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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
17章 鉱石の町ハティルとグラントリル

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渓流に沿って 番外編付き

私はゴーレムさんが休んでいる横の木を切り倒す。


「アスカ、何してるんだい?」


「ちょっと」


私は直ぐに木を加工して板を作ると、簡単にあぶって焼き板を作る。


「あとはこれをこうしてと…」


柱を地面に突き立てようとすると、ティタがゴーレムさんにお願いして地面から柱になる石柱を作ってもらった。


「いいの?大切な魔力なのに」


ゴーレムは核の魔力を使って動く。当然、魔力を使うとその分は休みの時間を多くとらなければならない。それなのに魔力を使って石柱を作ってくれるなんて!


ゴゴ


面白そうだからと返事をもらったので、私も負けないようにしなくちゃ。


「柱はこれで出来たからこっちは板にして予備だね。人が整備できるように一応、脚立を作っておいてあとは屋根と囲いを作って…そうそう!床は作っても破れちゃうだろうから魔法でここだけ盛っといてと」


簡単だけど、ゴーレムさんが休める小屋を作る。これであとは…。


「ここはゴーレムの休憩所です。大人しい子なので見守ってください。それと、不要な魔石やくず魔石があればこの箱に入れてください。ゴーレムが食べる姿を見られますよ。こんな感じでOKかな?」


「ああ、サンドリザードの岩場にあったやつと一緒だね」


「はいっ!この辺のゴーレムは人と対立してないみたいですし、こうすれば見慣れない冒険者たちも襲ってこないと思うんです」


「まあ、例外もいるだろうけど、それは仕方ないね」


「それじゃあ、ゴーレムさん!入ってみてもらえます?」



隣で休んでいたゴーレムさんにおうちに入ってもらう。良かった、立ったままでも十分なサイズがある。


「うんうん。問題ないみたいだね。がっしりしたつくりだから早々は壊れないと思うけど、また手紙でバルドーさんに頼んでおかないと」


「ま、バルドーさんなら細工一つでも送っときゃやってくれるだろ」


「そうですね。そうだ、できた記念ってわけじゃないけど、これ入れておくね。数日に分けて食べるんだよ。それと、スカーフを巻いといてあげる。これならすぐに害がないってわかるだろうし」


ゴゴ


昔ティタにやってあげたみたいに腕の関節近くにスカーフを巻く。


「うん!これで良しっ。頑張ってね」


ティタにあげていたくず魔石などを少量放り込んでお別れを済ます。入れた魔石は水魔石を主に食べるようになったティタが以前食べていた他の属性の魔石だ。他の魔石は食べると水のLVが下がるので在庫になっていたものだ。


「もういいのですか?」


「はい。これであの辺りのゴーレムさんも居心地がよくなるといいんですけど…」


「やはり、魔物使いの方ですね。以前に護衛をしてくれた冒険者の方もそうやって世話を焼いていましたよ。その冒険者はキャット種を連れていたので、種族は違いますが迷子の子どもを保護しておりました」


「そうなんですね。でも、気持ちはわかります。やっぱり子どもみたいに思えてくるんですよね」


「ははは、小さいお母さんですね。では、出発しましょうか」


「はい。貴重なお時間をいただいてありがとうございました」


「いいえ」



そしてさらに翌日。


「なんだか、川がちらほら見えてくるようになりました」


「ええ。ここからは街道も川に近いところを通りますよ」


「ん?」


「おや、また魔物ですか?」


「多分そうだと思いますけど、小さいですね」


「小さい?ああ、きっとそれはウォーターフロントリザードですね」


「まんまですね」


「まあ、そうとしか言えない生態をしているので。水辺に住み性格は穏やかというか臆病でして。何なら子どもにも驚いて逃げてしまいますよ」


「はぇ~、そんな魔物もいるんですね」


「食用としてはおいしいらしいですが、いかんせん捕まえるのが難しく…」


「まあ、臆病で害のない魔物なら無理に狩らなくてもいいですからね」


「サイズも50cmほどで身も少なく高級ではあるんですがね」


にゃ~


「キシャルどうしたの?」


私たちの声が聞こえていたのかキシャルがひょっこり顔を出す。


「キシャルが呼んでこようかといってますが、どうしますか?」


こそっとティタが耳打ちしてくる。


「う~ん、確かに見てみたいかも」


にぃ~


キシャルが一声鳴くと恐る恐るというかおびえながらウォーターフロントリザードが1組前に出てきた。


「へぇ、珍しい。人前にわざわざ姿を現すなんて」


「そ、そうですね」


キシャルは氷属性の魔物だけど、これほど実力差を持った水属性の魔物なら呼び寄せられるらしい。前にティタに教えてもらったんだけど、高位の魔物にはこういう特性があるらしく、同属性の弱い魔物が逃げないのは機嫌を損ねて種族ごと全滅しないための、生存戦略らしいとのこと。


「でも、この子たちかわいい~」


大きい方でも30cmぐらい。小さい方は20cmぐらいととてもかわいい。色は薄い水色でトカゲというよりオオサンショウウオみたいな体型だ。


「ちょっとだけ遊んでも?」


「いいですよ。この辺でひと休憩にしましょう」


ちょっと休憩時間を設けてもらってウォーターフロントリザードと遊ぶ。ついでに魔物辞典も開いていろいろと書き込んでいく。もちろん、リザードの言葉はわからないのでティタに通訳を頼む。


「ふんふん。じゃあ、肉とか食べないんだ。水草と…魔力?」


そこは魔物。ティタみたいに普通の食事だけでなく魔力が取れるものも好きらしい。ただ、だからといって魔物の肉を食べるわけではなく草食みたいだ。まあ、これだけ小さい種族じゃ倒すのも大変だろうけど。


