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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
16章 石の町グラントリルとアスカ

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英知と才覚

「罠の種類と場所は?」


撤退しながら、罠の位置を確認する。


「あそことあそこがステークトラップで、そっちのちょっと見えてるのは落とし穴です」


「短時間でよく作った!みんな、はまるなよ?」


「了解です!」


すぐに陣形を整えて、ゴーレムに対応する。


「あたしもこれを使うかねぇ」


ジャネットさんが黒い刀身の剣を取り出す。


「ん?ジャネット、それって…」


「ああ、新しく打ってもらった剣だよ」


「聞くのはマナーに反するが、それは分ける方か断つ方か?」


「…分ける方だよ」


「それならとどめ以外は使わん方がいい」


「どうしてだい?」


「普通のゴーレムやアイアンゴーレムは魔力が通りにくい岩や鉄の体だ。一度体から離れるとくっつけるのは骨が折れる。だが、今回のやつは体がミスリルだからな。最悪、そのまま遠隔操作してくるぞ」


「げっ!そいつはだめだね。とどめまで待つか…」


「にしても、よくそんな剣持ってるなぁ。俺も現役なら欲しいぜ」


「まあ、つてがあってね」


オォォー


「ちっ、もう来たか!牽制だ!」


「「了解です!」」


バルドーさんの指示でみんなで魔法を使う。


「しまっ!狙いが…」


しかし、仕切り直しのせいか、一人の魔法がそのままゴーレムに向かっていく。当然のようにゴーレムはその魔法を術者に跳ね返す。


に”~


「キシャル!」


とっさにキシャルが氷の壁で反射した魔法を防ぐ。


「あ、ありがと、おチビちゃん」


にゃ


「気を抜くな!」


「キシャルはそのまま、ティタはもう一人の人についてて」


「私は?」


「レンジャーさんは身軽だと思うので頑張ってください!」


どうやら、魔法が使える2人も魔力はそこまで高くなく、連続で使用するのは難しいようなので、キシャルとティタに守ってもらう。こうすれば援護ももう少し大胆にできるだろう。2人の方が魔力が高いからね。逆にこのメンツでキシャルたちの魔法は威力が高すぎて危険だ。


「さて、こっちもどうにかしないと…だけどなぁ」


ほんとに手が出せない。きっとウルフの矢を大量展開しても傷を与えられないし、逆にコントロールを奪われる恐れまである。


「弓はなし。魔法は…」


決めるなら上級魔法もいいけど、それ以外ではけん制するのにも気を付けないといけない。


「くらえ!」


「はっ!」


オオォォーー


その間にも前線はどんどん攻撃を仕掛けている。シウスさんたちが加わってから、相手に傷も増えた。しかし、決定的なダメージはまだない。


「いい加減に…」


ベキッ


その時、ふいにバルドーさんの剣が折れた。


オオォォー


「まずい!アースグレイブ」


私はバルドーさんのすぐ前にアースグレイブを作り、その生成でバルドーさんを後ろに吹き飛ばす。ミスリルゴーレムも突然の岩の槍に一瞬動きが止まり、バルドーさんも難を逃れた。


「すまん!」


「大丈夫です、私もこれぐらいしかできませんから」


「このまま長引くとまずいねぇ。行くかい?」


「しょうがない。俺も3本目は売りもんぐらいしか残ってねぇ」


「ちっ、こいつでも使ってろ!」


シウスさんがバルドーさんに剣を投げる。


「片刃でちょいと頼りないな」


「お前の使ってたなまくらよりはいいぞ。切れるしな」


「まあ、ありがたく借りとくぜ」


再び戦いに身を置く3人。ただし、今度は少し下がり気味だ。ここから少し罠の方に誘い込む算段だ。


「よ~し、こっちに…」


ズン


ミスリルゴーレムが罠を踏むと、近くの木から鉄の槍が数本括り付けられた罠がどんと襲い掛かった。


ガン ギィン


人の力では難しいほどの力で襲い掛かった鉄の槍は一部のミスリルでない部分に深い傷をつける。


「行けますよ!」


「まあ、もう一個だけだがな」


「贅沢は言ってられん!少しでも体のバランスを崩すんだ。魔法で体をコントロールできるとしても、負担にはなるはずだ」


「はいっ!」


私も魔法を準備する。とどめとはいかないかもしれないけど、かなりのダメージを与えられるはずだ。


「ようし、次だ!」


さらにゴーレムを罠にかける。こちらもなかなかのダメージを与えられ、さらに傷を作っていく。


「よしっ!いいぞ。あとは決めの一手だな。ジャネットが核をこじ開けるのは確定として、アスカ!」


「は、はい!」


「決め手になりそうな魔法はあるか?」


「一応、ヘルファイアなら…」


「いいぞ!その魔法なら核もなんとかできる!」


「なら、最後の罠に手を出すか。おい!怪しまれないように下がれ!いいな?」


「あ、怪しまれないようにって…」


「さっきの罠で警戒心も上がってるだろうからな。頑張れよ?」


バルドーさんとシウスさんの視線を受け、たじたじになりながらも他の人たちはやや下がっていく。最初こそゴーレムも警戒していたが、冒険者たちの疲労も溜まってきており、うまく誘導できたようだ。


