとまだまだのん気に頭の上でおやすみ中だ。


「ご主人様」


「ティタ、どうしたの?」


「ここから右のルートは他の冒険者がいるようです。左の方がいいかと」


「そっか、邪魔になっても悪いしそうしよう」


 ティタもこの階層からは探知を使ってくれるようで、得られた情報から他の冒険者を避けて移動する。


「はっ!」


「やぁ!!」


「片付いたな。今度は4匹か、これは少し手間だな」


「全くだね。探知魔法がないとここで引き返すDランクパーティーも居そうだね」


 戦闘が終わり、そのうちの一匹がドロップを落とす。さっきまで戦っていたのはサンドワームだ。サンドリザードと同じく、砂や土の中を移動して強襲する魔物だ。違う点といえば、陸地での戦闘力だろう。サンドリザードは姿を現しても堅い皮に包まれており、冒険者を困らせる。サンドワームの方は固い外殻は頭の方だけで、強襲さえかわせば大した魔物ではない。


「サンドリザードと違って、固い外皮がないから楽ですね」


「でも、そのせいかすぐにまた潜っちゃうんだよね。陸地での戦闘時間が短い分、厄介かも?」


「一長一短ってことだな。で、落としたのはなんだったんだ?」


「これですか?サンドワームの外皮ですね。素材としてはDランクですけど、日用品向けみたいです」


「加工もしやすそうだしねぇ。バッグとかかね?」


「そういう類いのものか。この街じゃ売れなさそうだが、他の街なら高値になるかもな」


「そうなんですね。じゃあ、これはとっておきましょう!」


 やっぱり16Fともなれば私のマジックバッグも潤っていく。さっきまではほとんどリュート行きだったからなぁ。


 グルゥ?


「あっ、音で気づかれたみたいです」


「今度はサンドオークかい。別にこいつはどうでもいいね」


 ザシュ


 こっちの戦闘音に気が付いたサンドオークをササッと切り捨てるジャネットさんとリックさん。サンドオークはオークメイジと並ぶほど肉が不味いから、いいとこ無しなんだよね。向こうはまだ魔石の可能性があるし。


「ふむ、乾燥地帯というよりはほぼ砂漠の内容だな」


「だね。とはいってもDランク程度の敵ばかりじゃ、相手にならないけどね」


「まあ、我々の腕ならそうなるな」


「2人ともすごい自信ですね」


「自信じゃなくて実力だよ、リュート。あんただって腕が上がってるんだから、この程度の敵にいちいち構えないようにしなよ」


「分かりました」


 そして、無事に17Fへの階段も発見し降りていく。


「そろそろ宝箱探しませんか?」


「あたしは別にいいけど、そろそろ昼だろ?急がないと泊まりになるかもしれないよ?」


「うっ、確かに午後からの探索時間も考えると微妙ですね」


 今日の目標は30Fだ。まだ半分ぐらいだとすると、ここから魔物との戦闘にかかる時間と20F以降での探索時間…。


「う~ん、我慢我慢。まだ見ぬ、財宝のため…」


「アスカ、なんかちょっと怖いよ」


「ええっ!?そう?」


「アスカは宝箱と聞いたら目の色変えるからねぇ」


「そ、そんなことありませんよ!ただ、物珍しさで開けたいだけです」


「ほら、宝箱が気になるんじゃないか」


「まあ、そりゃあやっぱり冒険者って感じがしますし」


「冒険者の活動の中でもダンジョンだけでしかほぼ見ないんだし、特殊なんだけどねぇ」


「アスカの知識ってどこからなんでしょうね。僕もいまだにわかりません」


「2人して…」


「まあまあ、20Fまでは大したものも出ないことだし、先を急ごう」


「は~い」


 リックさんに促され、私たちはどんどん階段を降りていく。そして…。



「ようやく20Fだな。ここで少し休むか?」


「そうだねぇ。ちょっと早いけど、飯にするか」


 2人の提案でこのボスフロアを使ってお昼ご飯にすることにした。



「リュート、お鍋そっちに置いて」


「分かった。味付けは肉の方にあるから、後はそのまま切って入れればいいよ」


「分かった」


 今はお昼の準備中だ。ジャネットさんとリックさんが荷物の見張りと周囲の警戒をしてくれているので、私たちが調理担当だ。まあ、私は材料を切るのと火を起こすだけだけどね。料理を習い始めていたころは、他にもやっていたけどどんどんリュートとの経験の差が開いてきて、最近は大体こうだ。


「ん~、少しだけ薄いかな?今日はまだ動き回るだろうし、少し追加してと…」


「どう?」


「いい感じだよ。アスカも味見する?」


「うんっ!」


 リュートからスプーンを受け取ってスープを味見する。


「あっ、おいしい!これなら、お店で出てくるのよりおいしいかも?」


「本当?口に合って良かったよ。それじゃあ、パンも用意してあるし、ご飯にしよう」


「そうだね。ジャネットさん、ご飯できましたよ~」


「おっ、そうかい。悪いねぇ、リック。それじゃあ、お先に」


「ああ。気にせず食べてくれ」


 そのままリックさんが一人見張りに立って、私たちが先に食事を済ませる。


「いつものことながら一人だけ食べられないのって悪いですよね」


「まあ、ボスフロアとはいえ、人間も味方ばかりじゃないからね。こればっかりはしょうがないさ」


「しょうですけろね~」


「アスカ、また食べながら」


「…」


「そうですけどね」


「言い直さなくても分かってるよ。でも、自分から言い出したことだし気にすんなって」


「それも分かってるんですけどね」


 そして、10分ほどで食事を済ませるとリックさんが今度はお昼だ。


「じゃあ、あたしらは見張りをしてるから」


「おいおい、一人ぐらいは話し相手に残ってくれないのか」


「だってさ、リュート」


「えっ!?僕ですか?」


「同性の方が気を使わなくていいだろ?」


「ジャネット、俺は別に異性でも気にしないぞ?」


「ふ~ん。あたしらが来るまでそうやって口説いてたのかい?」


「ご、誤解だ!他のやつにはそんなことは言っていない!」


「どうだか。ま、飯ついでにこれからの簡単な打ち合わせでもするかね」


 そういうと結局ジャネットさんは腰を下ろした。


「もう、なんだかんだ仲がいいんだから」


「そうだね。一見すると、普通の冒険者と貴族の冒険者で仲が悪そうなのに」


「不思議だよね。ジャネットさんってすごくいい人だけど、リックさんは何がそんなに気に入ったんだろ?」


「どうだろう。言葉で説明できることじゃないのかも?」


「リュートもそういうのってあるの?」


「僕?うん、そうだね」


「そっかぁ…」


 それから、リックさんが食べ終わる数分の間、私とリュートは雑談に花を咲かせたのだった。






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