こぼれ話 アスカとアラシェルの邂逅
「グリディア~、アスカのところ行こうよ~」
「どうしたんだ、急に?」
「ちょっと、連絡事項があるの~」
「別にアタシを連れて行かなくてもよくないかい?」
「ふっふっふっ~、それはね~。なんと!グリディアが力を貸してくれると、私の神力をほとんど使わなくていいんだよ~」
「自分のためかよ。まっ、いいけどな」
「やった~!ありがとね~、私はまだまだ新米の神様だから~」
私はぎゅっとグリディアに抱き着く。
「そ、そうか?まあ、頼ってくれるのはアタシもうれしいよ」
ふふっ、計画通り。グリディアは簡単に言うこと聞いてくれるからうれし~な〜。
「あっ。でも、私の話が終わるまでは出てこないでね~」
「おうっ!まあ、そこは自分の信徒だからな。大事な用事なんだろ?」
「うんっ!頑張るよ。と言うわけで、レッツゴー」
私はかけ声とともにグリディアに力を借りてアスカの夢の中に入る。ちょうど今は意識がないみたいだし、いいタイミングだった。
「アスカ、アスカ…」
「んん、だれ?」
「私です」
「ア、アラシェル様!?どうして?」
「あなたは急激な魔力の消耗で倒れてしまったのですよ」
「そっか、ティタのスキルで…」
「それでちょうど私もあなたに伝えたかったことがあったので、こうして夢という形で現れたのです」
「そうだったんですね。それで伝えたい話とは?」
「はい。いつも天界から見ていてとても頑張っているのですが、近ごろ面倒なことに巻き込まれそうでしたので、それの対処をと思いまして」
「面倒ですか?」
「はい。面倒とはあのゴーレムのことです」
「ティタが!?でもどうして?」
「アスカも知っての通り、あのゴーレムは少し普通ではありませんから。今回のことでますます普通ではなくなってしまいましたし」
「だけど、具体的にどう対処を?」
「今は使っていないようですが、アスカには隠ぺいのスキルがありますね?」
「はい。アルトレインに来た当初はお世話になったんですけど、今は冒険者のランクも上がりましたし、使わないようになりました」
「あれの対象を他人にもできるように強化しようと思いまして。流石に今の私ではスキルを一からというのは難しいですが、すでに持っているスキルに制限付きで変化を加えるぐらいはできます」
「だ、大丈夫なんですか?」
「ええ。制限事項としては今はアスカの意思一つでステータスを制限できますが、他人にかけるには双方の意思が必要となります。さらに、解除キーを事前に相手に伝えねばならず、いつでも相手が能力をもとに戻せる状態となりますね」
「それって意味あるんですか?」
「普通ならありませんが、今回の相手はあのゴーレムです。あなたの言うことなら聞くでしょうし、必要なら能力を開放するでしょう。それで面倒ごとを避けられるなら、構わないと思いますが」
「確かに…。じゃあお願いします!」
「では、目を瞑ってください」
アラシェル様の言う通りに目を閉じる。ふわりと手が頭に乗せられる。
「はい、もういいですよ。これで他の人にも使えるようになっています。ただ、スキルの説明をしないといけませんからまず、他人に使う機会はないでしょうけど」
「ありがとうございます!アラシェル様のすばらしさを伝えるために私、これからも頑張ります!」
「無理はせずにお願いしますよ。あなたがいつまでも元気でいることが大事ですから。そうそう、王都に行ったら、泉を見てくださいね」
「泉ですか?」
「はい。私からは伝えてありますのでよろしく頼みましたよ」
「分かりました!ほんとにお世話になりっぱなしで…」
「いいえ、第一の巫女として頑張っているアスカのためですから」
「そうそう、アンタがいるやいないやで騒ぎ立てるんだからなこの女神さまは」
「グ、グリディア、余計なことを…」
「グリディア様!?どうしてここに?」
「アラシェルのやつがどうしてもって言うんでね」
「お二人は仲がいいんですね。シェルレーネ様はいないんですか?」
「ああ~、ちょっと用事があってね」
