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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
海上の日々

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VS海賊

アスカが船長と一緒にみんなに海賊の位置を知らせに言っているころ甲板では…。


「リュート、緊張しない。ご主人様のために頑張るのよ」


「う、うん」


「さて、ちょっと癪だけど魔法をかけてあげるわ。アクアウォールを改良したものよ」


「改良?」


「そう。前面に出す水の壁をあなたの正面に密着するように出すわ。これでナイフが刺さっても致命傷にならないわ」


「ありがとうティタ!ん?待って。致命傷にならないって…」


「当たり前でしょ!傷ができないのに相手をだませるわけないでしょうが。そのぐらい我慢しなさい」


「ええ…他人事だと思って」


「いざとなったら助けてあげるから。私はあそこにいるわ」


そういいつつティタが指さしたのは船内への入口の上だった。手前にはちょっとした飾りがあるのできっとその裏に隠れているつもりなのだろう。


「結局自分は安全なところにいるんだね」


「私が傷ついたらご主人様が悲しみますから」


「いや、まあそうだろうけど…」


アスカはティタに命の危険が迫った時も無茶したからなぁ。それで今はこんな小さい姿のティタになってるんだけど。そんな会話をしているとアスカが戻ってきた。


「みんなに伝えてきたよ。リュート、ティタが何かしてくれるみたいだけど、ケガしないでね!」


「うん。アスカこそ気を付けて」


「ありがとう。それじゃあ、もうすぐ海賊が来るから戻ってるね」


「じゃあ」


アスカと別れて僕も覚悟を決める。


「はぁ、ケガしないって言ってたけど、嘘になっちゃうな」


ティタの言う通りにするのでケガするのは避けられない。アスカ、怒らないといいけど。


「おっと、船が来たみたいだ。知らないふりをしないと」


僕は身構えないように視線を船の方から外してその時を待った。




「リュート大丈夫かなぁ?心配だな」


「まあ、心配な気持ちはわかるけど、信用もしてやりなよ」


「む~、でも心配なんです」


「はいはい。それなら、すぐに確認できるようにさっさと海賊どもをのしちまうよ」


「はいっ!」


「おやおや、勇ましいお嬢さんだ。ジャネット、君も結構言うね」


「はんっ!海賊ごときでいちいちビビってられないからね。あんたもしっかりやりなよ」


「もちろんさ。今回の報酬も楽しみだし、抜かりなくこっちもやるとするよ」


「姐さん!こっちは任せてください!」


「誰が姐さんだい全く…」


そんな話をしているとコンッという小さい音がした。


「どうやら来なさったようだよ」


「みたいですね」


いよいよ、海賊が乗り込んできたようだ。




「お前ら行くぞ」


「へい」


声を潜め、船の様子を確認しながら乗り込む。すると、マストのところに一人見張りがいるのが見えた。


「情報通り一人のようだな。やれ」


「へい!」


手下に弓を構えて射させる。こいつは船上でも相手を狙える弓の腕が持ち味だ。


ドスッ


「うっ…」


狙い通り胸に命中すると、見張り役の奴は倒れた。甲板に向かって血も流れている。


「確認しやすか?」


「あれで生きていても声は出せん。放っておけ!ただし、こっちの船の見張りのお前は見てろ」


「了解です」


「じゃあ、行くぞ!」


いよいよ今日の獲物を狩る時が来た。新入りの情報によれば今回は貴族らしいガキもいるらしい。どこの貴族か知らないが、金をむしり取るなり売るなりすればかなりの額になるだろう。


