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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
17章 鉱石の町ハティルとグラントリル

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アスカの買い物

「それにしても意外です」


「なにが?」


「ジャネットさんが依頼を了承するなんて」


「そりゃあね。アスカも多分わかると思うけど、あれで断ったりしてたらどうなってたと思う?」


「う~ん。もったいないな~とか、受けてくれてたらな~ってところですかね?」


「だろ?あたしたちが帰った後、誰かにこの鎧の情報が洩れてみな。絶対面倒なことになるよ」


ちなみにリュートは早速新しい鎧に着替えている。宿に戻ったら古い鎧からハイロックリザードの革を抜いて付け替えるらしい。


「まあ、これだけ深い緑ですからね。アスカの能力を知って他の人も依頼してくるかも」


「そっか」


「でも、ある程度望みをかなえたらあのおっさんのことだ、ちゃんと黙るさ。ただの売りもんじゃなくて息子への贈り物だしね」


自分でも納得いく品質のものも作れて、さらに満足だろうとつづけるジャネットさん。なるほど、面倒だけど魔力を流すところを見られた以上、黙ってもらえる環境を作ることが大事なんだ。


「しかし、ひとつだけ気になってるんだけどねぇ」


「なんですか?」


「あいつの息子って兵士だろ?軍って個人作成の鎧を着れるもんなのかねぇ」


「あっ!」


「ま、まあ、戦場で目立つし、それぐらい許可出るんじゃないですか?」


「それだといいけどね。それで、リュートの装備は調ったけど、これからどうする?」


「まずはご飯にしましょう。結構いい時間ですし」


「ん~、そういやそんな時間か。どこがいいかねぇ~」


「王都らしい店にしましょうよ!」


「王都らしい店ぇ~?んなのないない。ある意味、その辺の都市から寄せ集めたのが王都の店なんだから」


「それじゃあ、どこがいいんですか!」


私は王都が初めてだって知ってるくせにどうしたらいいのか。


「まあまあ、アスカもそんなに肩ひじ張らずにどこか目についたところに入ればいいでしょ」


「リュートはそういうけど私の初王都の食事なんだよ。大事だよ!」


リュートは昨日宿で済ませたと思ったが、流石に今のアスカには言えないと思って口をつぐんだ。


「じゃあ、あそこにするかい?」


「あそこ?」


店を見ると、肉料理シェイパーという名前が入ってきた。店先の看板には簡単なメニューの絵が載っている。


「うう~ん、ここならいいかも!さすがは王都ベテランのジャネットさんです」


「聞き捨てならないね。あたしはまだ若手だよ」


「と、とりあえず入りましょう」


「ちょ、ちょっと、リュート!」


リュートに押されながら店に入る。


「いらっしゃいませ~!3名様ですか?」


「あのっ!従魔も行けますか?」


「えっと、サイズとかにもよるんですけど」


「この子です」


「わっ、ちっちゃ~い。バーナン鳥サイズですね」


「そうです。大丈夫ですか?」


「はい。何を食べますか?」


「野菜なら大体は」


「分かりました。厨房に行って出してもらいますね。では、席にご案内します」


お姉さんにテーブル席へと案内される。


「おおっ、結構大きい席ですね」


「うちは肉料理ですからね。プレートを広げるのに必要なんですよ。その分、席が少なくなっちゃうんですけど」


「なるほど~。あっ、メニューを決めないと」


「ふふっ、ごゆっくり」


「アスカはなんにする?」


「どうしよっかな~。あっ、ここにもジュムーアの料理がある!ローストしたものはと…」


「ん?気に入ったのがあったのかい?」


「はい!これにします」


「んじゃ、あたしはサラダでも選んでおくか。リュートは?」


「ちょ、ちょっと待ってください。今見ます」


「なんだい。そんなにかかるもんかねぇ」


「2人が早いんですよ。アスカはもっと悩むと思ってましたし」


「そう?とりあえず私もスープ選んどこ」


ぱらぱらとページをめくり、スープを選ぶ。いくつか迷ったけど、オニオンスープみたいなやつを選んだ。


「さて、それじゃあ決まったね」


「はい」


「大丈夫です」


ピィ


「あんたは決めるも何もないだろ」


そういうジャネットさんにピィピィと反論するアルナ。ほとんど私と一緒にいるけど、実は私が細工に集中してる時なんかには相手をしてあげたりして、かなりの仲良しなのだ。


「…ご注文は以上ですね。食事はご一緒でよろしいですか?」


「ああ。それとあたしの分って大盛に出来る?」


「できますよ。別料金がかかりますけど」


「それは構わないよ」


そして、20分ほどで料理が運ばれてきた。


「お待たせしました。ジュムーアローストとサラサラスープ。そして、大皿のサラダです。お連れの方のものもすぐにお持ちします。そちらの小鳥の分はこちらに置いておきますね」


「ありがとうございます」


すぐにみんなの分も運ばれてきて一気にテーブルがにぎやかになった。


「それじゃあ、いただきま~す!ん、おいし~い!」


店員さんはローストといっていたが、実際はフライパンで作るローストビーフのようなものだ。ただ、その後に寝かせるのではなく、軽くあぶった鉄板で予熱する形のようだ。でも、代わりに付属のソースを垂らしてじゅわ~っといい音と匂いがするので、これはこれでうれしい。寒い季節だと温かい方がうれしいしね。


