表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
巨大北方都市ラスツィア

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/627

いざ北へ

 翌日、ラスツィアを目指して出発する私たちのゲンガル滞在最終日の朝。


「アスカ、今日はどうするんだい。明日出発だから細工かい?」


「いえ、この期間中に結構作りましたから、今日はお休みです。といっても仕入れには行きますけどね」


「仕入れか……あたしも同行しようかな」


「ぜひ!」


 という訳で魔道具屋まで来たのだけど……。


「ふむ、水の魔石中心かと思ったらそこそこ幅広いね」


「お客様は剣士のようですね。こちらはいかがですか? 多少の魔力を込めて投擲後に速度を増すナイフです」


「どれ」


 ジャネットさんがナイフを持つ。見た目はナイフというよりクナイに近いかな?


「へぇ~、思ったより重たいんだね」


「はい。ここに速度上昇の付与がかかっており、力を入れなくともそれなりの威力になりますよ。ただ、使い捨ての魔道具になりますが……」


「使い捨て? 何でですか?」


 見た感じ、そこそこしっかりした作りだと思ったんだけどな。


「魔石の方が使い捨てなんですよ。値段は銀貨六枚ですが、一度発動させると重たいナイフですからね。形もちょっと変わっているので、普段使いには向きませんし」


「なるほどねぇ。ん? この魔石は後付けかい?」


「ええ。型というかナイフを作って、その中のいい出来のやつに魔石を付けてるらしいですよ。うちも仕入れがこの町じゃないんで詳しくないんですけどね」


「よし! 二本ぐらい買うか」


 すぐにジャネットさんがナイフ二本の購入を決める。


「良いんですか? 重たいし使い捨てなんですよね?」


「なぁに。使い終わったらアスカにまた違う魔石をはめてもらうさ」


 ああ、そういうことか。後付けの魔石ならそういうことも可能なんだ。私も機会があったらそういうのも考えてみよう。


「そういや、ちっさい方は魔石を買っていったよな。いいもん出来たかい?」


「まあまあですかね? こういう形になったんですけど……」


 私は最初に作った、ちょっと中途半端なブレスレット型の魔道具を見せる。


「これ、どう使うんだ?」


「魔力が低い人は水の生活魔法がここから出ます。魔力がそれなりにある人はアクアボールまでなら出せますよ」


「ほう? まあ、魔道具だと出力が一定だから、使いやすくはありそうだな。どうだ? うちで売ってみないか?」


「う~ん、でも明日には町を出るんですよね」


「なら、買取はどうだ? うちもちょっと手の違うやつを置いとくと見栄えがいいからな」


「ん~、試作品なのであまり出したくないんですけど、余ってますし使い道もありませんしね。いいですよ」


「じゃあ、金貨四枚だな」


「良いんですか? あまり使い道はありませんけど……」


「魔道具だし、水の魔力が必要といってもそこそこ使い道があるからな。そうそう、アドバイスするなら回復魔法を込めるのもいいぞ。ちょっと消費は高くなるだろうが、攻撃魔法と回復魔法だと回復魔法が得意な奴の方が少ないからな」


「やっぱり戦えないからですか?」


「それもあるが、回復が得意ってことは治癒師とか教会に入って生活ができるからな。わざわざ冒険者になるなんて必要がないのさ」


 なるほど、知り合いの回復寄りの水使いの人は剣士の人と一緒に行動してたけど、そうじゃない人は別の道もあるんだね。おじさんに感謝の気持ちも込めて魔道具を売ると、折角なのでそのお金で水の魔石を買い足した。

 もちろん値段的に私の魔道具に使ったやつよりもいいものだ。これでまた、ティタにお仕事してもらおう。


「もう買うものは良いのかい?」


「はい! 後は食料とかですね。次の村には何時着きます?」


「ん~、一日あれば着く予定だけど、向こうじゃ食材を買えるかは分からないよ。別に店とかもないだろうしね」


 そういえば、ワインツ村も宿以外の施設はなかったし、宿もヘレンさんの意思でやってたみたいだったしなぁ。貴重な情報を手に入れ、日持ちしそうな食材も買い込んで私たちは宿に帰った。



