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火山と氷山

私は火山地帯のあまりの暑さに、手を突き上げながら宝箱の入手を喜んだ。


「さてさて、中身はなにかな~」


「は~い。じゃあ、あたいがやるね~」


すすっとサティーさんがやってくると宝箱の罠を外してくれた。


「じゃあ、はい!」


「行きますよ~、えいっ!」


宝箱の中にはなめし終わった革が入っていた。


「赤い革ですか、何でしょうね?」


そう言いながら本の上に置いてみる。しかし、反応はなかったので、それなりに良いものではあるらしい。


「ああ、多分それはフレアリザードの革だな。熱耐性もあるし、重量も軽いからこういう地形に行く時は人気のやつだ」


「じゃあ、高く売れたり?」


「いや、このダンジョンで毎回火山地帯が出るわけでもないし、近くに火山はないからな。そういう地域だと元々棲息しているからそこまで高くない」


「なぁ~んだ」


「だが、火の魔法にも耐性があるから普通の革鎧より、と言う冒険者が買っていったりはするな。後…」


「後?」


「色味がいいからその点では人気はある」


ガクリ


ハイルさんから聞けたのはまさかの実用外の言葉だった。確かに鮮やかな赤色でかっこいいとは思うけど。


「そうそう。一時期俺も付けてたぜ」


「へ~、あたいも初めて聞いたかも。やっぱり、かっこいいから?」


「いや、マジックナイフの爆発がおっかなくてそれ避けにな」


「なっ!それでわざわざ新しくあの時買ったのね!失礼よ」


「まあまあ。その後、巻き込まれないって解って売っただろ?」


「半年後にね。そういうわけだったの。やけにあっさり売るなとは思ってたのよ」


「お二人さん、思い出話もいいけど先に行くよ。キシャルが不機嫌になる前にね」


「そういえばキシャル。さっきはありがとね。火を凍らしてくれたんでしょ?」


んにゃ~


任せろと氷の中から返事をするキシャル。この姿だけ見ると、そんなことできそうにないのになぁ。


「では、勢いも付いてきたところで進むぞ」


火山地帯の魔物は特徴もわかりやすく、擬態のために赤かったり、火をまとっていたりする。


「行くよ、ティタ!ウィンド」


「アクアスプラッシュ」


ティタの放った魔法をさらに風魔法で加速させ、魔物を貫いていく。


「さあ、次っ!」


「本当に変わり身早いわね、アスカさん」


「それがいいところだからねぇ。あぁ、あたしらもおいていかれないようにするよ」


火属性の敵といってもここはまだ11F。対して強くもない。


「いけっ、キシャル。アイスブレス!」


んにゃ~


キシャルは器用に口元だけ氷を解くと、アイスブレスを吐いた。


「おお~、どっかのゲームみたいだ!いいよ、キシャル。遠慮はいらないからね!」


その後も私とキシャルの快進撃は続き、気が付くともう16Fへの階段まで来ていた。


「ア、アスカ大丈夫?」


「だ、大丈夫です。ちょ、ちょっとだけ休憩所に戻りましょう」


キシャルが暑い中、ちょっと我慢してもらって15Fのセーフティーエリアに戻る。


「キシャルちゃんには悪いけど、早めのお昼にしましょう」


そのまま、ちょっとシートを広げてみんなで座る。もうちょっと我慢してね、キシャル。


「それにしても、グラシアキャットってブレスまで吐けるのね」


「ブレスというにはかわいいものだがな」


「それでも、あの火属性の魔物たちを凍らせるんだから、大したもんだ!なあ?」


「そうですよね。あっ…」


「どうした、アスカ?」


「アイスブレスってMP結構使うんですね。キシャルの残りMPが少なくなってます」


これは魔物使いのスキルによるものだ。きちんとした数値はギルドカードによって見れるけど、従魔の体調とかは感じ取ることができる。


んにゃ


キシャルがMPが減ったというので、私はMPを分けてあげる。これも魔物使い専用スキルの一つ、『魔力供与』によるものだ。


「ぷはっ!減ったぁ~」


「アスカ、なにしたんだ今?」


「キシャルのMPがすっごく減ってたので、あげました。私も回復しないと…」


私はマジックバッグからマジックポーションを取り出すとごっきゅごっきゅと飲み干す。


「ふぅ~、美味しくはないけど効くぅ~。でも、一本じゃ足りないんだな~」


続けて二本目も飲んでいく。一本当たりMPが200前後回復するものの、今の私には全然足りないのだ!


