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買取と指名

「とりあえず、マスターが来るまでに買取を済ませましょう。依頼はリラ草でしたよね?」


「後、ルーン草とシュウ草は乾燥させるから…サナイト草ですね!」


「えっ!?こんな短時間でそんなに」


「まあ、慣れてますから」


「な、慣れてるって他国から来てますよね」


「生え方とかってそんなに違いませんから!それじゃあ、出していきますね」


私はざるを用意してもらってそこに種類毎に入れていく。


「これはA…これもだわ。Bランクの方が少ないだなんて。こっちはSじゃない!薬師が喜ぶわ。って、ルーン草のS。本当にあったのね。初めて見たかも」


どんどんスティアさんが鑑定していく。どうやら彼女もスキル持ちみたいで、パッとランクが分かるようだ。


「すごいわ。薬草だけでこんなにいくなんて…」


「だから言っただろ。ここじゃなくていいのかって」


「そうね。甘く見てたわ。これだけいい状態のものがあれば、当面は滞っていた商人ギルドへの納品も出来るわ。リラ草以外は特に在庫不足になってたから高く買い取るわね」


薬草の買取は全部で金貨15枚になった。まあ、今日はいい場所を見つけられたから次はここまでいかないだろうけどね。


「私、薬草の買取で金貨10枚越えなんて初めて見たわ」


「私もよ。受付やってても、よっぽど大量の持ち込みじゃないといかないもの。それこそ店を閉める時の在庫とかね。それだって、こっちには来ないからまず見ないわね」


「ん?どうした?のんびり待ってたのか?」


「いえ、薬草の買取をしてたんですが、大変な額になりまして、驚いていたんですよ」


「金貨位か5枚くらいか?やるな」


「その3倍ですよ…」


「それじゃあ、在庫は」


「ええ、フロートのお陰で持ち直しました。これで受付も安心できますよ。薬師からは毎日のように問い合わせが来てましたからね」


はぁ…とため息混じりに言葉を発したスティアさん。薬草の採取はランクの低い冒険者が請け負うことが多いから、現状大変そうだ。かといって、Bランクの冒険者に依頼すれば単価が合わないしね。彼らにとっても必需品ではあるから、渋々行くとは思うけど。


「それで何の用なんだい?」


「そうでした!マスターも早く座ってください」


「おう」


「実は皆さんにはギルドからの指名依頼を受けていただきたいんです」


「指名依頼?」


「はい。ご存知の通り、Bランクから出すことが通常ですが、採取や製造関連など一部で低ランクの方にもお出ししています」


「そういえば受けたことあったなぁ」


あれは教会からシェルレーネ様の像を作って欲しいって依頼だった。ムルムル繋がりで他にも数件受けてるんだよね。


「では話しも早いですね。内容についてはマスター!お願いします」


「おう!今回受けてもらいたい指名依頼だが、内容は調査団同行だ」


「調査団って、明日やるやつかい?」


「ああ。調査団は領主軍との合同で、こっちも護衛としてパーティーをひとつ出すつもりだったんだが、ギガントウルフの件があってな。今の奴らだとちょっと負担でな」


「そいつらのランクは?」


「Bランクだ。ただ、長年活躍しての昇格だし集団戦となるとなぁ。てなわけで頼む。ついでにお前たちが出くわした場所にも行くし、あん時の商人も同行するからな」


「あの商人さんですか…大変そうですね」


「分かってくれるか?非戦闘員は連れていきたくないんだが、行方不明の商人の行きそうな場所も同じ商人の方が分かると思ってな」


そう言われたらそうだろうけどあのおじさん怖がってたしなぁ。


「ジャネットさん…」


私はジャネットさんをチラッと見る。


「はいはい。行きたいってんだろ、うちのリーダーは。しょうがないねぇ」


「ありがとうございます!」


「ジャネットさんだって気になったくせに」


「リュート、余計なこと言うんじゃないよ」


「すまんな。それじゃあ、こっちから依頼は出すから。依頼料はそうだな…ディティーの奴らが1パーティーで金貨2枚だからお前らは3枚だな」


「ええっ!?Bランクのパーティーより高額ですよ」


「まあ、あっちは指名依頼というかある程度の実力のパーティーならどこでもってことだが、お前らは情報とか案内も込みだからな。何なら商人とも知り合いだろ?こういう時は冒険者は商人ともめることも多くてな。お前たちが居るだけで助かるんだ」


