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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
17章 鉱石の町ハティルとグラントリル

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街中の冒険

「それじゃあ、本屋さんに行きましょうか!」


「ん?まあ、最初はそうだね」


「最初?」


「せっかく出てきたのにまさか1軒で終わる気かい?」


「そうですね!ジャネットさんと2人ですし、いろいろ見ちゃいましょう!」


「お、おい…」


ジャネットさんの腕を引いて本屋さんに向かう。


「えっと…どこですか?」


「場所も知らないのに手を引いたのか。こっちだよ」


ジャネットさんに先導されて、街の中に入っていく。


「この先の奥だよ」


「ありゃ、表通りから外れてるんですね」


「ああ。なんでも光が当たらないようにだって」


「日焼けしちゃいますもんね。陰干しの手間も省けますし」


「そういうことらしいよ。そんじゃ入るか。お~い、新客だよ」


「はいは~い。あら、かわいいお嬢さんね。連れ込んだの?」


「人聞きの悪い。うちのパーティーリーダーだよ」


「アスカって言います。よろしくお願いします」


「こちらこそよろしく。街の本屋、ミコンの店主カナレアよ。今日はどんな本をお求めかしら?」


「そうですね~。薬草について書いてある本とかありますか?」


「薬草?ポーションでも作るのかしら?」


「あ~、ちょっと普通のやつじゃないのがいいんです」


「えっと、特殊なのね。ここだったかしら?珍しいのは高いし、どの道作れる人がいないから場所がわからなくて」


「そんなのいいわけだろ。仕事はちゃんとしなよ」


「してます!他にも売れ筋のリストや売り上げの管理もしてるから時間が足りないの」


「そんなこと言って、あたしが来た時は読書してたろ?」


「しょうがないでしょ!読んでないと勧められないじゃない」


「……」


「どうかしたの?」


「いえ、お二人とも仲がいいんだなって」


「いや、別に良くないよ。聞きたいことを聞くだけさ」


「そうそう。ぶしつけに聞いてくる人はこの人ぐらいよ」


う~ん、やっぱり仲がいいと思うんだけどな。まあ、そういうならこれ以上、深くは言わないでおこう。


「それで、調合関係の本ね。高額なのでもいいの?」


「はい。値段はあとで考えるので、どういったものが作れるのか教えてもらえれば…」


「…ふむ。それだったらこの変わり種はどうかしら?」


「この本は?ああ~、これってガザル帝国時代の本ですか?」


「あら、よくわかったわね。実は私が読めないから何が書いてあるかもわからないの。ただ、装丁もいいし悪いものではないはずだわ」


「本屋が中身も分からないものを勧めるのかい?」


「しょうがないでしょ。本当にわからないんだから。帝国言語関係の本はこれともう数冊あるだけで、子供向けの絵本とかないから読めないの」


「ちょっと見せてもらってもいいですか?」


私はちょっと豪華な装丁の本を手に取る。


「えっと、コーラ…ル家の製薬書 後編。どうやら、製薬に関する調合とか使い道に関する本みたいですね。それも後編だと応用だけ見たいです」


「えっ!?アスカちゃんって読めるの?」


「まあ、ちょっとは…。辞書がないので今はゆっくりですけど」


「な、なら、どう?金貨2枚で!」


「あんた今、本のタイトル聞いて値付けしただろ?」


「失敬な!前々から決めてたわよ。古い本でこれだけの保管状態を保ってるのって少ないのよ?」


「要は長期在庫だろ?」


「そういうのはスペースを取ってる分、高いのよ」


「う~ん、ちょっと高いな。あっ…これ買います。それ以外のガザル帝国の本ってありますか?」


「ちょ、ちょっと待ってね。すぐに持ってくるわ」


購入する意思を見せるとカナレアさんは何冊か奥から本を持ってきた。


「はい。とりあえず台帳に載ってるのは持ってきたから、好きなものを選んでね。1冊はプレゼントするわ!」


「そんな、悪いです」


「ううん。どうせ、帝国言語なんてもうほとんどの人が忘れてしまっているもの。学者さんは研究してるって話を聞くけど、そういう人はこういう本見ないでしょ?」


「それはそうかもしれないですけど…」


「とかなんとかいってやっぱり高すぎたか?って思ってるんじゃないかい」


「違います!ささっ、どれか選んでね」


「どれかってジャンルとか別々ですよね?金額はいいんですか?」


「それが、保管状態がいいか悪いかぐらいしかわからないの」


「う~ん。もらう本ってあとで決めてもいいですか?」


「もちろんよ。どの道、買ってくれるお客さんはいないでしょうし」


「ありがとうございます」


カナレアさんにお礼を言ってひとまず”コラール家の製薬書 後編”を買って店を出る。


「いいのかい?結構高い本だったけど」


「まあ、カナレアさんの言う通り、保管状態もいいですし。それにこれ、ちょっと厄介で…」


「厄介?」


「ちらっと見たページに毒薬の製造方法が載ってたんですよ。もしかしたら、もう解毒薬が作られてないかもと思いまして」


