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依頼の進捗

バルディック帝国で冒険者ギルドの依頼を受けておこうと私たちは森に来たんだけど、流石にCランクが5人(ジャネットさんはBランク)もまとまってやる依頼でもないということで私たちは2手に別れていた。私はステアさんと従魔たち、ジャネットさんの方がリュートとテクノさんを入れた3人だ。


「ティタのサーチ魔法で魔物が寄って来たみたいだね。大きさはと…ちょっと大きいな。多分、オークです!ステアさんもやって見てください」


「わ、分かりました。っと、こうですか?」


「うう~ん、水滴が大きいですね。ティタ、もう一回やって見せてくれる?」


「わかった」


こんなにのんびりしているのも相手がオークだと分かったからだ。オークの種類は多いけど、魔法も弓も大した威力はない。オーガならまだもうちょっと警戒するけどね。


「こんなかんじ」


「こう?」


「そう。もうすこしこまかいみずをいしきする」


「こ、こう?」


「もうちょっとばらつきなくす」


「難しいわね。これって多分、魔力操作前提の魔法よね」


「ステアない?」


「あるわけないわよ。どうしてそんなに身近なものだと思ったの?」


「ディースもマディーナもミディももってた」


「ディース?Bランク魔法使いの?」


「うん」


「ディースさんを知ってるんですか?」


「ええ。結構、神殿界隈じゃ有名だったんです。マディーナさんほどではないけど彼女もかなりの有望株でしたし、孤児院にも定期的に来ていただいてました」


「そういえばディースさん…」


ディースさんはアルバで今は魔物使いになり、魔物の研究をしているが元はBランクの魔法使いだった。ただ、それも魔法使いの方がパーティー的に需要があるからで、お金が貯まり従魔を得た今、魔物使いになっているのである。そんなディースさんは平民で魔力が高かったため、貴族の邸に奉公していたらしい。その後、親が貴族に売ったため、危険を感じてフェゼル王国まで逃げてきたのだ。きっと、孤児の子たちに思うところがあったのだろう。


ガサガサ


「アスカ、てき」


「うん。気分を切り替えないと」


ようやく現れたオークたちに対応するため弓を構える。


「あれ?ちょっと、構えがきついな」


別に力が出ないわけでもない。ただ、単純に構えがしっくりこないのだ。う~ん、何かしたかな?


「アスカ、能力抑えてる」


「あっ、そっか!ありがとうティタ」


それなら対応はできる。要は弓を使い始めてちょっと経った頃の感触で撃てばいいんだ。


「あの頃は…あの頃ってどうだったっけ?」


当時は細工や弓の使用ですぐに器用さが上がっていったので、多分今の器用さ200っていう時期はすぐに過ぎ去ったものだったのだ。


「と、とりあえず、これで…アローシュート!」


私は空に矢を何本も放ちオークのいる位置に落ちるようにした。


トストストス


「うう~、いつもと感覚が違うからあんまり当たってない」


「アスカ様ここはお任せを!」


ヒュンっとステアさんが飛び込むと、レイピアを引いて構える。


「アクアランサー!」


木の影を利用してこちらに向かって来たオークの死角を突き、一瞬で1体のオークを倒す。


「私も負けていられない。いけっ!」


再び弓を構えて射る。何度か弓を射れば流石に慣れてきた。弓を構えて矢を放ち見事、オークをしとめることができた。


ピィ!


んにゃ


いつの間にか空と木の枝からアルナとキシャルも攻撃を仕掛け、瞬く間にオークたちは倒れていった。


「ふむ。従魔たちも普通に戦えたのですね。いつもアスカ様についているだけなので、戦闘出来ないのかと思っていました」


「一見、戦えなさそうに見えますけど、アルナは風魔法がキシャルは格闘戦が得意なんですよ!」


「そのようですね。しかも、キシャルは大きくなれるのですね」


「ちがう。キシャルはこっちがふつう」


「えっ!?」


「そうなんです。私もびっくりしたんですけど、キシャルって実は大きいみたいなんですよ。でも、縮小化のスキルのお陰で普段は小さいんです。小さくなる時だけMPを消費するみたいなんですけど、それ以降は消耗が少ないので効率的って言ってました」


「色味も普通のキャット種とは違いますし、変わっているのですね」


「まあ、ノースコアキャットですから」


「ノースコアキャット!?ラスツィア地方に住む固有種ですか?」


「みたいですね。私を気に入ってついて来たんですよ」


「それで従魔に。でも、従魔を何体も持つのは大変なのでは?」


「そうですね。契約ごとにMPを毎日消費しますからね。でも、キシャルはそんなに高くないから大丈夫ですよ。逆にティタとかアルナは多いので、結構消費するんです。ほら、見てくださいよ」


私はギルドカードの裏をアルナに合わせて見せる。魔物使いはこうやって自分のカードに今の従魔のステータスを確認する機能が付くのだ。


名前:アルナ

年齢:1歳

種族:ヴィルン鳥とバーナン鳥のハーフ

従魔:Cランク

HP:102

MP:344/344

力:16

体力:52

早さ:130

器用さ:98

魔力:200

運:80 

スキル:風魔法LV4、水魔法LV1、飛行


「確かに魔力200とはかなりの実力ですね。Cランク魔法使いと言っても差し支えない実力です。それに風魔法のLVも4とは高いですね」


「あれ?アルナいつの間に4になったの?旅に出る時はまだ3だったのに…」


ピィ!


