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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
17章 鉱石の町ハティルとグラントリル

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入った店は?

「それで大通りも分からないお嬢様はどうだったんだい?」


「リュート!話したの!?」


「話したっていうか、報告の範疇というか…」


「あんたねぇ、あんぐらいのことは知ってないと。そもそも、王都に行く前に調べられただろ?」


「そう言われると面目次第もございません」


「まあ、そういうことだから今後も街に出かける時はリュートを連れて行くように」


「は~い」


「それじゃあ、明日はどこに行く?」


なんだかうれしそうなリュート。こっちは赤っ恥をかいたというのに。


「そうだ!リュート、明日特に行きたいところないよね?」


「別にないけど…」


「なら、一日付き合ってもらうからね!」


今日、商人ギルドのお姉さんに頼んだ成果を見せてやるんだから。


「そういえば、魔石の方はどうでしたか?」


「それがねぇ、風の魔石が高いのはわかってたんだけど、水の魔石も値上がっててね」


「ああ、それなら私も聞きました。ムルムルたちが来るからだって」


「と言う訳で買えたのはこれぐらいだね」


コロコロと魔石を2つ出してくるジャネットさん。


「こっちがウィンドウルフの魔石でこっちは珍しいデッドコフィンの魔石だよ」


「デッドコフィン?」


「雪国や標高の高い山脈に住むアンデッドだよ。氷魔法で冒険者を氷漬けにするんだ」


「こ、こわっ!この魔石、呪われてたりしませんよね?」


「ないない!案外怖がりなんだねぇ、アスカは」


「そりゃあ怖いですよ。それで、何が使えるんですか?」


「氷の下位の上級までは込められるんだってさ」


「高くなかったんですか?」


「高くは…なかったね。よく知らないけど、ちょっと小さいらしいし。汎用魔石じゃないしね」


「あ、それなら納得です」


「一応水の魔法が使えれば使えるらしいよ。MP消費が倍以上になるみたいだけど」


「ええ~…」


「ま、でも、一つぐらい使ってみなよ。案外使い道ができたりするかもよ」


「まあ、チャレンジをするのはいいことですし、やってみますね」


とりあえず、今日のところはバリアの魔道具用の魔石が確保できたから良しとしよう。



「リュート、行くよ~」


「アスカどこに行くの?」


「行ってからのお楽しみ。アルナは…またお友達かぁ。まあ、結構仲もいいみたいだし、しょうがないか。ティタは連れ歩けないし、キシャル行くよ~。今日はいいところ連れてったげるから」


んにゃ?


ほんとかな?という顔をしながらもついて来てくれるキシャル。もう、かわいいんだから!


「それじゃあ、まずは商人ギルドに行こう」


「昨日頼んでたやつだね。なに頼んだの?」


「店に行くまで秘密だよ」


私は先頭を歩いてギルドへ。


「いらっしゃいませ!」


「すみません、昨日頼みごとをしていたのですが…」


「アスカ様ですね。お待ちしておりました。こちらにまとめております」


「ありがとうございます。じゃあ、行くよ」


「わっ、ちょっと!」


リュートの返事を待たずにギルドを出て目的地へ。


「さて、ここが一軒目!」


そう言いながら入ったのはお菓子の店だった。


「ア、アスカ一体…」


「ふっふっふっ、今日は私のスイーツ巡りに付き合ってもらうからね!」


仁王立ちの構えでリュートに宣言する。そこまで甘いものが好きではないリュートには辛いだろう。昨日は恥をかかせられたから復讐だ。


「なんでこんなことに…」


「アスカ、これ美味しいね。紅茶にも合うし」


んにゃ


くぅ~、王都の菓子店をなめていた。キシャルは元々甘いもの好きだから連れてきたけど、リュートの好きなビターチョコ系のケーキとかまであるなんて。もう3軒目なのにけろりとしている。このままでは終われない。このギルド員さんおすすめのお店に…。


