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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
新大陸を目指して

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夜行性

「ふわぁ~、よく寝た~」


「おはようさん、リュートが飯作ってるよ」


「そうなんですね。いつも朝早いなぁ」


「ご主人様の食事係なんですから当然です!」


「こら、ティタ。そういうこと言わないの」


「すみません」


ティタに注意をして、私はアルナのご飯を用意する。


「ほら、ご飯だよ~」


ピィ


にゃ~


「ちょ、ちょっと、キシャルはご飯奪わないの。別のがあるでしょ」


アルナの食事に興味を持ったのか、キシャルが小鳥用のご飯を食べてしまった。


にゃにゃ~


しかも、少し気に入ったらしく2口目を横取りしようとしている。


「こらっ!もう、ご飯あげないよ」


ピタッ


その一言でキシャルの動きは止まり、そそくさとその場を離れた。


「もう…ごめんねアルナ。ゆっくり食べていいよ」


ピィピィ


まあお姉さんだからこれぐらいは我慢するわとアルナ。小鳥だからか精神的な成長も早いようだ。一方のキシャルはいたずらを覚えた子猫のようだ。


「アスカ、ご飯できたよ!あれ?どうかしたの」


「ううん、なんでもないよ。それじゃあ、行くね。ほら、キシャルも来るでしょ?」


にゃ~


さっき食べたアルナのご飯は別腹といわんばかりにキシャルが私の肩に乗って下に降りる。どうでもいいけど、キシャルって寝てばかりだけど、よく太らないなぁ。


「はい、今日は昨日のスープと普通のオークの薄焼きだよ」


「あれ?昨日の人に全部あげたんじゃなかったの?」


「形の悪いのが残ってたからね。こうやって切れば問題ないし」


「そうだったんだ。とりあえず、冷めないうちに。いただきま~す」


ん~、リュートは古くなってきたって言ってたけど、味は問題ないね。それにしても、昨日のお姉さんは3頭分ぐらい買ってたけどちゃんと消費できるのかなぁ?


「アスカ、手が止まってるぞ」


「あ、すみません。出発があるのに…」


「いや、いいけど何か考えごとかい?」


「昨日のお姉さんあんなに買ってましたけど大丈夫かなって?」


「まあ、この村の規模なら2日もあればなくなるだろ」


「2日!?早くないですか?」


「そりゃあ、滅多に食べられないんだから一気に食うだろ。次に食べられるまで置いといてもしょうがないしさ」


「冬だから保存食にしたりは?」


「しないしない。少なくとも町から1日の距離の村なんだから、ある程度は買えば済むさ。だから、水も金で支払う形だったろ?田舎の村だったら物々交換だぞ」


「そう言えばアルバの市場でも、何度か言われたことありましたね。出店料を確保したらあとは物の方がいいって」


「村ん中じゃ使う機会がないところも多いしね。おっ、なんだキシャル飯が足りないのか?」


話をしているとキシャルがジャネットさんの元に歩いていった。自分のご飯は空になっているからそうなのかな?


にゃ~


「ん?休みに来ただけかい、珍しい」


キシャルはジャネットさんの食事をもらいに行くことも多いけど、今回は違ったようだ。それからちょっと休憩をして宿を出る。料金は昨日のうちに払っておいたのであとは出発するだけなのだ。


「荷物は持ったね」


「はい!準備はばっちりです」


「んじゃ、出発だね」


宿を出ると門番さんに挨拶をして村を出る。その後は順調に進んでいった。




「ふんふ~ん、ふふふ~ん、ふふ…あっ!?」


「アスカ、魔物?」


「えっと、多分…。でも、どうしてわかったの?」


「反応が分かりやすいから」


「んで、何か問題があるのかい?」


「魔物がいるのはいると思うんですけど、多分これサンドリザードなんですよね」


「サンドリザード?それぐらいなら普通に倒せるんじゃない?」


「リュート、この地方のサンドリザードは夜行性だよ。アスカ、もしかして地中にいるのかい?」


「おそらく。動いてないから寝てるんだと思います」


「どうする?」


「このまま通っても気づかれないとは思いますけど、これが街道に出たら嫌ですね」


「じゃあ、決まりだね。とはいうもののどうしたもんかね…」


ジャネットさんが腕を組み思案する。まあ、サンドリザードは地中だからね。私もジャネットさんに習って腕を組んで考えるふりをする。


「こら真似すんな。何か考えてんだろ?」


「どうしてわかったんですか?」


「顔に出てるんだよ。そんじゃ、頼むよ」


「は~い。アルナ、ティタ、キシャル。サンドリザードが見えたらお願いね」


ピィ!


にゃ~


「任せてください!」


従魔たちに攻撃を頼んで私は手を軽く合わせるように叩いたあと、地表に手を置く。


「アースウォール!」


土の壁を作り出すことで、サンドリザードがいる地面の土を掘り起こし、姿を露出させる。そして、その瞬間を逃さずみんなが攻撃を加える。


ピッ


にゃ


「アクアスプラッシュ」


従魔と私の絶妙なコンビネーションで地中に居たサンドリザードをすべて倒した。


「え~と、状態は…ティタが一番だね!えらいえらい」


「ふふっ、小鳥や猫とは違いますから」


ピィ!


