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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
水の巫女合流

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祈りとお守り

アラシェル教支部で祈りが終わると、みんながこちらを見ていた。


「ええっと、皆さんどうしました?」


「ど、どうしたというか、大丈夫なんですか?」


「アスカ様、光ってます!」


「えっ、あっ、ほんとに像が光ってる…」


「像もですけど、アスカ様が光ってますよ」


「ええっ!?」


エルトーレちゃんに言われて自分を見てみると、ぼんやり体が光っている。像は以前にも信者の人が祈ると光ったことがあり、そこまで驚きはなかったけど、これは初めてのことなのでみんなもびっくりしていた。


「これが巫女さまのお力なのですね」


「あ、いや~、そうかな?」


「そうですよ!私もこんな光景は初めてです」


私たちがわいのわいの言っていると、心配してシェルレーネ教の司祭さんが来てくれた。


「どうかされましたかな?」


「あっ、いえ、ちょっと光っちゃって…」


おかしなことを言っている自覚はあるけど、他に言いようがなかったのでそのまま伝える。


「ああ、うちもたまにシェルレーネ様がやってくださいますよ。といっても、数10年に一度とかですけれど」


「そうなんですね。それは貴重な体験です!」


シェルレーネ様は信者も多いからできるんだろうけど、アラシェル様はまだ生まれたての神様だ。それなのに、頑張って光らせてくれるなんて、ずっと見守られているみたいでうれしいな。


それから私たちは奥の休憩室を借りて、信者や興味を持ってくれて来てくれた人とお茶を飲みながら交流した。それが良かったのはもちろん、信者の人たちの生の声が聞けたこともさることながら、普通の人が王都でどう暮らしているかも知れたことはいい経験になった。。


「やっぱり衛生面で悪いところがあるんですね」


「ええ、あの辺りは水源が豊富な分、いろいろ集まってきていて…」


「う~ん。私の方じゃ対応は難しいので、神殿の人に頼んでみます。それと、新しい病院の話も知り合いにしておきますね」


「病院ですか?今もありますが…」


「今の病院って結構窓も小さかったり、隔離するのが主になっているみたいで、あまり清潔なイメージがないんです。新しい病院は換気をよくして、シーツなんかも清潔に保った形なんです」


「そうなんですね。でも、病人がいるのに窓を開けていたら周りが何というか…」


「そこは逆手にとって、今衛生面が悪いところに作りましょう。それなら、土地も安くなると思いますし。後は輝石やライトを込めた魔道具で窓際を浄化します」


まあ、作るのは私じゃないけどね。あとでアナレータちゃんのお兄さんに頼んでおこう。貴族としても王都の衛生環境を整えたってなったら、利益もあるはずだし。


「でも、あの辺りで働きたいって人がいるでしょうか?」


「魔法もありますし、難しいことはありません。あとは人を運ぶのは力仕事なので、男性もいるといいですから」


病院に入院してた頃は男性陣が何かと駆り出されてたからなぁ。医療器具なんかの補充も重たいものが多いし、実際に病院を開いたらいて助かったと思うだろう。


「それにしても巫女様はまだお若いのに様々なことを知っておられますね。どちらの出身なんですか?」


「生まれはフェゼル王国です。実家は別なんですけど、アルバって街で育ったんですよ。そこにも神殿がありますから機会があったら行ってみてくださいね。そこには私より小さい巫女がいるんですよ。ラーナちゃんって言うんですけど」


「まぁ、もっと小さい方もいらっしゃるのね。何かそういう決まりがあるんですか?」


「いえ。ただ、アラシェル様自体は古い女神様なんですけど、神殿を持ったのが最近なのでたまたまです。神殿も本殿はなくて、シェルレーネ教の神殿に3か所あるだけなんです」


「それでも凄いですよ。私たちも頑張って布教しますね」


「無理しないでくださいね。ほら、神像も数が少ないですし」


「王都の方ならこちらでお祈りできるから大丈夫です。これだけの神像があれば家に神像がなくても大丈夫ですよ。むしろ、見に来る口実になっていいかもしれません」


「う~ん。それじゃあ、先にお守りを作っておくね。そっちは時間かからないから」


「作る?これは巫女様の手作りですか?」


「一応。私これでも細工師なんですよ。他にも魔道具とかも作ってるんです」


「そうなんですね!ますますこのお守りを大切にします」


「私も今度、店でお見掛けしたら買いますよ」


「ありがとうございます。ここにも少し置いていきますね」


ただ、最近は魔笛の練習であまり細工をしてないから、後で作らないとね。信者の人との交流も終えて、宿に戻る。


「ただいま戻りました!」


「おかえりなさいませ。今日はこれからどうされますか?」


「お昼をいただいた後は細工をしようかと思っています」


「そうですか。では、他の方にもそのように伝えておきます」


ファナさんはティタに師事したせいか私の護衛騎士みたいになっている。出かける時はミリーさんが、帰ってきたらファナさんが色々世話を焼いてくれる。


「さて、それじゃあ、早速作業開始だ」


まずは銀を用意してと…。ちょっと予算はかさむけど、やっぱり中々来れない場所だし、希望する人には銀細工を手に取って欲しい。代わりに小さいお守りにはなっちゃうけどね。


