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見回り最終日に向けて

「アスカ、帰ったよ」


「お帰りなさい、ジャネットさん!どうでした?」


「まあ、ボチボチだね。魔物とは3回遭ったけどどれも雑魚ばかりさ。それはそうと、あんた木をそのままにしておいたね?ちゃんとやっといたよ」


「木を?あっ!?すみませんでした。樹皮を取るだけとってそのままでした」


「大方、木の実に意識がいってたんだろうけど、枯らしちゃうから気を付けなよ」


「はいっ!」


「ジャネットって、剣士の割りにはそういう知識多いわよね」


「なんだいミリー、そんなに変かい?これでも村育ちだし、アスカについてってるから普通だよ、普通」


「そういうものかしら」


「サティー、そっちはどうなの?上手くなった?」


「急には。でも、師匠のお陰で伸びそうだよ。一応、命中率は改善したしね」


「それなら私も受けておけばよかったかしら?」


「カティアはそもそも、私より細かいのは苦手だから無理だよ」


「そういえばミリーさんはどうしてたの?1人で暇だったし一緒に練習しなかったの?」


「私は運動は苦手で…。体力だけは足手まといにならないようにつけたんだけど」


「試しに1度撃ってみれば?意外な才能があるかもしれないわよ」


「そう?なら、サティーさん。弓貸してもらえるかしら?」


「いいよ~」


私とサティーさんでミリーさんに構えを教える。


「後は引いて指を離すだけですから。最初は必ず周りを見てからですよ」


「分かった。じゃあ、1度撃ってみるわね」


ヒュッ スカッ


ミリーさんの放った矢は木を2本分離れて地面に落ちた。


「腕がぶれてるんですかね。もうちょっと肩の方に力をいれてみて下さい」


「こう?」


パスッ


今度は木には当たったものの、的からは大きく外れている。その後も何度かやってみたものの、全て、的から大きく外れたのだった。


「これは…ダメね」


「すみません。教えるのが下手で」


「ううん。サティーさんは伸びてたんだから、私に才能がないのよ。水魔法も風魔法もあるし、大丈夫よ」


「そうですよ!まだ、魔法があるんですから大丈夫ですよ!」


「うっ…そうね」


「アスカはフォローだけは覚えられなさそうだねぇ~」


「本人が気づいてないのがまた…」


「まあ、飯の準備でも始めようか。薪がちょっと足りないんだったな。アスカ、また頼めるか?」


「はいっ!ついでに薬草も取ってきます。アルナの食事も減ってきちゃいましたし」


ピィ!


「うれしい?今日の食事はちょっと豪華になるよ」


「へ~、その子って薬草とかも食べるんだね」


「そうなんです!普段はリラ草とかですけど、たまにご褒美でルーン草とかもあげるんですよ。元々MPが高い子なので、回復も出来て一石二鳥ですよ」


「そっかぁ~、やっぱり従魔って同じ種族でも違うの?」


「そうですね。この子の兄妹は大人しい子ですよ。どっちかというとリュートみたいな子です。町での生活にも慣れてて、みんなとも仲が良かったんです。たまに野菜とかもらって来てて、他の従魔にあげたりしてました」


「自分で食べないの~?変わってる子だ」


「それが、宿に住んでたんですけど、そっちで私が薬草入りのジュースとか出してたんで。ご飯に困らないからって分けてたみたいなんですよ」


「いい子だね~。そんでこの子はその時どうしてたの?」


「アルナはよく外に出てたので、お気に入りの野草とか食んでましたね」


「そこまで違うもんなんだ。あたいたちが見る時は同じ行動しかしてないから、そこまで特徴があるだなんて…」


「身近に一人でも魔物使いがいればわかると思いますよ。あっ、この木良さそう」


私は話しながらも薪に出来そうな木を選んでいく。倒木がいいんだけど、都合よく今日の分が確保できるわけでもないので、必要な分はこうやって切り倒さないといけない。


「このぐらいですね。戻りましょうか」


「分かった。そういえば薬草は?」


「来る時にチェック入れてるから大丈夫ですよ。シャルパン草が見つかったのは大きかったです」


「シャルパン草?あれって苦いよね」


「加工すればちゃんと甘くなりますよ。お菓子とかにも使えるんです」


「へ~、あんな苦い草がねぇ~。アスカって本当物知りだね」


「実家が薬屋だっただけですよ。それにノートを見て覚えただけですし」


「じゃあ、魔法は?」


「それは…お母さんの本で」


「弓は?」


「友達の見よう見まねで」


「何だか、アスカの住んでた村ってすごい人ばかりだね」


「そんな~、普通ですよ普通。私だってそうですよ~」


「えっ!?それはないかな~」


「何でですか?ちょっと魔法と弓が使えて、細工をしてるだけですって」


「多くの人はその中の一つも大変だけどね。まあ、アスカだしいっか!さあ、帰ろう」


「はいっ!」


サティーさんとアルナを連れて私は野営地に戻った。


ピィ!(もう帰るんだって)


