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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
新大陸を目指して

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船上の商談!?

「こここ、こんなに素晴らしい細工で魔道具なんですか!?」


私が渡したブレスレットの説明をすると驚くヴィスティちゃん。


「うん。ブレスレットの中央部分が膨らんでるでしょ?そこの裏にはふたがあって、そこに魔石とかを入れる仕組みなんだ。今は守り石を入れてるけど、使った後は輝石とか魔石に替えたりもできるよ」


「す、すごいです。それじゃあ、この表の宝石は?」


「ほら、そこに魔石とか入れてると警戒されちゃうでしょ?見た目は普通の細工物に見えるようにしてるんだ」


「ますます欲しいです!これがあればお父様も目玉ができると大喜びです!」


「そう言われると嬉しいな。なかなか手に入らない素材だから頑張ったんだよ」


「これ2つとも買い取っていいんですか?」


「う~ん。それヴィスティちゃんに似合ってるしなぁ。そうだ!売る時にそれ付けて私の作品を宣伝してくれない?宣伝って言っても年2つだけだけど…」


「せ、宣伝ってこれは?」


「だから、人に売らないで付けててね。宣伝費扱いだから」


「ひえぇぇぇ、家宝にします!」


「大げさだよ」


「いえ!これなら金貨20枚は固いです。ブレスレットは金属の材料も多く使いますから30枚でも全然ありですよ」


「う~ん、売れ残らないように頼むね。それと、ヴィスティちゃんはそっちのミスリルのブレスレットだから、白銀のを売り物にしよう」


そんな話をしているとヴィスティちゃんに話しかける人がいた。


「ヴィスティ、ここにいたのか。魔物が出たと聞いたから心配したぞ」


「お父様!魔物というか魔鳥ならあそこにいますわ」


「ひっ!?な、何をそんなに落ち着いているんだ!」


「あの魔鳥はアスカさんの言うことを聞いてくれますの」


「アスカ?ああ、こちらのお嬢さんかね」


「どうも」


「あれはどう見てもエンケルディアだが、娘の言っていることは本当かね?」


「あ、え~と、まあ一応は。これでも魔物使いなんで、私の従魔を通じて話をしたんです。明日、トワイラストに着く前まで船を守ってくれるそうですよ」


「そうですか。それは助かります。滅多に魔物は出ませんが、被害がなくなるのはいいことですから」


「お父様それだけじゃないの、見てよこれ!」


「これはブレスレットか?しかし、なんという出来だ。これをどこで?」


「そちらのアスカさんが。お父様、これなら建国祭に金貨30枚でも売れるわよね?」


「売れはするがな…」


「どうかしたんですか?」


「いや、うちは中堅どころとして商売をしておりまして、やや高級ではあるものの建国祭では金貨10枚から15枚程度の金額のものを扱っているのです。平民でも買いやすい金貨5枚以下や、貴族や金持ち向けの2,30枚以上の商品は競合を避けるために仕入れてこなかったので、心配ですな…」


「そっか、それじゃあ売れないのね」


「い、いや!ヴィスティが見つけたせっかくの商談だ。何とかなるようにしたいのだが…」


娘に甘いお父さんでも商売になるとそうはいかないらしい。


「何かあればいいんですけど」


私もマジックバッグをごそごそとしてみる。何かそういうものがあったかな?バリア系じゃダメだろうけど。今回は安全だけじゃなくて商売も関係するしね。


「ん?これ使えるかも」


「どうかしましたアスカさん?」


「うん。商売に使えそうなものがあったよ」


私はマジックバッグからとあるものを取り出した。


「このブローチがなんですの?」


「これをこの家紋の家に持っていけば何とかなるかもしれません。旅の途中でちょっとあっていただいたものなんですが」


「少しお借りしても?」


「どうぞ」


「こ、これは、バラの紋章…」


「どこかの騎士爵のものですかお父様?」


「それどころか帝国でもわずかな家のみが使える家紋だぞ。実物を目にするだけでも我々には至難の業だ」


「これってそんなにすごいものなんですか?」


「ええ。確かにこれをもっていけば商売ぐらいなんということはないですが…よろしいのですか?」


「私の細工を売るためですから!それに、バルディック帝国には今度いつ行くか分かりませんので持っていても使い道がないんですよね。相手の方にはわかるように手紙を書いておきますね」


ジャネットさんがもらったものだったけど、別に使う機会がないってもらったんだよね。あの時、出会った隊長さんはいい人だったし、きっとこれを見せれば大丈夫だろう。


「きっとこのお礼は必ず…」


「お礼だなんて…そうだ!ずっと、帝都と王都を往復するんですよね?」


「ええ。南回りのルートにはなりますが」


「それなら、火と風の魔石でいいのがあったら送ってもらえませんか?私は旅をしているんですけど、あまり首都には行かないので、高品質の魔石は滅多に手に入らないんです。売り上げはそちらで管理してもらってその都度送ってもらえばいいですから」


