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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
17章 鉱石の町ハティルとグラントリル

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初めての目的地

「見送り、来てくれたんだね」


「うん!リュートさんにもいっぱいお世話になったし」


「ビリー、頑張ったもんね」


ガシッと握手をする男の子たち。うう~ん、まあこれはしょうがないよね。


「アスカ、おやっさんの手帳を大事にするんだぞ」


「バルドーさんもお元気で。喧嘩しちゃだめですよ」


「ですって、バルドー」


「うるせぇ!まったくお前ときたら…それと現時点での値段だからな。自分でうまくなったと思ったらあれを基準に高くしろ」


「は~い」


「おねえちゃん、元気でね!」


「うん。孤児院の他のみんなにもよろしくね」


他の子も見送りに来たかったみたいだけど、大勢で押しかけても迷惑ということで、一人だけ代表して見送りに来てくれた。


「そうそう、私がいなくても寂しくないようにたまにバーナン鳥が遊びに行ってくれるから仲良くね」


「ほんと!みんなよろこぶよ」


「だけど、小鳥だから優しくしてあげてね」


「うん!」


よしよし、この子にいいことがありますように。なでなでと頭をなでてあげる。


「ほら、そろそろ依頼の時間だから行くよ」


「はい。それじゃ、皆さんお見送りありがとうございました!」


「おねえちゃん、元気でね~!」


私たちはみんなに見送られ依頼者と落ち合う門の近くに向かった。


「えーっと、どこですかね?」


「まだなんじゃないかい。時間も少し早いしね」


「あれじゃないですか?商会のマークもついてますし」


「本当だね。行くとするか」


私たちは依頼を受けた商会のものとみられる馬車に近づく。


「おや、あなたたちが?」


「ああ、ナッシュ商会だね」


「はい。ベルン・ナッシュと申します。この度はよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします」


「おや、こちらのお嬢さんは?」


「うちのリーダーだよ」


「それは失礼しました。よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします。馬車はあれ一台ですか?」


「はい。そこまで大きい商会ではありませんので。護衛の方も3名のパーティーだったので助かりましたよ。人数分、船代もというのは中々のものですから」


「そうそう、そっちの話は依頼を受けた時の通りに…」


「もちろんです。いやはや、最初はどうしてと思いましたが当然ですな」


「何の話ですか?」


「いいからさっさと進むよ。とりあえず、船に乗るために町に行かないと行かないんだから」


「そうですな。では出発しますか」


「あれ?御者さんは?」


「ははは、小さい商会ですから。冒険者さんも乗らないと日数がかかりますからね。御者がいては荷物が載りませんよ」


「そうなんですね」


「アスカはせっかくだし隣に乗らせてもらいな。あたしが後ろリュートが荷台を見てるよ」


「いいんですか?」


「ああ」


にゃ~


「おっ、キシャルはこっちかい。最近あんまり来てなかったから久しぶりだねぇ」


早々にキシャルはジャネットさんと一緒に後ろに、アルナも寒くなってきているからかリュートと一緒に中に入っていった。


「ベルンさん、よろしくお願いします」


「こちらこそ。先ほどはすみませんでした」


「いいえ」


こうして馬車は一路、川沿いの町を目指して進みだす。


「ちょっと止まってもらってもいいですか?」


「はぁ、構いませんが…」


「リュート、そっち頼むね」


「了解。ジャネットさん出番ですよ」


「はいよー」


「いったい何を?」


「魔物がいるから対応をと思いまして」


ベルンさんに説明してこちらはジャネットさんに向かってもらう。


「多分、ウルフ系です」


「おっけー」


ジャネットさんはフリフリと手を振って伝えた場所に行く。


ガオォ


「はんっ!吠えたって無駄だよ」


にゃ~


ジャネットさんが数匹いるウルフ種に襲い掛かる。それを援護するようにキシャルが肩から飛びついていく。


「キシャル器用だな~」


一体のウルフ種に爪でひっかいたと思えば、すぐに飛び移り次の獲物へ。距離があるなと思ったら無理はせずジャネットさんの肩に戻る。


「ほぉ~、あの小さい従魔はお嬢さんのでは?よく連携ができてますな」


「そうなんです。最近はジャネットさんにばっかり構って」


「にしてもお強いですね。あの剣士さんは」


「もちろんです!」


戦闘もすぐに終わり、ササッと処理をして再び進みだす。下処理なんかは船に乗る街でギルドに任せるつもりだ。陸路は4日間だけどそこをもしも過ぎてしまったら、次の船はちょっと先になっちゃうからね。


「ふぅ~、今日はここまでですね。それにしてもアスカ様たちのパーティーに頼んでよかったですよ」


「ありがとうございます。でも、護衛の経験自体は少ないんですよ」


「経験より実力ですよ。下手に慣れてしまうとこういう野営の時などに気を抜いたりということもありますので。それに、お昼の襲撃ですよ。相手より先に襲撃が分かるというのはとても助かります。馬が暴れる前に対応していただけるということですから」


