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こぼれ話 ゲンガルとオーガロード

「さあ、ようやく緊急依頼の当日ね」


「そうだな。もらった手紙だと9時前集合だ」


「みたいね。それじゃ行きましょう」


ようやく、目的を果たせるかと思いギルドに行く。ギルドにはこの数日で知り合った冒険者たちと見慣れない冒険者が。いや、王都で見たことあるような…。


「どうやら、王都組も無事に着いたようだな」


「そのようね。ただ、戦力的に厳しいかもね」


王都から来たのは戦士系が主だ。オーガ系との戦いなら最悪森を焼く覚悟で火や、地形を変えて時間を稼げる土系の魔法使いが良かったんだけどな。


「ん?なんだ、マディーナたちまで来てたのか?」


「ジュールさん!?どうしてここに。アルバのギルドマスター首になったの?」


「ちげーよ。報告で王都まで来たら駆り出されたんだよ。オーガ系の上位種との戦いを見せてやれって」


「そういえば、ジュールさんはオーガキラーでしたね」


「そう言ってももう4年前のことだぞ」


「すげぇ。オーガキラーとか初めて会ったぜ」


「まあ、一般的には遭わない方がいいんだがな」


「集まったようだな。俺がこのギルドのマスター、ザスパーだ。今回の緊急依頼は知っての通り、オーガロードの討伐を目標とする。しかし、オーガ自体が初心者にとっても危険な相手となる。その後の討伐、殲滅にも報酬は上乗せするのでぜひ頑張って欲しい」


「ザスパーさん、あんたはどうするんだ?」


「幸いにもオーガキラーでアルバのギルドマスターでもあるジュールが参加してくれる。俺は後方から交代要員の指揮に専念する」


やっぱりかという顔をするジュールさん。まあ、ザスパーさんは現役時代もAランクの冒険者だったけど、剣よし弓よし魔法よしのオールラウンダーだった代わりに、突出した能力はないのよね。前線より足止めとか指揮に回った方が適任よね。


「作戦は3部隊に分け、森の入り口から右側をジュールの隊が、左側をベイリスの隊が担当する。そして、もう一つの隊は森の側面だ」


「側面?なんでだ?」


「当然森の奥まで行くことになる。しかし、途中で森から川に逃げる魔物も出るだろう。その魔物が北上して街に来ないようにするのが目的だ」


「なら、一番安全なのか?」


「どうだろうな?交代要員がいる最初は良いが、負傷者と交代した後は絶対に抜かれてはいかんからどっちがましかということだな。前線は敵を倒すことに集中できるから普段の戦い方次第だろう」


「なぁに、要は目の前のやつを全部倒せばいいんだよ。楽じゃないか」


そういうジュールさんだったけど、それはあなただけだと思うわ。班分けも終了して私たちは町を出て南下する。そして川が交差するかというところに差し掛かったところで、一旦休憩だ。


「よし、そこで止まれ。ここで3隊に分かれて休憩だ。側面隊は後ろで休憩してくれ」


休憩中、ジュールさんとの隊とはほぼ同じところで休憩するので、ちょっと話をする。


「ねぇ、ジュールさん。2隊に分かれるけどロードがいたらどうするの?」


「そっちにいればいいが、こっちなら使いに誰かをやるよ。ロードは滅茶苦茶だからな」


「めちゃくちゃ?言っても指揮官タイプよね?」


「戦闘になるまではな。戦いが始まれば完全に戦士だ。使えるものは死体でも使う。それが人間であれオーガであれだ」


「それって…」


「すごいスピードで投げつけてくるからお前も気を付けろよ。下手な弓なんかと違って当たれば一撃だぞ」


「周りは?」


「オーガジェネラルとバトラーがいるな。正直、俺一人じゃ不味い」


「あら、やけに弱気ね」


「こっちはハルバードだぞ?盾が持てないんだから弓使いがいたら対応しきれん」


「あ~、そういうのもいたわね。そりゃ辛いか」


見て避けるのがかなり難しいのがオーガ種の弓だ。かと言ってロードを無視できない状況ではそっちにかまけることも難しい。


「分かったわ、入り口だけ左右に分かれて、ある程度上位種が固まっていたら中央に寄りましょう」


「頼む」


「それにしても、ハイロックリザードを倒したリザードキラーでもあるジュールさんが頼み事なんてな」


「ベイリス。あっちは野生の動きだ。それなら俺でも回避に専念すれば何とかなる。あの時は取り巻きもいなかったしな。オーガ種は戦いに関しては理性的だ。流石に何体も同時には相手ができん」


