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ティタ先生の付与教室

「さて、買い物も終わって帰ってきたことだし、早速魔道具に出来るか試してみよう。ティタ、準備はいい?」


「だいじょうぶ」


とりあえず最初に使うのは今日討伐して手に入れた魔石のうちの一つだ。これはちょっと売り物よりサイズが小さかったので、練習するならちょうどだろう。あんまり低品質だと付与自体が上手く行ったか分からないからね。


「まずは魔石をはめ込む土台だけどブレスレットでいいかな?身につけやすいし、指輪だと石が大きいし」


「うん」


ブレスレットといっても出来るだけ金属部分は少なくする。魔道具ってことを考えると銀が最適だし、材料費がもったいないからね。


「それじゃ、細工を始めるよ。2時間ぐらいで終わるから待っててね」


「りょうかい」


魔石をはめ込む台座を作って後は全体に細工を施していく。石の形はきれいではないから、それがきちんとはまるようにするのがちょっと大変だ。宝石なら簡単に削っちゃうところだけど、魔石は削り過ぎると魔力が消えていっちゃうから難しいところだ。


「アスカ、じかん」


「ん?もう2時間経ったっけ?」


「ちがう、ごはん」


「えっ!?」


外を見るとやや薄暗くなってきていた。流石に旅で寄った宿で一々呼びに来てはくれないので、慌てて下に降りる。


「おっ、アスカ来たかい」


「ジャネットさん、帰って来てたんですね」


「帰って来たってちゃんと部屋であいさつしたろ?」


「そうでしたっけ…」


「全く、ちょっとは食事にも意識を持ちな。細工始めるといつもこうなんだから…」


「すみません。あれ?そういえばリュートは?」


「ああ、厨房にもぐりこんで料理頑張ってるよ」


「何でまた?」


「ほら、この前ショルバで調味料いっぱい買ってたろ?あれの使い道だけど、瓶を開けたら結構匂いがきつかったみたいでね。野営時に作ったら魔物が寄ってきそうだから街中でまずは作ってみたいんだってさ」


「じゃあ、今それを使ってるんですか?」


「まさか!今日は腕前を確認するためだよ。宿の厨房を使うんだからな、ろくな腕もないのに使われたら後々大変だろ」


「ああ~、それはそうですね。片付けって大変ですもんね」


鳥の巣でもそれだけじゃないけど2時間近く最後は片付けに取ってたからなぁ。スタンダードな料理を食べると部屋に戻る。まだまだ日が沈むまで時間もあるし、細工の続きだ。


「そういえば前の宿でも思ったけど、魔力使用タイプの明かりって珍しかったんだな」


アルバで泊まっていた時は全室に導入されていたけど、ショルバやこの宿にはない。代わりに自前の火の魔力を使ってつける明かりの魔道具を灯している。これも高額な火の魔石を使っているので金貨3枚したけど、旅に出る時に買っておいてよかった。


「さあ、続きだ。後20分もあれば完成だね」


細工を再開してブレスレットを作り上げる。後は魔石だけ付ければ完成ということでようやくティタの出番だ。


「ティタ、今から付与してもらうんだけど、魔石だけでもいい?それともちゃんと完成させてからやる?」


「ませきだけでいい」


「分かった。それじゃあ、スクロールを下に敷いてと…上に魔石を置いて」


付与の準備を始める。スクロールは無くても魔道具を作れるけど、あるとイメージ通りのものが作りやすくなるし、成功率もぐんと上がる。一枚銀貨1枚ぐらいだし使わない手はないのだ。


「どんなまほうをふよする?」


「うう~ん。上手く行くか分かんないし、難しいのもダメだよね。そうだ!魔石を通す方が消費は減るんだからコップ1杯分水を満たす魔法にしよう。こう…ブレスレットから真下に出るようなイメージでね。出来たら連続使用できるのもうれしいかも」


魔力が低い人はコップ1杯ずつ、ある程度ある人は出し続けられると便利だと思う。そんなイメージをティタに伝える。


「それじゃ、やってみる」


ティタは集中して魔力を高めていく。こう見えても220もの魔力を持つティタは魔法の扱いもうまく、Cランクの魔法使い程度の実力を持っている。かわいいのに強いなんてすごい従魔だよね。


「ふよ、かいし」


ティタの魔力に合わせてスクロールが光る。輝きの状態から見て付与自体は成功していそうだ。後は実際の効果がどれぐらいのものかなんだけど、こればっかりはティタに使ってもらうしかない。ブルーバードもそうだけど、魔石は特定の魔力持ちにしか反応しないものが多い。水の魔力の無い私では試せないのだ。


「しゅうりょう」


スクロールの光も収まり、ティタが魔石から手を放す。付与自体は成功だろうから早速細工に付けていく。


「型にそってはめて、後は爪で固定と…」


ちゃんとロック出来たら後はティタに使ってもらうだけだ。


「さ、ティタ。付与の効果を試してみて」


「ん、そとでる」


「へっ!?まあいいけど…」


生活魔法程度で外に出るなんて大げさなんだから…。そう思いつつも宿の裏に出る。この辺は水場があるので目立たないからだ。


「アクア」


ティタがそういうと水が魔石からドバッと飛び出る。うう~ん、今の結構な水流と水量だったよね。


「というか、頼んだのは生成の魔法だよね。今の生活魔法じゃなくて初級魔法だよ?」


「こめるまりょくで、ちょうせいできる」


そんなこと出来るんだ。いや、確かにバリア魔石だと込める魔力で強度が変わるけど、それって魔力が足りなくても薄く張れるって想定外の効果なんだよね。流石は魔力を使って何百年のティタ先生だ。やったことないって言ってたけど、魔力コントロールは魔力操作のある私とそん色ないんじゃないかな?