「人は見ないうちに成長するものだ!ってアルナは人じゃないし、ほとんど一緒にいたでしょ」


ピィピィ


「ちょっと大人になったから強くなったって?まあ、ミネルも魔力は高かったしその影響なのかな?でも、威力が上がった分気を付けるんだよ?」


「あの…アスカ様は魔物と会話できるのですか?」


「えっ、ああ。ティタの通訳があればできますよ」


「今、確かに通訳なしで話をされていたような気がしますが…」


「絶対言わないでくださいね。実はディースさんが研究中の魔物言語を教えてもらっているんです。まだ、完璧には遠いですし、鳥とウルフとキャット種だけですけど…。キャット種はウルフ種に似ているからどちらかで大丈夫ですよ」


「そんな研究が…。初めて聞きました」


「まあ、魔物使いってみんな意思疎通は頑張ってやっているみたいですし、ほとんど研究もされてないみたいです。魔物にも共通言語みたいなのがあって、種族ごとに発声の仕方が違うから別に聞こえるだけみたいですよ」


「そうだったんですね。確かに、魔物使いの従魔たちはお互いにコミュニケーションを取れていますし、言われてみれば納得です。でも、なぜそんな研究を隠すのですか?」


「きちんと体系立てて発表しないと誤解を生んだり、解釈違いがあったりするのを防ぐためだそうです。もう何年かしたら一度形にしたいって言ってました」


「アスカ様の周りには素晴らしい方が集まっているようですね。その日が来ることを私も応援します。さて、話は変わりますがこのオーク共どういたしましょう?」


「いつも解体はリュートかジャネットさんにやってもらってるんです。私だと血抜きが精いっぱいですね」


「私もです。レイピアでは解体に向きませんし、何よりこの剣をオークの血で汚したくないのです」


「じゃあ、簡単に血抜きだけして後はマジックバッグに入れましょう。解体しなくてもギルドで引き取ってもらえますし、店の人に直接買い取ってもらうのも出来ますから」


「分かりました。では、見張りは私が」


ステアさんに見張りに立ってもらい、私はオークの血抜きをする。さて、一応警戒もするかな。


「う~ん、血も下にたまったし、もういいかな?」


私は地面に土をかけてマジックバッグにオークを入れていく。と、そこに反応があった。


「アスカ様?」


「しーっ!探知魔法の出番ですよ」


私がステアさんに促すと早速始める。


「うん。確かにこうやれば数や位置が分かりますね。数は7体ですね」


「そこから相手の体格なんかをつかむんです」


「体格を?どうやってですか?」


「水の一粒一粒とはいかなくても出来るだけ魔力を込めるんです。そうすれば相手の体の輪郭をとらえられますから、そこから割り出すんです。オークなら体格はオーガよりでっぷりしてる感じですね」


「分かりました。一度やって見ます、ミスト」


ステアさんが集中して霧魔法を唱える。敵の大体の位置はすでにつかんでいるので、指向性を持たせて放っているみたいだ。


「これは…形状は人に似ていますが大きいですね。それに霧に当たったら動いているようです」


「魔物は魔力に敏感なんです。多分好戦的なオーガ種だから霧のすぐ後に敵がいると思って動いているんです」


「なるほど、こうやって人間とも見分けがつくということですね。では、迎え撃ちますか」


「はい!」


私たちはオーガの群れに対して構える。今度は私も魔法を使うため、木の後ろに隠れて詠唱だ。別に唱える必要はないけど、イメージが固まりやすいから一応ね。今は魔力も抑えてることだし。


「アルナにキシャル。それにティタも頼んだよ」


「わかった」


ピィ


んにゃ


従魔たちとタイミングを合わせてオーガが来ると同時に攻撃を仕掛ける。


「ストーム!」


「アクアブレイズ」


私とティタの魔法がまずはオーガを襲う。私は2体ほどを巻き込み、ティタが残りの足止めだ。そして足を止めたところでアルナとキシャルが攻撃を仕掛ける。ただ、流石オーガの皮膚は硬く、キシャルの攻撃はさほど効かないみたいだ。だけど、その動きに翻弄されてオーガは気を散らしている。


「そこね!」


ステアさんがスッと身を乗り出し、一気にオーガの腹をレイピアで貫く。


「ふぅ、これで終わりね。都合こちらを5人と考えればこんなものなのかしら?」


「まあ、前衛がステアさん一人のバランスの悪いパーティーですけどね」


「あら、キシャルは違うの?」


「キシャルは一撃離脱なのでどっちかというとスカウトでしょうか?それでいうとアルナもそうですし、みんな後衛ですね」


「でも、安心して戦えるのはいいことです。少なくとも変な実力のものが混ざっていないのは大きいですね」


「そう言ってもらえると嬉しいです。それじゃあ、素材を取りましょう!」


今度はオークと違って牙と角だけなので、さっさと切り落として埋めていく。


「これぐらいなら合流してもいいでしょうか?」


「一応、もう少し狩っておいた方が無駄がないと思います」


「それじゃあ、もう1度だけ戦いましょう!」


ステアさんの言葉に賛同して、私たちはもう少し森の奥に行くことにしたのだった。

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