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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
おつかいアスカ

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目的地到着!

中継地も過ぎてサーシュイン領の領都、ディシュペアへと向かう私たち。街道も整備されているので、ここからは魔物と出遭うかどうかで到着時間がずれるのみだ。


「とりあえずディシュペアへ着くまでは大した魔物も出ませんから大きくずれ込むことはありませんよ。夕方遅い時間ですから、向こうの邸でも大したものは出ないと思いますが」


「それは迷惑ですよ。だめだったらその辺の宿に泊まりましょう」


「アスカそっちの方がダメだよ。相手に高い位の貴族の使者を宿に泊めさせたってなっちゃうから」


「そっか。なんだかリュートの方が貴族に詳しいね」


「護衛役の方がこういうのは気にかけておかないとね。そういうのも含めて仕事だし」


「同じパーティーメンバーなんだけどなぁ」


「まあ、あたしらもその方が気が休まるし、気にすんなって。それよか、こっちはまだ安全なんだろ?ちょっと馬車の乗ってみてもいいかい?探知ならリュートがするからさぁ」


「うむ。まあ、この辺は見通しも良いし構わん」


「サンキュ」


というわけで、まだしばらくは見通しがいいのでジャネットさんも馬車の中へと移ってきた。


「こんにちわ」


「よう!乗り心地はどうだい?」


「とっても快適ですよ。ジャネットさんも御者席の隣でわかってると思いますけど、そこに加えてこっちはクッションとかもとってもいいです!」


「へぇ、そいつは楽しみだ。よっと…おおっ!こりゃ確かにいいねぇ。あっちの席もすごいとは思ったけどこっちは1段も2段も上だ」


「そうでしょ?こんな馬車がもっと広まってくれたらなぁ」


「確かにねぇ。乗合馬車での移動がもっと楽になるね。商人の荷馬車にだって、この席は無理でも馬車に使われてるやつを使って欲しいねぇ。それでこんなに揺れが少なくなってるんだろ?」


「そうですね。この馬車はそれも含めた専用設計だと思いますけど、それにしても今の馬車は揺れるし、衝撃も大きいですからね」


普通の馬車はお尻が痛いで済めばいい方で、中に乗っていると衝撃で頭をぶつけたり、横に振られて体をぶつけたりする人もいるのだ。まあ、徒歩より早く行こうとするのと、道が整備された状態を保ててないのも大きいんだけどね。


「あ~、しっかし、もう2日だよ。旅っていうのに楽してるねぇ~」


「そうですね。クレーヒルに着く時も馬車に乗りましたし、結構最近の旅は楽ですね~」


「たまにはいいと思おうか。色々あるしね」


「そうですね。そういえばリックさん元気かなぁ?もう2週間経ちますよね」


「げっ!あいつの名前なんて出さなくていいよ。それに2か月ぐらいは待ってろって言ってるから大丈夫だって」


「それじゃあ、次に会う時はかまってあげてくださいよ?」


「なんであたしが…」


「きっと2か月間、寂しく待ってますよ~」


「ちっ、しょうがないねぇ。でも、居たらの話だよ?どうせ次の町に行ってるだろうけど」


「どうでしょうね~」


なんて話をしていると、時間が経つのは早いもので一度休憩を取ることになった。




「この辺で一度休憩ですね」


「あれから、オークが三体出たぐらいで何事もない感じですね」


「いつもはもっと出るんですか?」


「毎回異なりますが、ここまで3度前後が多いですね」


「じゃあ、今回はラッキーでしたね!」


「ええ。騎士たちだけで移動する時は出てくれた方が食料確保の面から良いのですが、こうやって護衛をする時は安心できます」


「騎士さんたちってやっぱりみんな食べるんですか?」


「普段はそこまでではありませんが、行軍中などは各々によりますね。食べておける時に食べるものと少量を食べて休憩中などに保存しておいて食べるものですね。どちらがいいとも言えませんし、その時の隊長によっても判断が分かれるところではありますが」


