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挨拶と旅の準備

「アスカ待たせたね」


「ジャネットさん!もうそっちは良いんですか?」


「ああ、報酬もたんまりもらえたよ。ワイバーン乗りが騎士になるのに紹介料ももらってきたからね」


「へ~、そういうのでお金もらえるんですね」


「アスカさん、今回は大変ありがとうございます」


「ハ、ハーディさん、いきなりどうしたんですか?そんな丁寧な言葉遣いで」


「マグナのステータスを見たが、到底俺じゃかなわない相手だった。それを俺にチャンスをくれたばかりじゃなく、マグナも譲ってもらえた。感謝してもしきれない」


「それなら、マグナを大事にしてあげてくださいね。野生で過ごしてた分、人が関われることで色々体験できることもあると思うんです。さっきもオーク肉のいいところを切ったものをあげたんですけど、とっても喜んでました!」


「あ、ああ。まずは見習いからだと思うが、精一杯やって見るよ」


そう言いながらも1日の食費が銀貨1枚とかになりそうでハーディは戦慄したのだった。


「それじゃあ、ハーディさんは一旦、街の外なんですね」


「明日にはギルマスが話をつけてくれるんだ」


「なら、必要なものがあったら届けますよ。まだお昼前ですし、色々いると思いますから!」


「ああ、なんてあなたは素晴らしい人なんだ。まるで小さな女神さまだよ」


「まあ、アスカは実際に巫女をやってるしねぇ」


「巫女?グリディア様の?」


「いいえ。アラシェル様という女神さまです」


「じゃあ、我が家では代々その方を祭るようにします。とりあえずは食事だけ頂ければ…」


「分かりました。それではこれを持って行ってください。布教用のアラシェル様像です。食事は後でもっていきますね!」


「はっ!」


ハーディさんを街の外まで見送ると私たちもお昼を探しに街へ繰り出した。


「アスカ様は食べたい料理はございますか?」


「食べたい料理ですか?う~ん、サンドイッチみたいなのがあればいいんですけど…」


「あれですね。この辺のパンでは難しいかと…」


「じゃあ、煮込み系のスープですかね。あれだと、パンと一緒に食べられて美味しいんです!」


「ではこちらに…」


ステアさんに案内されて店に入る。でも、ちょっと高級そうだ。


「いらっしゃいませ。何名様ですか?」


「5人だ」


「かしこまりました、こちらへどうぞ」


奥に通されると7人掛けぐらいのテーブルに案内される。一番奥にはなぜか私が案内された。


「お付きの方はどうされますか?」


「一緒に持ってきてくれ。そう言われてるんでね」


「では、注文がお決まりになりましたらお呼びください」


「分かりました」


ちなみに席は奥の中央に私で左右がジャネットさんとステアさん、なぜか離れてリュートとテクノさんだ。詰めたりしないんだなぁ。料理の配膳の都合かな?


「料理をお持ちしました」


雑談をしていると待ってましたとばかりに料理が運ばれてきた。しかも、コース料理の店らしい。


「美味しそ~、いただきま~す」


店の人も食べるのが遅い私に合わせて料理を持ってきてくれるので、ゆっくり食べることができた。


「あっ、この煮込み料理美味しいなぁ。ビーフシチューかな?パンと一緒だともっとおいしいよ」


「よかったね、アスカ」


「はいっ!でも、ジャネットさんたちには申し訳ないです。私が食べ終わるの待ってもらって」


「いいよ。あんたぐらいで普通さ」


「そんなこと言ってジャネットさんのお肉、おっきいじゃないですか」


「そうかい?こんなもんだけどねぇ。見なよリュートのだって大きいよ」


「えっ?ほんとだ。席が遠いから気が付かなかった。リュートもよく食べるんだね」


「あはは、そうだね。まあ、体も大きくなったし街にいる間だけでもね」


ちなみにジャネットさんが食べているのは南の地方で飼育されているビッグホーンバッファローの肉だ。牛肉に近い感じみたいで、実は一口だけ食べさせてもらった。もうちょっと食べたかったけどシチューの方が食べられなくなりそうだったからね。リュートのは鳥系の肉とジャネットさんの頼んだ肉のハーフだ。あっちもおいしそう…。


