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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
邂逅 カーナヴォン

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炊飯

「はいっ!今日もこの辺にしておきましょう。中々進み具合もいいわね。なんだかんだ言ってアスカって理解力が高くて助かるわ」


「そ、そうですか?」


「ええ、イリス様の言われる通りですよ。私たちも出来上がったものを拝見しておりますが、中々難しい場面も多く…」


出来上がっていく本はメイドさんたちが最初に確認している。あとで孤児院の子たちにも見せるがそれ以前に問題があるかどうかフィードバックをしているのだ。イリス様曰く『何分急ピッチの突貫工事だから挟める者は挟んでいくの』ということらしい。



「まあ、これを機に学校に通うのもいいんじゃないかしら?」


「学校ですか。数日ぐらいならですね。やっぱり先に旅を終えたいです」


「旅ねぇ~。自由に動けるのも特権だもんね。う~ん、ちょっと休憩しましょうか」


「はいっ!」


なんだか最近はこの瞬間が楽しみだなぁ。


コンコン


「アスカ様、ちょっとよろしいですか?」


「はい」


休憩をしているとドアが開いて、普段は見ないメイドさんが入ってきた。


「本日、商人ギルドへ伺いましたところ、アスカ様宛の荷物が届いておりました。こちらにお持ちしてもよろしいでしょうか?」


「はい。よろしくお願いします」


私の返事を合図に3人がかりで何かを部屋に運んできてくれた。


「ん~、これは?」


「こちらが目録になります」


「えっと、エヴァーシ村米…お米!」


「わっ!?何よ一体…びっくりするじゃないの」


「イリス様!お米、届きました!」


「えっ、届いたの?前に言っていた村で作ってたやつよね」


「はい。今日は絶対白米ですね」


「そうね…ん、ちょっと待って。開けてもいい?」


「いいですよ」


「あ~、これは精米してないやつね。玄米か、ちょっと炊くのは難しいかもね」


「えっ!?殻を向いたら白米が出るんじゃ…」


「残念。綺麗に殻をむかないと玄米になるのよ。栄養価的にはその方がいいんだけどね」


「そうなんですね。知りませんでした」


「まあ、店で売ってるやつももみ殻をむいただけのやつです、なんて書いてないしね」


「どうにかできませんか?せっかくですし、初めては白いご飯がいいんですけど…」


「しょうがないわね。木のうすってあったかしら?」


「ええ、食材の加工用に一つだけですが…」


「うう~ん、すぐに使えるか料理長に聞いてきてもらえる?何とか精米に使えると思うから」


「はい、直ちに」


「やり方知ってるんですか?」


「うん、まあね。ただ、簡単ではあるけど加減がね」


「うん?」


何かまだ問題があるのかな?そう思いつつもお米を厨房へと運んでもらい、準備を頼む。これで今日のお昼は…。


「アスカ様、顔が緩みっぱなしですね」


「よほど楽しみなのでしょう」


ウキウキで残りの時間を教科書作りに費やすといよいよ、お昼が近づいてきた。


「さてと、準備もできたと報告があったし、席を外すわよ」


「今日はもういいんですか?」


「ご飯炊くのも時間かかるしね~。あっ、おかずとの食べ合わせは期待しないでよ。急なことだし、和食ってあんまりないの。醤油はあるんだけど味噌は作りかけだし、あんまりおいしい料理が出てこないのよ」


