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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
迷宮都市での毎日

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出発前

「アスカ、お昼まだだけど起きてる?」


「んむ~、もうちょっとあとで~」


「分かった。早めにね」


「は~い」


「細工は順調なの?」


「それはもう!ただ、MPがね…」


「ってもう3本も飲んでるの!?」


「まあ、白銀だし仕方ないかな」


「仕方ないじゃないよ。先にご飯にするよ」


「ちょ、ちょっとリュート!まだ、途中で…」


「はいはい。こうやって話してるってことは区切りはついてるんでしょ?」


「ぐぬぬ。見破られた」


「分かったからお昼にしよう」


「…は~い」


一気に作ってしまおうと思ったのに。


ピィ


「ほら、アルナもそうしたいってさ」


「それじゃあしょうがないか。ティタも行く?」


「まってる」


「じゃあ、ここはお願い」


ティタを部屋に残し、私たちは食堂に向かう。


「今日はなんなの?」


「今日はオーク肉入りのスープにいつものパンかな?肉類は一枚焼きで、もうひとつが鳥の皮と胸の焼き鳥だよ」


「あ~、一枚焼きの方でお願い」


「分かったよ。アルナの分も持ってくるね」


ピィ


一枚焼きはよくある普通のステーキだ。ただ、部位分けとかは厳密じゃなくて単純にある程度の厚さに切り分けられている。焼き鳥の方はたれとかじゃなくて、単純に塩を振って焼いたものでこっちは気を利かせて多めに塩を振ってくれてるのが困りものだ。


「焼き鳥は塩の味付け濃いからね~」


「冒険者が多い町だししょうがないよ」


「味付けが薄かったらこっちでもいろいろ試すんだけどな」


さすがに濃い塩味の上からたれをかけるわけにもいかず、焼き鳥はこの町ではあまり頼まないメニューだ。


「せめてもの救いは、この前のパーティーで食べられたことかな。あっ!これは美味しい」


「ありがとう。お客さん減ってきてるから僕も一緒に食べて良い?」


「うん。一緒に食べよ」


同じテーブルにリュートも料理を運んできて食べ始める。


「リュートは結構焼き鳥食べるよね」


「まあ、厨房とかって暑いし塩分が欲しくなるんだよね。基本的には火は薪だし」


「ああ~、それは辛そう。でも、そういうのばっかりだと体に悪いよ?野菜も食べないと」


「そういうアスカも肉食べてる時の方が多いよね」


「ま、まあ、食べられる時はね。外だとオーク肉ぐらいしか食べる機会ないし」


コールドボックスがあるとはいえ、1週間も旅をしていれば中身は空っぽ。肉なんて最初の2,3日で終わっちゃう。あとは干し肉を戻すぐらいだ。だしとしてはいいけど、ちょっとね。


「どうしたの?こっちみて」


「ううん。宿で一緒に働いてる時はそんなに思わなかったけど、旅に出るちょっと前ぐらいからほんとに背が伸びたなって」


「そりゃあ、伸び盛りだもの。アスカだって伸びると思うよ多分…」


「多分は余計だよ。そういえば、ジャネットさん知らない?」


「う~ん、僕も知らないけど迷宮都市にいるんだからきっとお店じゃないかな?掘り出し物を探してるんだと思うよ」


「掘り出し物か~。確かに自分で見つけたら気持ちいいだろうな~」


「アスカも明日行く?」


「明日は無理だなぁ~。まだまだ細工が残ってるし」


「そう、ほどほどにね」


「わかってるって!さて、そろそろ戻らないと…」


食事も終わり、再び細工に戻る。


「えっと、さっき原型はできたからあとは塗装だね。先に塗装して魔石を入れないと…そういえば入れる魔石がないなぁ。ジャネットさんに合いそうなものか…」


上級の魔石を用意しても魔力が低いジャネットさんには使えないので、中級か使い捨てられるものがいいんだけど…。


「使い捨てって言っても今回の作りだとあんまり出し入れできないしな」


おそらく下から魔石を入れたらふたをするだろうから簡単には入れ替えができなくなる。


「となるとセオリーなのはウィンドウルフの魔石かぁ~。でもな~」


あれはずいぶん作ったし、リュートだって持ってる。有用なのはわかるけどどうしてもなぁ~。


「う~ん。熱を放射か移動できるような魔石があればなぁ…。でも、そうなったら手甲?みたいなのが必要かぁ」


いろいろと案が浮かぶものの、この先はジャネットさんと相談しないといけないのでいったん中止だ。先に塗装をしよう!