「いらっしゃいませ!」


「えっと、2名なんですけど…」


「ご予約はされておりますか?」


「予約制なんですか?」


「はい。当店は人気でして申し訳ございませんが…」


「直近だといつが空いてますか?」


「4日後ですね」


「う~ん。じゃあ、それでお願いします」


「ちょっと、そこの!」


「?」


「あんたよ」


「わたしですか?」


その時、店内から声がかけられた。


「ええ。こっちに来て一緒に食べなさい」


「いいんですか?」


「いいって言ってるでしょ!ほら!」


受付の人と女の子を交互に見ながらもテーブルに向かう。


「ほら、座りなさい」


「ありがとうございます。リュートもほら」


「あ、うん」


「あら?その子は従者じゃないの?」


「リュートは同じパーティーなんです」


「パーティー?」


「お嬢様、冒険者のことかと」


「ああ。それで頼まないの?」


「初めてで何があるか分からないんです」


「そう。なら、この三種類にしなさい。ミューレ、注文を。そうそう飲み物は4つね」


「はっ!」


ミューレと呼ばれた女性が受付に注文しに行ってくれる。騎士の恰好をしているから護衛なのだろうか?


「すぐに持ってきますので」


「ありがと、あなたも座りなさい」


「しかし…」


「あなた名前は?」


「アスカです」


「アスカの横にいるのが従者じゃなくても、周りにはそう見えてるんだから調子を合わせるのよ」


「それでしたら」


申し訳なさそうに座るミューレさん。気を使わせちゃったな。


「そういえば私が名乗ってなかったわね。スティアーナ・ミファリアよ」


「スティアーナさんですか?」


「貴様!スティアーナ様に向かって…」


「いいわよ、ミューレ。どうせ旅人なんでしょう?いいところのお嬢様みたいだし」


「あっ、いえ、ほんとにわたしは一般人で…」


「そうなの?」


スティアーナさんに視線を送られて顔をそらすリュート。なんで!?


「お待たせいたしました。こちら3種のケーキと紅茶になります」


「えっと、ケーキは…」


「私はいいわ。もう食べたし。あなたたち3人で分けなさい」


「お嬢様、私は!」


「いいから食べなさい。これは命令よ」


「は、はい!」


そう言いながらもミューレさんはケーキを口にするたび、ほわ~っとしている。甘いもの好きなのかな?


