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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
邂逅 カーナヴォン

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カーナヴォン領

「さあ、出発するよ」


「は~い」


「野営地OKです」


無事に野営を済ませ、今日はいよいよカーナヴォン領へと入る。数時間順調に進むと何やら看板が見えてきた。


「えっと、『この先カーナヴォン領』こんな看板初めて見ましたね」


「ああ、わざわざ領地への入り口を書くだなんて滅多にないね」


「下には町への距離も書いてありますね。この距離なら今日中に着きそうです」


「ほんと!なら間に合うように歩こうよ」


「そうだね。強い魔物もいなくて安全とは言え、町の方が便利だし。食材の補充もしたいしね」


リュートの後押しもあり、今日は町に着くべくちょっとだけ早足だ。まあゆっくり行っても、16時には着くと思うけど。


「う~ん、道は平和そのものだね。結構、周辺も手入れされていて街道としてみてもかなりきれいですね」


「ああ、すれ違う乗合馬車も新しそうだったし、領主の手腕がいいのかもね」


「あっ!?」


「どうしたのアスカ?」


「リュートもほら」


「え~、ここでか~」


「なんだい2人で」


「多分この反応はオーク3体ですね。町に行く前で良かったです、これで余りませんよ」


「良いのか悪いのか…」


ピィ…


アルナも魔物が来るので私の元に戻ってきた。


「ほら、キシャルもアスカのところに行きな」


にゃ?


今日は珍しくやる気なのかキシャルは首をかしげると、ジャネットさんの肩に乗ったまま魔物の方へと向かう。


グゥ?


こちらの気配に気づかず、のっしのっしと歩いているオークに側面から近づくジャネットさん。


に~~


そして、キシャルがオークの頭に向かってアイスブレスを放つ。オークはたちまち凍り付き、そこへジャネットさんがスパッスパッと剣を振り、倒していく。


「やることがなかった…」


「まあ、Eランクの魔物だしねぇ」


「じゃあ、せめて僕が解体しますよ」


何もやることがなかった私たち二人は、穴掘りと解体を行う。


にゃ


「え?自分のおかげで倒せたんだから、コールドボックスにちゃんとしまっておいて欲しいって?まあ、キシャルの食べる量は知れてるしいいよ。リュート、お願い」


「分かった」


解体してもらった部位ごとに再びキシャルにブレスを吐いてもらい凍らせる。それをコールドボックスにしまい込んでいく。と言っても2kgほどだ。これぐらいなら冷凍室もいっぱいにならないし、問題ないだろう。


