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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
古代精霊ミネルナ

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リムスの町

「お待たせしました。すぐに制圧部隊を組織して出すとのことです」


「頑張ってくださいね」


「では、残りのことについて話し合いましょう。まずは今回の報酬と彼らの扱いについて…」


こうして一通りの話を済ませて最後はアジトにある金銀の話になった。


「アジトにある価値のあるものについてですが、本来はそちらが所有権を持つ形になります。しかし、今回は我々が制圧部隊を送りますのですべてとはいきません」


「私たちも護送の途中です。それに関して異論はありません。アスカ様は?」


「私も構いません。ですが、持ち主が分かるものについてはできるだけその方たちに返して欲しいのです。取られたものもあるでしょうけど、遺品のものもあると思うので」


「よろしいのですか?うちとしてはそれが一番ですが…」


「少しでも悲しんでいる人の慰めになるならその方がいいと思います」


「分かりました。隊長が帰ってきたらそのように伝えます。盗賊団はこちらでいったんお預かりして、処遇や報酬については後日ということで」


「そうですね」


「この町には長く滞在されないのですよね?可能であれば長期滞在先を教えていただけませんか?」


「アルトゥールです」


「ダンジョン都市ですか…。承知しました。そちらの商人ギルド宛で手紙を書きますので、リムスの衛兵から手紙が来ていないか問い合わせください」


「分かりました。向こうに着いたら確認するようにします」


「それでは我々は盗賊団を収監する予定を立ててきますので、町の滞在をお楽しみください」


「ありがとうございます」


「ああ、いい宿を知らないかい?あまりこっちに来ないもんでね」


「それでしたら、カーフの宿を紹介します。5分ほどお待ちください」


ファイスさんに紹介状を書いてもらうと、私たちは詰所を出て馬車で待っていたみんなと合流する。


「おかえりなさいませ」


「ただいま。話し合いは終わったので宿に向かいましょう」


「分かりました。宿は…」


「カーフの宿というところだ。紹介状も貰って来た」


「あら、ベルクさんにしては気が利くじゃないですか!」


「…ジャネット様が」


「そうですか。なにはともあれご苦労様でした。では、向かいましょうか」


野盗の引き渡しも終わったので、私たちは宿に向かった。


「いらっしゃいませ!」


「一晩宿をお願いしたいのだが」


「えっと、何室必要でしょうか?」


「最低3室。一室は最上級の部屋でお願いします」


「少々お待ちください」


受付の人が部屋の確認に奥へと入っていき、5分ほどして帰ってきた。


「大丈夫です。4部屋お取りできますが、どうされますか?」


「では、4部屋でお願いできますか?」


「3部屋で十分じゃ…」


「いいえ、4部屋でお願いいたします」


「分かりました」


こうして私の部屋と、エディンさんたちの部屋。それに護衛の騎士さんたちの部屋とジャネットさんたちの部屋に分かれた。


「それでは、食事までは時間がありますし、少し明日からの予定を確認させていただいてよろしいですか?」


「はい」


私の部屋に集まってみんなで予定を確認する。



「明日はこのリムスの街を観光する予定です。ただ、あまり時間は取れませんから10時から2時間ほどになるでしょう。その間に食事も取ります。その後はグラビルトの町へ向かいます。幸い近い町になりますので5時間あれば着くでしょう。ここまでで何か質問はありますか?」


