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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
水の巫女合流

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こぼれ話 短編集 ルンルンリュート君ほか


「ふんふ~ん」


僕はリュート。今日はアスカの魔力によって生まれ変わった新しい鎧の手入れをしている。


「おやぁ、リュート。機嫌がいいねぇ」


「ジャネットさん。そりゃあ、新しい鎧ですからね」


「そうだねぇ。アスカの魔力入りの新しい鎧だね」


「へ、変なこと言わないでくださいよ」


「おかしなことは言ってないけどね。ほら、集中してないとケガするよ」


「誰のせいですか」


ジャネットさんはこうやってアスカがいない時にからかってくる。いる時は何も言わないのに。


「それより、付け替えないとな。ハイロックリザードの革を外してと…」


古い鎧に付けられた革を外していく。この鎧も随分と長く使ったものだ。


「ははは、どこもかしこも傷だらけだな」


鎧には大小の傷がそこら中にある。一部は鎧の中にもあり、この革がなければ危険なものもあった。


「いつ買ったんだっけこれ?ノヴァと一緒に買ったんだっけなぁ」


もう2年近く愛用していたのかとびっくりした。ハイロックリザードの革の一部も傷跡がある。


「これってどうやって手入れしたらいいんだろ?とりあえずは革用の油を塗るけど…」


修復はできないし、市場にもそんなに出るものではないから気をつけないとな。そう思いながら風魔法で乾かしていく。


「あとはこの鎧に付けるだけだな。鎧が少し大きくてよかったよ」


間のところに革を入れられるようにしていく。前の鎧はちょっと内側を削ったりしたんだよな。今の鎧は内側のところに縫い付ける形で追加できるから楽だ。


「さてと、一度つけてみようかな?」


無事にハイロックリザードの革をつけ終わると、身につけて動きを確認する。


「うん。邪魔にならないし、前の鎧よりも軽いな。それにアスカの魔力がこもってるし…」


そう思って鎧に触れていると急に魔槍が訴えかけてきた。


「ごめんごめん。魔槍だってアスカの魔力を持ってるんだったよね。忘れてないって!」


はぁ、本当に難儀な武器だなぁと思うリュートだった。




----------


ぶち切れジャネットさん


-----------


「なぁ、アスカの帰り遅くないかい?」


「そうですね。でも、パレードは混むってムルムル様も言ってましたし、しょうがないんじゃないですか?」


「あんたら、何か知らないのかい?」


「えっと、今日は王城に入った後は神殿の下見ですね」


「神殿の下見?」


「はい。この国にはまだシェルレーネ教の神殿がありませんでしたが、今回の訪問を機に国王陛下が用意してくれたんですよ。その下見があるはずです」


「ふぅ~ん。で、飯もそこで食べてるってわけ?」


「おそらくは。新任の方との顔合わせもありますし」


「とはいえ、それから1時間半。流石に遅いと思うんだけど…」


「そうですね…。どうかしたんでしょうか?」


「神殿に向かいますか?」


そんな話をしていると、玄関が騒がしい。


「何かあったのかね?」


「向かいましょうか」


数人を部屋の警護に残してみんなで下に降りる。


「ですから、2人は連れて行かれて私だけが戻ってきたんです。代わりに誰か連れて行かないと…」


「なに騒いでるんだい?」


「あっ、ジャネットさんも聞いてください!アスカ様が…」


「なっ!?貴族に連れ去られた!」


「あっ、いや、事情があったようで…」


「行くよ。案内できるやつは?」


「私が案内役です」


「あんたは?」


「伯爵家の騎士です」


「ほう?あとで覚悟しておきな」


「ジャネットさん、私も行きます」


「ファナか。他にも一人は欲しい。ああ、リュートは鎧着て準備だよ。魔槍も忘れんなよ」


「はいっ!」


「ちょっと、まるで戦いに行くような…」


「こっちの許可も取らずに連れて行ったんだ。当たり前だろ」


「侍女の…マナスだっけ?こんな目立つ馬車で迎えにはいけないから、それなりの馬車を捕まえといてくれ。伯爵家に着いたらこいつを戻すから」


「私は伯爵家の騎士だぞ!」


「その首を着いて直ぐ落とされたくなかったらいう通りにしな!」


「うっ!」


「ジャネットさん、なんだか指揮官みたいね」


「指揮官としては多分、ここでは一番優秀だと思いますよ」


「リュート、行くよ!」


「はい!」


「あっ、もう少し説明を…」


イスフィール様が説明しようとしてくれているが、一刻を争う。そのまま騎士を急かせて伯爵家に向かった。


「な、なんだ、お前たちは!?」


「ここに巫女様たちがいるのはわかっている!」


「入らせてもらうぞ!」


門番を押しのけて邸に突入する。


「アスカ!どこだ!」


「ムルムル様!いらっしゃいますか?」


次々にドアを開けて居場所を探す。すると一室からアスカとムルムル様が出てきた。


