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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
おつかいアスカ

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神像の進捗

「さて、オーク材で手の部分と杖の持ち手ができたし、実際に持てるかどうかだね」


 私は作った部品同士を組み合わせてみる。


「おおっ!予想通りだ。これなら杖の持ち替えもできる。杖だけじゃなくて他の部分も付け替えられるようにしようかな?」


「アスカ様、それはどうやって持てるようになっているのですか?」


「えへへ。別に難しいことじゃないんです。ただ単に杖の持つ部分を手の形に合わせてるだけで」


「でもそれだと杖の見た目がおかしくなりませんか?」


「そうなんです!でも、よく考えてみて下さい。杖を握ってる部分って見えないんですよ。多少形がいびつでもそこが隠れるように作ればいいんです」


「なるほど。それでいくつぐらいつくられるおつもりで?」


「そうですね~。せっかくですしあと2つは作りたいと思います。3つあれば切り替えても飽きないと思うんですよね。この調子で他の部分もデザインしなきゃ」


「あ、それは…」


「さぁ、そうと決まれば続きをしなくちゃ!」


「エディン、アスカ様は?」


「ミシェル。先ほどまでは大丈夫だったのですが…」


「あら、また集中されたんですね。今度は何なの?」


「今作られているシェルレーネ様の像の件で名案が浮かんだと」


「そう…私たちとしてはうれしいことだけど、心配ね」


「では、ジャネット様を呼んできてください。かなり集中して作業を続けておられますので」


「分かった」



「アスカ~、起きてるか?」


「…?ジャネットさんどうしたんですか?」


「どうしたじゃないよ。ほら、たまには外に出るよ」


「ええっ!?今デザイン画がいいところなんです」


「いいところなら戻ってもすぐにできるだろ。いいから来なよ」


「わわっ!」


 ジャネットさんに抱えられるようにして私は中庭に出ていく。


「ほら、よ~く見なよ。アスカの作った像が置かれる場所なんだから」


「…そうですね。部屋にこもって作業もいいですけど、実際に置くところを見ないとですよね」


「アスカ様、お茶にいたしませんか?」


「あっ、いいですね。お願いします」


「あたしにも一つくれ」


「砂糖はどうされますか?」


「私は2つ」


「あたしはいいよ。変に甘ったるくて気持ち悪い」


「ええ~!おいしいし高いのに…」


「いくら高くたってうまくなけりゃね。という訳であたしは砂糖なしで」


「かしこまりました」


 ジャネットさんと2人でガゼボから庭を眺める。


「ん~、いい景色ですね。本格的に暖かくなってきたら、もっと花が増えるのかなぁ?」


「花は思うほど増えませんね。季節ごとにある程度植え替えますし、アレン様の区画もありますから」


「アレン?領主様の区画ですか?」


「ええ。イリス様に見せるために今でもお手入れをしていますよ。もちろん、領地の見回りなどの時は庭師に任せておられますが」


「へぇ~、まめだねぇ~。まるでどっかの誰かさんみたいだ」


「そんな人いましたっけ?」


「さてね。おっと、いい時間だね」


「あれ?ジャネットさんどこ行くんですか?」


「ああ、訓練だよ。依頼っていうのもあれだし、今は騎士と訓練してるのさ」


「へ~、私も時間があったら行こうかな?」


「アスカは…やめといた方がいいかもね」


「どうしてですか?」


「夢を見させておくというか、護衛対象より護衛の方が弱かったら凹むだろ?」


「そんな~、見習いの人ならともかく本業の人には勝てませんって!」


 私がそういうとちらりとジャネットさんの視線が動く。


「ん、んっ。アスカ様、私も修行中の身。こうして護衛に就かせていただいておりますが、実力ではアスカ様には及びません」


「またまた~、エディンさんったら。近接とか私は苦手ですから」


「苦手…あれで?」


「どうかしました、エディンさん?」


「い、いえ。そういうことですので、護衛対象の方は見学のみで参加はされない方がよろしいですよ」


 どういうことかは分からなかったけど、見学に留めておいた方がいいというのは分かった。でも、興味はあるからこっちでも見学はしたいな。サーシュイン領だと途中で終わっちゃったし。アスカがそう思っている頃、エディンは一昨日の出来事を思い出していた。