「よしっ!ジャネットへの注意は俺たちでそらすから斬りつけろ。アスカはジャネットを巻き込まないようにしろよ」


「もちろんですよ!」


オオォォーー


「おらデカブツ!こっちだぜ!」


「そら!これでもくらえ!」


2人が左右からこれまで以上の攻撃を仕掛けていく。しかし、これまで通り大きな傷は与えられない。だけど、ゴーレムからすれば一気に勢いを増した攻撃ということで、そちらにかかりっきりになる。


「はっ、はっ、はぁ。ふぅ〜」


剣を構えるしぐさをして、その場にとどまるジャネットさん。きっと、斬りつけるイメージを作っているんだろう。


「私も詠唱に入らないと!」


マジックポーションを飲み、両手の間に魔力をためながらその時を待つ。


「そら、行くぞシウス!」


「指図すんじゃねぇ!」


2人がクロスするように一気にゴーレムに迫り切りかかる。


ザッ


ギィン


これまでより激しい音がして、ゴーレムの体にも深い傷をつける。


オオォォーー


それに怒ったゴーレムが腕を振り回す。


「いまだジャネット!」


「いけーっ!」


スパッ


相手の体に剣が触れると思った時にはゴーレムの体は裂け、コアがむき出しになっていた。


「これで決める!獄炎の猛火よ、渦となりて包み込め、ヘルファイア!」


私は残ったありったけのMPを込めて上級魔法であるヘルファイアを使う。ただし、ハイロックリザード戦のように展開せずにできるだけコア周りに収束して放った。


オォォーー オォ……


ひときわ大きく哭いた後、ミスリルゴーレムはその形を崩していく。


「ゴーレム…」


「ティタ、同じ種族だから悲しいの?」


「かくが、こわれちゃった」


「ガクッ、そりゃそうだよ。ダンジョンみたいにいかないんだから、もう…」


「まったくあんたたちはいつも通りなんだからねぇ」


「わ、私たち勝ったの!」


「すごい!あのミスリルゴーレム相手に!」


「勘違いすんじゃねぇ。ありゃなりかけだ。本物はもっと強いぞ!魔法で加速してこなかったろ?全身がミスリルじゃないからそこまでするには魔力が足りないんだよ」


「そんなに強敵なんですね!今の状態で倒せてよかったです」


「すごいわねこの子。あれだけの相手にケロッとして」


「おお~い!応援を連れて…熱っ!」


「あっ、ごめんなさい。熱を抑える処理、そっちにはしてないんです。キシャル、お願いできる?」


にゃにゃ~!


晩御飯豪華にしろよというセリフとともにキシャルが周辺の温度を下げてくれる。なんだかんだ言ってキシャルはいい子なのだ。


「さて、周りの温度も下がってきたし、戦利品の回収をしないとねぇ。その前にアスカ、けがは?」


「ありません。前線で戦っていたお三方は?」


「俺たちの心配なんぞしてる場合か?お前らはどうだ?」


「この子の従魔たちが守ってくれたので」


「そいつはよかったな。だが、もう少しうまくやれよ。本番のミスは挽回できないんだ。そこのキャット種が壁を作ってくれなかったらどうなっていたか…」


「ど、どうなったんです!バルドーさん」


「おう、来たか。来てくれたところ悪いが倒したぞ。まあ、いろいろと被害はあったが。あ~、この剣も打ち直しだな」


「バルドー、大丈夫か!」


「おう!まぁ、ミスリルゴーレムになりかけのやつなんぞ敵じゃない」


「よかった。町に来たら大変なことだぞ?それにしてもなぜこんなところに…発見者は?」


「俺と、ここの…」


「アスカです」


「ちなみに倒したのはこっちのアスカだから報酬はこっちにな。それと、話はあとでだ。こっちは素材の回収に忙しいんでな。ミスリルの含有量が多い部分なんて探し辛くてかなわん」


一緒に探すぞとバルドーさん。でも、私はミスリルがどこに多いか見当はついていた。


「ねぇ、ティタ。ミスリル、ちょっとあげるから探すの手伝ってくれる?」


「いいの?ミスリル、きちょう」


「でも、私たちじゃ探すの苦労するし…ね?」


「わかった、ガンバル!」


やる気を出したティタの指示のもと、私たちはすぐにミスリルの塊を見つけていく。


「は、早いわね」


「やっぱり上級の冒険者ってこういうのも得意なのね」


「アスカ、ティタになんて言ったんだい?」


「ミスリル、ちょっとあげるよって」


「ああ、それでそんなに張り切ってるってわけかい。ところで、このコア崩れどうする?」


ジャネットさんが渡してきたのはミスリルゴーレムのコアが溶け出したものだった。まだ、魔力を含んだままのそれはかなり貴重だということが傍目でもわかる。


「う~ん。ティタにこれを3分の1ぐらいあげれば満足するかなぁ…」


「えっ!?これ、いい?」


「いいよ。探すの頑張ってくれてるし」


「ぜったい、たべる!」


さらにやる気を出したティタはその後もどんどんミスリルの塊を探してくれたのだった。



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