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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
17章 鉱石の町ハティルとグラントリル

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調査結果

「さあ、飯だ。遠慮はいらないよ。従魔たちはアスカの横でいいかい?」


「はいっ!」


「いい返事だね。いつもこんな感じか?」


「ああ、まあね。しっかし、豪華な食事で悪いねぇ。何もやってないのに」


「そうですね」


「謙遜するな。その話は後だ。まずは料理の説明をさせてくれ。おい!」


パラナさんが声をかけると、奥からシェフがやってきた。


「本日の料理を作らせていただきました、料理人のエイダルです」


「よろしくお願いします」


「では、説明いたしますね。奥のスープはワンアイズバードの骨を使った鳥のスープです。肉はその煮出しに使った鳥からこそげ落としたものになります」


紹介されたので、それを口に含んでみる。私たちとは別に、アルナにはお野菜、キシャルには多分スープにも入ってる鳥や肉などがバランスよく盛られている。


「いただきま~す。わっ、塩っけは薄いのに味が濃い」


「だねぇ。寒い季節にもよさそうだ」


「次はサラダです。こちらはこの周辺の村の特産を集めたもので、すべて朝採れのものを用意しております」


「こっちも確かにみずみずしい!他の人たちもこれを?」


「大体はそうです。しかし、一部の食材は生産量や運搬の関係で難しいですね。騎士団や鉱山夫ともなれば人数が違いますから」


「残念ですけど、それは仕方ないですね」


「お嬢様は素晴らしい方ですね。そのように部下のことを思いやるお客様は珍しいです」


「あっ、いえ、ちょっと気になったので…」


「まあ、下を大事にするのはいいことだ。向こうだってこっちを見る訳だしね。さ、次の紹介だ」


「次はメインの肉料理です。先ほどのワンアイズバードの炭火焼に、カットジュムーアステーキになります」


「こっちでもジュムーアっているんですね」


「数は少ないけどね。この先が森になっててその横を少し開拓してね。基本は客向けだね。わずかだけど市場に卸したり、ここで出す時はゲストが来たときぐらいか」


「貴重なんですね。わざわざ出してもらって申し訳ないです」


「そんなことはありません。お客様に出すとしても一部分だけですから。残りはもちろん、使用人などにも出しますので」


コホン


ちらりと声の方向を見ると、執事さんとかメイドさんたちも笑顔だ。どうやらここでもステーキはごちそうらしい。


「それじゃあ、私はステーキから!」


ぱくっと一切れを口に含む。手前だけソースがかけられていて、味の変化を楽しめるそのお肉は香り高くて、柔らかく絶品だった。


「お、おいし~!」


「はははっ、気に入ったようであたしもうれしいよ」


「確かにこれはいいねぇ。ちょっとあたしには上品すぎるけど。逆にこっちの鳥はいいねぇ、うまい上にホッとする」


思い思いに料理に舌鼓を打っていると、リュートが黙って鳥を見つめているのに気が付いた。


「リュート、どうしたの?」


「アスカ。あ、うん。この鳥美味しいなって」


「気に入った?」


「気に入ったんだけど、どうしても味付けが分からなくて…。この鳥だったら宿でも扱ってるし、僕も料理したことがあるんだけどこの味にできる気がしなくて」


「ははは、焼く時の味付けは塩のみですよ。もちろんその前には少々、手間をかけておりますが」


料理を褒められてどや顔のシェフさんと悔しがるリュート。まあ、相手は本職だししょうがないよね。私もこの料理が食べられるなら旅の最中に食べたいけど。


「う~ん。教えてもいいぞ」


「本当ですか!」


珍しく前のめりに返事をするリュート。これはもう料理人じゃないかな。


「ただし、今回の結果によってだな。今回の問題が解決すればいくらでも教えてやるよ」


「そりゃあ、問題が大きいからねぇ。おっ、こっちの肉はやっぱりうまいけど上品だね」


という感じで和やかな食事は過ぎていった。ちなみにここでもキシャルの食事風景にメイドさんたちが驚いていた。今はぴょんぴょんとメイドさんの膝を飛び移り、お気に入りの膝で眠っている。贅沢な子猫だ。


「さて、食事も済んだことだし、本題に入ろうか」


パラナさんがパチッと指を鳴らすと、周りにいた使用人たちが下がっていく。残ったのはキシャルが乗っている人と執事さんだけだ。


「残っているのは事情を知っているやつだけだから安心していい。それで、今日の収穫は?」


「まずはあたしからだね。リュートに報告させたけど、一人怪しいのがいたね」


「アルトスの件だね。あいつはそういうタイプじゃないし、報告の人相が合わないね。偽名か…もう顔は覚えてんだろ?」


「商売柄ね。間違いなく黒だけど、ありゃ下っ端だろうねぇ」


「そうだな。そいつは後回しだ。他には?」


「他といえば従魔たちなんですけど…」


「従魔?何かあったのか?」


「いえ、一緒に来ていた冒険者の方を見てもらってたんですけど、なんだか密談してたみたいで…」


「あいつらが!?ふむ…聞かせてもらおうか。というか聞けるのか?」


「はい。アルナ、お願い」


ピィ!


