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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
16章 石の町グラントリルとアスカ

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休息と準備

無事にワグナーさん依頼の指輪も作り終え、公園で小鳥たちと遊んでいるとアルナが構ってと飛びついてきた。


「待たせちゃってごめんね」


ピィ


遊べるならいいよと言われて、みんなに気づかれないようにフライの魔法を使ってふわりと跳ねてアルナと遊ぶ。


「うわ~、あのおねえちゃんすっご…もがが」


「だめだよ~、かくしてるんだから」


「そ、そっか」


そんな心配?をよそにアルナと遊んでいく。


「そうそう、結構遊んだしそろそろ軽く食事にしよっか」


そう言うと、ぴたっと鳥たちの動きが止まりこっちに向き直る。


「え、えっ!?どうしたのみんな」


ピィピィ


「この前のご飯が気に入ってずっと待ってたって?そんなに気に入ってくれてうれしいな」


ミネルやレダにも協力してもらって、配合を考えたからね。エミールは…結構好き嫌いもしてたから割と終盤だけだったけど。


「それにしてもスティン鳥たちも気に入ってるみたいだし、小鳥の味覚は似てるのかな?」


じー


特にみんなの食事中はやることがないので食事風景を観察する。


「見てるのも暇だし、ちょっと配合を変えてみようかな?」


ピィ?


変な味になるかと聞いてくるアルナ。


「流石に変な味にはならないと思うよ。というわけで…」


ご飯用のすり鉢を取り出して、食事になる乾燥させた草を混ぜていく。これはあらかじめ保管を考え乾燥させておいたもので、瓶ごとにリラ草やムーン草などの品質が良くないものを入れているのだ。効果的には品質が悪いから低くなるものの、小鳥たちにはこれでも十分なので、売らずにこうして取っている。


「リラ草は少なめ、ムーン草も少し。こっちは花の乾燥させたのも入れてと…ルーン草は魔力が低い子もいるからやらない方がいいよね。そして最後に、えへへ」


私は他の瓶と違って半分も入っていない瓶を取り出す。


「おねえちゃん、それなに?」


「これ?これは魔法の葉っぱだよ。いや、怪しいものではないけどね」


何を隠そうこれはシェルオークの葉を乾燥させたものだ。最近は補充もないけど今後のためにも試してみる価値はあると思うんだ。


「前にもちょっとやったけど、今回は配分を多めにしてと…混ぜるのはちょっと魔力を使ってと」


「ゴリゴリ」


「ご~りごり!」


子どもたちと声を合わせてご飯を作っていく。3分ほど混ぜ合わせるとお目当てのものができた。力を弱くして粉状にならないようにするのがちょっと難しいところだろうか?


「さ~、みんな出来たよ~」


バササッ パタパタ


子どもたちや小鳥同士で遊んでいた子たちも一斉にこっちに顔を出す。


「アルナったらどんな説明してるんだろ?」


ここまで人気のあるものだったかなぁ?


「おっと、それより小分けにしないとね。子どもたちもあげるだろうし」


私はマジックバッグから5つほど器を出して、調合したご飯を分けていく。


「は~い、ご飯あげたい人~」


「あげたい!」


「わたしも~」


どんどん手が上がる。


「じゃあ、こっちから順番ね~。あと、あげる時はそのままか、ちょっとだけ手に乗せてね。絶対投げちゃだめだよ。あとは、食べてる鳥さんに触っちゃだめだからね~」


「「は~い!」」


子どもたちの返事を確認して、みんなでご飯を上げる。


「アルナもお待たせ。どうぞ!」


ピィ


しかし、アルナはというと近くにいたバーナン鳥の子どもを呼ぶとその子たちにあげ始めた。


「ふふっ、もう立派なお姉さんかな?えらいえらい」


頭をなでようとすると急に飛び立つアルナ。子どもたちの前では恥ずかしいのかな?しばらくするとアルナも一緒に食べ始める。


「それにしてもいい食べっぷりだね~」


みんな、喜んで食べてくれるし今日の配合はメモしておかないとね。さらさらとメモに書き込むと、子どもたちと一緒に食べる姿を眺める。


「ん?一部の子が光ってる気がするなぁ~。どうしてだろうね」


「ふしぎ~」


ご飯を食べているバーナン鳥の子どもの中で何羽か変化がある。でも、名づけの時とは違って全体が光ってるし、どうしたんだろう?とりあえず、親たちも驚いているものの、害はない感じなので見守ってみる。


「んん?青みが深くなった?ぬぬぬ」


急ぎ魔物辞典を開く。パラパラとページを読み進み何とかそれっぽいものを発見した。


「何々、ディプスバーナン鳥ともいうべき姿。ますます水の適正に磨きがかかった上位種と思われる。ただし、人への警戒感は変わっておらず、詳細不明。か、上位種?確かにアルナよりキリッとしてるかも」


見た目はヴィルン鳥でバーナン鳥の特徴も少し面影のあるアルナはふんわりとしたイメージだけど、ディプスバーナン鳥の子たちはキリッとしている。なんて言うか目元とかね。


「絶対このご飯だよね」


入れたものをもう一度確かめる。リラ草…普通だね。今回は魔力が少ない子たちの為にルーン草も抜いたし、あとは…。


「これかな?」


シェルオークの葉が影響したのだろうか?シェルレーネ様は水の神様だし、バーナン鳥も水属性。相性もあるのかも?