「古い薬は使用されないからってことかい。確かにあり得るね」


「多分この貴族の研究成果だと思うんですけど、結構色々なことが書いてありますね。途中には愚痴みたいなのも見受けられましたし」


「ただの製薬書じゃないってことだね。読めるやつがいるとも思えないけど、掘り出し物だね」


「おかげでもう1冊ただで手に入りますからよかったですけどね。さ、次はどこに行きましょうか?」


「次ねぇ。どこかあったかな?」


「とりあえず、見ていきましょう!」


街をぶらぶらしながらお店に入っていく。当然、バルドーさんの家だけでなく他にも細工屋はいっぱいあるので、覗いていく。


「あっ、ここは置物ですね。これよさそうですね」


「これ?この辺り寂しくないかい?」


「それがですね、ここにこれをこうして…」


私はマジックバッグから持っていた魔石を取り出す。


「ほら、こうすると見違えるほどきれいになりますよ」


「ああ、確かにこれならどこに飾ってもいいね。飾るところがあればだけど」


「お、お土産とか?王都でムルムルにも会いますし」


「それなら、王都で買えばいいんじゃない?」


「そんなの駄目ですよ!旅先で買ったものじゃないと」


「まあ、同じものが買えない方がいいか。他には…ん?これは魔石か」


「おや、そちらをお求めですか?やや大きいですが、あまり強い力はないんですよ。金貨6枚でどうです?」


「6枚ねぇ…。ま、いいか」


「ジャネットさん、それ買うんですか?」


「ああ、珍しい青色のやつだからね。ほいっと」


会計を済ませて店を出る。私は件のツボを、ジャネットさんはさっきの魔石と変な石を買っていた。


「変わったものばかり買ったんですね」


「ギャンブルってやつさ。たまにはこういうのも必要だよ。自分の運気を占うんだ」


「じゃあ、次の店で私もやってみますね」


そう意気込んで入った次の店は…。


「本当に冒険するかい?」


「やめておきます」


残念ながらぬいぐるみなどを扱う店だった。流石に変なキャラを買う気にはならず、手ごろなサイズの人形を2体ほど買った。


「そんなのどうするんだい?自分で作れるだろうに」


「自分で作ったものを自分で愛でたら変な人じゃないですか!」


「でも、神像は作って拝んでるだろ?」


「あれはいいんです!私は信者ですから」


それに私には考えもあるのだ。ふふふ…。


「さあ、そろそろ小腹が空く時間ですし、お茶にしましょう!」


「いいけど、どこに入るのさ」


「そこはほら、あそこにしましょう!」


ちらっと目に入った店に入る。こういうのは外装で選んだら間違いない。


「いらっしゃい」


自由席の店だったので2人テーブル席に着きメニューを見る。


「えっと、クッキーと紅茶のセットか。ジャネットさんはどうします?」


「あたし?どうしようかな?一緒でいいよ」


「じゃあ、注文しますね」


しばらくすると、一緒にセットが運ばれてきた。


「いただきま~す」


さくっ


「ん、ん?クッキー」


確かに食感だけはクッキーだけど甘さがない。小麦に何か混ぜて焼いたものだ。まあ、一応は焼き菓子っぽいんだけど。


「どうしたんだ?」


「いえ…なんというかこう、思ったのと違っていて…」


「こういうもんだろ?酒場のよりは十分豪華だぞ。あっ、まさかまた港町でのお菓子を思い出してんな!ああいうのの方が珍しいんだっての」


「た、確かにあれはおいしかったですけど、流石にあそこまでは思ってませんよ。大体、あれは別の国の店ですし」


「それよりこっちの紅茶、旨いよな。香りもいいし」


「そうですね。クッキーは薄味ですけどこの紅茶があるからある意味、ぴったりかも。紅茶の味が毎回感じられるのはいいですね。街並みを見るだけでも楽しいですし」


「それはいいんだけど、ゆっくりばかりしてないで次の行き先決めときなよ」


「は~い。といっても、普段からあまり買い物行かないし…服はまだあるしなぁ」


それにちょっと王都の服が気になるので、この街で買い込んでも仕方ないしなぁ。ただでさえ冬服はかさばるし、タイミングは大事だ。というわけで私が選んだのは…。


「キシャル~元気?」


にゃあ~~~


見りゃわかるだろと言わんばかりにぶすっと返事をするキシャル。子どもたちの元気さに負けたのか、周りを囲まれされるがままだ。


「あっ、飼い主のねーちゃんだ!」


「飼い主…。ほら、ちょっと困ってるから返してね」


私の言葉とともにするりと子どもの手をすり抜け頭に乗ってくる。よっぽど疲れたんだね。


「行っちゃった」


「また、今度遊んであげて。まだ、子猫だからずっと起きてられないの」


「それでさっきからぐったりしてたんだ!」


「そうそう。それじゃあね」


子どもたちと別れて宿に戻る最中も珍しく私の頭から離れないキシャルだった。


「もう帰るのかい?」


「キシャルがこの調子ですし」


ちょいちょいとキシャルの顔に指を近づけるとぺしっと弾かれる。


「もう、そんなに嫌だったの?」


にぃ~


構ってき過ぎだと一蹴するキシャル。まあ、その辺は愛嬌ってことで。


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