「さて、忘れ物はないよね?」


「うん。僕はばっちりだよ」


《ピィ》


「ティタもかくにんした」


「なら安心だね。行くよ」


 私たちは北にある門を出て北上する。


「ここからどうするんでしたっけ?」


「まずはまっすぐ北にだね。東は草原、西は砂漠。どっちに言っても夜は危険だから、この辺を歩いていくのがいいと思うよ」


「とはいえ、こっちも草は生え放題ですし、いい道とは言えませんね」


「だけど、ところどころ木もあるしこれがましなんだよねぇ」


 そう言いながらジャネットさんはたまに剣を振って草を刈っている。そんなことに剣を使っていいんですかと聞くと、処分しようとしている剣だからいいんだって。

 こうして進んでいく私たちだったけど、流石に未整備の道だ。今までより遅いペースで進んでいくことになった。


「ん~、疲れましたね~」


「よく言うよ。草を刈ってたのはあたしとリュートじゃないか」


「だって私、剣振れませんもん」


「まあ、使い慣れていないアスカが使って怪我しても駄目だしね」


「そういうリュートも普段は使ってなかっただろ?」


「でも、ノヴァと一緒に練習してたこともありますから」


「それでもうすぐ夕方ですけど、村はまだなんですか?」


「もうちょっと北にある川を越えたらすぐだよ」


「はぁ~い」


《ピィ》


「もうちょっとだって、ありがとアルナ」


 アルナの励ましもあり、再び歩き出す私たち。でもアルナがちょっとうらやましい。休憩中は思いっきり遊んで、終わったら私の肩に乗ってるだけだもん。


「川はこれですかね?」


「ついでにちょっと見ていくかい?」


「そうですね。薬草だけでも採っていきましょう」


 村は川から十分ぐらい先とのことらしいので、先が見えた私たちは、ちょっとだけ寄り道してリラ草などを採った。



「あっ、村が見えてきましたよ」


 茜色の空が闇に変わっていく頃、ようやく村が見えた。村には柵が施されていた。ワインツ村みたいな簡易の物ではなく、丈夫な木で縦横に伸びており、外側に向かって斜めに鉄の穂先のような物もついている。魔物対策はしっかりしている様だ。


「ん? お前ら村に何のようだ?」


「ああ、ちょっと北に用事があってね。村には特にないけど、宿というか泊まれるところでもあるかい?」


「泊まれるか……。物置小屋が一つ空いてるが、村長に聞いてみないと分からんな」


「村長に話を通してもらえるかい?」


「それは構わんがもうすぐ見張りの交代でな。交代の奴が来ないとできない」


「分かったよ」


 村の入り口で二十分ほど待つと交代の人が来た。


「ん、知り合いか?」


「いや、一晩泊まりたいそうだ。小屋が使えるか村長に聞いてくる」


 こうして村長さんの家に案内された私たちは無事に小屋を借りることが出来た。もっとも、借り賃の代わりに食料をちょっと渡したけどね。まあ、屋根もあるし見張りも立てなくていいからしょうがないよね。


「んじゃ、あたしは先に寝るとするか。リュート、見張りは頼んだよ」


「はい。食事は簡単な物を作って置いておきますね」


「へっ? 見張りは村の人がいるんでしょ?」


「まあ、そりゃいるけどさ。村の見張りなんて当てにならないし、魔物が抜けてきたら面倒だろ? それに村だって絶対に安全とは限らないよ。あたしたちが渡したブルーバードの肉を見た村長、嬉しそうだっただろ?」


「そうですね」


「ということはこの辺じゃ出ないか、ろくに狩れないって訳だ。見張りもDランク程度の実力だろうね。収入が苦しくなって旅人を襲わないとも限らないよ」


 ジャネットさん曰く、こういう村を目的地にする旅人はいないので、足がつかないように襲うこともあるそうだ。生活が苦しくなっても、領主様も簡単に補助金をくれる訳もないし、そういう村もあるらしい。


「パッと見ただけで信頼できるほど情報もないし、見張りは当然だよ。もちろん、目立ってやったら反感を持たれるから分からないようにだけどね」


 という訳でリュートの見張りも外ではなく小屋の中でだ。ただし、いざという時には脱出できるように反対側のところに魔道具を置いて、壁を壊せるようにしてある。


「それじゃ、アスカお疲れ様」


「お疲れ様。でも、本当に私は見張りしなくても大丈夫?」


「まあ、僕もジャネットさんも体力はあるしね。ゆっくり寝ときなよ」


「分かった、ありがとう。それじゃ、おやすみ。アルナとティタもね」


「おやすみ」


《ピィ》


 こうして町を出て一日目、私たちはゲンガル北の村で一泊したのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
村人に襲われる事も想定するのはさすがジャネットさんだな~ 「綺麗な女2人にひょろっこい男1人、男を不意討ちすりゃ残るは上玉の女だけだ!こりゃ楽しめるぜグヘヘ」とか企む若い衆が居ないとも限らないもんね…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