「アスカ!大丈夫かい?」


「はい」


「ムルムル様!お怪我は!?」


「ないわ。ファナも来るなんてね」


「当然です!」


アスカたちの無事も確認できたところで、何か用事があるので隣の部屋に入り事情を聞く。


「んで?なんで、こんな邸に連れて行かれてるんだい」


「えっと…は、伯爵様がしたので私どもでは…」


「はぁ!?」


ガン


おっと勢い余ってテーブルに足を振り下ろしちまった。


「あっ、割れた。もろいねぇ、ここのテーブルは」


「全くですね。その辺のものが塵になる前に事情を説明してもらいたいのですが…」


「ひっ!」


「2人とも脅しちゃだめですよ」


「騎士様…助かりました」


「ところで伯爵様はまだですか?」


「は、はい。ただいま!」


その後、説明を聞いて命の危険はないとわかったけど、面倒ごとに巻き込まれたのはわかった。


「はぁ、まったくアスカは…」


「ジャネットさん!今日も魔笛の指導受けに行ってきます!」


「はいよ。がんばんな~」


「は~い」


「さてと、疲れて帰ってくるだろうから土産でも用意してやるかね。リュート、準備しな」


「はい」


こうして、あたしたちは今日もお姫様のことを思いながら色々と動くのだった。




ここから先はちょっとだけネタバレを含みます

---------


ジャネット勘違いをする


---------


「さて、アスカのやつに土産を持っていこうと思うんだけど、どの依頼がいいかねぇ」


リュートを連れてギルドに向かったあたしは、お目当ての依頼を手にして受付に持っていく。


「依頼ですね。えっと、この依頼ですか?」


「ああ。何か問題でも?」


「い、いえ、ありがとうございます。受ける方が少ないので困っていたんです」


なぜか受付に感謝されて依頼票に書いてある場所に向かう。


「えっと、お目当ての魔物は王都の南か…。ええっ!?南ってこんな地形なのかい」


「一気に緑が消えましたね」


王都までは川が続いていて緑豊富だったのに、南側は一気に土だらけだ。奥に行けば砂漠になろうかという景色も見える。


「こんなとこに本当にいるのかね?」


とりあえず生息域はもう少し南なので、そっちに向かう。


「この辺りなんですか?」


「ああ。一応、警戒しな。他にも違う魔物がいるかもしれないしね」


カタ カタ


その時、前方から音がした。


「ん、あれは?」


「ボーンホーンですかね?」


ボーンホーンはイノシシがアンデッド化した魔物だ。その名の通り、骨だけになっており使える部分が全くない。


「こんなところだし、こういうのも出るのかねぇ」


サクッと攻撃を回避し、マジックバッグから火属性の剣を取り出すと、魔物に向かって斬りかかる。


ボッ


斬ったところから炎が噴き出して、魔物を屠る。


「はぁ、こんな魔物の相手をしなくちゃいけないなんてね」


「まあ、土も栄養なさそうですし、しょうがないのかもしれないですね」


その後も周囲を捜索すると何頭かのボーンホーンと出遭った。


「弱い分、面倒だねぇ」


そして、その5分後。


「あれは…いやまさかね。リュート悪いけど相手をしておいてくれ。あたしは気になることがある」


「分かりました」


目の前のアンデッド種、それに依頼票の文字…。


「こりゃあやっちまったね」


今リュートが倒しているのは頭に角が生えた骨だけのラビット種。


「依頼票には”ボーンラビット”討伐と書かれてるね。討伐数は10体か…面倒な依頼を受けちまった。こりゃあ、土産もなしか」


「ジャネットさん、倒しましたよ」


「ああ、済まないね。それと悪いけどこの依頼は間違いだったよ。ホーンラビットじゃなかった」


「えっ!?まあ、草原とか森に棲んでるとは思いましたけど…」


「ほれ」


あたしはリュートにも依頼票を見せる。


「ああ、これって…」


「皆まで言うな」


「どうします?依頼のキャンセルしますか」


「馬鹿言いな。あたしらは依頼達成率100%なんだから、リーダーのいない間に失敗しちゃダメだろ」


「それじゃあ、このまま依頼の数倒しますか」


「ついでにこの辺りの地形でも頭に叩き込むか。はぁ~」


こうして、魔笛の練習で疲れて帰ってくるアスカへのお土産は取ることができず、宿に戻ったのだった。なお、ギルドには感謝された。


「いや~、助かります。ボーンラビットだけでなく、ボーンホーンまで。初心者もうま味がないからあっちには中々行ってくれなくて。かといってこんな相手に報酬を増やす訳にもいかず困ってたんですよ!」


「ま、まぁ、暇だったからね」


「ありがとうございました」





という訳で、短編三本でした。




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― 新着の感想 ―
ジャネットさんとリュートは相手が貴族であっても構わずアスカを助けに行ってくれるとは… 下手すれば自分達までもが危険になるのを承知でアスカを想ってくれる、絆の深さはパーティーメンバーどころでは無く家族だ…
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