「それだけでいいんですか?」


「うん。魔道具を作るのってアイデアも必要だけど、そもそもそれを実現する魔石があってこそだから。こうしたいな~って思った時にないのが一番困るんだ」


「そうなんですね。お父様、頑張って商品を売って買いましょう!」


「まあ、商売の範囲でな」


「なにを言っているんです。このような家紋付きのブローチまでもらって、売り上げの分で送りますね、は失礼です!お父様も常日頃から目先の利益ばかりを見るなといっているでしょう?」


「それはそうだが、今は元手がな…ほら、お前のマナー講習とか今回決まった南ルートの取引でな」


「そう言えばヴィスティちゃんのマナー講習の件も頼んでおかないと。追加で書いとくね」


「いいんでしょうか?相手は貴族の方ですよね?」


「大丈夫だよ。優しい隊長さんだったから丁寧な人を付けてくれるって!そうそうちょっと箱をつけとくね。貴族の人に手紙を直接っていうのもどうかと思うし」


「は、はい」


ヴィスティちゃんたちが待っている間に小さな箱を用意する。あとはそーっと見えないように小手を一つ入れてと。『授業料です。よろしくお願いします』


「これで良しと!」


ジャネットさんたちにはまたいろいろ言われるかもしれないけど、これでいい魔石が定期的に手に入るんだし構わないよね?


「では、必ず届けます」


「お願いします。そういえば、商品って何を扱っているんですか?」


「そうですな。魔道具や魔石もありますが、王都から帝都では細工物やじゅうたんなどの布製品も多いですな。逆に帝都からだと品質のいい武器や他国の輸入品を扱っています」


「結構いろいろ扱うんですね」


「まあ、中堅どころの商会ですのでひとつに絞っては直ぐに行き詰ってしまってしまいますからな」


商品のリストを見せてもらったけど、ほんとに幅広かった。


「あっ、この絹の布いいなぁ」


「良かったら下船後見てみますか?」


「いいんですか!?」


「もちろんです。色もたくさん揃えていますので気に入るものがあると思いますよ」


良かったぁ~。舞の練習や本番でも使っている巫女風衣装だけど、結構痛みも目立ってきたんだよね。普段の練習は夜と室内が主だから色落ちこそしてないけど、近くで見るとくたびれてるんだよね。前の時は使える時間も多かったから自分で編んだけど、旅をしている今は細工もあるしなかなか難しい。上質だと聞いているし、色が気に入ったらいくつか買って作ってみたい。


「それに大きくなってるだろうし、ラーナちゃんにも送ってあげないと。あとはエルトーレちゃんにも」


ラーナちゃんは正式な2人目の巫女だし、私の代わりに神殿で信者を見てくれるエルトーレちゃんにも着て欲しい。似合うだろうし。


「そう言えば、中央神殿でもやってもらってるんだった。その人もいるかな?一応作ってムルムルに送っておこう」


流石にシェルレーネ教の総本山ともいえるような場所だから、なかなか難しいかもしれないけど気に入ったら着てくれるかもしれない。


「おっと、帳簿の途中でした。私はこれで…」


「あっ、頑張ってくださいね」


「お父様。また後で」


「ああ、ゆっくりしていなさい」


前に聞いていた通り、ヴィスティちゃんのお父さんはかなり優しいみたいだ。商家の娘さんだったら帳簿を手伝えとか言われることも多いのに。実際にエレンちゃんは宿を手伝っていたし、服屋の子どもは小さいころから販売を手伝ったりもする。お手伝いどころかそういう法律関係は緩いからね。




「それでね~、ムルムルったらおかしいの!」


「水の巫女様ってそんな一面があるんですね。知りませんでした」


「あっ、あんまり言わないでね。巫女って神秘性とか大事みたいだし」


「言いませんよ。中々普通は会うこともできないのにそこまで知ってるなんて信じてもらえないでしょうし」


「もっと気軽に歩けたらいいんだけどね」


「アスカ、そろそろ夕食の時間だよ」


「もうそんな時間なの?ごめんね、ヴィスティちゃん」


「いいえ。貴重なお話を聞かせてもらってありがとうございました。また、明日…」


「うん。また明日ね」


リュートに迎えに来てもらい部屋に戻るとジャネットさんが居眠りをしていた。


「ん?帰ったのかアスカ。そんなに川見て楽しかったかい?」


「川よりお友達ですよ!ほら、前に王都に行く時に会った…」


ジャネットさんにヴィスティちゃんのことを説明する。


「ああ、あの時のわがまま娘ね。それで、飽きて帰ってきたのかい?」


「違いますよ。そろそろご飯の時間なんです」


「ん?今は15時ぐらいだろ?」


「なにを言ってるんですか、もう夕方ですよ」


「げっ!まだ、読み終わってないのに」


「明日また読んだらいいじゃないですか」


「今日読み終わりたかったんだよ」


「それよりご飯ですよ。今日はなんでしょうね~」


「さてね。来るのを楽しみにしようじゃないか」



2人の会話をよそにリュートはジャネットが置いた本をちらっと見る。『トワイラスト、ここがおすすめ!』


「船でこれを覚える気だったのか。明日は川も見飽きて部屋にいると思ってたんだ」


本当にこそこそ頑張るなぁと思うリュートだった。



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