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薬師の町ファーガンド

素材も取り終え、再び町を目指す私たち。


「でも、こんなに街道沿いに襲撃ってあるもんなんですか?」


「いえ、私が知る限りここまででは…。今までもオーガバトラー1体に、ウォーオーガ数体ぐらいが最大戦力でした」


「今のはオーガバトラー3体に、ウォーオーガが3体だったんだけどね。はしたのオーガを除いても状況は悪化してるのかい?」


「そう見てもらった方がいいのかもしれません…。特にギガントウルフの分布の変化はまずいです。あれは馬車相手には脅威ですから」


「確かに1頭でも通せば、破壊されるだろうね。護衛も2隊…最低でも6人、出来たら8人ってところかい」


「それが出来る商人は少ないでしょうなぁ。運ぶ荷物にも左右されてしまいますし」


「おじさんの商会は無理なんですか?」


「うちはメインが食料品ですから。そんなことをすれば即、首が回りませんね」


「私たちのパーティーも4人だから受けられたの。5人以上のパーティーも受けられるけど、報酬は4人分までよ」


「そういえばレディトで見た依頼にもそういうのがありましたね。人数は問わないけど報酬は何名分までっていうのが」


「なので、今回のことは国にも連絡して何とかしてもらわなければ。冒険者ギルドだけでは難しいでしょう」


「大変ですね。私たちはファーガンドでしばらく滞在するので何かあれば言ってくださいね。遠くまではいけませんけど」


「はい。その前に町に着いたらお礼をさせてください。あなたたちが来てくれなければ私の命もありませんでしたから」


「じゃあ、まずは宿を紹介してくれよ。従魔宿ってのが少ないし高くてねぇ」


「それでしたら、商会近くの馴染みの宿に案内しますよ。ちょっと、建物は古いですが気のいい人間がやっていますので」


「そいつは楽しみだね」


皆で話しをしながら街道を進んでいく。流石にあれからは襲撃もなく、昼を取って数時間後…。


「城壁が見えましたね」


「あと1時間ってところかね」


「まだ、これから1時間もかかるんですか…」


「あんたは普段馬車に乗ってるからわかんないのか。そんなもんだよ」


「でも、立派な城壁ですね」


「北側の要地かつ、近くで薬草が多く取れてるから余計に重要なのよ。戦うのにポーションはいくらあっても足りないから」


「そのために戦地に向かう時はファーガンドからにした時もあるほどの歴史ある都市ですよ。普段は薬師の多い町ですがね」


「薬師かぁ。珍しい薬草とか薬があるんだろうなぁ」


「もちろんですよ!ぜひ買っていってください。冒険者にも必須でしょうから」


「ま、材料には世話になるかもねぇ。アスカ」


「どうして私に聞くんですか!」


「また、作るつもりだろ?」


「そりゃあ、ちょっとは考えてましたけど…」


「おや?細工だけでなく調合もされるので?」


「苦手なんでそんなに作らないですけどね」


「もしよかったら、細工と一緒にうちで扱わせてもらいますよ」


「いいんですか?でも、食料品がメインなんですよね?」


「そうなんですが、今回のことで馬車も馬もいりますし、商材が増えるのは渡りに船という奴ですよ」


「それなら、持っていきますね」


「もうすぐ着きそうよ。準備して」


「は~い」


話していると時間は直ぐに過ぎるもので、気がつけば城門の受付に並ぶところまで来ていた。


「お前たちは…冒険者か?」


商人のおじさんを見るなり、門番の兵士さんに疑問を持って尋ねられた。


「ええっと…」


「商人の護衛で来ました。見ての通り馬車はありません」


「…分かった。詰所に先に来てもらってもいいか?数日前にも破壊された馬車の一部を見たという連中がいてな。明後日にもそこに行く予定だったんだ。情報がもらえるならありがたい」