「う…ん。ここはもう少し曲げてと。あとはこっちはこうやって…」


アラシェル教といえば!というものがないので、とりあえずはサンダーバードの羽やキシャルを模したお守りを作っていく。


ピィ!


「ごめんね。アルナはヴィルン鳥っぽいけど、羽はちょっとバーナン鳥のところもあるから流石にね」


他の宗教と確執を生まないようにグッズも作らなくてはならないのだ。


コンコン


「はい」


「入ってもよろしいですか?」


「どうぞ~。ファナさんでしたか」


「アスカ様、飲み物をお持ちいたしました」


「ありがとうございます。のどが渇いてたんです」


「少し休憩いたしましょう。こちらも用意しましたので」


そう言ってテーブルに置いてくれたのはケーキだった。


「あれ?このケーキどこかで…」


「ムルムル様と行かれたお店のものですよ。さあ、どうぞ」


「ありがとうございます!いただきま~す」


ちょっと小腹も空いていたし、ありがたく頂く。


「そういえば、ファナさんたちもシェルレーネ教の信者として何か持ってるんですか?」


「そうですね…個人で様々ですが、私は剣に飾りを。あまり邪魔にならない方がよいので」


「なるほど。でも、他にも…そうだ!ちょっと今日は魔力もあるし…」


私はいい案が浮かんだので、持ってきてもらったケーキを食べ終わるとお守りを作る作業を中断して新しく作業に取り掛かる。


「ここはこうして…裏はこう。あとは裏の部分にこのギミックを採用してと。前もって買っておいてよかったよ」


「先ほどから何を作られているのですか?」


「うん。ファナさんに似合うと思って。魔石じゃないのが残念ですけど、これどうぞ」


「これはペンダントですか?」


「いいえ。これはマントの留め具です。表はユニコーンの涙をはめ込んでます。ファナさんにぴったりだと思って!」


「そ、そんな。もったいないです」


「いつもお世話になってますから。あと、役に立つか分かりませんけどシェルレーネ教の刻印もしておきましたからね」


「えっ!?本当ですか」


「はい。ムルムルがくれたんですよ。これを見るたびに刻印に負けないようなものを作らなきゃって思います」


「あっ、いえ、刻印許可証は審査があってそれは巫女でもどうしようもないのですが…」


「そうだったんですか?それじゃあ、ますます頑張らないと!」


ムルムルだけじゃなくて、審査してくれた人の面子をつぶさないようにしないとね。


「しかし、本当に素晴らしい細工です」


「ありがとうございます。気に入ってくれたならちゃんとつけてくださいね。ほら」


私はファナさんから留め具を預かり、今ついているマントの留め具と交換する。


「あ、ありがとうございます。まさか、こんなものをいただけるなんて…」


「付け替えないようにこっちは私がもらっておきますね。また誰かに作る時の参考に出来ますし」


「どうぞ。さて、少し見回りに行ってきます」


「あっ、お疲れ様です」


部屋を出るファナさんを見送る。ちなみにあとでミリーさんに聞いたところによると、見回り中に同僚の騎士さんに見せびらかせていたらしい。気に入ってくれたみたいでよかった。


「ん~、今日の細工は終わり!明日はレッスンお休みだし、また頑張らないとな。そうだ!ミリーさんって魔法の属性はなんですか?」


「…風と水が少し」


「ニタリ。そうですか、ありがとうございます」


夕食が終わるとティタに風の魔法陣を一つお願いする。


「あとは何にするかだよね~。軽くて不自然じゃなくて目立たないものか~」


ナイフといっても切れ味はいまいちだし、アクセサリーはちょっと考えないとな。でも、他に何かあるかな?


「ん~~~~、んんん~~。いいのが思い浮かばない。一応、ペンダント型にしておこう。銀地に魔石を入れて外からはあまり見えないようにかぶせも付けてと…」


「アスカ~、そろそろご飯よ」


「は~い。今行くよ~」


ムルムルがご飯だと知らせてくれたので隣の部屋に行く。最近はずっとムルムルの部屋で夕食をともにしている。もちろん、向こうの都合もあるけれど。


「それじゃあ、行ってきますね」


「行ってらっしゃいませ」


ミリーさんに見送られて私たちは部屋を出ていった。



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