しゃ~


「魔法は水属性とちょっとだけ光属性ね。寝るのは水の中と。水はやっぱりきれいな方がいいの?」


こくこくと小さい子が返事をしてくれる。


「光の魔法と水の魔法で浄化魔法は使えないの?」


しゃしゃ~


光の魔法LVが低すぎて十分にできず、水の魔法だと周囲全体の水と混ざり合ってしまい確保が難しいのだとか。魔物のランクも最低のEランクだし、しかもゴブリン以下の実力とも書いてある。違う点があるとしたら、逃げることを選ぶぐらいだ。


「それにしてもかわいいよね~」


私は逃げないのをいいことにリザードのあごを撫でる。爬虫類は苦手!って人もいるけど私は別に問題ない。この子たちは特にくりっとした目もかわいいし。実際に動きはのそっのそっとしてるんだけど、逃げる姿だけはシャカシャカと動く。さらに水の中に入ったらウォータージェットのように後ろに水を放出して一気に離脱するという逃げ方をするみたいだ。


「これはいい考えだね。ムルムルたちもできないかな?」


「これでも人の皮膚よりは丈夫ですよ。それに元々水中生活に適した体です」


ティタが指をリザードに付けるとぐにゃりとへこむ。ぶよっとしていて形も水中で早く動けるようになっている。


「そっかぁ、良い案だと思ったのにな。そうそう、協力してくれたお礼もしないとね。まずは…」


これから食事もあるし、MPには余裕もあるので来てくれた2体に魔力を流す。あとは。


「はいっ!尻尾出して」


???


なんだと思っている2体に尻尾を出してもらう。そしてその尾にディリクシルの小魔石を付けてあげる。即席だけど小さい金属片を加工して作った細工を括り付けたものだ。


「ちょっとだけだけど、収縮の魔方陣が入っているから大きくなっても付けられると思うよ。こうやって水の中で魔力を込めるの。光らせるんじゃなくて浄化する気持ちでね」


私が見本を見せるとリザードたちも尻尾をちゃぷんと水に付けて光らせている。うんうん、自分たちでも言ってる通り、魔力は少ないみたいだから光らせられる時間も短そうだけど、もう少し能力が伸びたら大丈夫そうだな。


「そうだ!ついでに主食の水草にも魔力まいとこう。やっぱりご飯はおいしい方がいいもんね!さっきのゴーレムさんもそうだったけど、寄り道はできないからできることはやってあげないと」


「アスカ~、そろそろ時間だとよ」


「は~い!それじゃあ、2人ともこれからも力を合わせて頑張ってね!」


しゃ~~~


こうして順調な王都への旅は続くのだった。



ここからプチ番外編です






「水神様~、どうなさいました?」


「昔を思い出していた。まだまだ小さかったころのな」


「水神様の小さい頃?どれぐらい前ですか?」


「ふむ…1000年前ぐらいか?」


「すごい前なんですね!」


「まあ、100年で50cmほどしか成長しないからな」


「ええっ!?そんなに少ないんですか!てっきり私は100年もあれば1mぐらい大きくなるのかと…」


「この村に居ついたのも、もう700年前だ。そんなものであろう」


「ほへ~、それにしては村って発展しませんね」


「我が村の長に頼んで自然を残してもらっているのだ」


「あ~、確かに食事とかこだわりますもんね」


「そうは言うが、おいしくないと力にならんのだぞ?これも我に力をくれたものの言葉だが」


「水神様に力を与えるなんてすごい人なんですね」


「まあそうだな。それにしてもお前はマイペースだな」


「そうですか?まあ、巫女っぽくないとは言われますけど…」


「それで我も思い出したのだろう。どれ、久しぶりに力を使うか」


すこし額に力を込め魔力を放つ。サアァァと光が空に伸び、数分後には雨が降り注ぐ。


「わぁ!これがみんなが言ってた恵みの雨なんですね」


「お前たちの世代は初めて見るか。これが我に巫女が付く理由よ」


「おばあちゃんも言ってました。水神様はこの村の守り神だって。他の町や国は水の巫女様にお願いしてるけど、この辺りの村は一度も頼んでないって」


「まあ、お前たちには世話になっているしな」


ピシッ


「あっ、今のでまた魔石が壊れたみたいですね。新しいのに変えないと…あれ?奥にあるリボンと魔石はボロボロですけど」


「ああ、それは置いておいてくれ。まだまだ未熟な頃のでな。保存ができるようになった時にはボロボロになってしまっていたのだ」


「水神様の思い出の品なんですね。では、仕舞っておきます。そうだ!今度、保存出来て透明な箱を持ってきますね。前に近くを通った商人が持ってきたんですよ。家宝にするほどのものなんてこの村にはありませんと断りましたけど、ちょうどいい大きさですし」


「すまんな」


「いえいえ、これからもお世話は任せてください!」


巫女が離れていくと私は泉から空を見上げる。果たしてあの後、あの少女はどうなったのか?


「流石に生きてはおらんだろうが、一度見に行ってみるか」


「父上、どうされました?」


「ああ、ちょっと用事ができたのでな。100年ほど席を外す。子どもたちよここを頼むぞ」


「はぁ…珍しいですね。1年と持ったことがないのに急に100年だなんて」


「世界は広いと聞くしな。よっと!」


人化の法で姿を変えると、簡単に身支度をして村に向かう。


「外に行かれるのでは?」


「一応村長に挨拶をな。もう40年の付き合いであることだし」


こうして私は少女の足跡をたどる旅に出たのだった。


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