「特にないけど、観光っていっても何かあるのかい?」


「他の町と同じく、朝市を回られるか中央通りの店に入るかになりますね」


「それだと中央通りの方がいいかなぁ」


「どうしてですか?」


「市に行くと私って結構見て回っちゃうので」


「ああ、そういえば小さい露店なんかも割と細かく見てるよねぇ」


「そうなんですよね。だから、市をのぞいてたらお昼過ぎちゃうと思うんです」


「昼を過ぎて出発するとグラビルトへの到着が心配ですね。では、申し訳ありませんが明日は中央通りのみということで」


「よろしくお願いします」


「それでは予定が決まったようですので、私たちはこれで。2つ隣の部屋で控えておりますので、何かあればお呼びください」


「はい!どうもありがとうございます」


私たちに気を利かせて騎士さんたちが出ていく。私はといえば…。


「せっかくだし、ちょっとだけ細工をしようかな?」


「大丈夫ですか?今日は野盗たちとも戦ったのに…」


「平気です。それにイリス様のところで作ったシェルレーネ様の像はなくなっちゃいましたから、在庫を作っておかないといけませんし」


「それは申し訳ありません」


「いいえ。気に入ってもらえて私もうれしいですから」


「そんじゃ、ここは2人に任せるとするかねぇ。リュート、片づけは済んでるのかい?」


「実は邸でもらった調味料や料理のレシピ本の整理が少し」


「あたしも剣の整理と手入れでもするかねぇ」


「それじゃあ、また食事の時に」


「ああ、それじゃあね」


ジャネットさんたちも部屋を出て行って、私は細工を。エディンさんが護衛についてくれ、ミシェルさんはこの前の裁縫が楽しかったのか、服を作るようだ。



「アスカ様」


「ん~、あとちょっとでできるかな~」


「夕飯の時間ですよ」


「あっ、リュート。あとで食べるから置いといて」


「完全にこちらを見ておりませんね」


「もうちょっとだねぇ。行け、キシャル」


にゃあ~


「わっ!?キシャル、どうしたの?危ないよ、急に手元に出てきたら」


「腹減ったから飯を食いたいってさ」


「そうなんだ。それじゃあ、食事にしましょうか。あれ?もう準備できてるんですね」


「ええ。まあ…」


「使用人だからってあんまり、待たせんなよ」


「ご、ごめんなさい。じゃあ、食事にしましょう」


そんなわけで今から夕飯だ。食事は食堂もあるけど部屋で取る。この宿もいい宿だけど高級宿や貴族宿じゃないからね。貴族の家紋入りの馬車でこういう宿に泊まる時は、自室で食べるのがマナーなのだ。食堂なら貸し切りにしないといけないし、他のお客さんも委縮するし、もし何かあったら大変だからね。


「…なんか少なくない?」


「申し訳ございません。悪くない宿だと思い、注意が足りませんでした」


「す、すみません。声に出ちゃってたみたいで」


別にこれは私が食いしん坊とかではない。こういう宿だと大体はパンにメインの肉料理にサラダに具沢山のスープがある。だけど、目の前にあるのはやわらかいパンに肉のプレートに少しの野菜サラダだ。その横にあるスープはほぼ切れ端のような野菜のかけらと肉がそこそこ盛ってある。


「すみません。私たちもこれはおかしいと思い店に確認したのですが、今日捕らえた盗賊団が金品以外にも、村からの野菜を運ぶ馬車まで襲っていたようでして」


「村から町に行く馬車を引く村人も嫌がってしまって、一時的に野菜の供給が激減しているとのことです。肉に関しては冒険者や畜産のものがあるのでそこそこあるようなのですが…」


エディンさんとミシェルさんが私の疑問に答えてくれた。


「ぐぬぬ、こんなことならもう一撃、加えておくんだった…」


「やめなよ。イメージ下がるよ」


「はぁ~、しょうがないですね。このパンがこっちの領地でも食べられるということが分かっただけでもいいです。というわけでいただきます」


「切り替え早いよねぇ。さて、あたしも食べるとするか」


「あれ?ジャネットさんもまだなんですか?」


「メインのアスカが食べてないのにたべられるわけないだろ?あたしは良くても周りがね…」


「コホン。主から食べるのが当然です。いくら、同じパーティーの方といっても、今は立場が違いますので」


「という訳でね。あっ、ちなみにリュートと護衛の騎士たちはまた別で食べてるからね。未婚のご令嬢とは食べられないってさ」


「なんだかもったいないですね。いい出会いのチャンスだと思うんですけど」


「騎士たちがですか?いくら礼儀作法を身に付けていても、彼らは食べ方を気にしませんよ。そんな方と食べるなんて…」


どうやら、食事のマナーがなっていないとミシェルさんの目には留まらないらしい。それならやめておいた方が良さそうだ。言い合いしながらになりそうだしね。


「殿方というものはですね…」


そこからはミシェルさんの口が軽かった。色々、好きなタイプがあるようでこういう時はこう!そこはこうして欲しい!と中々に乙女チックな食事中の会話だった。


「それじゃあ、途中だった細工も終わりましたし、今日は寝ますね」


「おやすみなさいませ」


「あの…エディンさんは寝ないんですか?」


「はい。きちんと夜中に交代はしますから気にせずお休みください」


「えっと、頑張ってくださいね。アラシェル様もおやすみなさい」


私は自分用のアラシェル様の像に祈りをささげると眠りについた。



「おはようございます」


「おはようございます~」


「アスカ様、今日は街行きですから早めに準備をお願いします」


「分かりました。今は何時頃ですか?」


「8時前ですね。10時前には街に行きますから、食事後は準備になります」


「ええっ!?思ったより寝ちゃってたなぁ」


「昨日は戦いに細工とお忙しかったですから。さあ、朝食をすぐ持ってきますから、椅子に座って待っていてくださいませ」


「分かりました」


まだ、寝ている頭を引きずるように私は椅子に座った。




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