んにゃ~(木の上でこっそり見張りも大変にゃ~)


野営地に帰るとすでに食事の準備に入っており、薪は順次追加していく形になった。


「今日はなんなの?」


「昨日と一緒、オーク肉だよ。今日はこの辺の魔物を倒してるから、ちょっとだけ豪華にしてみようかと思ってるんだ」


そういうリュートの案で、今日はカレー粉を使ったポークステーキだ。


「あっ、でも、みんなはスパイス合うかなぁ?」


「そう思って、スパイスの量は抑えてあるから心配しないで」


「さっすがリュート!わかってるね」


「(ただ単に材料費が高くなることを避けただけって言えないな。他所のパーティーに銀貨数枚の材料はちょっとね)」


そんなリュートの苦労もいざ知らず、のほほんと私は食事が出来上がるのを待った。


「いただきま~す!」


「いただきまぁ~す」


「あら、これ本当に美味しいわ。どこかの店で教えてもらったの?」


「いえ~、それは…」


「そうだよ。アスカが宿にいたって言ってただろ?そこは料理も旨い店でな。金のなかったというか腕が悪かったリュートは生活のために料理をしてたって訳。本人のオリジナルって訳じゃなくて、そこの味だな」


「そんんっ…そうです!あの時はリュートが作って私が運んでたんですよ」


「へぇ~、人がいっぱい来てたんじゃないの?」


「もちろんですよ!なんてったって、日替わりでメニューもたくさんありますから!」


「まあ、アスカはそうだよね。それにしてもそんな宿があるなんてね~。デグラス王国の人気レストランみたいだね」


「レストランですか?」


「うん!遠征で一度だけ行ったことあるけどおいしかったよ。メニューはその日の新鮮な食材だけだから、選べるものは少ないけどね」


「いいなぁ~、私もデグラス王国に行く予定があるから絶対行きたいです!」


「でも、予約大変よ?人気店だから朝一で席も決まっちゃうしね」


「それでも何とか頑張ります。ねっ、ジャネットさん!」


「あたし?あたしは食えればそこまでは…」


「え~、リュートだって気になるよね?」


「気にはなるけど僕は携帯食とかの方だから食べられたらでいいかな?」


「リュートの裏切り者~」


「「あはは!」」


楽しい食事もいつの間にか過ぎて見張りの時間になった。


「今日は久しぶりの見張りだよ。みんなよろしくね」


んにゃ


「分かった」


とはいってもアルナは寝ないといけないのですでにテントでお休み中だ。たまに起きててくれる時もあるけど、やっぱり次の日が大変みたいだからね。逆にキシャルは何時も勝手に寝てるせいか、気付いたら見張りにいたりする。ただ、最近はジャネットさんについてることも多いから、ほんとに短い時間だけどね。


「今日は細工をするから警戒よろしくね」


従魔たちに周辺の見張りをお願いして細工道具を取り出す。


「ここで出来るのって木工になるから、依頼されてるグリディア様の像を作ろうかな」


見張りの時間自体は短いので、多分2体ぐらいしか作れないだろうけど頑張らないとな。


「手も抜いたらいけないし、ここにいる間にもうちょっと作っておかないとね」


この次は迷宮都市に行くんだし、ああいうところだと需要も増えそうだしね。魔道具の方がいいかもしれないけど。


「ん、ここはもうちょっとこう差をつけて。ん?削りがちょっと大きいな。もう少し小さく細かくしないと…。あっ、この服のモデルまだ作ってないなぁ。グリディア様ってすらっとしてて、背も高いから色んな服装が似合うなぁ~。でも、可愛めの服が似合わないのは大変だよね~。次のモデルはと…」


「アスカ、交代の時間だぞ」


「エラさん!もうそんな時間ですか?」


「ああ、明日は夕方に町に帰るとはいえ予定だからな。ゆっくり休め」


「ありがとうございます。それじゃあ、後よろしくお願いします。ティタ、よろしくね!」


「うん」


「いいのか?」


「ティタはゴーレムだから寝ないんです。遠慮せずにどうぞ」


「そうか、頼もしいな」


「それじゃあ、おやすみなさい」


「ああ、おやすみ」




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