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20F

その後も順調に進んでいき、今は19Fだ。ただし、階段を降りたところで私たちは立ち止まっている。


「だからよぉ~、倒した方が早いって!」


「しかしだな…危険だろう」


「でも、これまでの実力なら問題ないと思うけど」


そう。立ち止まっているのはこの後のボスフロアのことだ。数種類いるボスの中で強敵とされているのはオーガジェネラルだ。とっても力が強くて、人じゃ中々防げないんだって。


「オーガジェネラルだって1体だけだぜ?そこまで危険か?」


「今回は試しだろう?」


「でも、20Fのボスさえ倒せばそこから簡単に脱出できるわ。その方がいいんじゃないかしら?宝箱も出ることだし」


「ま、そうだね。ここから降りてきた分を昇るんなら10Fまでだろ?遠いよねぇ」


「それに1泊する予定でしょ?順調に来ちゃったけど何処で泊まるのよ?」


「そういえばそうだったな。余りにスムーズだったから忘れていたな」


ボス部屋のセーフティーゾーンは混む。今からだとボスを倒して25Fで休む方が楽だという。ボスを倒すということは、その先10F分の安全確認でもあるのだ。


「どうする、アスカ?」


「準備はしてきましたから私は進んでもいいと思います。リュートは?」


「僕も問題ないよ」


「決まりだね~。頑張ってねハイル」


「ふぅ、油断しない様にだけしてくれよ」


方針も決まり、再び動き出す私たち。この階は敵も弱いので後は隠し宝箱だけだ。


「ここは何が出るかな~」


「ふふっ、さっきからご機嫌ねアスカちゃんは」


「今度は何が出るか楽しみなんです」


前の階は外れだったけど、今回こそは!


「むむっ!前方に大きい岩山があります!その中が怪しそうです」


私もこれまでの経験から学んで、正確な位置がはっきりわからないように伝える。


「あのさ、アスカ」


「な~に、リュート」


「さっきから場所…」


「うん。なんとなくだからね!」


「わ、わかった。そういうこともあるよね」


「そうそう!そういえば、武器戻したんだね?」


「ああ。この先は強敵が待ち構えているだろうから流石にね」


これまで薙刀を使っていたリュートだったけど、さっきの会話の後から魔槍に戻した。


「にしても、変わった武器とは思ってたが、まさかそっちもだとはな!」


「魔槍何て本当に久しぶりね。Bランクでもそこそこ使う人はいるけど、振り回されてる人が多いから印象にないのよね」


「うちのリュートですから!」


魔剣と魔槍は似てはいるものの、魔剣が刀身に効果をもたらすものがほとんどの中、魔槍は切っ先だけだったり、槍全体に付与したりと運用の幅が違う。その為、いざ!という時にボロが出る人が多いんだそうだ。


ガラガラ


「さて、ここからはあたいの出番だね~。今回の宝箱は何かな~」


サティーさんがささっと罠を解除して宝箱を開ける。いいなぁ~、私もああやって開けてみたいな。


「おおっ!これは武器じゃん!!よさそう~」


サティーさんが武器を持ってきてくれた。どうやらナイフみたいだ。早速乗せてみよう。


暗殺者のナイフ:Dランクの隠形LV1がかかったナイフ。気付かれにくくなる。ただし、切れ味は普通


「あっ、これ良さそう。欲しいかも」


「いります?別に私たちで使いそうにないですし」


ちらりとみんなを見るけど、みんな首を振っている。そもそも人数も少ないパーティーなので、武器は斬れ味に寄っている。効果が良くても、こういう武器はそこまで使い道がない。使うとしたら私だけど、遠距離で弓とか使う感じで近づくことがないから合わないのだ。


「やった~!じゃあ、早速…」


「まて、サティー。それは帰ってからだ」


「え~、別にいいじゃん~」


「ダメだ。アスカの使う本の性能がはっきりしないうちはな」


「ぶ~。分かったよ~」


ハイルさんが懸念しているのは私の本の鑑定が、呪いまで鑑定するかということだ。ただでさえ暗殺者のナイフという名前に加えて、あの効果だ。Dランクなのが切れ味などから来ているのか、呪いによりランク低下が起こっているのかわからないからということだ。