「まあ、貰えるもんが多いことは助かるよ。それで、明日の調査中の魔物の討伐の分け方はどうなんだい?」


「そちらは基本的に領主軍からの依頼ということになっているので、向こうに引き渡すことになる。その時の金銭については向こう次第になる」


「まあ、依頼料を考えればそんなもんかね。集合時間は?」


「9時予定だが、集まり次第出発したい。できたら、8時をめどに来てくれ」


「了解。アスカ、他に聞いておきたいことは?」


「えっと、調査の途中で時間が余ったりしたら薬草を採っても大丈夫ですか?」


「薬草か…普段なら断るんだが現状の在庫数だとな。領主の方に相談して大丈夫なら頼む。向こうさんだって在庫は少なくなってるだろうし、そこまで目くじらは立てんだろう」


「それじゃあ、頼みますね。当日、マスターは行けないので」


「えっ!?じゃあ、そのディティーっていうパーティーの人とは当日打ち合わせを?」


「いや、そこは領主軍の方でやるだろうから問題ない。それと報告書をこっちに出してもらうからそれだけは覚えておいてくれよ」


「だって、リュート」


「分かったよ。準備しとく」


「あの…そういえば私は?」


「ん?ああ、大鷲のミリーか。一緒に行くなら構わんぞ。お前も道案内なら出来るだろうし、行方不明の方は普段からこの道を行ってる奴らの方が捜しやすそうだからな」


「ミリーさん、良いんですか?」


「ええ。私でも力になれるのであれば頑張って見たいの」


「というわけだ。あんまりパーティー数だけ多くても面倒だからミリー、お前はフロートの臨時メンバーということにしておくぞ」


「は、はい」


「頑張んなよミリー。フロートの最年長者だからね」


「えっ!?みんなそんなに若いの?」


「流石にフィアルよりは下だろうけど…どうだかね。あいつも歳分かりにくいからな」


「まあ、明日は頼んだぞ。俺は別の用事があるからな」


「はいよ。まあ、アスカの活躍を…いや、報告書を楽しみにしててくれよ」


「ああ、期待しているぞ」


ギルドマスターさんとは別れて、後は宿に戻って明日まで待機だ。


「それじゃあ、宿に帰りましょうか!」


「こら、その前に倒した魔物の素材だろ」


「そうでした。パッと売っちゃいましょう」


魔物の素材も売って宿に戻る。食事の方もリュートが担当してくれるので、私は細工をするだけだ。


「細工をしようにも今日はほとんどMP残ってないから普通の細工だね。今日はアラシェル様の像にしようっと」


こっちでも広めたいし、デグラス王国に行った時にバルドーさんにいっぱい渡したいしね。ただ、今日は魔道具を一切使えなかったので、進捗としてはよくなかった。


「う~、今日は中厚オーク肉の照り焼きかぁ~」


「どうしたのアスカ?これ好きだったよね」


「そうだけど~、お野菜入ってない…」


そう、今日の夕食のオーク肉の照り焼きは濃い目の味付けなので、いつもは生野菜が添えられているんだけど、目の前にはパンとスープとこの肉だけ。確かに野菜はスープにも入ってるけど、多いとは言えない。


「今は町の周辺がこんなだからね。野菜の方が魔物の肉より高くなっちゃったんだって。ごめんね」


「分かった…。絶対明日は魔物を倒そうね」


「あっ、うん。そういう目的じゃないけどね」


食事も済ませて、明日に備えて眠る。


「おや、今日は早くから寝る気なんだね。どうしたのさ?」


「明日はバンバン魔物を倒して、お野菜…じゃなかった。みんなのために頑張るんです!」


「ああそう…まあ、目的を分かってるならいいや。後はリュートにでも任せておくか」


「大丈夫なの?」


「やる気になってるのは良いことだし、このままにしとくよ」


「ジャネットって扱い上手いのね…」


「これぐらいできないと一緒に旅なんて出来ないよ」


ピィ!


「みんなでなに話してるんですか?」


「アスカを見習って今日は早く寝ようってね」


「それがいいですよ、おやすみなさ~い」


「ぷっ、本当に寝るとするか」


「そうね。お休みジャネット」


私たちは決戦の明日に向けて英気を養うのだった。


「そういう依頼じゃないんだけどね。はぁ…」



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