「あっ、アイスと場所入れ替えないとね。それと、葉っぱにくるんでおかないと」


血抜きはしたとはいえ、庫内清掃は大変だから葉にくるんで入れる。匂い移りを防ぐのにも有効だ。


「後は凍るまでは仕切り板を置いてと」


凍ってしまえば多少近づけても大丈夫だけど、凍るまでは離しておかないと。そう思って仕切りを追加する。


「アスカ、こっちはそろそろ終わりそうだけど…」


「私の方も大丈夫だよ」


再び進むと、町が見えてきた。


「町ですよ。早く行きましょう!」


「はいはい。のんびり行ってもいいじゃないか?」


「だめですよ。もうすぐお昼なんですから間に合うように着かないと」


「あ~、そういうことね。わかったよ。リュート行くよ」


「はい」


お昼の時間が終わるまでに何とか町に滑り込もうと、私たちはちょっと急いで門へと着く。




「はぁはぁ…」


「大丈夫アスカ?」


「だ、大丈夫。み、みんなは?」


「あんたとは体力が違うから大丈夫に決まってるだろ」


ピィ


「ア、アルナは走ってないよね…」


歩幅が私だけ違うので、ふたりが急ぐと小走りでは間に合わず、走るしかなかったのだ。


「ん?冒険者か」


「はい、旅の途中でして…」


「この領には長く滞在するのか?」


「多分…」


「それなら銀貨1枚で臨時通行証を発行しているが」


「臨時通行証ですか?」


「ああ。この領外に出るまで有効な身分証だ。見せるだけですっと通れるぞ。まぁ、冒険者は町への入場に金がかからんからあまり意味はないがな」


「それって出る時に回収されるんですか?」


「回収する場合もあるがそのまま持って出る場合は特殊なペンで印をつける。こういうペンだが」


そういうと、門番さんがそのペンを見せてくれた。ただ、見た目は普通のペンなのでどこがどう違うかはわからなかったけど。


「う~ん。私は記念に発行してもらおうかな?旅の証になるし」


「記念ねぇ。それじゃ、あたしももらっとくかね」


「じゃあ、僕も」


「変わったやつらだな。ほらよ。見せる時には自分の名前を書いておけよ。それと、名前欄の下に番号があるだろ?管理はそれでやってるから、番号にかからんようにな」


「はい、ありがとうございます」


そのまま門をくぐり町へと入っていく。


「えっと、案内板はと…ここはノースピークの町ですね。領内北限の町かぁ、わかりやすい名前ですね」


「そうだね。おっ、馬車乗り場があるね。先に行ってみるか」


「ご飯食べたら行きましょう」


「はいよ」


まずは昼メニューが終わる前に腹ごしらえだ。結構お昼の時間が終わると閉まる店も多いからね。





店を選ぶ時間もあまりなかったので適当に選んだ店へと入る。ちなみに選んだ理由は小型従魔OKの看板があったからだ。


「いらっしゃいませ~、決まりましたらお声がけください」


「は~い!ん~、何にしようかなぁ?」


メニューを見るとおすすめの印があった。


「充実野菜定食かぁ~。これにしようかな?」


「アスカはおすすめのやつにするの?」


「うん。何が出るか楽しみだし」


「あたしはこっちの大盛り肉野菜にするか」


「僕もそれにしようかな?せっかく町で食べるんだし」


「お決まりですか~?」


「はい。私は充実野菜定食で。従魔用に野菜と肉を少しもらえますか?」


「あたしは大盛り肉野菜ね」


「僕も同じものを」


「わかりました~」


「明るい雰囲気だし、いいお店だね」


「そうだね。掃除も行き届いてるみたいだし、きっとお昼の後にも頑張ってるんでしょうね」


そんな話をしていると、料理が運ばれてきた。


「お待たせしました~」


私の充実野菜セットは素揚げ野菜が3種類にサラダとパンとスープに、小さいながらも野菜がたくさん使われているキッシュが出てきた。アルナにはキッシュに使うであろう野菜を細かく切ったものが、キシャルには素焼きした肉が運ばれてきた。


「かわいい子たちだね~、ゆっくり食べてね」


ピィ!


にゃ


目の前にお皿を置かれてアルナたちも嬉しそうだ。


「はい、こちらは大盛り肉野菜の方ね」


「ありがとさん」


「ありがとうございます」


ジャネットさんとリュートの頼んだ大盛り肉野菜はちょっと大きめのパンに肉と野菜の炒め物。そこにスープが付いてきている。野菜炒めにはあらかじめタレがかけられているようでおいしい匂いが立ち込めている。


「じゃあ、いただきま~す」


「いただきます」


「ん、おっ!美味い。フィアルのところほどじゃないけど、結構いけるね。このパン」


「ほんとですか?じゃあ、私も…」


ジャネットさんの発言を受けて、私もパンをちぎって食べる。


「わっ!?ほんとにおいしい!普通のより柔らかいですね」


「あら?他領の方ですか?このパンは最近登録された作り方なんですよ。領主様が一刻も早く導入するようにって。ここ10年間は使用料も補助が出るからうちでも導入したんですけど、すぐに人気になっちゃって」


「わかります。こういうのがパンですよね」


「そうですね~。今じゃ常連さんも前のは何だったんだ?な~んて言ってます」


「それにほんのり甘いですね」


「わかりますか?最近、この領内で大量に作り始めたカブ糖っていうのをちょっとだけ混ぜてるんですよ。これはうちが設計登録してるんです」


「それでなんですね。おいしいです!」


「ありがとうございます。それではごゆっくり~」


そういうとお姉さんは軽やかに他のお客さんのところに行った。私はおいしかったパンを食べつつ、メインの野菜にも手を付ける。


「ん、んんっ!?素揚げが甘くておいしい!こっちのサラダも!この辺は農業が盛んなのかな?」


穀倉地帯が広がっていると聞いたけど、村なんかで見られるぐらいの新鮮さだ。特にこのカボチャみたいな野菜の素揚げがいい。


「こっちのキッシュはと…これもいい味!ほのかな甘みとキッシュの食感がたまんないなぁ」


「アスカ、静かに食べなよ…」


「まあまあ、ジャネットさん。実際にこれおいしいですよ。肉はもとより野菜もしなびた部分はないですし」


「確かにねぇ。パンもちゃんとしたのだし、この領地自体のレベルが高いのかもね。港町で聞いた限りじゃ、国内のかなりの食料をまかなう地域みたいだし」


スープも美味いねぇと次々と食べ進めるジャネットさん。私も食べないと最後になっちゃう。


「でも、これだけ出てきて大銅貨1枚と銅貨2枚だなんてお得ですね」


「全くだ。リュートどうした?」


「いえ、この値段とこの味を考えるとどうやったら提供できるのかなぁって」


「そんなん後で考えろよ。冷めるぞ」


「あっ、そうですね」


と言いつつも、気もそぞろに食べるリュートだった。



「あ~、おいしかった!」


「そうだねぇ」


「もう~、リュートまだ考えてるの?」


「うん…」


「ほら、時刻表見に行くよ!」


まだ考えているリュートを引きずるように連れていき、馬車乗り場へと着いた。


「わぁ!こんなに詳しいんですね」


時刻表は適当かなと思ったら、1週間分の予定に受付場所や乗り込むおおよその時間、目的地までの所要日数など多くのことが見やすく書かれている。


「特急まであるんだ」


特急馬車は週2回だけ。だけど、料金とかは高くて停車場所も少ないみたいだ。


「次の便は…夕方ですね。今日の夕方に出発して今日の夜は野営。そして、次の日には村に着く予定になってますね」


「あら?馬車の利用ですか?」


「はい。こんなにしっかりした時刻表は初めてです!」


「そうよね。こんなにちゃんとしてるのもここだけよね。なんでも今の領主様が導入した制度なのよ。町村駅制って言って必ず2日に一度は町か村に着いて休めるし、そのおかげで護衛も万全の態勢で臨めるから、みんな安心して乗れるの」


「料金も大して高くないですね」


「ええ。次の駅まで銀貨一枚、そこに護衛費が1日当たり大銅貨3枚よ。ただし、2日かかる場所へは大銅貨5枚になるの」


「へぇ~、端数調整ですか。計算が楽でいいですね」


「そうなの!渡された切符で車長も金額がすぐにわかるし便利なの」


「お姉さん詳しいんですね」


「こう見えて私も受付をやっているのよ。今日は非番だけどね」


その後もお姉さんに詳しく話を聞き、私たちは切符を購入したのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] >最近、この領内で大量に作り始めたカブ糖っていうのをちょっとだけ混ぜてるんですよ  ん?  ああ。  これは通称サトウダイコンである、甜菜(てんさい)から作った甜菜糖ですね?
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