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30Fとそれ以降

「みんな気を引き締めていくぞ!」


「はい」


ハイルさんの掛け声とともにみんなで扉の中に入っていく。そして相手を確認する前にすぐに指定の陣形に変わった。周辺の地形は岩場のようだ。


「ボスは…いた!オーガジェネラルだ」


「厄介なのを引いちまったな」


「ディン、アスカさんを頼むわよ」


「お前こそ当たるなよ」


「ジャネット!一人ずつそれぞれに付く。みんなはフォローを!」


「了解です」


マインさんにはリュートが付く。相手は2体なので、こちらも2部隊に分かれての攻撃だ。


「まずはけん制に…」


ウィンドカッターを放ち、相手の出鼻をくじこうとする。


ガィン


「嘘っ!ウィンドカッターをものともしないなんて…」


「あの鎧はさっきのオーガアーマーの強力版だ。さらに重いが魔法にも十分な耐性があるんだぜ!」


「面倒ですね」


ハイルさんも斬りかかるが相当鎧が頑丈なようで、ダメージらしきものも与えられない。それに、オーガ特有の皮膚の硬さもあり、鎧の継ぎ目も致命傷にはならないようだ。


「アスカ、来るぞっ!」


「は、はいっ!って、無理!」


ガンッ


「ふぃ~、とんでもねぇ衝撃だな。相変わらず」


「ディ、ディンさんありがとうございます」


オーガジェネラルが剣を地面に突き刺したと思ったら、こっちに岩を投げてきたのだ。しかも、その速度。あまりに早くてうまく動けなかった。一応キシャルも氷の壁は出してくれたみたいだけど、防げたかは微妙なところだ。


「くぅ~、物理が効けば…アースグレイブ!」


私はみんなの攻撃の隙間で、アースグレイブを放つ。結構大きさのある槍ならひょっとしたら…。


ガキンガキンガキン


「はぁ~、そうなっちゃうんだ」


土の槍は先っぽからどんどん折れていった。あの鎧、どんな耐久力してるんだろう。


「とにかく、鎧の硬さを考えるとよっぽどの質量でないと駄目みたいだ。後は炎か…そうだ!」


「なんかいい案浮かんだか、お嬢?」


「はいっ!ハイルさん、合図したら下がってください!」


「ん?了解した。はぁ!」


オーガジェネラルの攻撃を剣でいなし、ハイルさんが少し距離を取る。私はその間に魔法を思い描き準備は万端だ。


「今です!」


「おうっ!」


バッ


ハイルさんが離れた瞬間に私は魔法を放った。


「猛火よ、敵を撃て!フレイムブラスト」


オーガジェネラルに向かって火線が伸び、一気に炎が襲い掛かる。


グァァアアアーー


通常ならここで数秒燃えて収まる魔法だけど、私は魔力を流し続け維持する。私が狙いをつけたのは顔。兜は被っているものの皮膚の露出も多く、炎を燃やし続けることによって酸欠になることを狙ったのだ。


ガァァ…


どんどん、勢いをなくしていくオーガジェネラル。私はとどめとばかりに追加の魔法を放つ。


「これで!ウィンド」


酸素を一気に追加して炎を青くし火力をあげる。


「今です!」


「ああ、任せろ」


上半身が焦げて満身創痍となったオーガジェネラルにハイルさんがとどめを刺す。


「ふ、思ったよりスムーズだったな」


「向こうは…腕が切り落とされてますね」


ジャネットさんだろうけど、右腕がきれいに切り落とされている。やっぱりすごいなぁ。


「ほら、リュート。行くよ」


「は、はい!でも、後ろが…」


「マインもサティーも避けるだけなら問題ないさ!そうだろ?」


「ええ、任せて」


「頑張るよ!」


「わかりました!行くよ魔槍」


リュートがジャネットさんと一緒にオーガジェネラルに飛び込んでいく。


「やぁっ!」


「来る!あいつが腕を振り回すから切り落とした腕の方から狙うんだよ!」


「分かりました!」


ジャネットさんが攻撃を引き受け、リュートはわずかに間合いを取り隙をうかがう。


オォォォ


オーガがひときわ大きく腕を振り回す。


「はんっ!当たってやるわけにはいかないね。リュート!」


「行きますっ!」


リュートが大きく跳ぶと、跳んだ先に風の足場を作りそれを利用して一気に相手の側面に躍り出る。


「魔槍よ!」


その勢いのままリュートが魔槍を突き出す。そして、魔槍は肩口から横にオーガジェネラルの体を貫いていく。


「倒した…」


「リュート、下がりな!」


「うわっ!」


「危ない!風よ!」


私はとっさに風魔法でリュートをその場から離す。ちゃんと着地の際にはふわりとなるように改めて魔法も使った。


「ア、アスカ、ありがとう」


「ううん。大丈夫?」


私は駆け寄ってリュートにけががないか確認する。


ぺたぺたぺた


「う~ん。触った感じは大丈夫みたいだね」


「う、うん。平気だよ」


「でも、ちょっと心配だから魔法かけとくね。ウォームヒール」


私はリュートに魔法をかける。


「おやおや。まあ、相手が相手だしねぇ」


「そんじゃ~、大きなけがもないことだし、宝箱開けるね~」


「はいよ」


サティーさんが出現したボス宝箱を開ける。オーガジェネラル関連のものって何だろう?