「ああ、多分それ無理に使おうとしてるんです。私のところでもそうでしたから」


醤油やみそは味が濃いからあまり入れるものではない。でも、出汁自体が入ってないものだからついつい多く入れてしまうのだ。出汁があればよりおいしくなるんだけどなぁ。



「アスカ様、今日お召し上がりになるのはコメとか。どんな味なのですか?」


「エディンさんは食べたことないんですか?」


「はい」


「味と言われるとちょっと困りますね。コメはコメなので。ただ、おいしいですよ。品種によっては甘みもありますし」


「甘みですか…ちょっと気になります」


「イリス様がどれぐらい炊いてくれたか分かりませんけど、余ったら食べてみます?私もちょっとドキドキしてるんです。どんな品種かは食べてみないと分からないので」


「よろしいのですか?」


「はい。ミシェルさんもぜひ!」


「では、楽しみにしておきます」


ちょっといつもより長い休憩を優雅に過ごして、いよいよお昼になった。




「さて、どうなったかな~」


「あっ、おねえさん。今日はどうしたんですか?ウキウキしてますけど」


「そう?ちょっと今日は珍しいものが手に入って」


「そうなんですか?あとで見せてください」


「ふふっ、実はそれは食べ物なの。食卓に並ぶと思うから楽しみにしてて」


「それなら楽しみにしてます」


「あら、何の話?」


「イリス様!どうですか?」


「今は蒸らしてるところよ。多分うまくいったと思うわ」


「お母様、アスカさんの言っている食べ物はどのようなものでしょうか?」


「ああ、シャルは一度見たかもしれないわね。でも、多分あの時のよりずっとおいしいわ」


「私も食べたことがあるんですね。ますます謎です」


「まあ、もうすぐ出てくるから楽しみにしていなさい」


こうして少しの間待っているといよいよご飯が運ばれてきた。



「これは…コメですか?」


「そうよ。シャルは一度だけ食べたことがあるわよね」


「はい。でも、あんまりおいしくなかったです」


「あはは。あれは野生種だったからね。今も改良をしてる最中だけど、まだまだね。それじゃあ、待ちきれない人もいるみたいだし、食べましょうか」


「は、はい。いただきます」


手を合わせて早速、ご飯を口に運ぶ。ちなみにちゃんとどんぶりに入っていて、私の分に関しては自前のお箸を投入している。


「あ~ん。ん、もぐむぐ…おいしい!このご飯おいしいです!」


「そう?じゃあ、私も食べてみようかしら。…あら、確かにおいしいわね。これならそのまま育てられるかも」


「じゃ、じゃあ、シャルも食べてみます」


「フィルも!」


子どもたちも私がおいしいというのでお皿に盛られた分を口に運ぶ。


「わっ、確かにおいしい。それにちょっともちっとしてる」


「でしょ?これはいいわね。キヌヒカリみたいな感じかしら?」


「キヌヒカリ?」


「お米の種類よ。ちょっともちってしてるタイプのものよ。もち米じゃないけどね」


「もちごめ~?」


「つぶすとすっごく伸びる食べ物になるのよ。見つけたら一緒に作りましょうね」


「は~い」


「ん?アスカどうしたの」


「せ、せっかくですし、これをと思って…」


私はマジックバッグの中で大事に大事にしていたツボを取り出す。


「な、なによ。その真っ白い塊」


「驚かないでくださいよ。これは梅干しなんです。しかも、数百年物の」


「えっ!?そんなの存在するの?」


「はい。とある場所で見つけたブツなんですが、どうですか?今なら特別に一つだけ…」


「食べるわ。味はともかくとして、貴重な体験だもの」


「ウメボシとは?」


「梅って言う果実を塩漬けにしたものよ。保存食でご飯にとっても合うの。ただ、この真っ白な色からして塩分が多いからきちんと加減しないとだめね。アスカはどうしてたの?」


「もったいないからちゃんと食べてましたよ。でも、ご飯がないから最近はずっとちびちび舐めてましたね。まだ、4つぐらいしか食べてないんです。あまりにもったいなくて…」


「はぁ」


どうやら、メイドさんたちやシャルちゃん達にはわかってもらえないようだ。


「いいわね。一度ニュースで100年物は見たことはあるけど、食べたことはないのよね」


しかし、さすがはイリス様。興味津々のようで、すかさず私が置いた梅干をササッと自分の器に。


「あっ、塩気すごいですから注意してくださいね」


「分かってるって。それじゃあ、冷めないうちにもう一度…わっ!?本当に梅干しだわ!こんなに縮んでいるのに…」


「不思議ですよね。塩でつけてるのにほんのり甘みがある気がするんですよ。はぐ」


ちなみにシャルちゃんやフィル君も興味はあったが、さすがにこれは塩分が高そうなので、梅が手に入った時のお楽しみにするとのこと。減塩のものを作ってあげるそうだ。そして、イリス様から試してみなさいと言われたメイドさんたちは…。


「すっぱい!というか辛い?不思議な食べものですね」


「しかし、保存食としてはいいかもしれないですね。塩分が取れて保存も効く…」


「これ一つで、食も進みそうです」


などと、変わった見地で話をしていた。



「さて、あとは…これです!」


大方食事を終えたところで私は、昨日出し忘れていたアイスを取り出す。


「アイスね。そういえば昨日はすっかり忘れていたわ。出来はどうなの?」


「料理長さんが上手く作ってくれたのでおいしいはずですよ。じゃあ、まずはイリス様から」


「お母様ずる~い!」


「ちゃんとみんなの分があるわよ。じゃあ、早速」


一緒に運ばれてきた紅茶を横にイリス様がアイスにスプーンを入れる。


「おっ!ちょっと、柔らか目ね。もう少し硬いのかと思ったわ」


「カブ糖とシャルパン草の分量からですかね?」


「でも、食べやすいしよかったわ。では、一口…」


イリス様が口に入れるのをみんなが見ている。


「あ~ん。ん!?んん!?」


「ど、どうですか?」


「アイスだわ…これ」


「当り前ですよ、お嬢様」


「いや、そうじゃなくて、本当にアイスなのよ」


「私も食べていい?」


「いいわよ。アスカ、シャルとフィルの分もお願い。それにしてもアレンはかわいそうね。また視察だなんて」


「お父様残念~」


「ざんねん~」


「仕方ありません。まだまだ見て回るところは多いですから」


「はい。シャルちゃん達の分も用意できたよ」


「おねえちゃんありがとう!」


「ありがと~」


「いえいえ。お礼は料理長さんにね」


シャルちゃん達にはジュースが一緒に用意され、2人同時にアイスを食べる。


「「おいしい!!」」


「ふふっ、二人ともおんなじ反応だね。さて、私も食べようかな?」


自分の分も用意して口に含むと、口いっぱいにバニラ臭が広がる。うんうん、やっぱりアイスはバニラだ。まあ、チョコを見かけないので他の味を作るのが難しいだけなんだけどね。


「おいしいわ。これなら他のフレーバーと合わせてもいけそうね」


「他のフレーバーですか?」


「アスカは考えなかったの?」


「いやぁ、砂糖が高すぎて。アイスもほとんどキシャルのおやつで味も薄めなんですよ」


「そっか。まあこれからよ、これから。カブ糖のコストも下げるし、これで一気に世界を席巻よ!いや、席巻は不味いわ、領地がつぶされちゃうからできる限りね」


という感じでそれからは終始意気込んでいたイリス様。でも、一般のご家庭に冷凍庫は難しいと思うんだけどなぁ。




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― 新着の感想 ―
[一言] >「いいわよ。アスカ、シャルとフィルの分もお願い。それにしてもアレンはかわいそうね。また視察だなんて」 >「お父様残念~」 アレン「……!? なんだか物凄く損した気分になった。 なんだろう…
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