ただいま清算中
「ん~、外だぁ~」
ようやく地上に戻れた私たち。やっぱりお日様の光を浴びるっていいね。ちょっと眩しいけど。
「さて、んじゃ、鑑定に行くぞ!」
「おお~~」
私たちは今回の冒険で得たアイテム鑑定のために再びおじさんの店を訪れた。
「はいよ…お前らか。ちゃんと良いもんあるんだろうな?」
「任せてくれよ!」
「ふん!じゃあ、奥に来い」
「店はいいんですか?」
「どうせ滅多に来ん。途中で邪魔が入っても面倒なんでな」
というわけで奥に通される。結構広い部屋だ。
「ここ広いですね」
「冒険者どもはマジックバッグから遠慮なしにでかいやつを出すからな。そこのディンみたいなやつに昔テーブルを壊されてからこうやって、数が多いやつらはここに通している」
確かに解体場とかじゃ、獲物の大きさを確認して出すけど、言われないとそういうことってあんまり気にしないかも。
「それじゃあ、順番に出していきますね」
私たちはそれぞれ持っているものを出していく。
「じゃあ、まずはこれからだな」
赤い革:フレアリザードの皮。Cランクで物理だけでなく火への耐性も持つ。色味もよく人気も高い
「うむ。品質も中々なやつだ。そのまま売ってもいいし、知り合いの鍛冶屋でもいれば持ち込んでも構わんな」
「いつものよりいいんですか?」
「ああ、金属のプレートと合わせても軽く仕上がりそうだ。さて次は…」
氷の塊:Cランク。溶けない氷と評されるもの。魔力を込めることでアイスニードルを放つ
「おお、こいつか。氷魔法を誰でも使えるからいいぞ。まあ、威力はそこまで高くないが、火魔法の迎撃やさらに魔力を流せばそこから凍らせたりもできる。まあ、その時は近接しないと無理だがな。一番簡単な使い方は杖に付けることだな。お嬢ちゃんはどうだ?」
「私ですか?確かに便利そうですね」
んにゃ~
その時、キシャルが私の耳元で鳴いた。自分がいるのにそんなのに頼るのか?と言っているみたいだ。
「わかった、わかったから落ち着いて。ね、キシャル」
んな
分かればよろしいとうなづくキシャル。これももったいない気がするけど、売っちゃわないとな。別にキシャルの言う通り、氷属性の攻撃は間に合ってるんだし。でも、敵に接近して「凍れ!」とかやってみたかったなぁ~。
「そっちの話は済んだか?次はと…ああ、水の石か。こいつはCランクまでの魔力を込められる鉱魔石だな。数回つかえるが、どんどんひびが入っていくから、一応目安にできるぞ」
「水魔法はティタも使えるし、これも売っちゃおうかな?」
「ああ、売るなら魔法を込めてからでもいいぞ。攻撃魔法でも回復魔法でも有用だから、付与に自信があるならそっちの方が高く売れる。大体、金貨4,5枚ぐらいだな」
「結構な金額だねぇ。ティタ、あとでやっといてくれ。魔法は誰でも使えるやつだから回復にしといてくれよ」
「わかった」
「次は鞭か。お前らの持ってくるやつは本当にバラエティに富んでるな」
「そうですか?普通に出たやつなんですけど…」
「これはと…」
電撃鞭:Cランクの鞭で攻撃時に魔力を込めることで相手に電流を流せる
「ああ、電撃鞭だな。喜べ、これがあれば盗賊の捕縛とか楽だぞ。あいつら、引き渡しが面倒だからな。これで脅すのも運ぶのも簡単になる」
「次はこれだが、これは鑑定書だけでいい。オーガの首飾りなのは確定だからな」
「ん?確定の割りに鑑定書が欲しいのか?」
「どうせあと数年で売却だ。その時に鑑定書をつけてもらうんなら今やってもらった方がいいだろう?」
「そういうことか。一応、簡単に文章もつけといてやるよ」
オーガの首飾り:Bランク。オーガ系の動きに反応できる特殊な魔法がかかっている首飾り
「お次は…サティーのか」
「何であたいのやつには興味なさそうなの?」
「いや、お前さんはCランクの冒険者だしな。そんなに期待するほどのもんはないだろう」
「まあそうだけどさ~。でも、今回はちょっと変わってるのだよ」
「期待せずに見させてもらうとするか。ん?ああ、これは…」
「見たことがあるのか?」
「まあな。玉はないがいくつか入ってきたことがある」
「そうなのか?俺たちも見かけたことはないが」
「う~ん。難しいところだな。特殊な形で実用的ではないんだが、そこそこ装飾がきれいでな。結構、コレクション目的で注文はあるんだ。商人もどうせ武器としては売れないから、珍しい物好きの旅行者やそういった層にしか勧めないのかもな」
