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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
新大陸を目指して

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トワイラストへ

そして次の日、私は朝ごはんを食べてデッキにいるのかというと…。


「わぁ!こっちもすごいです。これでも魔道具なんですか?私が見たことある魔道具ってほとんど無骨なもので…」


「まあ、大体は冒険者が使うしね。商人とか貴族だと音を消したり、身を守ったりするぐらいなのかな?」


部屋に突撃してきたヴィスティちゃんと話していた。1等船室同士、昨日仲良く話していたし部屋を紹介しても問題ないと思われているみたいだ。


「他に見たことあるのは…指輪ですかね?」


「指輪。ああ、あのごついやつだよね。人を殴るのかって思っちゃうよね」


貴族の人はパーティーなどで身を守るために魔石を各指に付けているそうな。でも魔石ってサイズもそこそこあるから全部の指に付けるとナックルみたいになる。あんなのを口元に寄せるんだからそりゃあ、きらっきらだろう。今回販売するブレスレットは一つだけだけどスマートに着飾れるし、喜ばれるといいな。


「殴るって…まあ、殴れるとは思いますけど。それにしても他の細工も基本は魔道具に出来る作りなんですね!」


「ほんとに普通の以外はね。それ以外だと昨日のエンケルディアに付けてあげたブレスレットかなぁ?あれは珍しく、宝石も魔石も付けない細工だけのタイプだから」


この世界は危険がいっぱいだ。町から隣町まででも魔物が出る可能性がある。だから、できるだけ守り石や輝石があることを知ってからは、はめ込める作りにしていた。ただ、ブローチとかならいいんだけど、確かにブレスレットや髪飾りはデザインが限られてしまうのがネックだ。


「ヴィスティちゃん、ありがとう!おかげで新しいデザインが描けそうだよ」


「そうですか?よかったです。それにしてもこれぐらい在庫があればお店を持てるのでは?」


「今は旅をしてるからね。見せてるのは各地の細工を取り扱ってる店に卸す分だよ。いつか店を持てたらとは思うけどね」


「できたら絶対見に行きますから!」


「ありがとう」


「そんで、お嬢さんは反省したのかい?前はいちゃもんつけてきてたのに」


「そ、それは…」


「ジャネットさん!またそんなこと言って…」


「いや、今度からはアスカの商品も扱うんだから、そりゃあそれなりの対応をしてもらわないとね」


「ごめんなさい」


しゅんとするヴィスティちゃん。私は別にいいのにな。


「よろしい。まあ、頑張りなよ。商売ってのは大変だからね。アスカみたいに無茶しないように」


「は、はい」


普段護衛の冒険者以外とは話をしないせいか、ちょっと緊張気味のヴィスティちゃん。


「そんなに緊張しないで。あっ、これでもつけてみて」


私はごそごそとネックレスを取り出してつけてあげる。


「これは?」


「ヴィルン鳥を模した羽のネックレスだよ。ちなみに裏側にはこっそりアルナの羽をつけてるよ」


ピィ!


いつの間に集めたんだとアルナ。


「いや、ふわふわしてるし、ミネルの羽も人気だったから…」


ヴィルン鳥はブランド鳥なのだ。それに羽根つきの方がステータスアップの付く可能性が高くなるように感じるんだよね。まあ、運が3~5上がるぐらいだけど。それでも人気なんだよね。


「かわいい!それに小さいのにきれいです」


「まあ、ヴィルン鳥の羽というかアルナの羽モチーフだからね。あんまり変なものも作れないし」


ピィ~


じゃあ、その分ご飯のグレードを上げろと主張するアルナ。まあ、一理あるかな?


「分かったよ。それじゃあ、今日のお昼はちょっと豪華にするね」


ピィ!


夕食も!というアルナ。よかった~、一日で済んで。流石に毎日って言われると、食費がね。Cランクの薬草は鮮度も怪しいのがたまにあるから選別しないとあげたくないんだよね。となるとBランクかAランクになるんだけど、旅に出てからはあんまりルーン草も採れてないからたまに買っている。結構高いし、Aランクの購入になると低ランクも押し付けられるから困るんだ。


