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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
古代精霊ミネルナ

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屋台と遊び

「皆の者、今日は急に集まってもらってすまない。皆の中には昨日の煙を見て不安になったものもいると思う。その説明を今からする」


「そういえば、隣のカーサがそんなことを言ってたな。狼煙にしては大きいって」


「怖いわね。1か月前にも近くに魔物が出たって言ってたでしょ?」


「げっ!俺明日は薬草採りに行くつもりなんだが…」


「皆の者、静かに。これより私が簡単な説明をした後、こちらの方々から詳細な説明をしていただく」


「アスカ、頑張んなよ」


「わっ、私ですか?」


「そりゃそうだろ」


 ううっ、こんな時にリーダーは大変だ。でも、みんな不安がっているみたいだし頑張ろう。


「では、話を始めるぞ。まずこちらの方々だが実はこの村に伝わるミネルナ様について調査に来られている」


「ミネルナ様に? でも、ミネルナ様ってこの村だけの信仰では?」


「どうやら古い村人が街に出て書き記したのか分からんが、この村の歴史について書かれた書物を見つけられてな」


「その書物にはなんと?」


 ミネルナ様のことになると村の人は気になるみたいだ。加護が落ちている中でも、大事にされているんだな。


「それがこの村の外にかつてミネルナ湖という湖が存在していて、ミネルナ様はそこに住んでおられるとの事だった」


「本当なんですか!? それで今回の事と何の関係が?」


「その書物を見たこちらの方々はミネルナ湖の調査をしてくれるということでな。知っているものもいると思うが村の西から出入りしてもらっていた」


「け、結果は?」


「まだ調査中じゃ。ただ、最近は村の西側によく魔物が出ていたじゃろう? 今回も魔物に遭われたということでな」


「それじゃあ、もう調査は…」


 村の人たちが残念そうに頭を下げる。きっと、私たちが調査を諦めるんじゃないかと思ったんだろうな。


「それなんじゃが、実は調査中にゴブリンの巣を見つけられたのだ」


「ゴブリンの巣! それじゃあ、今すぐにでもやつらが……」


「いや、すでにその巣はこの方たちが壊滅してくださった。その説明に今日は集まってもらったんじゃ」


「ほ、本当ですか! それじゃあ、しばらくは村も安全に……」


「うむ」


「で、ですが、報酬は? 村にそんなお金はありません」


「それについてはリヴェルスの町に相談して何とかしてもらおうと思う。皆の者にはそういうことがあったということを知っておいて欲しいのだ。ではアスカ様説明を」


「あ、はい」


「お嬢さん、あんたが?」


「あっ、お世話になったおじさん。私はこれでも冒険者なんですよ。じゃあ、今からちょっと説明しますね」


 私は悲惨な感じを出さないように話し始める。


「村の西側にあるミネルナ湖を探してここ二日間、森に入っていたのですが、昨日は朝からゴブリンによく出遭いました。それで気になってその調査に切り替えると巣があったんです」


「えっと、なぜ調査の方針を変えられたのですか?」


「私たちの調査で村にゴブリンが行く可能性があったからです。確かにミネルナ湖を探していますが、それはこの村に真のミネルナ様の信仰を蘇らすためです。村が存続しなくては意味がありません」


「なんて、気高いお方だ…」


「ミネルナ様が遣わしてくれた救世主よ」


「そ、そんな! 今回の巣は規模も大きく、同行してくれた人の話ではもっと早くに村が襲われてもおかしくなかったと聞きました。きっと、ミネルナ様の加護があったからですよ」


「そうなのか……ミネルナ様はまだ我々を見放していないのか!」


「もちろんですよ! 他の文献に書いてあったのですが、神様のような信仰を得て力を持つようになる存在は、その本体となるものが必要になるんです。ミネルナ様の場合は湖ですから、ミネルナ湖を発見すればきっと加護も戻りますよ」


「本当なの!? 私たちが今までやってきたことは無駄じゃなかったんだわ!」


「そうじゃ。ただ、今日はアスカ様たちに来ていただいたが、ゴブリンの巣には数百体もの数がいたので、無理強いはしてはいかん。村としてもミネルナ様に協力してくださる方として今からもてなそうと思うがどうだろうか?」