「そういえば魔力を混ぜるのに使ったな。あれがいけなかったのだろうか?」


「おねえちゃん、あの子たち大丈夫?」


「あっ、うん。ちょっと、強くなっただけだから大丈夫だよ。ほら!顔つきもキリッとしてるでしょ?」


「ほんとだ。ちょっとカッコよくなった!」


子どもが触ろうとするとさっと空に逃げる。逃げる姿も心なしか優雅に見える。


「あっ!とんでっちゃった…」


「あはは、カッコよくなっても中身は子どものままだからね。寄ってきてくれるまで待たないとだめだよ」


「…は~い」


不満そうだけど、もともと小鳥たちが人前に簡単に姿を見せることの方が少ないので、こればっかりは我慢してもらわないとね。


「それにしてもこれ、どうやって説明したらいいんだろう?まぁ、ばれないか!」


「なにがばれないんだい?」


「えっ!?ジャネットさん?」


「おう!帰ったよ。で、何してたんだ?」


「えっ、あの~。小鳥にご飯をあげてただけなんですけど…」


「その割にはあたふたしてたみたいだけど?」


「すごいの~!おねえちゃんがごはんをあげたら、ことりさんがカッコよくなったんだよ!!」


「カッコよくねぇ…バーナン鳥とは姿が違うみたいだけど?」


「ディプスバーナン鳥っていう種類らしいですよ。本に載ってました!」


私は本に載っていることをことさらに強調する私。これでなんとか…。


「本にねぇ。まあ、それはいいや。で、この鳥たちは?」


急に現れた大人に少し下がった小鳥たちだけど、私と話しているのを確認すると興味を持ったのかジャネットさんに近づこうとする。相変わらず好かれるなぁ。


「さぁ?ご飯あげてたら急になっちゃったみたいで、この周辺の生育環境がいいんですかね?」


「へー、お前ら他にこういう鳥見たことあるか?」


「ない~!」


「だそうだ」


「うぐっ…で、でも、ご飯あげただけなのは本当ですよ?」


「なに混ぜた?」


「シェ、シェルオークの葉と魔力…」


「お前らうまかったか?」


ピピィ!


ディプスバーナン鳥になった子どもたちが元気に返事の代わりに飛び回る。ああ~。


「今日はいったん帰るよ」


「もうですか?」


「今帰らないと騒ぎに…もう遅いか。まあ、ここにいるよりはましだろ」


というわけで子どもたちにお別れを言って宿に戻る。


ピィ~


「この子、ついて来てますね」


「なんでまたあたしに…」


ディプスバーナン鳥の一羽はどうやらジャネットさんがお気に入りらしく。ご飯を置いてきたのにこっちについて来てしまった。アルナもいるから街の人も気にはしてないみたいだけど、ちょっと目立つかも。


「お帰りなさい!」


「ただいま、ヘレナさん」


「帰ったよ」


宿で迎えてくれたのはおかみさんのヘレナさん。といってもまだ25歳の若女将だけどね。


「あら、新しい従魔?」


「違います。ジャネットさんについてきちゃって…」


「へ~、そういうこともあるのね」


「アスカがいるからだって。あたしだけだとこんな経験ないよ」


「そうなの?なんにせよ、ちょっと野菜の量増やしておくわね」


「ああ」


そう言って部屋に戻る。


「ふ~、夜警は疲れるねぇ~」


「見回りどうでした?」


「まぁまぁってところだね。ゴーレムもそこそこ出たし、収入もね。ただ、この前のあいつみたいに生息域を超えたやつはいなかったから、まあ安全だとは思うよ」


ジャネットさんは最後に冒険者基準でね、と付け加えて椅子に座った。


「それで、アスカの方は?」


「私の方は普通の日々でしたよ。細工したぐらいですし」


「細工ね。ワグナーさんの?」


「はい!ティタが頑張ってくれたりして、順調に行きました」


「ティタが?まあいいや、あとで聞くか。それより、えらくポーション飲んだらしいね?」


「ポーション?ああ、まあ少しは。ミスリルですからね!」


ふふふっ、ちゃんとこういう回答を用意しているのだ。今までのように簡単にしゃべらないんだからね。


「道具屋で大量に買い込む姿を見かけたってさ」


「そんな!?私は買いに言ってませんよ!」


「アスカとは言ってないからね」


「あっ…」


「道具屋でタリアさんが大量に買い込むのを見たっていうから、問い詰めたんだよ。全く、ほどほどを覚えなよ」


「ま、まあ、今回ので限界は知りましたから」


「へぇ~。じゃあ、今後残ったミスリルを細工する時は楽しみにしてるよ」


「ま、任せてください!」


そう言うしかなく、私はうなだれた。


ピピィ


「あっ、慰めてくれるの?」


ピピィ


「ジャネットさんに心配かけるな?ううっ、ごめんなさい」


どうやら、このディプスバーナン鳥は私の味方にはなってくれないようだ。




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