「これで運が5ぐらい上がるんだから不思議だよね~」


ピィ~


「えっ!?」


私とアルナがほんわかしているとヴィスティちゃんが驚いたような声を上げる。


「これって運が上がるんですか?」


「一応ね。でも3から5ぐらいだよ?上がる数値もまちまちなんだ」


いくつか一度に作っても一つだけ作っても数値が安定しないのでよく理由もわかっていない。細工部分を頑張ったやつが3しか上がらなかった時はちょっとへこんだな。


「ひ、ひとつだけ買えませんか?お父様にあげたいんです」


「それはいいけど、どれだけ意味があるか分からないよ?運自体よくわかってないパラメータだし」


「構いません!商人はことさら運を気にしますし、自信にもつながるんです。1でも上がるなら取り合いですよ!」


ゲン担ぎってやつかな?実際にパラメーターも上がるから説得力が付くのか。


「一応、今3つあるからお父さんが来たら渡すね。ただ、店では売らないでね。効果を知られると依頼が来ちゃうから。あんまり同じデザインのは作りたくないの」


「分かりました。でも、売れるなら在庫を持たないんですか?」


「やっぱり細工師としてはね、できるだけ新しいものを作っていきたいし、買ってくれた人に満足して欲しいんだ。それが、いくつもあるっていうのはね…」


「売った後のことも考えてるなんて、ますます尊敬します」


「あはは」


ただのわがままなんだけどな。そんなに評価してもらえるのはうれしいけど。


「盛り上がってるとこ悪いけど、そろそろ昼だね。アスカはどうするんだい?」


「う~ん。エンケルディアにご飯をあげないといけないからデッキに行きます」


「はいよ」


「私もご一緒します」


「それじゃあ、リュートと一緒に食べてきますね」


「おう、行ってきな」


ジャネットさんは昨日読めなかった本の続きを読むので、お昼も部屋で食べるらしい。リュートは料理を手伝っているわけではなく、念の為に見張りをしている。



「リュート!お昼一緒に食べよう」


「あ、アスカ。僕は後にするよ…」


「えっ!?どうしたの?顔色悪いけど」


朝は平気そうに見えたのに。


「昨日の日中は揺れなくてこれなら大丈夫かと思って夜は薬飲まなかったんだ。それで朝から気分悪くてね。朝には飲んだんだけど」


「ああ、クルーゼス近くの川は流れも緩やかだし、支流も少ないのよ。昨日の深夜ぐらいからは支流も合流してくるから結構揺れるわよ」


「それは早く言って欲しかった…。景色を見れば何とかなると思ったけど、ちょっと寝てくるね」


「おつかれ」


とぼとぼと部屋に戻っていくリュート。ほんとに気分悪いんだな。大陸を渡る時は大目に薬を作ってあげよう。


「さて、2人になってしまいましたが、食事にしましょう!」


「そうだね」


メニューは格段変わったものがあるわけではなかったが、景色もよくて十分楽しい昼食だった。食事が終わるとエンケルディアに構っていたアルナが帰ってきた。


「アルナもお昼にする?」


ピィ!


「それじゃあ、エンケルディアさんたちにも伝えてきて。まだご飯はあるから」


ピィ


分かったと返事をするアルナ。すぐにエンケルディアの親子を連れて戻ってきた。


「うわっ!?飛んだぞ」


「あわてるな!」


「しまった、先に船員さんに言っておけばよかった」


まあ、済んだことは仕方ない。気を取り直して昨日のようにシートを敷いてご飯を取り出す。


「はい。アルナはこっち、エンケルディアたちはこっちに出していくから食べてね」


アルナもエンケルディアたちもご飯を出すとばくばく食べてくれる。


「ヴィスティちゃんもまたあげてみる?」


「いいんですか?じゃあ…」


ヴィスティちゃんも切ったサンドリザードの肉をあげる。それをエンケルディアは喜んで食べている。聞けば普段は山脈からあまり離れないので、そこそこ珍しい肉になるそうな。別に縄張りがあるわけではないけど、大きいから目立つため、人が警戒してきてうっとおしいからだって。魔鳥も大変だ。




食事も終わりデッキでゆったりしていると、またエンケルディアたちがこっちに来た。


ピィィィィーーー


「えっ!?もうすぐ、トワイラストに着くの?そっかぁ、もうお別れなんだね。元気でね!」


「次会う時は私もご飯を用意しておくから!」


私とヴィスティちゃんに見送られ2羽のエンケルディアが船から飛び立っていく。青空に真っ黒の羽が映えてとても神秘的だ。


「行っちゃいましたね」


「行っちゃったね」


「ふぅ、行きましたか」


「お父様!」


「タイミング良いですね」


「いや、大丈夫といわれてもやはり怖くてですね。ちらりとたまに様子をうかがいながら船室に居りました」


「お父様…これから長い付き合いになるんですよ?」


「そうは言ってもな、この船の護衛より強い魔物だぞ?」


「食事風景とかかわいいのに…」


まだ子どものエンケルディアが頑張って口を開けて飲み込むところとかね。


「そうだ!ちょうどよかったわ。アスカさんがこれを売ってくれるんですって」


「これは羽根型のネックレスだな。きれいな細工だ」


「それだけじゃないのよ!これ実は…」


耳元で羽根のネックレスの効果を説明するヴィスティちゃん。


「なんだって!?ぜひ買わせてください!」


「いいですけど、ヴィスティちゃんに言ったことを守ってくださいね」


「分かりました。あとで確認しておきます」


値段についてはトワイラストに着いてから話すことになった。ステータスを上昇させるもの自体、扱ったことがないので価格を決めかねるとのこと。まあ、効果も少ないし、金貨2枚ぐらいかなぁ?



「船が港に着くぞ~!」


「あっ、いよいよトワイラストですね」


「ほんとだ。いつの間にか町が見える!」


城壁が港を守るようにCの字のように作られている。その規模も大きくここから多くの船が発着していることが読み取れる。私たちの乗った船は港に通じる船用の通路を通って町へと入っていく。


「到着したら1等船室から降りていきます。馬車待ちの方は左へ、そうでない方は右へお願いします」


船員さんからも説明を受けて私たちはいったん別れる。


「私たちは『癒しの間』という宿に泊まっていますので、明日の午前にでも来てください!」


「分かった。4日ほどはいるだろうから大丈夫だよ」


こうして、2日間の船旅を終えた私たちはトワイラストに着いたのだった。




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