「もちろんです!」


「すぐに家に戻って用意をしてきます!」


「えっ、あの…」


「アスカ様たちはここで子どもたちの相手をしてくださいませんか? 子どもたちも普段は外の方との交流もないですから」


「分かりました。いいですよ」


「救世主様! お話聞かせて!」


「いいよ。でも、アスカって呼んでね。みんなとそんなに歳は違わないし」


 子どもたちといっても大体十二歳前後のようだし、気を使って欲しくないしね。


「そ、村長様……」


「アスカ様が言われるならしょうがない。そうしなさい」


「はい。それじゃあ、アスカさん。お話ししてください!」


「うん。どんな話がいいかなぁ?」


「えっと、町の話が聞きたい!」


「遠い町の方がいい?」


「うんうん、どんなところがあるの?」


「そうだね。それじゃあ、最初はデグラス王国の王都に行った時の話からね」


「でぐらすおうこく?」


「あ~、みんなは知らないかな? この大陸から北にある別の大陸の国だよ。この前、シェルレーネ教の神殿が出来たの」


「あっ、わたし知ってるかも。この前寄った冒険者さんが言ってた!」


「そうなんだ。実は私、その神殿ができる時に実物を見に行ったんだよ」


「きれいだった?」


「うん。それに神殿ができることを記念して巫女様も来ててね…」


 私は子どもたちの話し相手を務めた。そうこうしていると、広場には村の大人たちが戻ってきて屋台の準備を始める。


「わっ! 屋台のセットですね」


「ええ、村で祭りをする時などにすぐ使えるように用意しているんです。かまどを作るのも大変ですし、この方が片付けが楽ですから」


「確かにそうですよね。でも、火を使うのに危なくないんですか?」


 屋台といっても別にガスボンベがあるわけではない。あれはあれで危険だけど。薪を使って火を起こすなら、木製の屋台はそれなりにリスクがあると思うんだけど…。


「それなら安心してください。薪に火をつけるのですが、周りには鉄板を引いてあります。さらにその周りには水を張り巡らせて木に熱が伝わりにくくしているんですよ」


「へ~、工夫してあるんですね」


「火は怖いですからね」


「村長! 使う肉はどうします?」


「うむ。確か前に手に入れた肉が…」


「あれは久しぶりに量が入ったから使っちゃいましたよ。今は保存食にしているところです」


「そうだったな。他にはあるか?」


「あっ、肉ならオークの肉がありますよ。一応、そこそこ保存が効くものです」


「し、しかし、アスカ様に出していただく訳には…」


「いいえ。大人だけじゃなくて子どもたちも魔物が出て不安だったでしょうし、ここは協力させてください」


「そういうことならお願いいたします。必ずこのお礼は」


「じゃあ、ミネルナ湖が見つかったら、そこでいつもやっているお祈りをするところを見せてもらえませんか?」


「別に構いませんが普通に祈っているだけですよ」


「いいえ。私は各地の文化を研究してますから、そういう風景を見ておきたいんです」


「分かりました。必ずお見せします」


「その前に私たちも見つけないといけませんけどね」


「どうかお願いします」


「姉ちゃん、話の途中だぞ」


「あっ、ごめんね。すぐ戻るよ! それじゃあ……あれ、リュートは?」


「リュート様ですか。彼なら今は村の入り口を警備しています」


「えっと、どうしてですか?」


「村の近くで魔物が出たので一応見張りの強化ですね。それと、メンデスとエルスマンはリヴェルスの町に出ております。代わりに村の西はフォーカスが守っております」


「ええっ!?メンデスさんたちも疲れてるのにもう出発したんですか?」


「騎士はこれぐらい大丈夫ですよ。それに報告が遅くなると他領の人間である我々も面倒なことになりかねませんから」


「そうなんですね。のんびり寝ていてすみません」


「アスカ様はお気になさらず。それで何かリュート様にご用ですか?」


「はい。村の人が準備しているのに肉が足りないから出して欲しいって言ってくれますか?」


「承知いたしました。そちらの方」


「お、俺ですか?」


「はい。肉を運びますから道具を用意してついてきてください」


「分かりました!」


 私は食材の手配をエディンさんに任せて子どもたちに話の続きを聞かせた。




「用意はどうだ~?」


「もう終わります」


 リュートの肉も持って来てもらって準備は順調だ。屋台の出店は肉と野菜の串と大釜で作るスープに薬草や野菜を使った包み焼などだ。包み焼に関しては毎回担当の家が違うらしく、いろんな味を楽しめるみたい。次来る時があったらまた食べたいなぁ。


「あとは火を入れるだけですね。私も手伝います。それっ!」


 火魔法で各屋台の薪に火をつけていく。


「おおっ!いとも簡単に火が。村のものだと1本につけるのがせいぜいでして」


「そうなんですね。あっ、そういえば村長さんに言われてた属性を判別するの、今やっちゃいましょう。煮炊きにもう少しかかりますし」


「それは願ってもないですが、そんなに簡単にできるのですか?」


「ええ。それじゃあ、みんな集まって~!」


「なになに~」


「ほら、ファラちゃんも」


「うん!」


 私はみんなに集まってもらうといくつも魔石を出していく。この魔石は対応した魔力を持っているとその属性に光る。光る強さも魔力の強さに依存するからこれで簡単に得意な属性を判別できるのだ。


「は~い。それじゃあ、今からみんな一つずつこの石を持って魔力を込めて行ってね。必ず全員が私に見せること。いいね!」


「分かった~」


「何か起こるの?」


「それはやってみてのお楽しみだよ」


 15人ぐらいの子どもたちの内、魔石をはっきり光らせたのが4人。ファラちゃんは水の魔石を光らせていた。他にも少しだけ光っていたけど、実用レベルではないかな?


「これなんなの?光ったり光らなかったり」


「皆の魔力を簡単に見るためのものだよ。色と濃さで分かるんだ。あとで村長さんにいくつか渡しておくから、練習したらまたやってみてね」


「分かった!」


「アスカ様、料理の準備が終わりそうです」


「あっ、分かりました。それじゃあ、みんなご飯の用意ができたから行こう!」


「「「は~い!」」」




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