鑑定団!?
さて、キシャルのステータスも確認できたし、お姉さんと別れて今度は手に入れたアイテムの鑑定に向かう。
「どこに行くんですか?」
「鑑定屋のバロールだ。物品の鑑定ならあいつの右に出る者はいないだろう」
「そんな人の店で大丈夫なんですか?混んでるんじゃ…」
「大丈夫よ。あの人、性格に癖があるからみんな寄り付かないの。それに、あの人でないと鑑定できないものなんて滅多にないから」
「大丈夫なのかいそれ?」
「大丈夫だって。何だか知らんが俺らは歓迎されてるからな」
「まあ、たまたまでしょうけどね。私たちは混んでない鑑定屋が欲しい。向こうは最低限のもうけが取れるように客が欲しいってだけで」
そんな会話をしながら目的地の鑑定屋さんに向かう。
「ついたわ。ここよ」
「ほんとにここですか?」
うらぶれたというかちょっとホラーハウスみたいな雰囲気を残した建物だ。
「こんにちわ~」
「ああ?誰だってお前らか。えらく団体だな。何の用だ?」
「鑑定ですよ。大体はわかってますがちょっと変わったものもあって…」
「そうか。鑑定書が欲しいのは左、鑑定からして欲しいのは右だ」
「アスカ、指示通りに」
「は、はい」
銀の剣などスタンダードなCランクのものを左に出していく。後はファリアルの種とかだ。
「これぐらいかな。残りは右ですね。岩の盾に怪しいポーションとクモのぬいぐるみに…」
どんどんと戦利品を置いていく。その間に店主のバロール?さんが鑑定を済ませていく。
「この辺は普通のものだな。右側は…なんだこの盾は?」
「さあ?俺でも重いんだが使えんのか」
「ふむ」
鑑定を行った後、バロールさんが紙にさらさらと効果を書いていく。
岩の盾:Cランク。土属性付与の盾。魔力補充で再生する他、強度を上げることもできる。重たい
古傷ポーション:Bランク。古傷を癒せる特殊なポーション。3年以上前の傷を治す。それ以外には効果がない
クモ人形:Cランク。優しい素材のクモ人形。疲れが取れる魔法がかかっている魔道具。寝る時のお供に
「おおっ!この盾、再生機能付きか!結構いい盾だな」
「ほんとだ~。魔力補充って別に何でもいいのかな~。だったら、あたいじゃなくても使えるね」
「それなら持っていても構わないな。買い上げよう」
「次のポーションは結構レアだったのね。これ、高値で取引されてるやつよ」
「そうなんですか?古いのにしか効かないからその場じゃ意味ないですよね?」
「でも、女性の冒険者とかが引退の時に傷が気になったり、貴族の子女が傷跡を気にしていたりするでしょう?それで、市場に出たらすぐに売れちゃうの。一度で治るかはわからないけどね」
「とりあえず、私はこの人形があればいいですね。かわいいだけじゃなくて効果もすごいみたいですし」
呪いどころか疲れが取れるなんて、クモの人形さんはいい子だった。
ゴーレムの核:Cランク。本来は再生するため、ダンジョン限定品。魔力の塊であり、同種に与えると強くなる
「ん?こんなの拾ったのか?珍しいな。まあ、使い道なんてないだろうが…」
「これって安いんですか?」
「ああ。使い道も限定的過ぎてな。ゴーレムの種族専用で魔物使いも少ないだろう?コレクションアイテムって感じだな。一応、ダンジョン専用アイテムだからその筋で売れはするが金貨1枚程度か」
「えへへ、ゴーレムに与えるといいのかぁ。ティタの再生に役立つかも。買い占めよう」
最後にトレニーの魔石を見せる。
「ん?これは…」
「わかります?」
「珍しいな。魔力が低い魔物もごくまれに魔石を落とすことがあるという。条件は不明だが、有用なものがほとんどだ。鑑定するぞ」
ドキドキしながらトレニーの魔石の鑑定を待つ。
「終わった」
トレランスキャットの魔石:Bランク。多くの毒に対応する、毒無効の魔石
「確かにトレランスキャットは毒耐性を持つが、体調が悪い時などはかかったりする。結果はBランクだが、無効なんて使い勝手からすればAランクといっても差し支えない」
「大事にします」
「ふむ、割と変わったもんがあったな。何か新しいことでもやったのか?」
「ん?ああ、ちょっとな」
「ふ~ん。そんでそっちの嬢ちゃんはそんなごみに興味があるのか?」
「ゴミじゃありません。立派に使えるものですよ」
「ほう?なら、ストックをやろうか?」
「あるんですか?」
「珍しいのとおかしな効果だけは取ってある。お前さんみたいなのがたまに買っていくんでな。呪い装備とかも欲しかったら言えよ。揃えてるからな」
「揃えなくていいですよ!」
「なあ、こんな珍しい生き物どこから見つけてきたんだ?」
「あたいだよ~」
「お前が?今までで一番いい拾いもんだな」
「やっぱり?」
「ああ。お前の実力じゃここまでのものが拾える階層までいけないだろうしな」
「だよね~」
「これって私、褒められてますかね?」
「多分ね。で、コアはいくらなんだい?」
「そうだな。10個あるから金貨15枚だな」
「良心的だな。金に困ってるんじゃないのか?」
「バカ言え。俺の実力ならどこでも食っていけるんだ。価値以上の値で売るのはろくでもないやつのやることだ」
「まあ、あんたがいいならいいけどさ。ほら、アスカ。何か言う前に買っときな」
「は~い」
カードを出して、金貨15枚を支払う。左手にはクモの人形を持ったままだ。