「では、直ぐに駆け付けますよ」


「ま、お前らの方に出ることもあるだろうから、そん時は行ってやるぜ」


そんな打ち合わせとも雑談とも言えぬ話をして休憩は終わった。そしてそのまま森の入り口でジュールさんと別れてオーガの巣になっているであろう森に進んだ。



---


「まあ、こうなる予感はしてたんだよな。おい!2人ですぐにマディーナの場所まで行って救援を呼んで来い!」


「ジュ、ジュールさんは?」


「短時間なら何とかなる。別に1人でもないしな。それより大急ぎの任務だ、ぬかるなよ」


「はいっ!」


魔法は使えるものの、身を守れない魔法使いをさっさと戦場からどける。ここに来るまでにこっちの隊の実力は図っている。15人規模で後衛の弓や魔法使いが4人。補助も出来そうなのが3人で、前衛が8人だ。


だが、魔法使いのうち2人は風のみで、しかも、補助ならともかく魔力が低くてバトラー相手には攻撃が通じない。弓使いも腕はともかく、威力が低すぎで途中で交代のため戻した。前衛の8人も重戦士が4人と剣士が2人に槍使いが1人。ただ、装備の関係で重戦士のうち2人はかなりケガをしていて下げなければならない。


「そこの2人!さっきの魔法使いの補助と向こうにいるケガ人と一緒に後退しろ」


「しかし、それではここの人数が…ぐっ!」


戦闘中によそ見をするからだ。肩をオーガの矢で貫かれる。


「さっさと下げろ」


「はい!」


力が無いやつは邪魔なんだよ。壁にしても攻撃にしても、そこから狙われる可能性を考慮しないといかん。


「はぁ!」


ハルバードを振り回し矢を弾き、腕が伸び切ったところで片手を胸に入れ、細く加工したナイフを投げつける。


ギャァァ


「はん!得物がでかいからって小技が出来んとでも思ったか!俺が左翼で弓使いを倒す。お前らはなんとかしてロードたちを抑えろ」


今の状態では大勢が悪すぎる。せめて、遠距離は無くさんとな。


「お、おおっ!」


ビビりながらも武器を構える冒険者たち。まあ、あれぐらいなら合格だな。すぐにオーガバトラーに向き直す。あっちは長くは持たない。すぐに行かないとな…。



その頃、マディーナたちはー。


「もう、オーガにウォーオーガばっかり!何体いるのよ」


「こっちは川よりだ。もしかすると、未熟な者の訓練所か何かかもな」


「それ最悪じゃない。まぐれ当たりなんて許さないわよベイ」


「無論だ。こんな低級の奴らに一撃ももらうものか!」


ザシュ


一閃するたびに1体を葬るベイだったが、数が多い。私も魔法で倒すものの森が邪魔で狙いが面倒だ。


「マディーナ様!」


「なに?」


「む、向こうにオーガロードが!」


「やっぱりこっちが外れか…。ジュールさんは?」


「向こうで指揮をしながら戦っておられます」


「分かった。べイ!聞いたわね」


「ああ!俺たちは直ぐに救援に向かう。ここに居る半数もついてこい。残りは川に向けて下がり、本体と合流しろ」


「こ、ここは?」


「こんなところで討伐していても無駄だ。こっちはロードに向かわせなければ構わん!」


「はっ、はい!」


直ぐに隊が2つに分かれて動き出す。念のため森に入る時に話していてよかった。


「ほら、おじさんもこっちよ」


「マジかよ…」


「あなた以下の装備のやつを連れて行っていいなら別にいいわよ」


「分かったよ!精々、称号でも貰いに行くかね」


「その意気よ。ベイ!案内はいらないわね?」


「ああ、その為の人員だろう」


案内を申し出てくる前に断る。どう見ても呼びに来たのはCランクだ。しかも、さほど脅威も感じないからあっちにいたら間違いなく死ぬ人間だろう。


「ほんっとにこういうところは尊敬するわね」


強敵相手にここまで気が回るなんて、あたしには出来ないわ。Bランクの剣士を一応ここの指揮官として残し、残りの実力者を伴って私たちはジュールさんの隊に合流すべく道を急いだ。


