こぼれ話 アスカと一月一日
番外編になります。本編進行が間に合わず、少し先の話となっておりますので、ご注意ください。
また、アスカなのかどうかと思われるかもしれませんが、その時は番外編ということでどうかひとつ。
「はぁ~、今日はちょっと寒いかも…」
「そうだねぇ。部屋にこもってないと体調崩しちまうね。てな訳であたしは部屋にいるから」
「…ありがとうございます。ジャネットさん」
「その代わり、誰にも言わないでくれよ。怒られるのはあたしなんだから」
「そうですね。私もさすがに言いませんけど」
「アスカ、来たよ」
「あっ、リュート。ごめんなさい、急に呼んじゃって。時間大丈夫だった?」
「うん。隣の部屋だし、ちょっと本を読んでただけだし」
「そっか。えっと…ちょっと涼みに出ない?」
「いいけど、大丈夫?昨日から冷えてるけど」
「うん。夜風にあたりたくて」
「あれ?ジャネットさんは部屋にいるけどいいの?」
「い、いいの。護衛は2人もいらないでしょ?イリス様のお邸なんだし」
「そ、そうだね」
「はぁ~、やっぱりちょっと寒いや」
「それで、話ってどうかしたの?」
「うんとね。別に大したことじゃないんだけど…ううん。大したことでもあるんだけど…」
「ど、どっちなの?」
「ま、まずは、新年あけましておめでとうございます!」
「あっ、おめでとう」
「そ、それでね。今年もよろしくってことと、リュートって今日が誕生日だよね?」
「あ、うん。僕っていうか孤児院の子たちは全員だけど…」
「そ、そうだよね!それで、やっぱり、一緒のパーティーだし、いつもお世話になってるし、これを受け取って」
「これは?」
「いいから開けてみて!」
「う、うん。…ブレスレット?」
「そう。リュートってばディーバーンの時もだけど、ずっと前線に出てるよね?」
「まあ、それが仕事だしね」
「それでね。いつもつけられるようにと思って作ったの。中央の魔石はファモーゼルの魔石で、ティタにも協力してもらって、強力なウィンドバリアが張れるようになってるから!あと、私の魔力を先込めしてるから、もし使ったら言ってね!また込め直すから」
「うん。でも、込めるのは自分でもできるから…」
「ダメっ!ほ、ほら、リュートは魔槍にも魔力を込めてるじゃない。そんなにいっぱいやるのは大変でしょ?今回でかなり魔槍の魔力も消費したし」
「それはそうだね。それじゃあ、使うことがあったらお願いできる?」
「うん!発動も私の魔力が入ってるから、ほとんど消費せずにできるから安心してね」
「ありがとう、アスカ。でも、いいの?こんなにすごいもの貰っちゃって…」
「いいの。今日はリュートのお誕生日だし、いつもお世話になってるし!」
「そっか。ありがとう、アスカ」
「うん。あっ!でも、だからと言って無茶しないでね」
「分かってるよ。アスカがこれをくれた気持ちも大事にする」
「ほんと!それじゃあ、ちゃんと街に行く時もつけてね。はい、約束」
「約束だね」
「ダメだよ。ちゃんとほら」
「小指を出してどうしたの?」
「私の地方じゃこうやるんだよ。ほら、リュートも」
「分かった」
「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲~ます。指切った!」
「えっ!?なんだか怖いねそれ」
「そ、そう?割とみんなやってたんだけど…」
「どんな地方なのさ、アスカの出身って…」
「…う~ん。いつか話してあげる」
「本当?」
「だけど、いつかだからね!」
「分かったよ。その日を楽しみにしてる」
「それじゃあ、中に入ろう。体が冷えちゃった。はい!」
「本当だ。手が冷たいね」
「知ってる?手が冷たい人は心が温かいんだよ」
「そうなの?じゃあ、アスカは優しいんだね」
「どうかな?今はお外に出たからだし」
「優しいよ。さあ、風邪をひく前に本当に入ろう」
「そうだね」
「で、リュート君は何をもらったのかな?」
「ジャ、ジャネットさん!?護衛は?」
「残念。メイドに追い出されたんだよ」
「そうですか。これですよ」
「ブレスレットね。まあ、言ってた通りか」
「知ってたんですか?」
「アスカの独り言でね」
「独り言…そっか」
「チッ、うっとおしいやつだねぇ」
「やりますか、ジャネット様?」
「いいねぇ。リュート君は外に出ても寒そうじゃなかったし、やるかティタ!」
「ちょっと、2人とも待ってくださいよ!」
「待ったら覚悟決まるかい?」
「決まる?」
「いや、それとこれとは別問題ですけど…」
「なら、今すぐ外に出るよ。ちょっと今、機嫌が悪くてねぇ」
「私もです。奇遇ですね、ジャネット様」
「気が合うね。さて、行くよ」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」
にゃ~(あほらし)
ピィ(頑張れリュート)
「ん?何か庭の方で音がしませんでした?」
「はて?何かあったのでしょうか。カーテンを開けて確認いたします」
「お願いします」
「…」
「どうでした?」
「ああ、何でもありませんでした。ちょっと邸の者が新年で浮かれていたようです。うるさくしてもいけませんので、こちらに防音の結界を張っておきますね」
「止めに行かなくてもいいんですか?」
「新年ぐらいはいいかなと思いまして」
「そうですね。年に一度のことですし。私もちょっと見てみようかな…」
「アスカ様が見られるほどのことではありませんので、どうぞおくつろぎくださいませ」
「あっ、はい」
「それより、少しお体が冷たいですね。今日はもうおやすみになりませんか?」
「う~ん。そうですか?」
「はい。無理はいけません。帰られてまだ日も浅いのですから」
「…新年早々風邪を引くのもよくないですよね。そうします」
「では、おやすみなさいませ、アスカ様」
「おやすみなさい。ミシェルさん、エディンさん」
「おやすみなさいませ」
「今年もよい年になりますように。そして、また一年よろしくお願いします。アラシェル様…」
 