「中身は~。ん~?これってあれかな」


「どうしたサティー?」


「いや~、あたいは初めて見るけど、ハイルならわかるんじゃないかなこれ」


「俺なら?なんだ」


サティーさんがハイルさんに小さいものを渡している。オーガ関連のものって思っていたから思っていたのより小さくてびっくりだ。


「これはオーガの首飾りか…本当に珍しいものだな」


「なんだか珍しいものみたいだね」


「そうだね。行ってみよう」


私たちも宝箱の方に移動する。


「んで、そいつは何だい?珍しいものみたいだけど」


「これはオーガの首飾りと言って、このフロアの宝箱の中でもレアなものだ。効果はオーガ系の動きがわかりやすくなり、急所にも当てやすくなるって代物だ。簡単に言えば対オーガ系のアイテムだな」


「へ~。だけど、オーガ系専用なんですね。高いんですか?」


「もちろんよ。オーガ系は生息域が広いのと草原や林、森にもいるでしょう?街道はその辺りを通ることが多いからとても有用なのよ」


「他の専用アイテムは生息域の関係で買いたたかれることもあるが、これはその心配もない紛れもない一級品だ」


「そうそう、それにこの階層でジェネラルの野郎にあった時も使えるしな!」


「でも、オーガ系の宝箱でオーガ討伐に使えるアイテムなんて不思議ですね」


「この首飾りが怖くて隠し持ってるなんて話もあるぐらいだからな。まあ、オーガたちは好戦的だからそんなことはないと思うが」


「つけるならジャネットかリュート君かしらね?どっちがつけてみる?」


「ああ、リュートのやつに付けてやってくれよ」


「いいんですか?」


「あたしはあれぐらいなら見切れるからね。数が多いと何とも言えないけど」


「じゃあ、つけておきます」


「ほいよ、アスカ」


「えっ!?私にですか?」


「せっかくだから付けてやりなよ。さっき、頑張ってただろ」


「そうですね。リュート、こっち向いて」


「う、うん」


首飾りを頭から通してかける。


「もうちょっと飾りっ気があったらよかったのにね」


「まあ、冒険で使うならこんなもんじゃない?」


「そうかな?それじゃあ、リュートにも町行きのを作ってあげる!ジャネットさんはバラだけど、リュートは何にしようかな~?」


「やれやれ、この子ってば」


「それより、もう一つの宝箱開けよう~」


「そうでした。2つあったんでしたよね」


流石に30Fともなればこっちも期待できるだろう。


「中身は~、うん?変わったやつだね~。こうかな?」


サティーさんが中身を取り出すと手に持っている。


「おい、あんまり不用意に持つと…なんだそれは?」


「さぁ~?多分、こうやって持って突くんだと思うんだけどね~」


ぶんぶんとみんなに見せるように振った後、サティーさんがそれをもって突きを繰り出す。


「お~、なんか相手をぶっ刺せる気がしてきた」


「おいおい、呪われてないだろうな」


「だ~い丈夫だって!アスカ、これ何かわかる?」


「ん~?確か…ジャダマ、いや、ジャマ…えっと、聞いたことはあるんですけどちょっと難しくて」


「ふ~ん。使い方はあってる?」


「それはあってますよ」


「よかった~。ねぇ、これもらっちゃっていい?あたい気に入ったかも~」


「あたしたちはいらないからいいよ。ただし!」


「わかってますって!ハイル、これ高そう?」


「どうだろうな。レアそうではあるが、形状が特殊だからな。それを嫌厭するやつも多いだろう」


「そうね。やっぱり使い慣れた武器がいいし、重量や長さが違うだけならともかく、形状から特殊だと1からやり直しだもの。サティー、あなた大丈夫?」


「問題ないよ~。なんていうかな~手になじむって感じ?スパッとは難しそうだけど、ザクッとならいけるよ」


暗殺者のナイフを腰に戻し、両手に武器を持ち替えたサティーさんは払いに突きにと動きを見せてくれる。確かに、これならいけそうだ。ここから先は魔物も強くなるし、殺傷力のある武器の方が安心できるだろう。


「無茶だけはするなよ。それじゃあ、無事にボスも倒したことだしもう一度身なりを整えて次のエリアに向かう」


ここからはさらに敵が強くなる。気を引き締めていかなくちゃ!


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― 新着の感想 ―
[一言] >「ん~?確か…ジャダマ、いや、ジャマ…えっと、聞いたことはあるんですけどちょっと難しくて」  ジャマダハル……なんともキワモノな。  持ち手の形状が特異で、Hの横棒の部分が持ち手になって…
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