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次なる目的地であるゲンガルを目指す私たち。


「で、北に行ってから西に行くルートと西に行ってから北に行くルートどっちを選ぶんだい?」


「魔物に違いってありましたっけ?」


「西に行けば山だからランドキャットやブルーバードが、北の森はオーガやバウンドウルフがいるみたいだね」


「ブルーバードが目当てですから山側に行きますか」


「あたしは良いけど、見張りは期待してるよ」


「どうしてですか?」


「ブルーバードは魔力があるから、遠くから水魔法で攻撃してくるからね。流石にあたしの魔力じゃ対応できないからそういうのは任せることになるよ」


「分かりました。リュートもいい?」


「僕は構わないよ」


「なら決まりだね。昼間の警戒は任せてくれよ。といっても苦手だから、そんなには期待しないで欲しいけどね」


「了解です」


ジャネットさんを先頭に私たちは山に入る。山といってもそこまで標高も高くない山だ。


ピィ


「アルナ、大丈夫?危なくなったらすぐに帰ってくるんだよ」


ここ数日は町暮らしだったので、再び自然を満喫しようとアルナが飛び立っていく。


「まあ、情報によるとブルーバードは魔力100ぐらいだし何とかなるか」


アルナは小鳥といっても魔力が200近くもある魔物だ。ディースさんによるとハーフというより変異種の可能性もあるらしい。元のバーナン鳥もヴィルン鳥も魔力はあるけど、そこまで高くはないかららしい。ブルーバードは中型の鳥だけど魔力は精々100。オークメイジと変わらないぐらいだ。


ランドキャットは砂地や山に生息するネコ型の魔物で、ウルフ系と同じく魔力は低い。攻撃手段も遠距離がないので空を飛ぶアルナなら安心だ。念のためにティタにアルナを見張ってもらおうとしたのだが…。


「ティタどうしたの?」


「ん~、いしいっぱい」


2時間ほど山道を進み山の中腹を越えるとティタが立ち止まった。ティタはそういうと付近を水魔法で攻撃する。


「アクアスプラッシュ」


岩だまりに命中した後、ティタがごそごそし出した。


「何やってるの?」


「いしのなかにませきある」


「魔石?こんなところに」


私も不思議に思ってティタの近くを探す。すると、確かにティタの言う通り魔石が出てきた。ただ、魔石になって時間が経っているせいか保有魔力は少ないものが多い。でも、ティタのご飯と考えれば十分なものだ。


「アスカどうしたの?」


「ティタがこの辺に魔石があるって…ほら」


私は立ち止まっていたので、リュートやジャネットさんも戻ってきて見てもらう。


「へぇ~、確かにこりゃ質はあまりよくないけど魔石だね。でもどうしてこんなところに?」


「ブルーバードのしがいが、たまってできた」


ティタの話によると、この辺りでブルーバードが何羽も死んだらしく、その時に出来た魔石がそのままになっているらしい。他の石に混ざって目立たないのでこれまで拾われていないのだろうということだ。


「確かに色も輝きも鈍いし、これなら目立たないよね。本当に質の悪いのは塗料にでもしようかな?」


細工に使う塗料は残念ながら宝石クズや魔石クズの粉を使うものだ。それなりに値段もするので、こういうことで補充できるならうれしい。パワーストーンみたいに腕輪に出来ればいいんだけど、そういうのをしている人を見かけないので今は塗料にしている。


「これならいい」


ティタが次々に魔石を掘り当てる中、含有魔力が低いものをこっちに分けてくれる。


「ありがとうティタ。それで、ちゃんと使えそうな魔石はある?」


「このさきにある。でもいわがかたい」


ティタが指示した方には大き目の岩があった。しかも見るからに堅そうだ。試しにウィンドボールを放ってみる。


バン


音がしたものの岩には傷一つない。う~ん、かなりの強度のある岩のようだ。


「ティタ、この岩のどこら辺に魔石があるの?」


「したのほう。ちょっとだけくうどう」


「分かった。やってみるね」


私は魔力を高めてウィンドカッターを放つ。3つの刃を同じ場所に連続に当てるとさしもの岩も刃が食い込んだ。


「いける!ティタ、アクアスプラッシュをお願い!」


「わかった」


さらにウィンドカッターで裂け目を広げると、そこにティタの魔法が当たりひび割れていく。


「どう?見つかった?」


「うん。これ」


そういうとティタがやや大きめの魔石を渡してくれる。見た感じブルーバードの魔石のようだ。ただ綺麗なだけでなく魔力も感じる。かなり質の良いもののようだ。


「といっても、水の魔力持ちはいないしどうしようかこれ?」


「えっ!?売っちゃうの?これって結構いいものだよね」


「そうだけど、ジャネットさんは火でリュートは風。私が火と風でしょ?役に立たないんだもん」


「ティタがまどうぐつくる」


「え!?ティタ魔道具作れたの?」


「ちょうせんする」


ティタは確かに水魔法が使えるけど、これは食べた魔石が水属性ばかりだからだ。最初は私の魔力の影響で火と風だったし、本当に出来るかな?


