隠された力
「おはようございます」
「おはようさん。そんじゃ、ギルドに行くかねぇ」
「それなんですけど、ティタのステータスを調べるんですよね?」
「そうだよ」
「それって、こそっとできませんか?」
「なに言ってるんだい。そんなの当たり前だろ」
「へ?」
「この町に来るまでにも魔物使いがどれぐらい従魔をランクアップできるかを聞いたけど、普通はウルフがフォレストウルフになるぐらいだってさ。それが、あんたいくつめだい?」
「えっと…群体鳥にディプスバーナン鳥ぐらいですか?」
「キシャルを忘れてるだろ。グラシアキャットもだ」
「そうでしたっけ?いやぁ~、忘れちゃってたなぁ~」
「と言う訳で、前回のハティルの件を含めてギルマス直通だ。あの依頼受けといてよかったねぇ」
「よかった……んですかね?」
「まあまあ、とりあえずステータスが気になるし行ってみようよ」
「そうだね」
というわけで、ギルドに着くとギルドマスターさんのお部屋に送られる。
「おう! この前は世話になったな。向こうのギルマスからも手紙を届けてくれたし、今回のことは気にするな。従魔のステータスを計るだけだろう?」
「あ、そうですね」
「知らないっていいねぇ。それでものは?」
「こいつだ。それとギルドに置いてあった従魔リストも持ってきている。ついでに自分たちのステータスを計っていったらどうだ?」
「そうだねぇ。久しぶりにそうするか」
ティタのステータスは気になるけど、私たちも最近は力を計ってなかったので先に計ることにした。
名前:アスカ
年齢:15歳
職業:冒険者Cランク/魔物使い
HP:340
MP:1420/1420
力:80
体力:121
早さ:132
器用さ:386
魔力:360
運:74
スキル:魔力操作、火魔法LV5、風魔法LV6、薬学LV2、細工LV4、魔道具LV5、弓術LV5、空間魔法LV1(巫女)、特異調合LV3、魔力供与(魔物使い)、従魔化(魔物使い)、(隠ぺい)、帝国語学
名前:ジャネット
年齢:20歳
職業:冒険者Bランク/剣士
HP:696
MP:112/112
力:240
体力:230
早さ:316
器用さ:204
魔力:52
運:41
スキル:剣術LV6、投擲LV4、調理LV1、格闘術LV5、解体LV1、指揮LV2、火魔法LV1
名前:リュート
年齢:17歳
職業:冒険者Cランク/魔槍士
HP:445
MP:360/360
力:199
体力:185
早さ:188
器用さ:192
魔力:113
運:42
スキル:短剣LV2、投擲LV3、調理LV4、風魔法LV3、槍術LV5、解体LV3
名前:キシャル
年齢:1歳
種族:グラシアキャット の子猫
従魔:Cランク
HP:380
MP:370/370
力:148
体力:121
早さ:191
器用さ:159
魔力:160
運:54
スキル:氷魔法LV4、縮小化、氷・水耐性、冷爪
名前:アルナ
年齢:1歳
種族:ヴィルン鳥とバーナン鳥のハーフ
従魔:Cランク
HP:105
MP:332/332
力:19
体力:50
早さ:125
器用さ:91
魔力:197
運:80
スキル:風魔法LV4、水魔法LV1、飛行
うんうん、みんな少しずつだけどステータスが上がってるな。あとはティタか…。
「……なあ、お前ら本当にCランクパーティーだよな?」
「そうだよ」
「リュートでさえBランクでもおかしくないぐらいなんだが。しいて言うなら、アルナが成りたてのCランクで、キシャルがベテランか?」
「まあ、その辺はね。頑張って戦ってるしねぇ」
「そんじゃ、今回の本題に移るか。ティタ、ここに手を」
「はい」
ティタが機械に手を置く。これは本当に高性能だ。でも、種族とか肝心なのは出てこない時もある。そういうのは自分たちで頑張ろうねってことなんだろうね。
「どうやら結果が出たようだな」
名前:ティタ
年齢:257歳
種族:トランスゴーレム
従魔:Bランク
HP:250
MP:700/700
力:84
体力:120
早さ:70
器用さ:90
魔力:310
運:47
スキル:火魔法LV1、水魔法LV4、風魔法LV2、土魔法LV1、魔物言語、形質変化、変身
嘘っ!? なんかスキル増えてる……。というか魔法が四属性なんだけど。後、巨大化が形質変化になってる。変身っていうのはメイドゴーレムになったやつかな?