「ねぇ、アスカ知らない?ちょっと話したいことがあったんだけど…」


「アスカ様なら裏庭の奥にいらっしゃいますよ」


「なんでまたそんなところに」


「体がなまらないように訓練だそうです」


「へぇ~、まあ一応あれでも冒険者だし、私も見学に行こうかしら?」


「お辞めになった方がいいと思いますよ。あれは訓練でも実戦形式ですから」


 エディンにそう言われて2Fの窓から下をのぞき込んでみる。


「ファイアボール」


「せやっ!」


「むぅ、ならこれで!ストーム」


「アスカ、それは当たらないよ」


 すっとリュートが魔法をかわして距離を詰めていく。


「へぇ~、まだ若いのにやるじゃない!って」


 カンッ


 なんとアスカは距離を詰められたらマジックバッグから弓を取り出して、その弓で槍を防いだのだ。


「じゃあ、距離を取って…いけー!アローシャワー」


 今度は槍を防いだ衝撃を利用して距離を取ったアスカがでたらめに空に矢を放っている。


「あんなの実戦で役に立つの?」


「ここからですよ」


 空に放たれた矢はすべて空中で静止している。それが、アスカの掛け声に合わせて一気に面で攻撃を仕掛けていく。


「それなら!ウィンドブレイズ」


 それをリュートが風の散弾で撃ち落としていく。


「あれ、うちの騎士にできるかしら?」


「相手の手札が見えておりましたら…」


「巻き込まれそうだから終わったら呼んでくれる?」


「かしこまりました」


「それと間違ってもアスカの戦いを騎士に見せないように。護衛より強いとわかったらショックを受ける騎士もいるわ」


「承知しました」



「見学程度でしたらできるように取り計らいますが?」


「じゃあ、今度見せてもらえるようにお願いします」


「かしこまりました」


 エディンさんに訓練の見学をお願いして、私はアトリエに戻る。


「アスカ戻ってきたのね」


「イリス様、どうしてここに?」


「ちょっと進捗が気になってね。どうなの?」


「順調です。ただ、思いついたのがあってもし可能なら手配して欲しいんですけど…」


「ふむふむ。なるほどね、いいわよ」


「いいんですか?結構お金がかかると思うんですけど…」


「ああ、実はここに置いてあるミスリルの塊だけど、手配をお願いしたら送ってきてくれたの、無償でね。だから、それに使う予算が丸々残っているからいくらでも言いなさい。私の権力で用意させるから」


「じゃあ、さっき言ったものをお願いしますね。よかった~、高いから断られるかと思いました」


「断る訳ないわよ。ただでさえシェルレーネ教刻印使用許可証を持っている人に作ってもらう機会なんてもうないんだから」


「それじゃあ、さっきの2点よろしくお願いしますね」


「ええ、任せておきなさい」


 イリス様に許可をもらったところで私は作業に戻る。


「さてと、杖を作っていこうかな?集中力が持つうちに作りたいしね」


 先ほど、描いたデザイン画を眺めて頭の中に叩き込む。


「難しいデザインだけど、絶対失敗できないもんね」


 こうして私はさらに3日ほどアトリエで作業をした…。




「あ”あ”あ”~~~疲れた~」


「お疲れ様です、アスカ様」


「エディンさん、お茶ありがとうございます」


「いいえ。ようやく終わられましたか?」


「はい。これでしばらくはポーションとの生活も終わりですね」


「よかったです。毎日飲まれていて、みんな心配されていましたよ」


「そっか。じゃあ、1日はゆっくりしないと!」


「もっとゆっくりでもいいと思いますが…」


「昨日も依頼したことをやってもらいましたし、この環境もあとわずかですからね」

 そう、リックさんと約束した2か月が近づいてきているのだ。落成式が2日後でその2日後には出発する予定だ。


「そうですか…さみしくなりますね」


「そう言ってもらえると嬉しいです。私もエディンさんやミシェルさんのことは忘れませんから!」


「はい。私たちも忘れませんので、機会があればまたこちらにいらしてくださいね」


「もちろん!一度旅が落ち着いたらきっとまた来ますから」


「ぜひその時をお待ちしております」


 こうしてあと残った作業はアトリエの片づけなのだが…。


「ほんとにいいんですか?この削ったあとのミスリルをもらっちゃっても?」


「はい。もともと、こういった像以外でも依頼主に必要な素材を渡した残りは関知しないのが通例ですので」


「それじゃあ、遠慮なくもらいますね。でも、ミスリルを再加工して塊にするのって難しそう」


「でしたら、再加工できる方法を記載した本をお持ちします。持ち出し禁止ですから、必要な部分だけ覚えて行ってくださいませ」


「いいんですか?」


「イリス様より必要なものに関してはすべて用意するように言われておりますので。流石に本は持ち出してしまうと各所にばれてしまいますが、知識であれば問題ありません」


「なら、後で読ませてもらいますね!これで何日も続いた像の作成も終わりかぁ。落成式、楽しみだなぁ」


 せっかく作ったのでお披露目の式にも呼ばれたのだ。まあ、制作者は秘密ということになっているので、落成式にたまたま滞在した客人という形になるけど。




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