中継地でのお昼
「おっ昼~、おっひる~」
「はぁ、相変わらす気楽だねぇ~」
「だって、この辺りの魔物は倒しましたし、ご飯なんですよ!」
「今日も朝と一緒だけどね」
「えっ!?そうなの?せっかくのお肉は?」
「別にそれ用じゃないし、売らなくていいの?」
「ちょっとぐらい新鮮なまま食べたいな」
「…ジャネットさん、ミリーさん」
「はいはい。あたしは構わないよ」
「私も別にいいわよ」
「何々?おいしいもの食べれるの~?」
「そうなんです!リュートがいまから作ってくれるんですよ!」
「これはもう撤回できないわね。私たちの分もお願いできる?手伝うから」
「はい。ご迷惑をお掛けします」
「別に構わん。こういうのも合同パーティーならではだ」
「それじゃあ、私は薪拾いに行ってくるね」
「気を付けてよ」
「は~い。行こうアルナ」
ピィ
「キシャル、一応見てきてくれ。今のアスカは危なっかしいからな」
んにゃ~
しょうがないなと、のそのそとキシャルも歩いていく。
「あら、アスカちゃんの従魔なのに言うこと聞くのね」
「基本的には賢いやつばっかりだからな。キシャルも面倒なだけで、ちゃんとアスカを守るさ」
「それじゃ、あたいも行ってこよ~」
「サティーは積極的だな。何かあったのか?」
「別に。強いて言うなら薪拾いを早く済ませば師匠に稽古つけてもらえるからね」
「そんじゃ、あたしたちは簡単なかまどでも作るかね」
「あっ!?」
「どうしたカティア?」
「先にサティーに作ってもらえばよかった…」
「まあ、そのぐらい直ぐだろ。人数はいるんだし」
「ジャネットさんってそういうとこおおらかよね」
「色々面倒ごとも経験してるんでね。手伝うだけでもありがたいってもんさ」
「それはそうね。リュート君、水はどのくらい必要?」
「取りあえず、この鍋一杯で。肉は…焼くと思うので残りは飲み物を作る時まで大丈夫です」
「分かったわ。それじゃあ出すわね」
その頃アスカは…。
「薪は直ぐに集まりそうだな~。ん?この木の実なんだろう?」
目の前の木の実をひとつ取ってみる。もちろん、手を触れないようにだ。
「これ何の実だろう?サティーさん分かります?」
「いや~、この辺のはむやみに食べないからね。流石にちょっと…」
「これ、カラムのみ」
「ティタ知ってるの!?」
「うん。たべられるし、くすりにもなる」
「薬に?」
「そう。だぼくとかにもきく。きのかわだけど」
「そうなんだ。ちょっと食べてみようかな?」
「それ本当に大丈夫なの?」
「ティタが言うんだから大丈夫ですよ。ぱくっ」
「ど、どうなの?」
「う~ん。酸味と甘みが同居してておいしいですね」
「ほんと?私もちょっと食べてみようかな~」
サティーさんと2人で木の実を食べる。やっぱり、酸味も効いてるしそこに甘さもあっておいしいな。
「ティタ、ほんとにありがとね。こんなおいしい木の実教えてくれて」
「ううん。たまたま」
「ねえ、そう言えばアスカ~」
「何ですか?」
「ティタってお話が出来るゴーレムだったんだね。ちっちゃいから、ずっと連れてるの不思議に思ってたけどそういう理由かぁ」
「いっ、いえ!そんなことないでしゅよ!?ねぇ、ティタ。ティタ?」
「…」
何故か喋ってくれないティタ。ちゃんと否定してくれないと…。
「あ、あの~ティタ?どうかしたの?ねぇってば!」
「アスカ、ざんねん…」
「ついにティタにまで言われるように。なんでなの~!」
「アスカちゃん、面白いね。ティタちゃんが喋れるって教えてくれるなんて!」
「はっ!しまった!?どうしよう…ジャネットさんたちには頑張って黙っててもらったのに」
「いいよ~、言ったりしないしさ。そんで、どうやって話してるの?ゴーレムって」
「まりょくねんわ。ちょっとこめるとおともだせる」
「へ~、念話なんだ。じゃあ、ちゃんと話もできるんだね~」
「まものともはなしできる」
「それってすごくない!!魔物使いの熟練者でも完全には話せないって聞いたことあるよ」
「そうなんですよ。ティタってばすごいんです!ちなみに今は魔物の言葉を解明しようとしてる研究者の人もいるんですよ」
「すご~い!じゃあ、あたいもいつか話しできるようになるのかな~」
「どうでしょう?ちゃんと通じてるかは魔物の反応を見ないといけませんから、従魔と仲の良い魔物使いでないと…」
「そっかぁ。町にいた魔物使いの人も引退しちゃったし、残念だな~」
「でも、いつか話しが出来るようになりますよ、きっと!ねっ、ティタ」
「うん。それよりじゅひ」
「あっ、そうだ採取の途中だったね。今からだとちょっと手間取りそう。そうだ!エアカッターでナイフのようにならないかな?」
私は風の魔法を手で固定させてナイフのように扱う。
「やった~。できた!これで作業もはかどりそう」