「そうなんですね。残念です、ここに3人いらっしゃったら、新しい神像を作れそうだったのに」
「ま、そいつは今度ってことで今日はアタシら2人のを頼むよ」
「そうですね。それじゃあ、ちょっとポーズをしてみてください」
「ポーズですか…。こういうので構いませんか?」
「はいよ」
「グリディア様は完璧ですね。アラシェル様はちょっと硬いかも。でも、きれいですよ」
「そう面と向かって言われると照れますね」
「アラシェル、その姿でもじもじすんな。気持ち悪いだろ」
「なっ、なんですか、グリディアはさっきから!アスカの前ですよ」
「そうそれだよ!アスカ、こいついっつもお前のこと見てるんだよ。仕事もほとんどさっと終わらせて下界見てるしさ」
「そうなんですか!?忙しいのに申し訳ないです」
「いいえ、我々は基本暇ですから。今はあなたの成長を見ることが楽しみなのですよ」
「成長だなんて…」
「謙遜することはありません。この世界に降りた頃よりずいぶん成長しましたよ」
「ほんとですか!うれしいです。そうだ!ところで私の身長なんですけど、やっぱりアラシェル様ぐらいまで…」
「おや、そろそろお別れの時間ですね。まだ、力が少ないのでこれで失礼します」
「あっ…」
まだまだ、アラシェル様と話したかったけど神様が下界?に来るのは大変そうだししょうがないよね。
「ん…」
「アスカ?起きたかい」
「あっ、ジャネットさん」
「待ってな、リュートに飯持ってこさせるから」
「ありがとうございます」
「アスカ、もう大丈夫?」
「魔力を大量に急に使ったのとMP切れだけだから」
細工でミスリルを加工した時にあったふっと力が抜ける感覚だったからね。
「そう?ほら、食べなよ」
「ありがとう。あ~ん」
「あ、あ~ん」
リュートに食べさせてもらう。メニューはオートミールに近いかな?食べやすくていい感じだ。
「ご主人様、大丈夫ですか?」
「ティタ!ティタこそ何かなかった?」
「私はどうもありません。すみません、私のスキルのせいで…」
「いいよ。それより、前よりたくさんお話しできるようになったね」
「恐縮です。これからもお仕え致しますね」
「んで、ティタは結局なんになったんだい?」
「さあ?人の呼び名には興味ありませんので」
「そりゃそうか」
「じゃあ、ギルドに行ってみますか?きっとそっちのデータにならあると思うんです」
「そうだね」
「でも、明日だね」
「どうしてですか?」
「ここバルドーさんの家だし、もう夜だよ」
「ええっ!?じゃあ、このベッドとかって」
「宿のとかとは違うだろ。流石に新婚の家に居座るのはね」
「そ、そうですね。よっと…」
「ああ、無理すんな。ほら、担いでやるよ」
「わっ、いいですよ」
「病人なんだから無理すんな」
そう言われ仕方なくジャネットさんにおんぶで宿に運んでもらう。
「それじゃ、お休み」
「おやすみなさい」
宿に戻るとすぐにみんなでおやすみだ。まだ早い時間だったけど私に合わせて今日はみんな寝てくれるらしい。また、気を使わせちゃったな。
「そうだ!スキル」
「ご主人様何か?」
「えっとね…」
「あっ、少々お待ちください」
『これで聞こえてますか?』
「えっ!?どこから?」
きょろきょろ辺りを見回すも誰も起きてはない。
『私です。ティタです。これは魔力通話というもので、今は私とご主人様の間で出来ます』
『こ、こう?』
『さすがはご主人様!もう使えるのですね』
『な、なんとなくだけどね』
『それでお話とは?』
『うん。実は私のスキルに…』
私は今日、アラシェル様に会ったことと、隠ぺいのスキルについてティタに説明する。
『そのような力が…。やはりご主人様は素晴らしいです!』
『そうかな?ちょっと、変わってるだけだよ』
『ですが、明日一度ギルドに行って先に視てもらいましょう。人の方が魔物の情報の蓄積は多いので何かわかるかもしれません』
『そうだね』
と言うわけで私たちは当初の予定通り、ティタのステータスを確認してから隠ぺいを使うことになった。