「じゃあ、まずは手ごろな魔石で試してみよう。ゲンガルには少なくともブルーバードの魔石があるからそれを買って試すか、出会ったらその石で試そう。これは貴重なものだし」


「わかった」


その後は残った少量の魔石を取って休憩にした。でも、一気に料理のランクが下がったなぁ。これでも町を出たばかりで十分なんだけど、種類が少ないのだ。メインの料理にスープのみ。ここに副菜とかデザートとかあったのになぁ。


「はぁ…」


「ちょっとアスカ、町を出てすぐに料理でため息つかないでよ」


「だってリュート。昨日まではここにもう一品とデザートがあったんだよ」


「旅の途中なんだから我慢してよ。それにゲンガルまでは1日だけど、ラスツィアに行くなら5日ぐらいかかるんだよ」


「分かってるよ。でも、やっぱり急に下がっちゃうとね~」


ピィ


まあ元気出してよとアルナに慰められる。


チャキッ


「ふぅ~、やっぱり山ん中で飯食うとこうなるよねぇ~」


ランドキャットだろう、4匹ほどの反応がある。すぐにリュートも構える。


グルルルル


「アルナ、そら」


ピィ


ティタの指示でアルナが空から魔法を放つ。ランドキャットたちは空からの攻撃で陣形を崩していく。それを追撃する形でリュートとジャネットさんが投擲をする。


「動きが乱れた!今だ!ストーム」


体勢を崩した1匹に私は嵐の魔法で攻撃する。残りは3匹だ!


「ナイス、アスカ!」


ザシュ


そう言いながら一気に距離をつめたジャネットさんが1匹を斬り倒す。続いてリュートも魔槍で攻撃するが身軽なランドキャットは紙一重でそれをかわす。そして残った2匹が再び牙をむく。狙いは一番小さい私のようだ。


「はぁっ!」


近づいて来ようとするランドキャットを弓を振り回してけん制する。この弓はハイロックリザードの牙を削り出したもので、斬りつけることも出来る優れものだ。


ピィ


「アクアスプラッシュ」


私に攻撃が通らない間に狙いを付けて従魔たちが反撃をする。


ギャン


慣れない空からの攻撃とティタの魔法でさらに1体を倒し、残りの1体をリュートが正面に捉える。


「はいよっと」


そこへ、側面から一瞬でジャネットさんが詰め寄り首を一突きして倒す。


「悪いねリュート。注意を引き付けてくれてさ」


「そう思うなら譲ってくださいよ」


「戦場じゃ、隙を見せたら負けだからねぇ。ま、あたしの獲物を獲ってもいいんだよ」


「あの突っ込みを越えるんですか?無理ですよ」


「でも、あんたの得物の方が長いんだ。出来なくはないだろう?」


「はぁ、精進しますよ」


「2人とも素材取って」


「はいよ。毛皮と牙か…そうだ!リュート、譲ってやるよ」


「こんな時だけ。まあ、いい練習になるので貰いますけど」


投擲に使ったナイフを拾ってリュートが解体を始める。血抜きと洗浄はティタのお陰で楽になったので、リュートの仕事はもっぱら皮をはいでいくことだ。昔は、先に穴を掘って血を入れていたりしたのが懐かしい。


「終わったよ」


「それじゃ埋めちゃうね。ウィンド」


衝撃で掘った穴を風で集めた土で埋める。これ以上の襲撃は必要ないからね。依頼も受けてないし。採取依頼はギルドについてから受付に持って行ってもいいけど、討伐依頼は先に受けておかないといけない。だから、依頼を受けていない今は襲撃は無駄なのだ。もちろん、倒した魔物の素材は売れるけどね。


「じゃあ、このまま山越えだな。今日は降りたところで休もう」


「でも、ブルーバードには会わなかったですね」


「しょうがない。町についてからでもいいさ。まずは寝床を確保だよ」


「じゃあ、進みますか」


再び歩き始めて頂上でちょっとだけ景色を堪能してから山を下りる。今日は襲撃も一回だし、中々いい日だったかも。


「そんじゃ、飯の用意はリュートがやるとして薪でも拾ってくるかね」


「私も行きます」


「アスカは火の番があるだろ?あたしは、始まっちまうと何もすることがないからいいよ」


ひらひらと手を振りながらジャネットさんは薪拾いに行ってしまった。でも、どこで見つけてくるのか不思議なんだけど、短時間でいっぱい拾ってくるので助かるんだよね。勘らしいけど。今日の見張りはジャネットさんが最初で、残りが私とリュートだ。ランドキャットやブルーバードは早かったり、遠距離があるので即応できる体制にしてある。ノヴァがいれば4交代でもよかったんだけど、しょうがないよね。


こうしてゲンガルの町まで半日の距離を残して私たちは眠りについたのだった。


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