アルナが私に向かって話しかけてくる。


「えっと、最初は3人固まって動いてたんですけど、途中からリーダーの人だけになったそうです。それで、続きは?」


ピッ ピィ


「ふむふむ。鉱山夫の誰かがやってきて、小さい包みを受け取るとすぐにマジックバッグに入れたと。ということみたいです」


「あのさ。あんた、もしかして魔物の言葉が分かるのかい?」


「はっ!?いえ~、こっちのティタに通訳してもらって~」


「アスカ…だめだめ」


「ええっ!?ゴーレムは話せたのですか?」


驚いたメイドさんがびっくりして声を上げる。し、しまった~!こっちも隠さないと…。


「あ、ああ、済まないね。そういうのは秘密にしとくよ。お前らわかってるね!」


「はっ!」


執事さんは立ったまま、メイドさんはキシャルが膝に居るので座ったまま、返事とポーズをとる。かっこいい。


「済まないね、気を使わせて」


「いや、現実にあいつらもそういう可能性は思いつかないだろうから助かる。まさか、小鳥の見たものが人に伝わるとは思っていないだろう」


「そうですな。どんなに警戒しても人の限界はあります」


「じゃあ、すぐにでもそのリーダーさんの荷物を改めれば…」


「どうやってさ。マジックバッグに入れたんだろ?」


「あっ!?」


一応マジックバッグは制作者なら取り出すこともできるらしいけど、流通しているマジックバッグに印はないし、現実的ではない。中にはもう死んでる人の作品もあるしね。


「こっちが出せって言っても、出さないだろうしどうやるかな?」


「もう一度接触を待つって言うのは?」


「だめだ。輝石ってものは常時掘れる訳じゃない。それも、横流しの危険性を考えるぐらいのもんだろ?そこまで短期間に渡すはずはない」


「輝石を渡した方は?」


「そっちか…顔はわかるんだよな?」


ピィ!


アルナは覚えていると元気に返事をする。


「覚えているそうです。ただ、証言にはなりませんけど」


「そこは問題ない。こっちにもプロがいるんでね。直接問い詰めるのと証言者がいるのではできることが違うんだ」


そう言ってにやりと笑うパラナさん。ちょっと笑顔が怖い。


「なら、明日はそいつを確保だねぇ」


「あんたたちのおかげで早く事が済みそうだ。推薦してくれたシェイアには感謝だな」


「ついでに報酬もあげておくれよ」


「ふむ…確かに予定よりかなり早く尻尾をつかめそうだし、何か考えるか…。ベントン!」


「はっ!」


「屋敷の中から冒険者でも役立つのを見繕っといてくれ」


「承知いたしました」


「そんな悪いですよ!」


「いや、本来ならこっちから申し出るべきぐらいのことだ。気にするな。それより今日は気苦労もあったろう。早く休むといい」


「ありがとうございます。あっ、キシャルは…」


「アスカ様がよろしければ、明日の朝食時に一緒に連れてまいります」


「じゃあ、お手数ですけどお願いします」


私はメイドさんにキシャルを任せて、みんなと一緒に部屋に戻る。


「ふ~、落ち着きますね。アルナ、食事はおいしかった?」


ピィ!


アルナ的に今日の食事は合ったらしくとても喜んでいた。


「ここが落ち着くなんてアスカは…」


「落ち着くっていうか、テンション上がりますよね?」


「上がるか、リュート?」


「僕的にはあんまり。あるのなら従者用の隣の部屋で休む感じですかね?」


「だねぇ」


「ええっ!?絶対こっちの方がかわいいですよ!」


「そりゃあ、アスカはねぇ」


「どういうことですか!」


「どうもこうも、それよりさっさと寝るよ。明日も早くなりそうだし」


「…分かりました。おやすみなさい」


納得いかないけど、明日のことを言われてしまうとしょうがない。


「ああ、おやすみ」


「お休み、アスカ」


ピィ


こうして今日も見張り役のティタを残し、私たちは眠りについたのだった。




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