「赤いのは前に買っておいたやつを砕いてと、一緒に混ぜるのはこれと」


今回はほとんど赤色だから使うのもほとんど一緒だ。あとは色味の違いでベースの色から各パレットに移して調節だ。


「こっちが濃い赤、こっちは花びらの先でちょっとだけ薄め。あ~、ここはちょっと白っぽくしないと」


各パレットの色を調節しながら仕上げていく。


「えへへ、この髪留め喜んでくれるといいな~」


いろいろ迷ったけどやっぱり髪留めにした。ネックレスはもう持ってるし、ブローチは飛んでっちゃいそうだしね。


「ワンポイントに4枚だけ小さい葉っぱもきちんと塗ってと」


ここだけ緑色なんだよね。でも、やっぱり赤一色っていうのも寂しいからこういうのは大事だと思うんだ。


「ただ、大きさの関係でものすごく面倒なんだよね。花びらの真下にもう葉っぱだし」


そろそろと筆を葉っぱにやってちょっとづつ塗っていく。これに色味を調整しないといけないんだから時間がかかる。でもやり遂げないと。



「…スカ、アスカ!」


「はい?」


「何時だと思ってるんだい?もう、飯の時間終わっちまうよ」


「あれ、お帰りなさいジャネットさん」


「お帰りじゃなくて飯だよ。ほらほら、行くよ。アルナやキシャルも待ってるんだから」


「は、はい」


ジャネットさんに連れられて食堂に向かう。なんだかこの光景、以前にもあったような…。


「まっ、いっか!」


「何がいいんだいまったく」


食堂に降りると人はまばらで、残っている人も大体は食後だった。


「ご注文は?と言いたいけど、残り物で我慢してね」


「あたしは大丈夫だよ」


「私も」


残り物って言っても朝のスープと違ってきちんとしたメニューなので、量も味も十分だ。


「うん。お野菜おいしい」


ピィ


アルナも満足そうだ。キシャルはというとアルナと一緒にもらった野菜を凍らせて食べている。


「う~ん。進化してから氷以外も食べるようになったけど、なんだか変わった食事だよね」


食べる時は必ず凍らせてるし、味とかわかるのかな?


んにゃ~


ちゃんとわかるよ~と言いたげにキシャルが鳴く。まあ、それならいいけど。


「さて、飯も終わったし風呂と行きたいけど桶だねぇ」


「この時間からだと仕方ないですね」


大浴場はあるものの、お湯を作るのが大変だからか湯の入れ替えはない。この時間からだと冒険者が入った後なのでお世辞にもきれいとは言えないのだ。


「それじゃあ、拭いた後はキシャルも洗ってあげるね。そのころには冷めてるだろうし」


んにゃ


べつにいいというキシャルをよそに体を拭いていく。


「そうです、ジャネットさん。手甲というか薄めの金属を加工したやつって手に付けても大丈夫ですか?」


「またなんでだい?」


「今作ってるバラの髪留めに対応したやつを作りたくて」


「まあ、ものによるけど薄めに作ってくれるならいいよ」


「ほんとですか!じゃあ、頑張りますね」


「いや、そこはほどほどでいいよ。頼んどいてなんだけどさぁ」


「だめですよ。ちゃんと戦いにも使える奴なんですから」


「ならせめて右手だけにしてくれ。他にも色々作るんだろ?」


「まあ、それはそうですけど…」


「両手だと重いしさ、なっ!それで頼む」


「わかりました!明日には作れますから」


「急がなくていいよ本当に」


心配性だなぁジャネットさんは。


「それじゃあ、私はもう寝ますね。おやすみなさ~い」


「はいよ、お休み」


ジャネットさんに挨拶をしてベッドに入る。明日も頑張らないと!



そして翌日…。


「ふわぁぁぁ~。おはよう、キシャル~」


んにゃ


珍しく朝起きるとキシャルが出迎えてくれた。ジャネットさんはまだいるのかな?


「あれ?いないや。ジャネットさん知らない?」


んにゃ~


どうやらキシャルによるとジャネットさんはアルナと一緒に朝のお散歩らしい。


「結構早起きだったと思うんだけど、置いてかれちゃった」


とりあえず、私もご飯を食べて細工の続きだ。


「ジャネットさんの許可も出たし、入れる魔石はファイアリザードの魔石にしてと。ティタのスクロールで込める魔法はフレイムカッターだね」


魔石の力で魔法を使う補助をして本来、フレイムカッターに必要な魔力を補うのだ。


「そのためには右手に付ける手甲はミスリルを使ってと。あとせっかくだし、一枚だけ記念にもらっておいたフレアリザードの皮を裏に張って、軽量化もしてと」


中央の魔力が通る部分だけミスリルを多く使い、他は薄く伸ばす。このほうが動きも阻害しないしいいだろう。


「あとは魔法を移すスイッチ代わりに炎の魔鉱石を配置してと」


こっちの魔鉱石は替えが効く作りにしておく。永久的に使えない分、魔石と違って発動に必要な魔力とMPが低いからね。


「うんうん。彩色も終わってるし、いい感じに仕上がってきた」


コンコン


「アスカ、お昼だよ?」


「リュート?わかった、すぐ行くね~」


ここまで来たら一気に仕上げたいけど我慢だ。長時間かかるものは間にリフレッシュした方がいい仕上がりになるんだよね。


「さて、そうと決まればお昼、お昼~」



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