「そういえばこの馬車って何を運んでるんですか?」


夕食を作りながらベルンさんに荷物をたずねる。


「メインは石ですね。あとは魔石や宝石やらです。他にも細工なども扱っていますが、いかんせん馬車が1台ですので」


「石ですか?わざわざ王都まで運ぶんですか?」


「もちろんですよ。細工師が王都にいますからね」


「でも、グラントリルに居た方が細工師さんも楽じゃないですか?すぐに石が手に入りますし」


「そう思われるかもしれませんが、石像を置くのはどんな家だと思いますか?」


「石像を置く家…う~ん、大きい商家とか貴族ですか?」


「ええ、その通りです。ですので、グラントリルで細工をしたところで、結局は王都の人間の目に留まらなければいけないんですよ。そして、邸に置く石像は目的によってサイズも変わりますから、邸に訪れることはありませんが指定されたサイズで作らないといけません。そうすると、打ち合わせに便利な王都の方に工房ができてしまうんです」


「うまくいかないもんなんですね」


「そうですね。ひょっとしてお嬢さんもグラントリルで発注を?」


「い、いえっ!そんな作る必要は…なくはないですけど」


アラシェル様の神像なら作ってもらいたいかな?大きいのは作ったことないし、欲しいとは思う。ただ、置くところがね。まさか、フェゼル王国の中央神殿に置いてもらうわけにもいかないし。


「必要でしたら、王都についてから紹介しますよ」


「あはは、考えておきます。そういえば、魔石って何を扱ってるんですか?」


「まあ、一般的なものが多いですね。ただ、最近は風の魔石が流行っているのでそちらを売ろうかと」


「そうなんですね。知り合いの魔道具師とかはいないんですか?」


「それが、馬車を守れる魔道具が最近出たんですが、それをマネしてやろうとみんな躍起になってましてね。魔石だけ提供してもそこそこ儲かるんですよ。なじみのところもできたら直接商会に売ると言ってるぐらいですからね。ちょっとしたお祭りみたいなもんですよ」


「ちなみに1ついくらなんですか?」


「ウィンドウルフの魔石の中サイズで金貨10枚ですね。ですが、これでもまだ安いということらしくて…」


そう言いながらちょっと現物を見せてくれるベルンさん。ものとしてはギリギリ中サイズかな?これなら、10枚というのも納得かも。


「…中サイズですか」


しまった、思わずぽろっと口に出てしまった。


「ははは、確かにやや小ぶりですが、これでも今は中サイズで通用するんですよ」


「そうなんですね」


「お嬢さんにも興味が?」


「知り合いにも魔道具師がいるのでちょっと興味があったんです」


「そうですか。そういう状況ですから、王都でも難しいですよ」


「逆に今は人気のない魔石とかありませんか?」


「人気のないものですか、この周辺だとロックワームぐらいですね汎用系ならオークメイジも安かったような…」


「オークメイジって人気ないんですか?」


「まあ、効果が効果ですから。熱も火を起こしたり、熱湯を出したりできませんからねぇ」


「へぇ~、そうなんですねぇ~」


これは今後の為に買い占めておかないといけないな。まだまだお風呂は必要になる場面もあるだろうし。


「それにしても先ほどは豪華な食事をいただいてすみません」


「いいえ。流石にベルンさんだけ別メニューじゃ悪いですからね」


今日の夕食はから揚げカレーだ。私の大好物なんだけど、宿じゃ一緒に出したら予算もあるしついに出ることはなかったメニューだ。こういうところは旅先のだいご味だ。予算関係なしに料理を作れるからね。


「いや~、それにしてもうまかったですよ。いつの間にあんな料理ができたのか…」


「商人ギルドに登録されてるみたいですよ。私たちもそれで知ったんです」


「興味深い情報をありがとうございます。王都に着いたら調べてみますよ。おっと、良い時間ですね。寝るとしましょう」


「おやすみなさい。見張りの方は任せてください!」


「ええ、お願いします」


ベルンさんが馬車に戻るとササッと馬車を覆うように魔道具を使う。こうした方が安心だからね。


「お代が欲しいところだけど、ちょっと今は品薄みたいだし売ってくれって言われても面倒だからね」


いつものように見張りにティタを立てて細工をしながら見張りの時間を過ごす。そうして、2日後…。


「ふぅ、そろそろ森を抜けそうですね」


「はい。街道もここからは水辺へと向かいますよ」


そんな話をしていると近くで音がした。


ズシーン ズシーン


「何の音でしょう?」


「ああ、ゴーレムが近くにいるんですよ」


「ゴーレムですか」


「まぁ、この辺のゴーレムは人を襲いませんから大丈夫ですよ。たまに他の地域の冒険者が知らずに相手をしているようですが」


「そうなんですか…ちょっと寄ってみてもいいですか?」


「予定より早く進んでますし、構いませんよ」


私はベルンさんに頼んでゴーレムの方へと向かってもらう。


「ん?休憩かな座り込んでる」


「この奥にどうやらゴーレムの食事となる山があるみたいなんですよ。人間にとっては崩れやすいただの石なので開発の予定もありません」


「それじゃあ、行ってきます」


馬車から降りるとティタを連れてゴーレムの目の前に行く。


「こんにちわ!ここでなにしてるの?」


ゴ ゴゴ


「食事が終わって住処に帰るまでの休憩だそうです。他の仲間もよくこの辺で休んでるみたいですね」


「そっか、ティタみたいに住んでるんじゃなくて移動してるんだね」


ゴゴ


「山はロックワームがいるから面倒くさいので毎回帰っているそうです」


「なるほど。でも人間にも襲われるみたいだしちょっと待っててね」


ちょっといいことを思いついた私はゴーレムさんに話しかけて用意をしたのだった。



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