「んで、これって結局何て名前なの?」
「こいつか、こんな感じだな」
ジャマダハル:Cランクの刺突剣。速さが上がり突きの能力に特化しているが、装備中は性格が攻撃的になる
「おい、ちょっと待ってくれ!これは呪い装備なのか?」
「ん?いや、呪いというほどのものでもないぞ。単純に避けるか攻めるかといった時に確実に攻めを選ぶようになるぐらいだ。速さも上がっているから、危険は和らぐぞ?」
「そう言われてもな。やけにダンジョン内でサティーが好戦的になったはずだ。ゴーレムにも突撃していったし」
「でも、あたいこれ気に入ってるから買うね~」
「おいおい、危ないだろう?」
「これだけ手にフィットした武器って他にないんだもん」
「ま、本人もこうやって言ってるし、いいんじゃないか?心配なら、守り石もあるぞ?」
守り石とはベゼルシートと同じく、使い捨てで持ち主に危険が迫るとバリアを張るアイテムだ。ただし、ダンジョン産のみで、一般的には製作できない。ただ、そこそこ算出はあるようで1つ金貨1枚ちょっととお求めやすい価格ではある。
「だって!いいでしょ~ハイル~~~」
「うっ、し、仕方ないな。だが、守り石を持っているからと言って調子に乗るなよ?」
「わかってるって!ありがと~、チュッ」
「全くこんなところで…」
「いいでしょ~別に。減るもんでもないし…」
「うわ~、すごい!大人だぁ~」
「はいはい。あんたはこっちね」
「ん?これはまたゴーレムの核か?しかし、色が違うな」
「アイアンゴーレムのかく」
「アイアンゴーレムの?そうか、こっちに流れてきたのは久しぶりだな」
「そういえば、俺たちも相手が面倒だからあんまり倒してこなかったな」
「今回みたいな戦い方を覚えてたらもうちょっとは倒したんだけどね」
「まあ、こいつは普段は魔力球として売られているからな。魔力の塊で、杖に付けると各種魔法の威力が上がるから飛ぶように売れるぞ!一応鑑定結果だ」
アイアンゴーレムの核:Cランク。鉄の塊を動かすだけあって通常のゴーレムの核よりも魔力が多く格納されている
「その割にはCランクなんですか?」
「まあ、使えば明確に威力は上がるが、格段に上がる訳でもないからな。ただ、全属性に恩恵があるから人気なんだ。まあ、Bランクぐらいまでだがな。それ以上は大体、属性専用の杖になる。だが、誰でも使えるのも利点があって、売る時に値崩れしにくいんだ」
売れば金貨4枚にはなるという。
「ジーーーー」
「わ、わかってるから!そんなに見ないで」
ほんとにここまでコアを食べるの我慢したんだなぁ、ティタって。
こんな感じで、ダンジョンで出たものを鑑定してもらう。
「で、電撃鞭どうします?使えそうではあるんですけど…」
ハイルさんたちは滅多に外には行かないからいらないみたいだけど、私たちは旅の途中。かなりの確率で今後も出くわすはずだ。その時に役には立つだろうけど…。
「あたしはパス。あんなもんいちいち使ってられないね」
「僕も槍系で2種類使ってるし、当分無理かな?」
「アスカはどうなんだい?」
「わ、私ですか?似合いますかね?」
「最初に気になるところそこなのね。でも、美少女が鞭を持つって絵になると思うわよ」
「でも、なんだかイメージが…」
私の中では鞭=女王様なのだ。でも、武器としては有用なんだし、ちょっとぐらい使ってみようかな?
「使ってみるといい。どうせ、ダンジョン産なんて最初から中古みたいなもんだ。俺が取得日と鑑定日を書いといてやるぞ。そしたら、売る時もそれほどマイナスにならんだろう」
「ありがとうございます。ちょっとお外で練習しますね」
「残ったものでレアそうなのは俺が買ってやるから、適当なのはそっちで処分しろ。ああ、鑑定書がいるやつは置いておけ。今日はちょっと他にも依頼があってな。後日取りに来い」
「わかった。うちのは後回しでいい。それじゃあ、今回の探索もここまでだな。みんな疲れただろう?今日はゆっくり休んでくれ」
「何だよ、一杯やらねぇのか?」
「アスカや、サティーもいるんだぞ?そういうのは後日だ」
「しょうがねぇか。なら、俺たちは一杯飲もうぜ!」
「今日は暇だし、あたしも付き合うか」
2度目のダンジョン探索も無事に終えた私たちは長かった一日を終えて、それぞれ思い思いの場所に行ったのだった。




