決戦!
そのころ、メネウスはというと…。
「うわぁ~、早すぎる!なんて魔力だ」
しかも、町まで一直線にコントロールされている。
「とんでもない子だな…見た目はきれいだったが。だが、ここからどうやって降りるか…」
距離的に少し町の手前に落ちそうだ。
「危険だがしょうがないか」
アースウォールをアースグレイブで少し削って角度を調整する。風の影響を受けて多少速度は落ちるが距離を稼げる。
「まったく、こういう魔法ではないんだが…」
町の城壁近くまで何とか届いた後はそのまま着地だ。
「これが難問なんだがな」
ドーン!
「な、なんだ!襲撃か?」
「今すぐ町に入れろ!緊急だ!!」
「ど、どうしたメネウス…」
「シウスは今日は向こうの門か?」
「そうだぞ。こっちじゃ勝手に魔物を狩りに行きそうだからな」
「分かった。すぐに行ってくる!」
「おい!門は今混んでて…」
「知るか!」
俺はアースウォールを足元から高く作り、城壁に跳び乗る。降りる時は…。
「城壁の一部を崩せば…構うものか!」
アースウォールの材料に城壁の端を使い、どんどん高さを下げていく。
「よしっ!このまま一直線に…」
ドンッ
「すまん、急いでいる!」
「ああ、こっちもちょっとね。ティタ、本当におかしな感じか?」
「アスカのまりょく、いっぱいへってる」
「分かった。リュートのやつ、いつまでかかってるんだい」
「独り言を…いや、今は急ぎだ」
俺はすぐに門に向かう。
「シウスさん!」
「なんだメネウスか。なんか用か?」
「大変なんです!バルドーさんが!」
「…バルドーがどうかしたのか?」
「ミ、ミスリルゴーレムに襲われて…」
「ミスリルゴーレムだと!?そんな奥に行ったのか!」
「い、いえ、廃坑の手前で…」
「廃坑…。あんな近くにか!すぐに行く。おい!ギルドにも緊急招集を。ミスリルゴーレムだとよ。おっと、だが無能はいらん!」
「はい。シウスさん」
まだ若い兵士がギルドに向かってかけていく。
「こっちはすぐに出たいが魔法でもないと加速できんしな…」
「もう、ジャネットさんってば急ぎだなんて。もう少し待ってくれても…。確かにアスカのことは心配だけど。風よ…」
「ん?お前!」
「僕ですか?」
「ああ、付き合え!風魔法使いが要る」
「急いでるんです」
「どこまで行く?」
「あっちですよ。その服、衛兵さんですよね?」
「なら行先は一緒だな。行くぞ!ミスリルゴーレムが現れた」
「えっ!?危険なんですか?」
「お前よそ者か?Aランクの魔物だぞ!ワクワクするだろう」
「ワクワクはしませんけど。そうか、ティタの言ってたのって…行きます!」
「いい覚悟だ。お前は自分でこいメネウス」
「それではさらに向かう人数が少数ですが…」
「んなこたぁわかってる!でも、戦えんのか?」
「それは…」
「急いでください!仲間がそこにいるかもしれないんです!」
「ん?バルドーは一人じゃないのか?」
「一人じゃありません!小柄な少女と一緒でした!」
「アスカだ!早くいきましょう!」
「おう!」
「風よ…フライ!」
僕は魔法をシウスさんにかけて自分も飛び立つ。一秒でも早くアスカのところに着かないと…。
「ん?あれは…リュート!あたしを置いてくな!」
「ジャ、ジャネットさん!すぐに飛ばします」
「ん?あいつ…」
「早くしな!アスカが危ないんだ」
「分かってます!」
「いく」
「なんだこのゴーレムは?」
「アスカ、きけん」
「お、おう。とにかく現地に向かうぞ!」
にゃ~
「なっ!?キシャルまで来たのか?アルナは?」
に~
「ねてる。キシャルはへんな、ふんいきがしたのできた」
「まったく野生児が…」
「おい!だれか正確な位置はわかんのか?」
「ティタ、わかる。すこしみぎ」
「分かったよ。ティタの指示で飛ぶね」
僕はティタの指示通りに空を飛ぶ。だけど…。
「さすがに3人のコントロールはキツい」
「頑張んなよ!アスカが待ってるんだ」
「分かってますよ」
「それにしてもお前らよくミスリルゴーレムとやる気になるな」
「ミスリルゴーレム…こんなところに出るのかい?」
「でないから困ってるんだろうが!まあ、俺としてはうれしい限りだぜ!門番も飽き飽きしてたからな。お前もこれが終わったらどうだ?」