「3等船室の方は?」


「こっちからドアをたたいて知らせる寸法です。ただ、こっち側からだと回り込まないといけませんぜ」


「ふむ…お前らで行ってこい。向こうの見張りに気づかれるへまはするなよ?」


「へへっ、あっちの方は先に下がらせていますんで」


「ほう?買収でもしたのか?」


「ちょっとギャンブルで負かせちまえばすぐでした。そいつもまだ1年ぐらいの奴ですがあの新人よりは役に立ちますぜ」


「じゃあ、そっちは任せたぞ。残りはみんなこっちだ。歯向かうやつは容赦するな!」


「へいっ」


トトトッと音がして人の波がなくなった。


「どうやら行ったみたいだね。悪いけど、奥の見張りの人は容赦できないな」


胸に刺さった矢の痛みに耐えながら風の魔法を放って見張りを倒す。


「ぐえっ!」


「お上手ね」


「ティタは悪いけど海賊たちの船から他の船員が出てきたら対応お願い。逃げなければいいから」


「わかったわ。遠慮なくやらせてもらうわね」


「僕はアスカと合流するよ。海賊の船長を確保するのが一番だと思うし」


ティタにそう告げて僕は胸の矢を抜き、合流するために船内に戻っていった。



リュートが動く少し前、私たちというと。


パタパタ


「来たね」


「みたいですね」


「頭、順調ですぜ。ここを降りればもう1等船室です」


「そうか…だがやけにうまくいっているな」


「あの新入りが思ってたより使えるやつなんですよ!一気に行きましょうや」


「ああ、そうだな」


海賊の船長も納得したのか、そのまま歩みを進めてくる。


「あとはこの階段を下りたら1等船室ですぜ!」


「降りたらすぐに見張りを叩けよ?」


「へへっ、わかってますって」


「あんたにゃもう無理だけどね」


ズシャ


「へ?」


階段を降りようとした海賊の一人を真横のスペースから躍り出たジャネットさんが一閃する。


「か、頭!」


「あの新人、漏らしやがったのか!」


「さて、どうだろうねぇ?」


「構うことはねぇ!相手は一人だ囲め!」


「はんっ!やれるもんならやってみな」


海賊たちがジャネットさんの周囲に集まったところで私は出て行って魔法を使う。


「いけ、トルネード!」


ジャネットさんを中心に竜巻を発生させる。威力も調節して天井に当たらないように弱めたものだ。


「うわっ!?」


「なんだぁ!?」


突然の突風に海賊たちは次々通路の壁にぶつかっている。


「さあ、どいつからだい?」


ジャネットさんは態勢の崩れた海賊を近い順から倒していく。


「こいつら、船員じゃねえ。冒険者どもか!あっちのガキを狙え!魔法さえ使わなきゃ何とかなる」


ピィ!


にゃ~


こっちに向かってくる海賊に対して、アルナとキシャルが風魔法と氷のブレスで攻撃する。


「ぎゃあ!なんだ!?」


「あ、足が凍る…寒い…」


「くっ!こいつら強えぇ。応援を連れてくる!お前らはなんとかして1等船室の奴を確保しろ!」


「へ、へいっ!」


「アスカ、頭は逃げる気だよ」


「させません!みんな行くよ!」


ピィ


にゃ!


どこにいたのかまだ海賊たちは10人ぐらいいる。このままじゃ、海賊の船長に逃げられちゃう!


「あっ、おい!」


私は風の魔法で一気に海賊の手下を抜き去ると船長と残り2名の海賊を追っていった。



「アスカのやつ行っちまったよ。やれやれ、こいつら全部をひとりは時間がかかるねぇ。ま、リックの腕でも試すとするか」


あたしはわざと通れるように位置取りを変えて突っ込む。まあ、ここで3,4人斬っておけば後で文句も出ないだろう。


「ぐっ!こいつめ」


「う、後ろが開いたぞ!俺は行ってくる」


「俺もだ!!」


「ま、待て!」


「あたしを相手によそ見とは余裕だねぇ」


先に進むという逃げ道を見つけた海賊たちは、連携を乱してしまい簡単に隙ができた。


「はぁ!やっ!」


そこでとりあえず目についた奴を斬る。


「まあ、こんなもんか。アスカに遅れるのもよくないし先を急ぐか」


残っていた4人の海賊には目もくれず、あたしはアスカの後を追う。



「はぁはぁ、どういうこった。商人の護衛でももう少しましな強さだぞ!」


「頭、どうしやす?」


「数集めても勝てねぇ。さっさとずらかるぞ!」


「へい!」


「待ちなさい!」


海賊に追いついた私は声をかける。ここで捕まえなきゃ!


「ちっ、もう追いついてきやがったか」


「アスカ!」


「リュート無事だったんだね!」


「あの船員生きてやがったのか!?しょうがねぇ、こいつで…」


海賊の船長は懐から黒い石を取り出すとリュートに向かって投げる。


「あれは…魔石!?リュート防いで!」


「うん!」


ドンッ


リュートが風の障壁を作って魔石の暴発の衝撃から身を守る。しかし、その爆発により視界が妨げられた。


「前が見えない。ウィンド!」


爆風で遮られた視界を確保すると、海賊の手下たちがこちらに向かってきていた。


「おらぁ!」


「くっ!邪魔」


私はとっさにマジックバッグから弓を取り出して相手のショートソードを弾くと、もう一人にはキシャルがブレスを吐く。


「な!?動きが…」


「くらえ!」


そこを逃さずリュートが攻撃して気絶させる。


「こっちも!ウィンド」


「ぐぇ」


残りの一人も風を圧縮してぶつけ、意識を奪う。


「船長は?」


「ごめん、逃げられた」


「すぐに追おう!」


「わかった」


リュートと並んでいるとふと気づく。


「リュ、リュートケガしてるの!?」


「あ、うん。ちょっとね」


「ちょっとじゃないよ!海賊たちだね、絶対捕まえるんだから!」


少しスピードを上げて甲板に出ると、海賊の船長は自分の船に戻ろうとしていた。


「させないわよ」


「わっ!?どこから水が!お前ら、全員出てこい。ずらかる前にあいつらを倒すぞ!」


「「へ、へいっ!ですが、残りの奴らは?」」


「中に強いのがいてありゃあ無理だ。それより、この水を何とかしろ!」


「わかりやした。アクアウォール!」


「む、小癪な」


「ティタ、大丈夫?」


「ご主人様、私は大丈夫ですのであの海賊を。あれが邪魔で本気で放ったら船に穴が開いてしまいます」


「わかった!行くよリュート!」


「うん。僕が注意を引きつけるね」


リュートが私の右にずれて回り込む。海賊船から新たに出てきた海賊たちはそれを見て、リュートの方へと向かっていく。私はそれを確認したところで、アクアウォールを使っている術者めがけて魔法で攻撃した。


「これなら!ストーム」


手のひらから巻き上げた嵐でアクアウォールをぶち破り、そのまま術者を空中に投げ出す。


「うわぁ~!」


「ティタ!これで邪魔者はいなくなったよ」


「ご主人様、ありがとうございます」


さあ、残る海賊はあと少し、絶対に船長だけは捕まえないと!




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[気になる点] この話にも、船に乗り込むのを上陸
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