「はぐはぐ。ポーションだけじゃなくて、ちゃんとご飯も食べないとね」


「アスカって細工してる時は食事を意識しないのに、普段は結構食い意地張ってるよね」


「失礼な。食事はすべての源だよ!」


「そういうんなら、細工の時も気にしな」


「は~い。それにしても、この水美味しい。ありがとう、ティタ」


火山フロアで冷たい水が飲めるなんて贅沢なことだ。こうして火山フロアを無事に抜けて私たちを待っていた次のフロアは…。


「ちょ~っと寒くないですかね?」


「ちょっと?これがかい。あ~、もうちょっとましな防寒具持ってくるんだった」


「俺もこれは予想外だったな。滅多にこの地形には出くわさないんだ」


「ちなみに出くわした時は?」


「大体帰ってるわね。無茶してもいいことないもの。運が悪いと思って諦めるわ」


そう、次に私たちが踏み込んだエリアは氷山エリアだった。気温も一気に下がり、私もマジックバッグから急いでウルフのコートを出す。


んにゃ~~~~!


「…キシャルは一人うれしそうだね」


「さっきまでは暑かったからなぁ。まるで別人のようだぜ!」


当のキシャルは氷のバリアを解いて、雪や氷交じりの地形に飛び込んでいった。なお、アルナは寒いと私の肩で縮こまっている。


「ああ~、そんなに元気いっぱい飛び込んだら汚れちゃうよ~。あれ?」


「何だい?」


「キシャルの毛並みが前より良くなってる気がするんです。この地形だからですかね?」


「さてね。本人に聞いたらどうだい?」


「そうですね。キシャル、毛がふさふさしてるけどどうしたの?」


んにゃ~


「アスカのまりょくのおかげ」


「ええ~、さっきのMP補給でこうなっちゃったの!?またあげたらもうちょっとふさふさするのかなぁ?」


「はいはい。そういう不穏な発言はしないの。キシャルも寒い地方でうれしいんだろうけど、ちょっとは落ち着きな」


ジャネットさんがキシャルを注意すると、キシャルもくるるっと回転しながらジャネットさんの肩に乗る。


「いいなぁ、あれ」


「ジャネットも従魔と仲がいいのね。同じパーティーだから?」


「どうでしょう?アルナとはよく一緒にいたからだと思いますけど、キシャルに関しては完全に懐いてますね。正直、私よりも仲が良くてちょっと嫉妬しちゃいます」


猫は気まぐれだっていうけど、それでもやっぱり飼い主に一番懐いて欲しいもんなんだよ。


「んで、ここの敵は?」


「あ~、確かノースコアなんたらって種類だな」


「あれれ、キシャルの仲間かな?もし出会ったらよろしくね!」


んにゃ~


シャキンと爪を出しながらジャネットさんの肩でくつろぐキシャル。


「いやいや、話し合いでいいから!」


そう言いつつもフロアを歩いていると、やはりノースコアウルフが出てきた。


「こっちは残念だけど、戦うしかないね。あれ?」


ノースコアウルフは最初こそ敵意を持ってこちらを見ていたものの、すぐに首を背けてどこかへ行ってしまった。


「ん~、どうしたんだろ?」


「キシャルだろ。さっき、あいつらをにらみつけてたしな」


んなぁ~


知らないよ~と欠伸をするキシャル。しかし、その後もノースコアキャットが出た時は一瞬で座らせてしまった。キシャルが一声鳴くだけで、みんな散り散りになって宝箱を探したり、他の仲間に伝えて戦闘を避けたりしてくれている。


「キシャル、すご~い」


私はというと、ノースコアキャットたちが持ってきてくれた宝箱を開けていく。


「こっちは氷の塊。これは鑑定できないな。次はサファイアクリスタル。Dランクか~」


どんどん鑑定を進めていきすべてやり終えた。


「ふぅ~、みんなありがとね。お礼だよ、キシャル」


ボス部屋の前まで来るとお礼代わりにキシャルに氷を出してもらう。最初は近づかなかったけど、キシャルが合図をするとみんな近寄ってなめ始めた。


「ああ~、もっと見ていたいな~」


「わかったから行くよ、ほら」


じーっと見ていたかったけど、ジャネットさんに両脇を抱えられて階段を下りる。ううっ…みんな元気でね。





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