「どうだって言われてもねぇ…今はこの先のことでいっぱいでね」
「ふん!まあ、あとでだな。見えてきたみたいだぞ!」
「アスカいる」
「よしっ!降りますよ。準備は…いいみたいですね」
2人ともすでに剣を手に取り、臨戦態勢だ。僕も槍を用意しないと。
「フライ解除!」
僕の解除の声とともにみんなが地面に降り立つ。
「よう、バルドー!珍しくランチの誘いだな」
「けっ!お前を呼ぶことになるとはな」
「アスカ!大丈夫かい?」
「ジャネットさん!それにリュートも!」
「アスカ、待たせてごめん!」
「ううん。でも何でここに?」
「ティタがさ、アスカのMPがどんどん減ってるっていうからね」
にゃ~
「キシャルまで!みんな、敵は強いよ!特にリュート、魔法はだめみたい。跳ね返されちゃう」
「ええっ!?そうなの…気を付けるよ」
オオォォー
こちらの援軍を見てもミスリルゴーレムはひるむことなく向かってくる。
「シウス!左を頼むぞ」
「正面からの攻撃は誰がやるんだ?」
「ジャネットに任せておけ!こういうのは現役の冒険者に任せとくんだよ」
「けっ!しょうがない。俺も今は衛兵だしな」
「ちょ!あんたら…まあいい、やるか!」
三方に散って各々がゴーレムの攻撃をかわしながら反撃を繰り返す。
「そういや、バルドー。いつもの剣はどうした?」
「あそこに刺さってるだろ?抜けねぇんだよ」
「それでそんななまくら使ってんのか!笑えるねぇ」
「うるせえ!だから、こっちに回ってるんだろうが」
オォー
「ちっ!早い…しかも、結構柔軟に動くねぇ」
「完全ではないが、ミスリルの体だからな。魔力を通して動いてるからそれでだ」
「硬さもあって大変なんです。せぇの…フレイムカッター」
私は長く収束した炎の剣を作り出し、ゴーレムに切りかかる。側面から背後を狙った剣の攻撃は相手の魔力によって曲げられる。
「魔力勝負なら!」
さらに魔力を込めて、何とか自分優位の状態を作ろうとする。こうすれば他に意識が向かないはず…。
「それにしてもさっきは死角から攻撃したはずなのにどうして反応で来たんだろ?」
「まりょくのながれ、かんじてる」
「ティタ!そっか…ゴーレムだからか。そういえばさっきからアースグレイブでちょっと止まるんだけどなぜかわかる?」
「わ、…わかる」
ん?なんでかティタは恥ずかしそうに答えた。ゴーレム同士だからわかることなのかな?
「理由は?」
「アースグレイブ、まりょくをふくんだ、いわのやり。たべたい」
「へっ!?食べ…たい?」
えっと、まさかミスリルゴーレムの動きが止まってたのは食事の欲求と戦ってたってこと?戦闘中に?
「でも、岩場を取り合ってるのも石の所有権を巡ってだし、あり得るのかも…」
「アスカ!考え事もいいけど、援護もしてくれよ」
「あっ、すみません!フォロー」
「こっちもだ!ガキンチョ」
「アスカです!」
「おっ!中々いい補助だな、アスカ」
「調子のいい人ですね。リュートは?」
「フライで何とかしのぐよ」
「駄目っ!フライとかバリアは向こうに吸い取られちゃうの。特にフライはコントロールを乱されるから使わないで!」
「ええっ!?厄介だなぁ」
そういうリュートもすぐに移動の補助をウィンドに切り替えている。
「器用なんだから…さて、私も攻撃に参加しないと」
魔法は危険だから矢を中心に攻撃をする。ウルフの矢も念のため使わないので、鉄の矢だから本当にけん制にしかならないけど。
「えいっ!」
「わ、私たちはどうすれば…」
「ここまで来たら、役立たずよね」
「当たらないように魔法を撃ってもらえますか?」
「当たらないように?」
「はい。触れないでいればそこまで影響は与えられないと思うんです。でも、魔力は感知するから意識は向くと思うので!」
「な、なるほど!威力はないから数で勝負するわね」
「私は地面を狙うわ」
そして攻撃をしていると後方から人の気配がした。
「罠、仕掛けてきた!」
「よし、いいタイミングだ。決められるか?」
「どうだろうねぇ。ま、頑張るよ」
「チッ、引くとするか」
決め手を欠いたまま、罠を活用するため私たちは徐々に町の方へと下がっていった。
 