にゃ~


アルナは属性の差だと言い、キシャルはどうせ肉が出るなら何でもいいと涼しげだ。さっきはあんなに連携できてたのにすぐにこうなるんだから。それから処理をしてマジックバッグにサンドリザードをしまうと、私たちは再び歩きだす。



「ん~、それにしてもそこそこ魔物が少ないですね、この道」


「安全なのはいいことだけどね。今日は野宿だし、楽に行けるね」


「そうですね。明日は町でしたっけ?」


「ああ、クルーゼスって言う町らしいね。そこぐらいから徐々に水も出てきて、草花もそこそこ生えてくるってさ」


「良かった~、ちょっと町の店を見て回ってたんですけど、リラ草とかも高かったんですよね。アルナのご飯も残り少ないし、実は困ってたんです」


「そうだったのかい。言えば買っといたのにねぇ、パーディションじゃ結構儲かったから」


「えっ!?そんなに滞在してませんよね?」


「道中出た魔物を売っただろ?サンドリザードは王都にいる時にも確認したけど、こっちにも皮の新しいなめし方が伝わってたから、その情報を価格に上乗せして売ったんだよ」


「そういうのってありなんですか?」


「もちろんさ。今まで冒険者向けだったサンドリザードの皮が今後は一般人向けにも使えるのは結構な情報だろ?しばらくはこの情報で儲かるかもねぇ」


「それにしてもお金かぁ」


お金の話になり、ついため息が出てしまう。


「アスカ、どうかしたの?」


「あはは。王都にいる時にトリニティ商会の資産を確認したら金貨200枚ぐらいだったの。それがね…この前、パーディションで確認したら30枚まで減ってたんだ」


「どうしてそんなに…」


「そりゃあ、あんだけ色々買ってたらねぇ。魔石も買ってたし、白銀も銀もミスリルも買っただろ?」


「だって、グラントリルから金属系の素材がたくさんでしたもん!アルバはもちろん、細工の町とかじゃ買えなかったし」


「細工の町って結構ありそうだったけどなかったの?」


「あるにはあったんだけど、組合員じゃないと買えないんだって。細工ギルドに所属してて、工房持ちの人が優先的に買っていくからレアな鉱物は一般人どころか細工師も買えないんだよ」


「あ~、まあそんな感じだったねぇ。そんで、反動が来て一気に買っちゃったのかい?」


「ま、まあ、素材は取れる時に取るのが大事ですからね!現にシェルオークの葉も切れちゃいましたし」


「あれって今はフィーナが取ってるんだろ?こっちに送ってこないのか?」


「たまには来るんですけど、フィーナちゃんの生計も関係してますからあんまり多くはないですね。ルーン草とかも採れますけど、アルバだと東側に多いですから。西側だとちょっとだけだし、一番の売れ行きはシェルオークの葉ですから」


「じゃあ、探すかシェルオーク」


「探して見つかるもんなんですかね?」


「さてね。でも、噂ぐらいはあるかもよ」


「とはいえ、情報集めができるぐらい滞在しないといけませんよね。しばらくは無理ですね」


「だねぇ。おっと、そろそろ野営地だね」


時間もいい具合になったのでいい感じの空き地を使って野営の準備を始める。今日はテントが二つだけだからすぐに終わった。



「リュート、鍋はもういい?」


「うん。あとは余熱で大丈夫だね」


「サンドリザードと冬野菜の煮込みかぁ~、おいしそう!」


料理は野営中だからこれ一種類だけど、具材も多いし食べ応えありそう。


「アスカ、器の用意できたぞ!」


「は~い!じゃあ、順番によそっていきますね~」


お玉を使って器に盛っていく。最初が私の分で次がキシャル、そしてリュートにジャネットさんと続く。なぜこの順番かというと私は比較的小食なので、適当に好きな具材を取る。キシャルはもちろん小食で結構選ぶ美食家なので2番目。あとは食べる量の順番だ。


「あっ、リュート。それちょっと肉が多くないかい?」


「そ、そんなことないと思いますけど…」


「ちょっとは年長者に遠慮しなよ。明日も食べられるんだし」


「ジャネットさんこそ明日食べられるならこれぐらい譲ってくださいよ」


「ちっ、しょうがないねぇ。今回は譲ってやるか」


このやり取りにも慣れたものだ。旅が始まったころはジャネットさんがこういえば、リュートは肉を少なめにしていた。でも、いつからか損をしていると気が付いたのか、最近では平然と言い返すようになった。まあ、リュートも成長期だししょうがないよね。そんな二人を横目に私たちは食事を取る。


「キシャルおいしい?」


にゃ~~~


満足そうにじゃりじゃりと凍らせた食事を食べるキシャル。この子もほんとにおいしいのだろうか?まあ、シャーベットと思えばいいのかな?


ピィ!


「あっ、アルナはもういいの?それじゃあ、テントで休もうか」


小鳥だけあってアルナの活動時間は短い。夜のとばりが降りる頃にはもう眠そうにしている。今みたいに食事が終われば、軽く羽を繕ってお休みタイムなのだ。


「リュート、悪いけど片付けはティタとお願いね」


「分かった。アスカの準備ができたらあとは変わるでいい?」


「うん!」


今日も野営の見張りは私からなので、アルナとキシャルが寝たら行かないとね。まあ、キシャルは寝ないこともあるけど。



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