続・お買い物
食料をガーレン商会で調達した私たちは改めて、ワーレンさんたちに挨拶をして今度は魔道具店へ。普段から食料中心のため、商会内にある魔石ではあまりいいものが作れないのだ。
「どんな魔石があるかな~」
私は新しい魔石に会えるかも思ってうきうきしながら店に入る。
「いらっしゃいませ…あら、見ない顔ですね」
「ワーレンさんとカラルさんの紹介で来ました」
「珍しいわ。あっちの商会からの紹介だなんて」
「うん?他からはあるんですか?」
「まあ、商会を通じて欲しいものの話は来るから。でもあそこは食料品だから一般人が多くて、ここには滅多に話が来ないのよ」
「そうなんですね。魔石を見せてもらってもいいですか?」
「魔石?何かに使うの?魔道具ならこっちだけど…」
「いえ、私が作るんです。それで仕入れをしたいなって」
「何か作ったものを見せてくれる?それに応じて出してあげるわ」
「それじゃあ、売り物じゃないですけど…リュート」
「はいよ」
私はリュートが普段使っている盾の魔道具を展開してもらう。
「これでいいですか?」
「これは最近商人が良く欲しがってるやつね。あなたが作ったのね?」
「そうですよ」
「なら、こっちに来て。欲しい魔石に希望がある?」
「火の魔石は…流石に高いですよね?風関連の魔石がいいです」
「火は…高いわね。フレアバードの魔石でも金貨12枚よ」
「一応誰でも使える奴ですよね?」
「そうだけど出力が弱くてね。戦闘には不向きなの。大きめの魔石でも中級が使えるかどうかなの」
「風の魔石はどうですか?」
「ウィンドウルフも値上げ傾向ね。そうだ!いっそのことファモーゼルの魔石はどうかしら?」
「ファモーゼルって、風の魔石でも上位のやつですよね?安いんですか?」
「安くはないわよ。ただ、最近は風の汎用魔石が値上がってきたから、いっそのことと思って」
「ちなみに価格は?」
「ウィンドウルフが金貨6枚で、ファモーゼルが金貨9枚よ」
「ウィンドウルフはどう頑張っても中級止まり。でも、あっちは専用だからな~」
アルバでもグリーンスライムの魔石で、風使い専用に魔道具を作っていた。しかし、それはホームで情報が集まりやすかったからだ。ファーガンドで同じことが出来るかなぁ。
「アスカ、別にここで売り切らなくてもいいんだよ」
「へっ!?ああ、そうですよね!最近は作った分は全部その町で消費してたから勘違いしてました」
「売れ残っても次はダンジョンのある都市に行くんだよ。腐らないさ」
「確かにそうですね。それじゃあ、思いきって5つお願いします!」
「こっちは在庫が捌けて助かるけど、お金は大丈夫?」
「へ~きです。色々売ってますから!」
「そう。他には何かある?」
「水系の魔石なんかはないですか? 」
「水はね…高くて置いてないの。ただでさえ南部は水不足になりやすいから、こっちには回ってこないのよ。使えない人も国に買い取ってもらえるしね」
「そうですか…」
「ただ、色味で言えば青い石は置いてるわよ。見てみる?」
「はいっ!」
気を取り直して、お姉さんが出してくれた石を見つめる。
「わぁ!きれいな宝石。これいくらぐらいするんですか?」
「ある程度まとめて銀貨1枚ってところですね」
「安くないですか?」
「色味がきれいといってもそれだけですし、近くの山で結構取れるんですよ。山に登った記念に持ち帰ったり、お土産程度ですね」
「で、なんでこれがここにあるんだい?」
「…あんまりこういうこと言うのはよくないんですけど、魔石と間違えて持って来られるんですよね。一応は魔石とか魔道具を買う人の連れの方が、暇な時間に買っていったりしてはくれるんですが、あまりお金にならなくて…」
「もったいないですよ、これだけきれいな石なのに。在庫って結構あります?」
「ありますよ。どれぐらい必要ですか?」
「大袋で4つは欲しいです」
「そんなに使うんですか!?」
「はい。細工に良さそうなので。色々挑戦してみたくなりました!」
「それならいいけど…」
なおも心配そうなお姉さんに挨拶をして、店を出る。
「次はどこに行こうかな~」
「その…たまには服とか見ないの?」
「服…服かぁ~。確かにもうちょっとしたら寒くなってくるだろうし、サイズも変わってると思うし!」
成長…してるはずだもん!はずだよね?