「ということはこれは私にも出来るのかな?」


「アスカもできる。なれたらかんたん」


う~ん、難しそうだと思ったけど魔力も上の私が出来ないって言うのも情けない話だし、機会があったら試してみるか。


「それはそうと、生成の魔法も試してみて」


「わかった。せいせい」


ティタがそういうとブレスレットから水がだばーっと出てくる。あれ?生活魔法ってこんなに出るっけ?


「まりょくをおおくこめる。こうかあがる」


「そうなんだ。ちなみにどれぐらいの魔力があれば使えるの?」


「ん~、さいてい10ぐらい?」


「10!?そんなちょっとでいいの?」


普通は使い捨ての魔道具でも15前後は必要なものが多いのに。なんだか初めて付与に挑戦したティタに負けた気分だ。その後も何度か試してもらったけど、使い勝手は良さそうだった。水の魔石は単価もそこそこするからこれだと結構売れるんじゃないかな?


「ちなみにティタ先生。もうちょっと大きいこっちの魔石ならどこまでできる?」


「う~ん、アクアボールぐらいまでならできる。せいかつまほうなくせば、アクアスプラッシュまで」


「そっか~。お試しだから今回は生活魔法にしてみたけど、魔道具自体が高いからそれならアクアスプラッシュが使える方がいいのかな?」


魔力があっても攻撃魔法が得意な人もいれば、回復魔法が得意な人もいる。水の魔法が使えるといってもどちらかに偏っている人もいる。アルバにいた人の中にもそういう人もいたもんね。攻撃魔法が苦手な人なら有用だろうし、そういう方向で作ってもらおうかな?水の神殿とか回復寄りの人が多そうだし。


「よし!ティタ先生。アクアスプラッシュまで使える奴でお願いします!」


「わかった。いちにちひとつ」


「うん?あ、そっか。消費高いもんね」


私は珍しく魔力よりMPが多めのタイプだけど、ティタは魔力は高いけどMPは低めの部類だ。魔道具化にはかなりの魔力とMPが必要だから、それ以上は無理かぁ。とりあえず部屋に戻って今後の予定を練る。


「まあ、私もブレスレット作らないといけないし、ちょうどいいかもね」


「んで、話は終わったかい?」


「ジャネットさん、戻ってきたんですね」


「戻って来たって言うかちょっと前からいたけどね。風呂はまあまあだったよ」


「まあまあですか?」


「ああ、町に一つしかないからある程度安全だったけど、湯の交換とかはあんまりだね。早めに入りに行くか開いて直ぐがいいかもね」


「それなら携帯お風呂に入ろうかなぁ」


「あれかい?でも、この辺だとどこで使うんだい?」


「宿の裏とかどうでしょう?」


「水を汲みに来た人と鉢合わせてもいいならそれでいいけどね」


「それは嫌です」


「それで、付与は成功したのかい?」


「はい!中級ぐらいまでの魔法が使えるので結構実用性も高くできそうです。ただ、一日ひとつなのでちょっと時間貰います」


「いくつ作るつもりだい?」


「あと3つは欲しいので3日ですね」


「なら、滞在予定と一緒だね。それが終わったら次の町に行くとするか」


「次はラスティアですね!」


「街道を避けるなら北側に小さい村がいくつかあるからそこを経由しながらだけどね」


「大きい都市でしたっけ?」


「ああ、北方にある大都市さ。王都からの直通道路も整備されていてかなりの規模って話だよ」


「意外ですね。それならジャネットさんが行ってそうなのに」


「遠いんだよ。王都から3日かかるし、途中は川も渡河するしね」


その手続きがなければ2日での到着も可能とのこと。橋はないのかなと思ったらそっちは貴族とか商人向けで、一般では通れないらしい。手続きが面倒なのもそこで1泊させて料金を巻き上げるためらしい。前後は宿場町で宿と飲食店ぐらいしかない特殊な街になっているとのことだ。そういうのジャネットさん嫌いそう。


「まあ、あっちは普段見ない魔物もいるだろうし、動植物も珍しいのがいるだろうから、興味はあったけどね」


「それは歓迎なんですけど、こっちからだと結構遠いですよね」


「しょうがないよ。王都ルートに戻る暇があったらそのまま突っ切った方が近いんだから」


「分かりました。じゃあそこに向けてちょっとでもお金を稼ぎましょう!」


「なら、明日からは依頼だね。アスカの方は大丈夫なのかい?」


「一日細工ができれば間に合います」


「なら、ここいらでちょっとだけ金をためようかね。リュートにも言ってくるよ」


そういうとジャネットさんはリュートの部屋に行った。まあ、水の魔石もこの町だと安いけど、他だともうちょっと高いし、売らなくても貯めていったらいいかな?そう思いながらその日は床に着いた。



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― 新着の感想 ―
水適性が無くても水を出せる魔道具って、冒険者や商人にとっては物凄く有難い商品だよね。 長く繰り返し使えるなら、相当高額でも欲しがる人はかなり多いはず
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