「アスカ様、お口が…」


「おっといけない。えへへ」


「あざとい、なんてあざといお嬢様なんだ」


美味しかった食事を終え、ハーディさんの食事を買いに行く。


「あの者のためにわざわざアスカ様が手を煩わせる必要はありません」


「でも、マグナもいますし…」


「じゃあ、あんたの袋からマグナ用の飯だけ渡したらどうだい?アスカはまだ魔道具の納品とか残ってるんだろ?」


「いいんですか?」


「お任せを!」


ちょっと申し訳ないけど、作った魔道具をお店の方にも一部売りたいし、ステアさんにハーディさんのことはお任せして宿に帰る。


「んで、出発するのはいいとして北部の方でいいんだね?」


「はい。薬草とかも取れるみたいですしファーガンド経由で行きたいと思います」


「もうちょっとゆっくりしたかったけどしょうがないね。リュートそっちは?」


「問題ないですけど、宿の食事の件で今日は時間貰えますか?さっと、教えてきます」


「了解。ここでも世話になったからきちんとやっておかないとね」


「ジャネットさんってそういうところしっかりしてますよね」


「次に寄る冒険者の扱いのためさ。その次に返ってくるのは自分かもしれないからねぇ」


そんな話をしながらも私は魔道具店に持っていく魔道具を取り出す。


「こっちは魔道具店に、こっちは商人ギルド用だね。ティタ、これはどう思う?」


この滞在中に作った新作の3重水晶だ。北のファーガンドでも売れるだろうけど、ここで売っちゃった方がいいのかな?


「ここでうる。みなとまちだから、いいわけがきく」


「そっか、ありがと。キシャルは…もう寝てる。しょうがない、アルナ。お留守番よろしくね」


ピィ


最近アルナはキシャルの体に乗って寝ることを覚えた。ちょっと冷たいキシャルの体がこの季節には合うらしい。キシャルも寝るまでは嫌がるが、寝ればリンネのように深くは気にしないみたいだ。


「さ、出発だね」


「待ってアスカ。ジャネットさんと一緒にね」


「そう?別に1人でも…」


「いや、あたしも一緒に行くよ。ほら」


「はい」


珍しく魔道具店にジャネットさんもついて来た。


「いらっしゃいませ。あら、小さな細工師様。今日はどのようなご用件でしょうか?」


「ちょっと急なんですけど、街を離れることになったんです。それで、滞在中に作ったものを渡そうと思って…」


作ったものを渡して鑑定を待つ。


「これは…こっちも…本当にいいのですか?この町でなく帝都であればもっと買取()が上がる可能性もありますが…」


「帝都にはちょっと…というわけでよろしくお願いします」


「分かりました。こちらの三重水晶やこの音声遮断の魔道具は高く買取させていただきます。どちらも帝国では重宝されるでしょう。このバリアの小手は冒険者ギルドと連携いたします」


「ギルドと?」


「最近商人が買い求めるのですがどうにも他の町で売るというより、値を釣り上げてやろうというものがいるみたいでして、その対策です。ギルドから有望そうな冒険者に対して勧めてもらう形になります。その分売れるまでが少し長いですが、価格は安定します」


「よろしくお願いします。道具は使ってこそなので」


「ありがとうございます。道中お気をつけて」


「はい!」


魔道具のお店にも挨拶はしたし、後は明日出発するだけだ。


「ん~、夕食もおいしいな~」


「しばらくカレーも食べ納めかい」


「ジャネットさんってカレー好きですよね」


「そりゃあ、パンにも合うし色んなものと食い合わせがいい。ただ、匂いもきついし野営じゃね…」


「そうですね。はい、ジャネットさんの分ですよ」


「おう!ってリュート。今日まで店員やってんのか?」


「まあ、変な行動よりは良いかと思って。それにお世話になってますし」


「律儀だねぇ。でも、好きにしたらいいさ。何事も経験だしね」


そう言いつつジャネットさんはオーク肉が1枚入ったカレーに手をつける。豪快なメニューだ。でも、この匂いに誘われて結構な人気メニューになっている。


「アスカ、明日の朝はどうする?」


「普通にパンとサラダとスープで!」


「了解。用意しておくよ」


リュートは再び厨房に引っ込んだので、私たちも食事に集中する。


「あ~、食った食った!」


「ほんとですね。あっ、アルナのご飯持っていかないと」


ピィ


部屋に戻るとアルナたちが部屋を動き回っていた。


「ん?みんな珍しいね。いつもは静かなのに」


「アルナ、ちょっとふとった」


「ああ~、確かにこの街だと外出てないもんね」


近くにはお友だちもいないようで、つまらなさそうにティタに本を読んでもらったりしてアルナは過ごしていた。


「私も結構細工に時間を使っちゃったし、旅の途中はお話ししようね~」


ピィ!


んにゃ


アルナに合わせてキシャルが鳴くと、またアルナがせわしく動き出した。


「キシャルはなんて?」


「さっきまでふてくされてたのに、げんきんだって」


「ああ、追いかけてるのかあれ」


キシャルは普段こそだらだらしているけど、すばしっこいから魔法を使えない部屋の中じゃ、アルナは追い付けないよね。


「ほら、明日は北に出発だから早く寝るよ~」


ピィ


私がそう言うとアルナはすすっと頭の横に来る。


「潰されないように気を付けるんだよ」


こうして、出発を控えた前日を過ごしたのだった。

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