「こいつ本当にゴーレムか? ほぼ、魔法生物だぞ」
「まあ、色々あるってことさ。良かったろ、ここで測って?」
「全くだ! いくつ秘密にするべきか迷うな。それで、このステータスどうするんだ? ギルドのやつじゃ冒険者のステータス以外はどうにもできんぞ?」
「それは……」
「それなら、実は珍しい魔道具があって力を調整できるんです」
「本当なのアスカ?」
「うん!」
「……疑わしい話だが、お嬢様の言うことだしな。一度つけてみてくれ」
「えっ!? はい」
ヤバい。ここで隠ぺいを使うとは思ってなかったし、何か適当なものを…。
「ご主人様、あの腕輪を下さい」
「腕輪? この前作ってたやつ?」
ティタがうなづくので私もマジックバッグをごそごそして取り出す。水と風を意識してマフラーのようなふわっとした感じの細工を施して、中央にノースコアウルフの魔石を配している。でも、そんな効果ないんだけどな。
「これどこに着けよっか?」
「首に付けてください。おかしくはないですから」
「首だね。わかったよ」
そして私が首元で付けているとティタがささやく。
「今のうちに隠ぺいを」
「分かった……隠ぺい」
すかさず私はティタに隠ぺいを掛ける。もちろん、かけるのは元々のステータス自体を変化させる完全隠ぺいだ。ただの隠ぺいだとスキルで見破られかねないからね。
「はい。着け終わったよ」
「ありがとうございます」
「終わったか。じゃあ、もう一度置いてみてくれ」
「分かりました」
ティタがもう一度、ステータスを判別する機械に手を置く。
「ほう?本当に変わっているな。珍しい魔道具だが、本物でよかったな!」
「そ、そうですね」
名前:ティタ
年齢:257歳
種族:トランスゴーレム
従魔:Bランク
HP:150
MP:310/310
力:60
体力:90
早さ:60
器用さ:80
魔力:250
運:47
スキル:水魔法LV4、風魔法LV2、魔物言語、特定変化、
「ところで、このトランスゴーレムってのはなんだい?」
「ん? ああ、最初はよくわからない表示だったんだが、スキル検索を掛けたら一件だけヒットしてな。変身って言うスキルがあっただろ?あれで検索したんだ。えっと、登録日は…527年前だな。古いな」
「あてになるのかいそれ?」
「さあな。しかし、それ以外にはないんだから文句を言うな。何なら新種として登録するか? 別にうちは構わんぞ。どの道、527年以来のゴーレムと新種のゴーレムなら話題性は変わらんからな」
「話題性ですか?」
「魔物使いなのに知らないのか?毎年ではないが魔物のリストが載った本が出てるぞ」
「ええっ!?そんなの知らないです」
「まあ、弱点が載っているわけじゃなくて魔物使い用のやつだからな。この魔物をこのエサで育ててどうだったとか、こういう魔物を従魔にしたとか会報に近いものだ。各国の王都には並んでいると思ったが…」
「ん?それって薄い本かい?」
「まあ、そうだな。文章だけだし、10年ごとに発行される装本以外は内容的にもそこまでじゃないからだろう」
「ちなみに次の発刊はいつですか?」
「次は2年後のはずだ」
「あんた、やけに詳しいねぇ」
「なにを隠そう、俺の現役時代はパーティーに魔物使いが一人いたもんでな。ああいう専門書は部数も少ないし、せめてギルドで1冊ぐらい用意してやれってうるさいんだよ」
「2年後…ううむ、厳しいですね」
「なんなら、ギルドの在庫を買うか?8年前のやつだが」
「いいんですか?」
「一応確保してるんだが、お嬢様みたいに存在を知らないやつも多くてな」
「でも、どこが出してるんでしょうね?そういうのってまとめるの大変そうですけど」
「発行元が書いてあるから気になるなら覗いたらどうだ。一番詳しいって訳だからな」
「なるほど…そうですね。また確認していってみたいと思います」
「それで、登録はどうする?この名前で行くか?」
「う~ん、実際にはどっちの方がいいんですか?」
「新種だろうな。新種って言っても詳細が分かれば既存のゴーレムに統合されることもあるし、ただの変異種だということもある。興味は持たれるが、数百年ぶりの個体の方が目立つだろう」
「じゃあ、そっちの方がいいのかな?名前はなんにしたらいいかな~」
腕を組んで名前を考える。ティタの名前も確かティタンからとったはずだし、それっぽい名前がいいよね。
「えっと、名前はティターニアゴーレムで」
「ティターニアゴーレムだな。なら、そこだけは登録を変えておこう」
「お願いします」
「くれぐれもこのやり取りは内密にね」
「分かってる。流石に俺も黙ってるさ」
「それじゃ、これで用件は片付いたね。もう一日ゆっくりするか」
「いいんですか?」
「たまにはね…たまにか?まあいいや」
というわけで私たちは宿に戻ってゆっくりする。
「あ、あの、ご主人様…」
「どうしたのティタ?」
「お食事いただいてもいいですか?」
「ご飯?そっか、今まで我慢してたもんね。はい」
私は以前の戦闘で手に入れたゴーレムの核をあげる。きれいなままのそれをティタは一気に…。
「カリッ」
「あれっ?そんなちょっとでいいの?」
「見られながらは恥ずかしいです」
ううむ、話し方だけでなく感情っぽく話せるようになってうれしいなぁ。夜の話し相手もこれでもっと楽しめるかも。そんな思いも抱きながら残りの休暇を楽しんだのだった。