「なら、ちゃんと見てやろうかね」
「いいんですか!?ジャネットさんと一緒に服を見られるなんて嬉しいです!」
「悪いなリュート、こんなに喜んじまって」
「いいですよ、別に」
「あらあら。それじゃあ、私もちょっと見てみましょうか」
皆で連れだって入る。とはいっても3対1なので当然、リュートは意見を言うだけだ。
「リュートどうかな?やっぱり白いと汚れるし、ダメかなぁ?」
「だ、ダメじゃないと思うよ。そのセーターすっごく似合ってる」
「ほんと?なら、これは買おうかなぁ。でも、縮むからちょっと大き目にしないとね。これはサイズぴったしだからもう一つ上のサイズにしないと…。店員さ~ん!」
「はい、どうされましたか?」
「この服、もう少し大きいのありますか?」
「はい。少しだけデザインが変わってしまいますがよろしいですか?」
「どんなのですか?」
「すぐお持ちします」
「ここの店員さんって親切だよね。さっきからすぐに服とか持ってきてくれるし」
「まあ、そうだろうね」
「そうよねぇ~。気持ちはわかるわ。次がいつかって考えたらねぇ~」
私にはわからないことも2人にはわかるみたいだ。う~ん、これが大人の女性ってことなのかな?
「お待たせしました。こちらになります!先ほどのはネックのところと袖口に刺繍があるものでしたが、こちらは胸のあたりから下までデザインが加わったものになります。お値段は変わりませんのでこちらでもお似合いだと思いますよ」
「へぇ~、こっちもかわいいですね。着て見ますね」
この世界にはあまり試着って文化はないんだけど、ここではさせてもらえている。普段は精々、体に合わせるぐらいだ。除菌スプレーとかないし、基本は買う前提なのだ。
「着てみたけどどう?」
「う、うん。さっきよりいいと思うよ」
「そう?でも、袖口とか余っちゃってだらしなくない?」
「だ、だらしなくないよ!うん。きれいだよ」
「ですわよね。後はこれに似合うようなアクセサリーがあればよいのですが…」
「どうかしたんですか?」
「帝都からもデグラスからも輸送が滞り気味でして…。ただ、服はいっぱいありますから気の済むまで見て行ってください!」
「ありがとうございます。それじゃあ、次はパンツだね。動きやすいのがいいかな~。でも、こっちってスカートばっかりなんだよね。女性ものも欲しいなぁ。あっ、これなら入るかな?」
こうして、久しぶりのショッピングで調子に乗った私は、服をたくさん買ってしまった。
「ううっ…どうしよう。マジックバッグの中身整理しないとな~」
これだけ服を買い込んだら整理も大変そうだ。
「何かいい方法ないかなぁ~」
「私が見てあげましょうか?これでも、帝都とかにも居たし、ジャネットよりは服には詳しいわよ?」
「そう言われると辛いね。でも、ここは異性の目が必要なんじゃないかい?女から見て似合っててもそれだけじゃダメだろ?」
「ええ~、そんなのアスカちゃんには必要ないわよ」
「そうかい?アスカは大人の女ってやつに早くなりたいんだろ?」
「なりたいです!」
「なら、そういう目に慣れたりするのも必要だね」
「むむっ、そういうことならリュート。後で付き合ってね!」
「ぼ、僕?」
「そりゃそうでしょ。流石に知らない人には出来ないよ」
「そりゃそうだろうけど…」
「なんだい、リュートはアスカの服を見るのが退屈だって言ってるのかい?」
「そ、そんなことありませんよ!わかったよ、でも、当てにしないでよ。僕だってそんなに詳しくないんだから」
「言っとくけど、2人きりじゃないよ?」
「わ、分かってますよ!」
「2人とも何の話し?」
「この後どこ行こうかってさ。そろそろ飯時だろ?」
「もうそんな時間なんですね。どこにしましょう…」
「それなら私の知ってる店でもいい?いいお店があるのよ」
「現地民の案内なら間違いないね。ミリー頼むよ」
私たちはミリーさんの案内で一軒の食堂へと入っていった。




