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敵の襲撃

前方に魔物の気配を感じて戦闘態勢を取る調査団。すでにワーレンさんは奥に引っ込んで、調査団の領主軍に守られている。


「私たちはどうしましょう?」


「敵は正面だけかい?」


「そうですね…あっ、今2体だけ左に別れました。高さからいって4足タイプですね」


「めんどくさそうな相手だね。正面は任せるよ。こっちは左寄りにシフトするから」


「分かった。マーカス!反応は?」


「掴んだ!だが、悪い知らせだ。どうやらウルフ種の様だ」


「みんな気を引き締めろ!」


向こうも敵が分かったようで改めて、得物を確認している様だ。


「うわっ!?」


「どうしたアスカ?」


「2匹とも木に登りました。待ち構える作戦みたいです」


「この辺りの魔物はやたらと賢いね。リュート、ディティーが追ったらフォロー頼む」


「了解しました。2人は?」


「1対1なら十分すぎるだろ。アスカ、行くよ」


「はいっ!」


ジャネットさんについて行き魔物のいる木に向かう。こそっとのぞくとそこには…。


「ギガントウルフ、やっぱりまだ居たんだ」


「当たって欲しくないことが当たるもんさ。さあ、行くよ」


魔法をかけて気付かれないようにギガントウルフのさらに上を行く私たち。


グルル


「今だ!フレイムブラスト」


私は木の上から飛びかかろうとしたギガントウルフめがけて火の魔法を放つ。まず一匹は火柱とともに倒す。素材は傷んじゃうけど、敵味方共に士気に影響が出るのでこういうのがいいらしい。ジャネットさんの受け売りだけどね。


「さて、あたしはこっちだね」


ザシュ


私の魔法に気を取られているもう1匹のギガントウルフをジャネットさんが難なく倒し、これで相手は6匹だ。調査団が一気に有利になったところで、みんなが攻撃に移っていく。


「おおーっ!」


「はぁ!」


危なげないと言いたいところだけど、そこは前衛職。鋭い爪と大柄な体格のせいで、中々攻撃に集中とはいかない。重戦士のバルトスさんも攻撃するたびに、相手の動きを注視している。


「ん~、ここはちょっとだけ手伝うかな」


木の上から弓を構えて相手の動きを探る。そして、何度かの攻防の後。


「今なら!いけっ!」


いくら、体格が良くて鋭い爪を持つギガントウルフと言えど、そこはウルフ種。頑丈な皮などを持っているわけではないので、脳天めがけて矢を放つ。ちゃんと当たらなくても、そこそこの効果は見込めるのだ。