「ほら、あなたたちも」


「あ、はい。ん!?おいし~い。甘いのもそうですけど、このイチゴ自体がおいしいですね」


「でしょう?ここの店はいい腕をしているのよ。学園帰りによく寄るの」


「学園ですか?」


「あら?編入生ではないの」


「ち、違います。王都にはちょっと用事があってきたんです」


「この時期に用事ね。それより、その肩のキャット種は?」


「私の従魔です。甘いものが好きなので連れてきたんですよ」


「そうなの?じゃあ、追加で頼まないとね」


「あっ、良いですか?お代は後で払いますから」


「なに言っているの?私がそんなに貧層に見える?」


「見えませんけど…」


「そういうこと。あなたは知らないけど私はこれでも侯爵令嬢よ。これぐらいの会計じゃ、びくともしないわよ」


「侯爵令嬢!?」


「どう?驚いたでしょ」


「はい。貴族の知り合いは少ししかいないので」


「ふ~ん。冒険者も結構貴族と会うのね」


「いえ、お嬢様。普通は会わないかと」


「そ、そうよね。こんなに小さいんだし」


「私、これでも15歳です!」


「ええっ!?私と2つしか違わないの?」


「これは驚きですね」


「そ、そんなにですか?」


「追加のケーキをお持ちしました」


「ありがとう、そこに置いてくれる」


「かしこまりました」


「ところで頼んでおいてなんだけど、この子はケーキ食べられるのかしら?」


「大丈夫ですよ。今日はこれで3つ目ですから」


残念ながら2つ目の店では入店を断られたので、私たちより一つ少ないのだ。


に~


「あ、凍らせても大丈夫だよ。でも、周りに移らないようにね」


こくんとうなずくと、小っちゃいブレスでケーキを氷漬けにする。


「まぁ!とってもおりこうさんね。というか、従魔ってそんなこともできるんですの?」


「えっと、はい」


「つかぬことをお聞きしますが、3日後は空いておりまして?」


「ま、まあ、今のところ予定はないですけど…」


「そちらの…」


「キシャルです」


「キシャルちゃんを一日借りられないかしら?」


「キシャルを?どうしてですか?」


「実はその日にパーティーがあって、できればその子を連れて行きたいんです。ここもいい腕ですが、おいしいお菓子も出ますわ」


にゃ~!


「キ、キシャル!大丈夫なの?ちゃんと静かにできる」


にゃ~


さっきのスティアーナさんの発言ですでに行く気になっているキシャル。これは説得が難しそうだ。貴族の人とあまり関わりたくはないけど、知り合ったものはしょうがないし、自分じゃないからいいよね。


「本人が行きたいみたいですし、良いですよ。でも、どこに行けばいいでしょうか?」


「泊まっている宿を教えていただけたら迎えに行かせます」


「その、結構無気力な子なので怒らないでくださいね」


「大丈夫ですわ。会場でちょっと起きていてくれれば」


それにしても貴族のパーティーに必要だなんてどうしたんだろう?まあ、いいか。とりあえず気になったことを聞いてみよう。


「さっき学園って言ってましたけど、この辺にあるんですか?」


「ええ。王立学園に通ってますわ。剣術や魔法はもちろん、貴族の教育まで行う由緒ある学園ですの。本当に編入生ではなくて?」


「違います。そんな風に見えますか?」


「「見えます」」


ステレオで言われてしまった。


「それじゃあ、今日も帰りに寄り道ですか?」


「寄り道…そうね。最近よく嫌なことがあるからこうしていらだち紛れにね」


「そんな、もったいないですよ」


「もったいない?」


「せっかくこんなおいしいケーキなんだから楽しんで食べないと!」


「ふふっ、そうね。あなたの言うとおりね、アスカ。そうだ!今度はいつこの店に来るの?」


「4日後です」


「なら、その時は私も来てもいいかしら?」


「いいですよ。キシャルも一緒に連れてきてください」


「ありがとう。あなたのおかげで気が晴れたわ。全く、殿下ったらあんな男爵令嬢のどこがいいのかしら?」


「え、えっと、男爵令嬢?」


「そう。天真爛漫というのかしらね?貴族のマナーすらろくにできない子の何がいいのか…」


「お嬢様、あれは無知蒙昧というのですよ」


「でも、最近じゃ殿下だけでなく騎士団長の次男までおかしくなってるのよ。どう考えてもおかしいわ」


「スティアーナさんは関わらない方がいいですよ。そういう人って自分が世界の中心にいると思ってますから」


「お相手が婚約者じゃなければそうしたんだけどね」


「うう~ん。何かきっかけがあればいいんですけど…。とりあえず、その婚約者さんにも構わない方が良いかと」


「そうよね。別に政略結婚だし、特に好きなわけでもないし」


貴族って本当に大変だ。そのまま愚痴大会になってもいけないということで、おいしい紅茶をいただいて帰ることにした。


「今日はありがとう」


「こちらこそ、支払いしてもらってありがとうございます」


「いいわよ、それくらい。今度迎えに行く時はミューレが対応するからお願いね」


「はい!」


こうして、リュートを甘いもので参らせよう作戦は、ぎゃふんと言わされる結果に終わった。



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― 新着の感想 ―
[一言]  さりげな~く交ざる悪役令嬢モノの気配。  自身の行動を記録する証拠と証人、ついでに王権に簡単に負けない貴族とか王妃とか、何か強い後ろ盾を用意しとくと理不尽な目に遭う率を下げられますぜ!
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