---


「ちぃっ!」


何とか弓持ちのオーガバトラーを倒したものの、オーガジェネラルとロードによって戦況は悪化していた。


「受けるな!」


「ぐおっ!」


身をかわせないと思った重戦士が、大剣を構えて防御しようとする。しかし、オーガジェネラルの圧倒的な力の前に剣が折れ、片腕も切断された。とっさにマジックバッグから魔道具を出して投げる。


「はめて腕を前に出して発動と唱えろ!」


「は、発動!」


さらにとどめと襲いかかってきたオーガバトラーに向けて腕を突き出すと、小手のような物から勢いよく風の刃が発生した。


ガキン


目の前のオーガロードの攻撃をいなし、負傷した冒険者に声をかける。


「ポーションは?」


「前のでもう…」


「買わなかったのか!」


「町では売り切れで…」


当たり前だ。こいつは王都組なんだからそんなことがないよう王都で買い込むのが当然だ。何のための他の町からの援軍だと思っているんだ。言いたいことはあったが、それよりこの状況だ。他にも近くに倒れてる奴がいるし、こいつに残られては面倒だ。


「そいつをもって下がれ!」


「は、はっ!」


「ジュ、ジュールさぁん」


「なんだ!」


「こっちもお願いします~」


見ると、魔法使いの女がオーガジェネラルに狙われていた。手前にいたやつは何をしているのかとみると、息をしていなかった。


「ちぃ!」


こっちの状況にかまわずオーガロードが攻撃をしてくる。


「相変わらず、重たいんだよ!」


ブンッとハルバードを振って、肩に一撃を入れる。硬い筈の地面に多少めり込むが、ろくな傷を与えられない。そもそも身につけている鎧のせいだ。何製かは知らんが丈夫なことだ。


「ジュールさぁん!」


「うるさい!さっきのやつに小手を借りてこい、それで、守ってろ!」


「はい!」


アースウォールを作って何とか後ろに下がり、退避した奴から小手を受け取る魔法使い。


「中々やるな。アースウォールがすぐ壊されるのを理解して、わざと脆くして視界を奪うとはな」


気配を探るのが苦手なオーガ種なら有効な手段だ。


ガキィン


「ちっ!腕が…」


ロードの攻撃は激しく、ハルバードで正面から攻撃を受けてしまった。衝撃で腕がしびれて得物を手放す。


「ふっ、はっ」


呼吸を整えて何とか攻撃を回避する。そして、しびれがましになったところで、隠していたナイフを投げつける。もちろん相手は簡単に防ぐのだが…。


「別にてめぇだけを狙ってるわけじゃないぜ」


まだ残るオーガバトラーにもナイフが向かう。バトラーはロードたちの邪魔にならないようにやや後方にいたのだ。しかし、こっちの隙をついて何かしてくるので、厄介だった。


ギャア


後ろにいた2体を倒すとすぐにロードに向き合う。


「おら、来い!」


ロードの大ぶりの一撃を何とかかわし、その剣に飛び乗り相手の後ろに飛ぶ。


「よっと」


そして落ちていたハルバードを拾って構える。


「やっぱりこいつが落ち着くぜ」


「ジュールさん、生きてる!?」


「おう!待ってたぜ」


「あなた達、即負傷者回収!後はバトラーやジェネラルを相手して!」


「了解です!」


「その間は俺が受け持つ」


2体いるジェネラルをベイリスとマディーナが相手をする。これで、何とかなりそうだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] >とっさにマジックバッグから魔道具を出して投げる。 >小手のような物から勢いよく風の刃が発生した。 >アースウォールを作って何とか後ろに下がり、退避した奴から小手を受け取る魔法使い。  ア…
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