キャン


放った矢は見事にギガントウルフの脳天に命中して倒れた。


「ほう?今日は調子がいいな、マーカス」


「こっちは大忙しですよ。別人です」


マーカスさんは弓にナイフに分銅?のようなものにと色んな武具を使って足止めに専念している。どうやらその間に味方が数を減らす作戦のようだ。


ギィン


「このっ!」


「リュート、下がって!」


リュートも私たちと別行動なせいか、手間取っている様だ。


「ウィンドボール」


風を球状にしていくつか放つ。すでに数を減らしているので、ここからは素材を意識した戦い方だ。


「ありがとう、アスカ」


私の援護もあってすぐに目の前のギガントウルフを倒すリュート。残りも対応して戦闘は終了した。


「ふぅ~、終わりましたね」


「ああ、嬢ちゃんありがとな。さっきの矢は嬢ちゃんのだってな」


「どういたしまして。私、弓もちょっとは得意なんですよ」


「ちょっとは…」


「どうしたのよ、マーカス」


「いや、あれでちょっと言われると、自分の腕がまだまだだと思ってな」


「あの距離ならあなたも出来るでしょ?」


「あの位置にいればできるが、俺は風魔法を使えんからな。自分の立てる位置で出来るかと言われると中々難しい」


「まっ、その時間は俺が作ってやるって!」


そう話しているディティーは私から見ても仲の良いパーティーだと思う。協力も出来てるし、やっぱり長年やって来てるって感じがする。


「んで、素材だがどうする?山分けか?」


「まあ、ここまで敵のランクが高いと前に出張ってたから何て言えないわよね。団長さん的にはどうなのかしら?」


「我々は調査外のことについては特に何もない。支障が出なければ問題ない」


「ということですので、そちらの方でお願いします。その前に、死体を検分させていただいても?」


「いいけどよぉ。何するんだ?」


「胃の内容物などで普段の行動を確認するとともに、詳細な報告をあげるためです。他の魔物の痕跡がないとも限りませんので」


「こいつら以外にか?流石に考えすぎだろ」


「だけど、急な目撃情報があったわけだし、領主様としてはきちんと把握しておかなければならないの。この調査団に加わっているものもそういうものが多いのよ」


「じゃあ、今回は山わけだな。といっても、状態の良し悪しもあるからそういうのもちゃんと分けるか」


素材を分けながら、一部の個体は解体中に調査員が調査を行う。そして、現在私たちは見張りの最中だ。


「それで、なんでリュートはあんなに手間取ってたの?」


「えっ!?アスカが目立ちたくないって言ってたから合わせたのに」


「そんなこと言ったっけ?」


「この国にいる間は目立たないようにするって言ってたでしょ?他のパーティーと合同だからそこそこのCランクに見えるようにしたんだけど…」


「そんな深い意図がアスカに読めるわけないよ。なんで事前に話しておかなかったんだい」


「ジャ、ジャネットさんはいいですよ。隠さなくてもランク違いますから」


「あたしだって、剣はそこそこのにしてるし、抑えてるよ?魔道具なんて使うところ見てないだろ?」


「そう言われてみれば…」


「それより、あんたのその手抜きでアスカが目立ってるんだよねぇ。ちゃんとこの後取り返しなよ」


「…分かりました」


ピィ


「アルナ、慰めてくれるのかい?」


「私に迷惑かけないでだって」


「そっか…頑張るよ」


何となく背中が小さく見えるようになったリュート。


「アスカさん先ほどはお見事でした」


「ありがとうございます、ディシアさん」


「見事な風魔法と弓の腕でした。そこで少しお願いがあるのですが…」


「何ですか?」


「この周辺を空から探ってもらえませんか?ギガントウルフが居ることは確認できましたが、この調子だと他にもこの辺りにはいなかった魔物が居ると思われます。その調査を行うにあたり、先に空から警戒してもらった方が安全だと判断しました。というわけで、お願いしたいのです」


「分かりました」


「待ってください。流石に一人は危険なので僕も同行します」


「それはこちらも歓迎します。1人に頼むには危険でしたから。では、具体的なエリアの説明をしますね」


私たちはディシアさんから警戒エリアを説明してもらった。


「これぐらいなら10分もあればできると思うけど、リュートはどう思う?」


「それぐらいだと思う。探知の魔法と合わせて、後は地形の確認だね。調査団は前衛が多いから役立つと思うよ」


「分かった。そっちはリュートに任せっきりになるけど大丈夫?」


「任せてよ!じゃあ、まずはこっちからだね」


恐らく安全だと思われる南側から私たちは警戒を行う。


「う~ん、いい景色だね~」


「アスカ、お仕事だよ」


「それは分かってるけどさ~、それでもいい景色なんだもん」


時間も経ってお日様も出てきたし、今日は本当に快晴なのだ。いいお天気に空を飛びながら風を感じるって素敵だと思うんだけどな。


「分かったから。それで、そっち側は何かありそう?」


「特に気になるところはないかな。小さい湖はあるけどそれだけだし、木の背が高いからよく見えないしね」


そう言いながら私はビュンビュンと左右に飛んで空から何かないかと探し回る。


「こっちもなさそうだね。商隊どころか馬車も見えないよ」


「じゃあ、こっちは無しってことで北寄りに行ってみよう」


場所を変えて改めて捜索だ。さっきと同様に魔法を使って空から魔物の気配を探る。


「今度はどう?」


「一応あっちに反応はあるみたいだ。でも、ギガントウルフほどには大きくないみたい」


「ふ~ん。どれどれ…」


私もリュートの言葉を受けて探知の魔法を使ってみる。確かに倒木ではなさそうな反応はあるけど、魔物って感じかなぁ?


「報告はした方がいいよね。すぐに戻る?」


「一応他の気配がないかだけ確認しよう」


「分かった」


安全のため、他には何もないことを確認して私たちは地に舞い戻った。


「どうだった?」


「あっちに反応はありましたが、魔物かどうかまでは…。他に明確な反応はありませんでした」


「分かった。そこまで案内を頼む。ワーレンは引き続き私たちに同行しろ」


「はい」


ワーレンさんが領主軍に着いたところでふとティタに聞いてみた。


「そういえばさっきはアルナとキシャルは見なかったけどどうしてたの?」


「きょうはずっとワーレンについてる」


「そうだったんだ。えらいね」


今もちゃんと警護している様だ。朝から静かだなと思ったらお仕事してたんだね。


「アスカ、案内頼む」


「はい」


今度はディティーと代わって私たちが前だ。気を付けないと!2日目の調査は新たな局面を迎えた。




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