「アスカ、人形持とうか?」
「ううん。自分で持つ」
「ああ~、癒される光景ね」
「結局、お前らは何階層まで潜ったんだ?」
「25Fですよ」
「ほう、それでこの出来か。また、持って来いよ。鑑定するのが楽しみだ」
おじさんからお褒めの言葉をいただいて私たちは店を出る。
「やたら今回はおっさんの機嫌よかったな!」
「まあ、珍しいものもあったしね。あの人、そういうの見たら満足するから。趣味と実益ってやつね」
「さて、それじゃあ、いったんお別れだな。次の予定が決まったらまたサティーに伝えてくれ」
「ハイルさんたちはこれからどうするんですか?」
「ああ。ギルドにスクロールを見せるのを忘れていたから戻るよ。いくぞサティー」
「は~い。それじゃあみんな、まったね~」
バイバイとサティーさんに手を振って別れる。
「初ダンジョン!終わりましたね」
「まあ、この国のだけどね」
んにゃ~
「もう、2人ともひどいです」
「まあまあ、まだお昼ぐらいの時間だしどこかに入ろうよ」
「そうだね。やっぱりリュートは優しいね!」
「そ、そう?ここに入る?」
リュートが入ろうといったのはちょっとお高めのステーキ屋さんだ。珍しいなぁ、リュートだと量と質のバランスのいい店が多いのに。
「すみませ~ん」
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
「3人なんですけど、従魔も一緒で構いませんか?」
「大きさは…」
「この子と、この子です」
ティタは食べないし、まあ構わないだろう。
「そのサイズでしたら構いません。奥の部屋へご案内します」
「ありがとうございます」
店員さんに案内されて、奥にある小部屋に入る。中は4人掛けのテーブルがあり、もうすでに準備がされている。
「メニューが決まりましたら扉の前におりますのでお呼びください」
「はいっ!」
早速、私たちはメニューを広げて見ていく。でも、コース料理ばかりだから選べるのはメインの料理ぐらいだけどね。
「う~ん。僕はこの今日の魔物肉かな?大盛にできるみたいだし」
「あたしはせっかくだし、こっちのジュムーアの霜降りにするよ」
「あっ、私もそうします」
メニューが決まったのでドアの向こうの店員さんを呼んで注文をする。
「従魔のお食事はどういたしましょうか?」
「この子には野菜をこっちの子は…」
「さめたにく」
「さ、冷めたお肉を」
「わかりました。順番にお出しいたしますのでお待ちください」
すっと店員さんが下がる。前の店でもそうだったけど、プロって感じだなぁ。
「どうしたの?そんなにドアを見て」
「ううん。店員さんがとっても素敵だなって」
「おや、アスカはああいう服が好きなのかい?」
「服じゃないですよ。まあ、あんな服も来てみたいとは思いますけど…」
一度ぐらいは喫茶店とかカフェで使われてる制服を着てみたいな~って思ったことはあるけど、機会がなかったんだよね。
「お料理をお持ちしました」
その言葉を合図に、前菜からどんどん料理が出てくる。とはいっても、食べ終わって多少の雑談タイムがあるぐらいちょうどの時間が空いてるけど。
「こちらが本日のメインディッシュです。従魔の方の食事もこちらでお持ちしております」
「わぁ~、おいしそう!ありがとうございます」
店員さんに料理を並べてもらう。アルナもキシャルも出てきた料理に興味津々で匂いをかいだりしている。アルナ用の野菜もあまり見かけないものが使われているみたいだ。
「さあ、みんなも食べてね~」
アルナはいつも通りに野菜に口をつけているが、キシャルはどうするのかと思っていると、いきなり氷魔法で肉を凍らせた。
あ~む
「凍った肉をそのまま…」
まだ子猫で体が小さいので、ちょこちょこだけどガリガリと食べる様はまさに肉食獣だ。今までも気が向いた時は氷以外を食べてたけど、今度からは固形のものがいいのかな?
「キシャル、おいしい?」
んにゃ~
どうやら、美味なようだ。私にはまねできないけど。
「生肉と加熱したお肉どっちがいいかな?」
んにゃ
まだ、食べ比べたことがないからどっちもかぁ。
「何だい。飼い主に似て贅沢な嗜好だね」
「そ、そんなことありませんよ。ほら、お肉食べましょう!おいしいですよ」
「はいはい。確かにうまいけどね。リュートはどうだい?日替わりなんだろ?」
「う~ん。何ですかねこれ。筋張ってるし、貴重なのかもしれないですけど、おいしいかと言われれば珍しいだけのものな気がします」
「ちょっと鑑定してみる?」
「やめなよアスカ。リュートがかわいそうだろ?」
「待ってください。どうしてそこで僕がかわいそうになるんですか!」
「ま、やってみていいならやればいいよ」
「じゃあ、ちょっとやってみるね」
本を開いて料理のお皿を乗せるとパァッと光る。
「おおっ、Dランク以下のようだね。あ~、そりゃそういう感想になるわけだ。珍しくはあるかもね」
「なるほど、確かに筋張るよね…」
「えっ、二人とも見せてよ」
「いやぁ~、そのまま食べてた方がいいよ」
「教えてってば!」
さすがに個室といえど、私を捕まえられないリュートは結局もやもやしたままの食事を終えた。
(だって、オーガのお肉なんだもん。さすがに言いにくいよね)




