こぼれ話 神界雑記
「ふんふ~ん」
「おやアラシェル、ご機嫌だね。何かいいことあったのかい?」
「グリディア!うん、だって無事に行方不明だったアスカも見つかったし、毎日の日課が出来るんだもん。信者のリストも落ち着いて、アスカウォッチングに時間を割いても大丈夫になったんだよ」
「…そうかい。で、今アスカは何してるんだ?」
「えっと今はね~」
私は浮かんでいる水晶球を使ってアスカの映像を映し出す。もちろん、神様の力でこんなものに頼らなくても直接見られるし、見せられるんだけどフレーバーってやつだね!アスカの知識からこういうのが神秘性を高めるって知ったからやってみてるんだ~。
「ん?なんかおっさんが私とグリディアとシェルレーネの像を拝んでる」
「ふ~ん。アタシの信仰者みたいだけどいい奴だね」
「あら?あなたの信者にしては殊勝ね。私の信者にしちゃおう!」
「あっ、シェルレーネ!お前どういうつもりだ!」
「え~、この大陸ってグリディアの1強状態じゃない?なら、これぐらいいいでしょ?」
「よくない!こいつは数少ない武力を持たない信者のひとりなんだ」
今アスカたちがいる大陸は確かにグリディア信仰が盛んだ。ただ、家族や友人や恋人など親しい人間の中に兵士や冒険者がいて信仰するのがほとんどで、単純にグリディアを信仰しているものは少ない。グリディアからしたら加護などに関係なく信仰してくれる貴重な人物だ。
「じゃあ、信仰が揺らぐか勝負よ。えいっ!」
そういうとシェルレーネはおっさんの神像を光らせた。ん~、いいのかなぁ?あれ。
「あっ!何するんだよ」
「ふっふ~ん。信仰が揺らがないっていうのならこれぐらいどうでもないでしょ?」
「そういう話はしてない!くそっ!おっ、もう一回祈るのか?よっしゃ!」
シェルレーネに負けじとグリディアも像を光らせる。そこは元々グリディアの信者だ。より彼女の力を受け取れるようで、シェルレーネよりも強く光り輝いた。
「どうだ!」
「くぅ~悔しい!でも、それだけで私を選ばない理由にはならないわよ」
「2人とも大人げないなぁ~。でも、楽しそうだから私もやる~」
私もちょっと力を使って像を光らせてみる。しばらく大人状態になれないけど、アスカのためになりそうだし頑張らないと!
「ちょ…アラシェルまでなにやってんだ!」
「おっさんの店を流行らせるお手伝い~。きっと、アスカがいいこと思いつくよ!」
「お前なぁ…もうちょっと他の信徒も見てやれよ」
「見てるよ~、でもアスカは始祖だし特別だよ~」
「絶対方便だろそれ」
「まぁまぁ、おじさんの店の方も解決したみたいだしいいじゃないの」
「おや、おぬしら何をしておるんじゃ?神力の波動を感じたんじゃが?」
「ガンドルじい!シェルレーネがまた力を使ってたから2人で止めてたの!」
「おう~、そうかそうか。アラシェルは相変わらずしっかりものじゃの~」
「ま、待ちなさいアラシェル!どういうことよ!?」
「最初に神力を使ったのはシェルレーネだもん。私たちはしょうがなくだよ」
「…そうそう~仕方なくなんですよ、ガンドル様」
「グリディア!あんたまで…」
「シェルレーネよ。ちょっと神託を減らしたと思ったそばからこれか。また説教せんといかんのう」
「そんな!ご、誤解です」
「いいから来るんじゃ!」
「ま、待ってください。ふ、2人とも助けなさいよ~…」
「ふう、行ったみたいだね」
「助かったぞアラシェル」
「へへ~、最近おじいちゃんは私に甘いからね~」
「つ~か、アンタ本当に幼児化して来てるね」
「ち、違うよ。普通の生活っていうのを学んでるんだよ。アスカが信仰する神として巫女の生活や気持ちを理解しないと!」
「はいはい。相変わらず偉いね~。しかし、よかったよ。アイツの信仰が揺らがなくて」
「本当に気に入ってるんだね」
「加護もやりたいところだけど、意味がないからねぇ。ままならないもんだ」
「でも、きっとそんなものがなくても変わらないよ。あのおっさんは」
「そうか?うれしいねぇ。っていうかアンタちょっと口悪くなってない?」
「庶民化したと言って欲しいの~」
「庶民化ってどこでそれを使うんだよ…神だろ?」
「う~ん。神託の時とか?」
「そういう時はちゃんとした姿でね。威厳も何もあったもんじゃない…」
「ちぇ~」
後日、犠牲にされたシェルレーネから2人が追いかけられたのは言うまでもない。