「意外に緩いんですね。もっとがちがちに決まってるのかと思いました」


「俺なんかはいつも腹が減るんで、自前のものを持っていきますよ」


「それは楽しそうです!みんなで持ち寄ったりはしないんですか?」


「あ~、たまにはやりますけど、補助は出ないんであんまり。それに、持ち寄るほど美味いもんでもないんで…」


「アスカは忘れてるだろうけど、持っていくとしたら保存食だよ」


「えっ!?じゃあ、いらないです」


「いや、別にあげるって話でもないような…」


「おっと、時間です。あと3時間もあればディシュペアへ着くでしょう」




そして再び馬車は進み始める。この先は少し林もあったりして、魔物の数が増えるため、ジャネットさんも馬車を降りて今度はフランツさんと一緒に先頭だ。


「はぁ!」


「せいっ!」


「終わりですか?」


「ええ。全く、さっきまでとやはり違いますね。ウォーオーガ4体とは」


「ま、他の亜種がいなくてよかったじゃないか」


「そうだな。使うのもこん棒ぐらいであとは格闘だからな」


「じゃあ、こっちも埋めますね」


「ありがとうございます」


「いいえ。慣れてますから」


「しかし、こうしてみると本当に冒険者ですね」


「私ですか?まあ、これでもCランクですし」


「そういうこと、爆発力じゃ一番かもねぇ」


「そんな~、ジャネットさんには勝てませんって!」


「えっ!?僕は…」


「リュートは魔槍の貫通力だけはいいんだけどねぇ。単純に属性がね」


「精進します」


そして、また私たちは進んでいく。




「もう少しで町が見えてくるはずです」


「ほんとですか!よかった~。あれから2度も襲われるし、ちょっと疲れてたんです」


馬車に乗ってるだけと思われるかもしれないけど、こそっと探知魔法を所々で使ったりして、精神的に疲れていたのだ。町が見えるということはこれから敵に出遭うこともないだろう。


「ちょっとのぞいてみようかな?ああっ!?ほんとに見えた!おっきい町ですね」


「ええ。領都であることはもちろん、非常時には最前線になることも考慮されて堅牢な造りになっています。貯蔵庫もあり、男爵家の地方都市としてはあれほどしっかりした造りのものはありませんね」


「でも、それほど危険な領地なんですね。気を付けないと」


「ははは。まあ、書状を届けて帰るだけですから、1日じゃ何も起こりませんよ」


「まあそうですよね。明日は朝早いんですか?」


「流石に書状を届けてすぐに…とはいきませんので昼ぐらいまでは滞在する予定です。そこから再びカードルスへ向かい1泊。そして、来る時も休んだ村で1泊すれば悠々とクレーヒルに戻れますよ」


「無理のない日程だね。じゃあ、今日はゆっくり寝るとするか」


「そうしてください。向こうには向こうの騎士もいるし、我々もゆっくり休養を取りますので」


「ひと先ずここまでの護衛ありがとうございました」


「こらこら、まだ目的地についてないよ」


「そうでした。すみません」


「久しぶりの外出ですから長く感じておられるのでしょう。もうひと踏ん張りですから」


「はいっ!」



そのまま、町まで一直線!とはいかず、丘のようなところを少し回りながら進んでいく。


「ここも一直線ならもう少し早く行けそうですね」


「そうするとスピードが出過ぎて馬車は危ないのですよ。こういうカーブは事故防止もあるのです。特にこの丘からの道は緩やかですが、長いので減速しませんから」


「ん~、そう言われると確かに。私も御者とかすればそういうのがわかるんですかね?」


「そういうのは我々がやりますから、どうかアスカ様は馬車の中でおくつろぎください」


「はぁ」


確かに今はそれでいいかもしれないけど、旅の途中ならちょっとは役に立つかもしれないのにな。


「そういうのはあたしで間に合うよ」


「ジャネットさん、心を読まないでください」


「簡単に読まれる表情なのがいけないんだよ」


「う~、今は馬車の中だから顔は見えないのに…」


悔しさを顔ににじませながら馬車に揺られることさらに20分。とうとう私たちは目的地であるディシュペアへ着いたのだった。



「到~着~」


「はい、着きましたね。では、あちらに並びますのでお座りください」


「…はい」


セルバンさんに馬車に戻るように言われスッと戻り、貴族や御用商人向けの入り口に向かう。それもそのはず。予定通りとはいえ、時刻はもうすぐ18時。それも12月ということで結構辺りも暗いのだ。地方の町なら最悪、並んでいる人がいなかったら閉められていそうだ。


「ん?こっちは…フランツ様!」


「ご苦労だな」


「はっ!どうぞお通りください」


「ああ、通るぞ。その前に、一応許可証を確認してくれ」


「はい!」


はきはきと答える門番さん。騎士さんたちが何度もこっちに来ているため、顔見知りのようだ。すんなりと通してもらえ、いよいよ城壁の中へと入っていく。大げさに言ってると思うけど、ほんとに城壁のような堅牢さなんだよね。


「それで町に入ってきましたけど、ここからすぐに向かうんですか?」


「ええ。向こうの負担もありますから少しでも早くいきます。といっても、街中なので急ぎませんが」


「アスカ、言われてた紋章。準備しときなよ」


「そうでした。大事にしまってたので取り出してと…まだつけちゃいけないんだった。こっちのバッグに移すだけにしておかなきゃ」


マジックバッグに保管していたカーナヴォン領の紋章を取り出すと、すぐに普段用のバッグに移し替える。このショルダーバッグは外側にサンドリザードの皮をなめしたものを、内側はロックリザードの皮を使ったものだ。外は着色もしていてちょっとおしゃれな感じだ。う~ん、クロコダイルみたいな感じが近いのかなぁ?


「そろそろ着きます。準備をお願いします」


「分かりました!」


私は馬車の中でこっそり紋章の取り出し方を練習しながら、停車するのを待ったのだった。




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