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こぼれ話 アスカと商会運営

「う~ん、どうしてこんな金額の支出があるんだろ?」


「どうしたんだいアスカ?」


「いえ、昨日ダンジョン探索から帰ってきて、久しぶりにトリニティの帳簿をつけてたんですけど、どうにも合わないんですよね」


「普段からつけてないからだよ。どこが合わないんだい?」


「それが、この金貨30枚×2ってやつでして…。私、そんなに高い魔石を買った覚えもありませんし、ジャネットさんは知りませんか?」


「金貨30枚。かなりの大金だね…アスカ、この前使ってた白銀はどこだい?」


「ああっ!!きっとそれです。あれって高いんですよね~」


強度、魔力の通りのどちらを取っても一級品のため、塊ひとつで金貨30枚もするのだ。使う時は慎重にやら

ないとすぐに大赤字になる素材でもある。


「こうならないように普段からつけとかないとね」


「そうですね。何かいいものないか探してきます」


「そういうことなら、あたしも行ってやるよ。立ち上げに絡んでいる以上は無責任に放り出せないしね」


「お願いします!」


トリニティは私名義の商会だけど、実は作ってくれたのはジャネットさんたちだ。私のお金の管理とか商品の管理が曖昧だから、将来きちんとお金が貯まるようにってこっそりと開いてくれていたのだ。旅に出るにあたって運用方法とかを知り合いの商会長さんに教えてもらったのだが、中々時間が取れずおろそかになっていた。


「いらっしゃいませ~」


「あの~、帳簿管理をしたいんですけど、何かいいものありますか?」


私は期待をせずに一応聞いてみる。アルバにいた時も帳簿管理がしやすいものって聞くと、きれいな紙のノートを出されただけだったしね。


「それなら、南の大陸から入った新商品がありますよ。使いやすいと商人にも評判です」


「じゃあ、それを見せてもらえますか?」


「はい、こちらになります」


店員さんが奥から一冊のノートを出してくる。やっぱりかぁ~。


「はい、開いてみてください」


「こうですか?わわっ!」


ノートを開くとそこには細い罫線と太い罫線が使われた書式が使われていた。


「うそ…これって簿記のやつ?」


ノートに書いてあった書式は昔、お姉ちゃんに見せてもらった簿記のやつにそっくりだった。


「いったい誰がこんな…」


私はパラパラとページをめくっていく。ただ、書式が使ってあるページが進んでいくだけだけど、最後のページには著者の言葉が書いてあった。


『この本はあなたの会計処理を助けます。もしわからないことがあれば巻頭のページを見てください。それでもわからない人は~~~~』


「えっ、これって!?」


「おかしいですよね。他はきれいに書かれているのに、見事にそこの部分は文字がゆがんでいるんですよ。どうしてでしょうね」


違う、これって日本語だ。『それでもわからない人は』まではここの言語で続きは日本語で『同郷のよしみで教えてあげるわ!』と書いてあった。確かにこの世界の文字はアルファベットに近いから、日本語はゆがんだ文字に見えるのかもしれない。


「えっと、著者の住所は…リディアス王国のカーナヴォン領か。ちょうど、新しいポーションの生産国だし、行ってみようかな?」


「どうしたアスカ。さっきから黙って?」


「いえ、このノートとても使いやすそうだなって。それに、これを作った人は前に話してたポーションの生産国なんです」


「ふ~ん。なら、行ってみるか?」


「はい!バルドーさんに会った後、絶対行きましょうね!」


ジャネットさんと約束してノートを買い、部屋に戻る。


「うう~ん」


「今度はどうしたんだい?」


「いえ、巻頭の説明文読んでるんですけど、中々頭に入ってこなくて…」


実はこういう計算とかあんまりしてこなかったんだよね。まあ、巻頭の説明で銅貨1枚を10、銀貨1枚を100、金貨1枚を1000に当てはめろって書いてあって、計算は差し引きで簡単になった。でももし、これがもっと広がったら、銅貨〇枚なんて表現はなくなっちゃうかもね。それよりも問題なのが科目だ。


「えっと、白銀の塊は仕入れで科目コード的には…」


ノートには科目コードも書かれていて、仕入れや販売に売り上げなど各科目ごとに数値が振られている。わかりやすくはあるんだけど、これに慣れるまでがつらい。


「確かに年間の売り上げなんかをまとめる時には便利なんだけどね~」


数字も件数も多くなる年間決算を作ろうとしたら、科目コードだけ見て抜き出せるので便利なんだけど、ほんとに最初は面倒だった。


「くぅ~、パソコンさえあればなぁ~」


「パソコン?何だいそれ?」


「おっきい箱ですね。でも、計算とかできるんですよ」


「たまにアスカはよくわからないこと言うねぇ~。ふわぁ~」


「ジャネットさん、お疲れですか?」


「ん?まあ、ちょっとね」


「それじゃあ、ゆっくりしてくださいね。アルナ、お歌を歌ってあげて」


ピィ


最近になってアルナはオルゴールに合わせて鳴くことを覚えた。アンデッドダンジョンで見つけたオルゴールだけど、たまに流しては寝ていたら、どうやら音に合わせて歌えるようになったみたいだ。


「アルナ~、無理にするな~」


ピィ ピィ


問題ないと音に合わせて鳴くアルナ。おやすみジャネットさん。


コンコン


「アスカ、入るよ~。あれ?ジャネットさんも寝てるんだ、珍しい。このまま寝かせておこう。それにしてもこうやって一緒に寝てると姉妹みたいだね」


僕は下に降りて食事の用意を遅らせる。まあ、こんな日もあっていいかな?



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[一言] >「いえ、このノートとても使いやすそうだなって。それに、これを作った人は前に話してたポーションの生産国なんです」 >「ふ~ん。なら、行ってみるか?」 >「はい!バルドーさんに会った後、絶対行…
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