「でも、みんな使わないみたいだし、確保しとくね~」


サティーさんはパパっとナイフをマジックバッグに仕舞う。そして次の場所に向かう。


「こっちは何かなぁ」


罠がないので私が宝箱を開ける。


「なにこれ?スクロール」


入っていたのは魔道具作成に使うスクロールだった。ただ、ティタが作ってくれるのと違い、ちょっと安っぽいような…。


「まあいいや鑑定してみよう」


劣悪なスクロール:Fランク。どんな優秀な魔法使いでも生活魔法しか込められない。詐欺によく使われる


「あっ、これって…」


「知ってるんですかサティーさん?」


「うん…。といっても悪い意味でね」


「これか、魔法使いの間で有名なやつだな」


「ああ、これがそうなのね」


みんな知っているもののようだ。魔法が得意なマインさんに聞いてみると…。


「これはね、魔法使いに付与を教えるために使われるの」


「そうなんですね!でも、生活魔法しか込められないから練習用ですか?」


「いいえ、これは勧誘用なの」


「勧誘用?」


「そうよ。魔力はあるけど、付与の経験が無い未熟な魔法使いに使わせるの。そうして、『今あなたの実力では生活魔法しか込められないですが、私のもとで学べばすぐに実力が付きますよ』って勧誘するのよ」


「それって…」


「そう、明らかな詐欺よ。そうやって、弟子にして成長したら自分のものとして売らせたり、高い授業料を取るの。あからさまな詐欺なんだけど、実際に初級ぐらいの付与は簡単に出来ちゃうからどうしても信じる人がいるのよ」


「アスカも騙されそうだねぇ」


「わ、私は大丈夫ですよ!」


「ティタのスクロールがあるし、ティタが止めてくれるしね」


「そう、そうなんです!って違いますよ~」


取りあえず、スクロールは回収した。こういうものがあるよということで詐欺防止啓発の目的でギルドが買ってくれるらしい。その後は探索も終わり、いよいよ20Fに降りる。


「何だかドキドキしますね~」


「って言っても、大したことないと思うけどねぇ」


「ジャネットさんは夢がないです!」


「まあまあ、降りてみればわかるさ」


というわけで実際に20Fに着いた。


「何だか20Fまで来たって言うのに普通ですね」


「それは冒険者の方が一方的に実力を測る一つの目安にしているだけだからな。場所としては普通だ。この辺りがセーフティゾーンだがやはり混んでるな。中堅どころの目安だからここで万全に体調を整えるパーティーが多いんだ」


見ると幾人かは剣の手入れもしている。ほんとに一つの山場みたいなものなんだな。


「まあ、俺たちは先に行くからそのまま向かうとしよう。そうそう、こういったボスエリアでも魔物が出ることはあるから気を付けるんだ」


なんでもボスが召喚型の場合、何かの拍子に部屋から出て来るんだそうだ。なので、余計にセイフティーゾーンは込むんだとか。討伐のため、2パーティーほど待っていたのでその後ろに並んで順番を待つ。


「もうすぐ、私たちの番ですよ!」


「あ~、はいはい。分かったから落ち着けって。アルナ、お前のご主人だろ、どうにかしろよ」


ピィ!


「私とアルナは一心同体ですから、無駄ですよ!」


ピィ!


アルナもやる気十分だ。ここまでは戦闘もサクサクだったので、戦いたいのかもしれない。


「でも、無理は駄目だからね~」


アルナを撫でながら順番を待つ。最初のパーティーが長いせいか、次のパーティーがこっちを見てきた。


「あれ?スケイルか。どうしたんだ今日は?」


「ああ、お前たちか。案内だ。そっちは?」


「人数揃ったから頑張ろうと思ってな。目標は35Fだ」


「それは頑張るな。また話を聞かせてくれ」


「ああ」


「前のは?」


「たまに同行するパーティーだ。魔法使いが複数いるパーティーだからうちと相性が良くてな。しかし、35Fとは頑張るな。BランクというよりAランクの潜る場所だ」


「敵はどんな感じだい?」


「ほとんどの敵がBランクだな。同格の相手が多いということはそれだけ危険だ」


「なるほどねぇ。おっ、終わったみたいだね」


入ったパーティーの戦闘が終わり、続いて前のパーティーが入る。


「あれ?もう終わったみたいですね」


リュートの言う通り、さっきハイルさんと話していたパーティーの戦闘はもう終わったみたいだ。すぐにガチャリと音がして、私たちが入室できるようになる。


「まあ、30Fのボスも倒して進もうって連中だからな!」


「そういうことだ。我々も行こう」


そして、私たちは20Fのボス部屋に足を踏み入れた。


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― 新着の感想 ―
この世界のダンジョンは、すぐにボスがリポップする方式なんですね。 ダンジョンで稼ぎたい冒険者同士でボスの取り合いにならないのは良さそう
[一言] >劣悪なスクロール:Fランク。どんな優秀な魔法使いでも生活魔法しか込められない。詐欺によく使われる  これ、逆に言えばどれだけアレな魔法使いでも、魔法を込められるって事ですよね。  魔力は…
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