「おいしいかい、アスカ?」


「はい!こっちのスープもサラサラしてて。それに小さくみじん切りにされた具もおいしいです」


「そいつはよかった」


そう言いながら大口を開けてサラダを一気に口にするジャネットさん。


ピィ


それを見たのか真似するように野菜をついばむアルナ。


「なんだい、あたしに対抗しようってのか、アルナ。まあ、お前さんにはまだまだ無理だね」


ジャネットさんに鼻で笑われたのが珍しく気に障ったのか、アルナは用意された野菜に加えて大皿のサラダも食べ始めた。その結果…。


「アルナ大丈夫?お腹パンパンだけど…」


ピィ…


食後はお腹が膨れて私の肩につかまることもできないので、小っちゃいかごの中に入っている。


「そんなに食い意地張るからだよ」


「もう!ジャネットさんがあんなこと言うからですよ」


「はいはい、注意するよ。そんじゃ、お詫びって訳じゃないけど、ここは支払っとくよ」


ジャネットさんに会計を任せて私たちは先に店先に出る。


「でも、アルナも気を付けるんだよ。食べ過ぎは体に悪いからね」


ピィ


力なく返事をするアルナ。まあ、これで今度から食べすぎることはないだろう。そして、次の目的地に向かおうとする。


「次はどこに行くか決まってるんだろ?どこだい」


「えっとですね…」


「おや、そこのお嬢様。ペットをお連れで?」


「あっ、はぁ。ペットというか…」


「それなら、ちょっと見ていきませんか?うちにもいいのがいるんですよ」


そういう店主の看板を見るとペットショップ”フォルン”と書いてあった。


「ペットショップですか?」


「ええ。そちらの毛並みのいい小鳥もいいですが、こちらにも色々取り揃えてございますよ」


「はい」


とりあえず、勢いに負けて入ったものの、中にいる子たちからはほとんど魔力を感じられなかった。


「ジャネットさん。ペットって何ですか?」


「要は普通の動物だよ。ただ、ここは高級店みたいだからちょっと魔物寄りのものもいるみたいだけどね」


私たちが小声で話していると、店主がいくつかのかごを持ってきた。


「こちらなどはいかがですか?」


「あの、そもそもペットって?」


「おや、お父様から聞かされておられないので?」


「は、はい」


どうやら、貴族か商家の娘と勘違いされているようだけど、それはそれで教えてもらえるのでありがたい。


「ペットは基本的に動物ですが、当方のような一流の店では魔物とかけ合わせた、魔獣と呼ぶべきものを扱っております。ああ、もちろん、魔物の成分は薄くしておりますので安全です。ちょっと火を出したり、水が出せたりするぐらいですね。それでも、ちょっとした芸は覚えられるので、この機会に増やしてみてはどうですか?」


「う、うう~ん。今日は内緒で来てるんです」


「そうでしたか!では、ぜひまた今度いらしてくださいね」


「そうだ!ちょっと聞きたいんですけど、このお店に従魔とかはいないんですか?」


「従魔ですか…。うちじゃあ法的に厳しくて取り扱いしておりません。申し訳ございません。一応、町はずれのところに保護施設はあるみたいなのですが、危険ですので」


笑顔でまた来てくださいと店主さんは言っていたけど、あからさまにがっかりしていた。どうやら当てが外れたみたいだ。


「やれやれ、あんな簡単な呼び込みぐらいいなしなよ」


「急だったので。それにちょっと興味もありましたし」


「だけど、おじさんの言う通りなら旅には連れて行けないね。ほとんど動物だって話だし」


「そうだね。アルナも本当はアルバに居て欲しかったけど、戦えはするし」


見た感じ、あの店にいた子たちでも魔力が高いもので20程度。本当に持っているぐらいだ。動物は基本10前後らしいから、わずかな差だ。愛玩用に作られたのだろう。


「それより、目的地に着きましたよ」


「目的ってここかい?こりゃあ、お嬢様趣味なことで」


「もう、そんなことないですよ」


私たちが今いるのは楽器店の目の前だ。まあ、ジャネットさんの言うことにも一理あって、この世界では楽器というか芸術分野は大変なのだ。酒場なんかで演奏できても収入は低いし、そもそもうるさいとか言われて弾くのも大変だって聞いた。旅をしながらは危険だし、パトロンを探すのも大変で、多くは商家の繋がりか貴族の家に生まれた人が成るんだそうだ。


「ごめんくださ~い」


「はい、いらっしゃいませ。本日はどのような楽器をお探しですか?」


「えっと、軽くて持ち運びやすいのって何がありますか?」


「持ち運びやすいものですか?楽団か何かの関係ですか?」


「いえ、旅をしているので」


「それでしたらこちらはいかがでしょう」


店員さんが出してくれたのはやや小ぶりなフルートのような楽器だ。色味からするとこれは白銀かな?


「どうですか?これなら手入れさえすれば長くお邸でも別荘地でも使えますよ」


「へぇ~、どんな音色ですか?」


「少々お待ちください」


店員さんが奥から別の人を呼んで来る。楽器の種類もいっぱいあるからどうやら専門の人みたいだ。



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― 新着の感想 ―
お嬢様の趣味で演奏する楽器と言えば、ピアノかバイオリンかフルートだよね。 旅先に持って行けるとなれば、実質フルート一択になるのはわかる。
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