「分かりました。アスカちゃん悪いけど詰所までお願い」


「はい。それじゃあ、みんなで行きましょうか」


門番さんに連れられて奥の詰所に入る。


「ん?どうした?」


「また、馬車が襲われた商人です。今度は無事ですが…」


「チッ!またかよ。どうなってんだ一体…奥で話を聞く。ディシア、茶でも入れてやれ」


「はい。それじゃあ、奥に行ってください。すぐに飲み物を持っていきますから」


「はい」


ディシアさんの案内で奥の部屋に入る。それからすぐに飲み物を持ってきてくれて、ディシアさんも一緒にテーブルに着いた。


「あん?お前も聞くのか」


「書記が必要でしょう?」


「勝手にしろ。そんじゃ、報告を聞こうか。そこの商人が襲われたのか?」


「は、はい」


「襲われたのはいつでしょうか?」


「昨日の日中です。朝、野営した場所を出発して少し早めに進んでいました」


「ほう?何か急ぎの荷物が?」


「いえ、ただうちの商会は食品を扱っているので、傷む前にと…」


そう言って商人さんが名刺のようなものを隊長さんに渡す。


「ああ、ガーレン商会か。なるほどな」


「それで、そこの護衛のパーティーに対応してもらったと」


「ん?じゃあ馬車はどうしたんだ?バンは馬車がないって言ってたぞ」


「それは私のパーティーが護衛をしていたからです」


「私の?あなたは」


「ミリーと言います。パーティー大鷲の一員でした」


「おおっ!割と仕事も早い売り出し中のパーティーか。商人受けもいいらしいな」


「ありがとうございます」


「で?じゃあ、奥の3人組は」


「私たちはフロートという今は3人で行動しているパーティです」


「そこの猫と鳥は?」


「私の従魔なんです。魔物使いなので」


「ほう、珍しいな。まあ、そいつは置いといてだ。大鷲は何と遭ったんだ?」


「ギガントウルフです。それも9匹いました」


「ギガントウルフ!この周辺で見かけられたことはなかったのに…」


「数は9匹か…。Cランクにゃ到底扱いきれない相手だ。2組も護衛していたのか?」


「いえ、私どもが雇ったのはこちらの大鷲1組です」


「まあ当然だよな。食料中心で8人も雇っても儲けが出ないな。じゃあ、なんでいるんだ?」


「あたしらもファーガンドに向かっていてね。目的地に行く途中で出くわしたって訳さ」


「途中でギガントウルフに遭った?」


「はい。その時は5匹だけで、もう2匹は馬車の方に…」


「残り2匹は?」


「大鷲が倒しました…」


それだけ言うとミリーさんはうつむいてしまった。その時のことを思い出しているんだろう。


「なるほどな。商人のお前はどうやって生きのこった?」


「しょ、食料と…倒れた馬車の食料との反対側に身を潜めておりました。運よくこちらのジャネットさんが来てくださいまして、やられる前に2匹を倒してくれたのです」


「2匹を!?ギガントウルフは1匹でもCランクの魔物ですよ」


「いや、あたしこれでもBランクだからね。それぐらい問題ないよ」


「それで残った5匹の相手はそっちの2人が?」


「はい」


「あ~、急いであたしも合流したからね」


「合流すればBランク1人とCランク2人対ウルフ5匹という訳か…。危険だったんじゃないか?」


「あたしもちゃんと後で謝ったよ。ただ、護衛依頼で商人には普段から世話になってたからね」


「それは良い心がけです。あとで商人ギルドにも報告しておきますね」


「頼むよ」


「で、そうなると大鷲のあんたは?」


「何とか自分だけ助かりました。フロートの方たちが派手に戦ってくれたおかげで、こっちから意識を外したみたいで…」


「そうか…。他に壊れた馬車は見ていないか?数日前にも同様の事件があって、その商人は来ていないんだ」


「見てません」


私たちも首を横に振る。


「そうか、貴重な情報をありがとう。ディシア!報告書をまとめておけ。それと謝礼を出そう。なるべく早く届けるからまた宿を教えてくれ。町の治安もだが、この情報を持って、明後日からの巡回を済ませば商人たちも少しは安堵するだろう」


「分かりました。フロートの皆さん、ありがとうございます。町の人間を代表してお礼を申し上げます」


「い、いえ!」


「ガーレン商会のあんたはこれから商人ギルドへ行くんだろう?こっちからも人を出すからここにいてくれるか?」


「この方たちに宿の案内をした後でしたら」


「構わん」


「では」


「ああそれと、大鷲のミリーだったか」


「はい」


「悪いが、早めにギルドに行ってくれ。明後日の人選にも関わってくる。実はこっちとギルド合同で行くことになっていてな」


「すぐに向かいます」


「そうしてくれ」


「では、宿に向かいましょう」


「じゃあ、私は報告に…」


「何言ってんだい。あんたもどうせ宿は決まってないんだろ?一緒に泊めさせてもらったらいいよ」


「ですが…」


「そうしてください。ジャネットさんたちに助けてもらえるようにあなたたちが頑張ってくれたことを私は覚えております」


「分かりました」


それから少し歩いて、案内された宿に着いた。


「確かにちょっと宿の構えは古いねぇ。雨よけは穴空いてるし」


「ははは、修繕にも時間がかかりましてな。宿を休みにしたくないというんです」


「まあ、アルナたちも泊められるなら多少は我慢だ。入るよ」


「いらっしゃい」


「どうも、こんにちは」


「おやガーレン商会のとこの」


「ワーレンです。お世話になってます。今日はお客さんの紹介で、こちらの方をお泊めしてもらいたくて…」


「ん?護衛の冒険者かい?」


「そんなものです。小型の従魔がいるのですが、よろしいですね?」


「ああ、何食べるかいってもらえたらねぇ。部屋は2部屋でいいかい?」


「はい」


「じゃあ、大部屋一つに個室一つと。食事は?」


「朝と夜は欲しいです。もしいらない時は先に言いますから!」


「はいはい。かわいいお嬢ちゃんだね。部屋はこっちだよ」


「では、私は一旦これで…」


「商人さん、ありがとう」


商人さんと別れて、案内された部屋に向かった。


「4人部屋ですね」


「まあ、リュートを除けば3人いるし、気を使ってくれたんだろ」


「私も一緒でいいんでしょうか?」


「いいっていいって。どうせ、しばらくは一緒に動くことも多いし、見て困ることは…黙ってなよ?」


「ジャネットさん、見て困ることなんてありませんよ!」


「まあ、主にあんたのことなんだけどね…」


「何か言いました~」


「いや。それより、荷物整理が終わったら、ギルドに向かうよ」


「は~い」


荷物を降ろし、パパっと着替えたらギルドに行く。隊長さんに言われた通り、報告を済ませないとね。



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[一言] >「おやガーレン商会のとこの」 >「ワーレンです  ガーレンのワーレン……。  ガーレンワーレン、ガーレンワーレン……このリズム感がまた(肩ぷるぷる)
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