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まだ見ぬボスへ

「おはようございます」


「はい、おはよう。ご飯食べるでしょ?」


「いただきます」


時刻は午前4時ごろ。まだ、日は登っていないというか、ダンジョンだから登らないんだけど早朝である。今日は30Fのボス部屋と、以降の5フロアを攻略することを考えてこの時間なのだ。付け加えるなら帰りの時間も含まれている。


「みんな、飯は食べ終わったな。テントを片付けていくぞ」


セーフティーエリアの片付けも終え、いよいよ26Fへ進む。


「ふむ、今回は小さい沢がある丘陵地帯だな。見晴らしはいいし、戦いやすい地形だ」


「ただ、敵は強くなっているわ。気を抜かないように!」


「はいっ!」


「このエリアではゴブリンジェネラルやオークバトラーにウォーオーガなどが出る。林や平地の敵がいると思えばいい」


「わかりました。リュート、探知しやすい地形でよかったね」


「うん。僕が中心になってやるから、アスカはフォローをお願い」


「オッケー、私は後方のみに絞るね。前は任せたよ!」


リュートに前方の探知を任せて、私は後ろに下がる。私の護衛にはディンさんがついてくれている。従魔もいるから大丈夫だと思うんだけど、マインさん曰く弾除けにどうぞだって。確かに、キシャルもアルナも攻撃はできるけど、受けられるタイプじゃないからね。


「皆さん、魔物です!」


「規模は?」


「6体です。おそらくゴブリンかと」


「よし!一気に畳みかける!」


3の倍数で行動することからゴブリンと判断した私たちは、一気に距離を詰めて攻撃を開始する。ゴブリンたちは探知能力も低いので、そのまま倒すことができた。


「まあ、どこまで行ってもゴブリンだな」


身なりもきちんとしているものの、上背もなければオーガのように超人的なステータスもないので正直言って、ウォーオーガの方が危険だ。


「丘の宝箱は普通に置かれてるんだね。逆に怪しいなぁ」


「まあ、ダンジョンの考えなんてよくわからないよね~。さっ、リュート君は下がってて」


「はい」


サティーさんが罠を確認して宝箱を開ける。


「んん~、なんだろこれ?」


「何があったんですか?」


「ん~、石?でいいのかな?」


「魔石か?なら、いいもんじゃないのか」


「どうなんだろ~?見慣れない色だし、使えるのかな?」


「とりあえず乗せてみるといい」


サティーさんから石を受け取り本に乗せてみる。


「反応はありませんね」


「だね。とっとくか」


魔石っぽい石を袋に入れ、再びフロアを巡る。


「今度は前方、反応は大きめです」


「オーガかオークか。弓がいるかもしれんから盾は欠かすな」


「了解」


リュートは私の作った盾を展開する魔道具を、ハイルさんが小型の盾を取り出す。


「ジャネットは?」


「あいにくと持ってなくてね。剣で落とすよ」


だんだんと魔物が近づいてくる。大きさは同じぐらいだけど、これはオークだね。オーガならウォーオーガだから弓は使わないだろうけど、オークなら危険だ。


「リュート、オークみたい」


「本当?あっ、確かに。皆さん、敵はオークです。弓使いがいるかもしれません」


「弓使い上等だ!」


「こら、あなたはアスカさんの護衛役でしょ」


サポートのことも考えて、中衛からやや距離を置いて待ち構える。ゴブリンと違ってオークは鼻が利くので、一定以上近づくと気づかれてしまうからだ。どうせ位置がばれるなら戦いやすい地形で待つ、これが魔物との戦いを楽にする秘訣なんだ。