樹皮というのは何度か取ったことがあるけど、硬くて中々取れない。かと言って切り倒してしまうわけにもいかないので、力仕事なのだ。私は力はないけどこういう方法なら何とかなりそう。
「あたいもなんか手伝うよ」
「じゃあ、台を作ってそこに乗せて行ってもらえませんか?まとめてバッグに入れちゃうので!」
「分かったよ。そんじゃ、いっちょやりますか」
サティーさんがそういうと土魔法でささっと土台を作る。何度か魔法を見せてもらったけれど、中級以上の魔法はやや詠唱に時間がかかるけど、逆に初級程度の魔法は展開が早い。よほど使い慣れているのだろう。
「ほいっと!それじゃあどんどん積んでくから遠慮なく取っていってよ!」
「分かりました!ありがとうございます!」
「あっ…」
ティタの言葉もむなしくこの後、私は一気に樹皮を落とし過ぎだとサティーさんに叱られたのだった。
「もう~、アスカってば非常識すぎ!慣れてきたからって、ウィンドカッターでまとめて樹皮を落としてくるなんて!」
「ご、ごめんなさい。サティーさんは魔法の展開も早いからバンバン落とせると思って…」
「そ、そう?いやぁ~、アスカに言われると嬉しいなぁ~」
「後はこれ洗わないといけないよね。ティタ、お願い」
「うん」
ティタに水で樹皮を洗ってもらう。
「後は乾燥させてと…。時間はかかるけど成分が変わっちゃっても怖いし、自然乾燥かな?」
「アスカ~、こっちの木の実はどのぐらい取る?」
「小鳥とかも食べるかもしれませんから3分の1ぐらいで」
「分かったよ。にしても惜しいよね~。これももっと早くに知ってたらいい食料になったのに」
「そうですね。でも、季節ものだと思うからしょうがないですよ」
「ということは時期も良かったんだね。あたいも、そういう知識蓄えないとな~」
「どうしてですか。冒険者ですよね?」
「冒険者って言っても、あと5年ぐらいかな?もしかしたらもう少し短いかも?そうなったら、何とか今付き合ってる人の役に立ちたいからね。向こうだっていつまでも戦ってないだろうし、商売でもってね」
「でも、いきなり転職何て大変じゃないですか?」
「大変かもしれないけど、しょうがないよ。彼の方は迷宮都市に住んでるから、主にダンジョンで出たアイテムの関連になると思うけど」
「そういうのってもうお店があるんじゃ…」
「もちろんそうだけどさぁ~、今の仲間とか後輩に声かけてもらえば何とかなると思うの。彼はまじめだからね~」
うう~む。20歳ぐらいでそこまで考えてるなんてすごいなぁ、サティーさんは。
「さて、それじゃあ薪も取ったことだし戻ろっか」
「はい」
当初の目的の薪集めも終わりみんなのところに戻る。
「アスカ、遅かったね。大丈夫だった?」
「うん。変わった木の実を見つけて採ってたんだ」
「食べられるのそれ」
「うん。ティ…図鑑に載ってて大丈夫なやつだったよ」
「あたいも食べたけど問題なかったよ。酸味もあるしおいしかったし」
「サティーも食べたの。じゃあ、私も一つ…」
「カティア。野生のものを食べる時は一人は我慢だったな」
「で、でも、アスカが大丈夫だって」
「ルールだぞ?」
「うう~、分かったわよ」
「悪いなアスカ。大丈夫と思っても外のものは怖いからこういう取り決めなんだ」
「構いません。そういう時って大変ですから」
「んじゃ、あたしは味見と行くかね。おっ!確かに酸味が効いてるけど、甘味もあるし」
「では私も。うむ、確かにいい味だな。味が濃いからそのまま以外でも使えそうだ」
「はい!ジャムとかも行けると思います。この後、作ってみますね」
「まあ、先に飯だしねぇ」
「じゃあ、薪も集めたし火をつけてと…」
「そうそう、どうせ町までは今日中には帰れないから今日はここを拠点にして活動するからね」
「そうなんですね。それじゃあ、もうちょっと薪が要りますね」
「ごめんなさいね。先に言っておけば…」
「良いですよ。そんなに大量に集められませんし。それにこの周辺は薪になるような木が多いので楽ですよ」
「草原との境近くだしね。木もそこそこあるし、心配いらないって~。さあ、師匠。待ってる間に弓の練習しようよ」
「あ、そうですね。それじゃあ、リュート。行ってくるね」
「うん。頑張ってね」
「は~い」
料理の方は人数もいるので、リュートに任せて私たちは弓の練習に向かったのだった。
「リュート君は可哀そうだな。この状況でもすんなり行ってしまうなんて」
「周りにはお姉さんだらけなのにね~」
「はぁ、もう慣れました」
「だらしがない弟だよ。折角、胃袋を押さえてるのに」
ピィ
「ジャネットさんにアルナまで…」
全くこの人たちは面白いことが好きなんだから。リュートの苦労は今日も絶えないのだった…。