「3,2,1,来ます!」


リュートの合図とともにオークが姿を見せる。


「オークの武器は…剣2体、槍1体、弓2体!」


「わかった!」


敵の陣容を受け取ったところで、一気に空に飛びあがる。狙いは弓使いの2体だ。


「それっ!」


素早く弓をつがえると、狙いをつけて2射放つ。


ヒュン トスッ


初撃の一矢は見事に脳天に直撃したものの、二矢目は腕に当たった。どうやら向こうもこちらを狙っていたから何とか反応したようだ。


「くぅ!防がれた」


ピィ


すかさずそこにアルナが魔法を放つ。アルナの魔法は見事に傷ついたオークアーチャーを仕留めた。


「アルナ、ありがと」


地上に着地すると、前方での戦闘も終わりを告げた。まあこっちも7人いるわけだし、5体じゃ問題ないよね。


「さて、宝箱もないし先を…むっ!」


「アスカ?みんな右側だ!」


ガァァァ


魔物を倒したと思ったらその匂いをかぎ分けてきたのか、すぐに次がやってきた。


「ウォーオーガか!」


「一気に距離を詰めてくるわよ。注意して」


マインさんの言葉通り、私の矢とマインさんのマジックナイフの攻撃を受けながらもウォーオーガたちは突っ込んでくる。


「オーガ系はこれだから…うわっ!」


1匹のオーガが近くにあった石を投げつけてくる。


「速い…全く馬鹿力なんだから。ウィンド!」


石を避けると、続いて投げられないように風魔法で相手を吹き飛ばす。周りにも風の影響で石がこちらに届かないようにすることもできる。流石にアルナには危険すぎるからね。


「よっ!はっ。リュート、そっちに行くよ」


「はい。せいっ!」


「ハイル、注意を左に寄せるね」


「無理はするなよ」


それぞれ小規模で対応しながらウォーオーガを倒していく。


「これが最後だな」


ハイルさんが残った1体を倒し、戦闘は終わった。


「あ~、疲れたぜ」


「ちょっと、ディンは戦闘に参加してないでしょ?」


「だからだよ。普段ならおらぁ~!って突っ込んでいくのに、ずっとがまんしてアスカの護衛をしていたんだからな」


「ああ、そういうこと。それはご苦労様。じゃ、久しぶりに宝箱でも開けなさい」


「いいのか?なら、開けるぜ!」


ディンさんがウォーオーガから出たドロップ品を手に取る。


「重てぇ…」


「あら、オーガアーマーだったの。筋トレになるわね」


「オーガアーマー?」


「オーガ系専用と言われる鎧だな。重量と引き換えに丈夫で、ある程度魔法にも強いが、本当に重くてな…」


「でも、これを着て動けるとなったら、かなりの筋力があるからトレーニングにはいいのよ」


「今貰ってもなぁ。昔ならもっと喜んだんだが」


喜んだんだ。ディンさんって修行好きなのかな?一応、冒険者をやめてもトレーニングできるように持っておくそうだ。私も持とうとしたけど、ジャネットさんが本気で何とか持ち上げたのを見てやめた。


「ふぅ、かなり進んだな。あと1フロアか」


「そうですね。ここまで順調です」


「まあ、30Fまではね。ここでケガするんなら、この先には行かない方がいいわけだし」


「厳しいんですね」


「そう聞こえるけど、ダンジョンは徐々に敵が強くなっていくの。自分の実力さえ把握できればいくらでもチャンスがあるんだから感謝しないとね。外じゃ、何が起こるかわからないんだし」


「確かにそうですね。外だとひとつのエリアでも意外な魔物が出てきちゃったりしますし」


「そういえばアスカ~」


「何ですか?」


「海の時はあんなに宝箱にはしゃいでたのに、今はそうでもないね」


「あ、あれは、新しいエリアだったからですよ!やっぱり、冒険とか旅って新しいものとの出会いですから。ダンジョンとかも新鮮なんでああなっちゃったんです」


「ふぅ~ん、それじゃあこれからは落ち着くんだ?」


「た、たぶん…」


「そこは断言できないんだね~」


「しょうがないじゃないですか!憧れのダンジョンなんですから」


前回は本当にお試し気分だったから、本格的に潜れる今回のチャレンジは楽しいのだ。


「よっと。ん~、宝箱。中身ちょっと渋いですね」


「まあ、見えやすいところにあるし、そこそこ階層も進んでいるからな。いいものだったらCランク以上になる分、出ないんだよ」


ハイポーションとか鋼の剣とかぐらいしか出ない。その辺の武器屋や道具屋にもあるものしかなくてつまんないな。


「魔物自体も普通のやつばかりだから仕方ないわよ。せめて森ぐらいなら、魔物にも特徴が出るんだけど…」


「ゴブリンにオークにオーガですもんね。もうちょっと変わったものでもいれば…」


んにゃ~


「ん~、キシャルは眠たいの?だめだよ、我慢してね」


いつもはお昼寝タイムのキシャルがどうにも眠そうだ。ただ、今は子猫だから仕方ないのかもしれない。


「よしっ!このフロアももう大丈夫だな。いよいよ次がボスエリアだ。みんな、気をつけろ!」


「「はいっ!」」


みんなで装備を確認してから階段を下りる。


「陣形は確認したな。一気に入って、とりあえずは確認した通りに構えなおすぞ」


「了解です」


さあ、いよいよ30Fのボスとご対面だ。



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― 新着の感想 ―
[一言] >「オーガ系専用と言われる鎧だな。重量と引き換えに丈夫で、ある程度魔法にも強いが、本当に重くてな…」 >「でも、これを着て動けるとなったら、かなりの筋力があるからトレーニングにはいいのよ」 …
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