ギルドと依頼
「さて、今日はギルドに行くよ。アスカ、準備は?」
「ちょっと待ってください。忘れ物が…」
私はみんなが出て行った後に部屋に戻る。
「よしっ!昨日のテクノさんの話だとあんまり魔力が強いといけないからちょっと下げとかないと…ステータス!」
名前:アスカ
年齢:15歳
職業:冒険者Cランク/魔物使い
HP:320
MP:1420/1420
力:75
体力:118
早さ:129
器用さ:370
魔力:360
運:74
スキル:魔力操作、火魔法LV5、風魔法LV5、薬学LV2、細工LV5、魔道具LV5、弓術LV5、空間魔法(巫女)、特異調合LV3、魔力供与(魔物使い)、従魔化(魔物使い)、(隠ぺい)、帝国語学
いつの間にか細工のLVが伸びてる。後ちょっとだけ魔力も上がってるな。とりあえずこれを半分ぐらいにしないとね。
「隠ぺい。MPを500に、魔力を140に、器用さを200に、火魔法と細工と魔道具をLV2に下げて」
『かしこまりました。隠ぺいの種類は?』
「完全隠ぺいで」
隠ぺいはアラシェル様が授けてくれたスキルで、ギルドなどのステータス確認を誤魔化すのと、実際の能力自体を下げる完全隠ぺいがある。今回は念のため完全隠ぺいを使って、帝国のスカウトを避けるのだ。
「Cランクとしてはちょっとステータス低いけど、いつも見た目で弱く見られるし、魔物使いだったらこれでも大丈夫だと思うけど」
ちょっと心配だけどこれで行ってみるしかない。そう思ってみんなと合流する。
「何してたんだい?」
「やっておきたいことがあって…」
「それじゃあ、行こうアスカ」
「うん!アルナとキシャルも行くよ」
ピィ!
んにゃ
みんなで今日はギルドに行って所属地方の書き換えと依頼を受ける。さて、この国のギルドはどんな所かな?
「邪魔するよ」
「あら、昨日の冒険者さん。今日はお揃いですか?」
「まあね。所属の変更手続きを」
「はい。その前にステータスを確認させていただいてもよろしいですか?」
「構わないよ」
それぞれステータスを確認してから所属地を変更してもらう。
「あら、可愛いお嬢さんね。ステータスはと…珍しいわ。魔物使いなのね登録も済んでるからこれで終わりね」
「そんじゃ、依頼はと…護衛は日がかかるからなし。まあ、これだな」
ジャネットさんが依頼票を受付に提出する。
「オークとオーガの討伐依頼ですね。これは町からでて西側になります。森の中になるかと思うので注意してくださいね」
「ああ、心配しなさんな。これだけの大人数なんだから」
「吉報をお待ちしています」
私たちは固まって町を出てそこでひとまず話し合いだ。
「で、所属地の変更は問題なかったかい?」
「私は魔力200ぐらいですが、噂通り軍へのスカウトの話が出ました。どうやら、あのステータスの確認は本来不要なものですね」
「一応、帝国のギルドだから声だけはかけてるってことかい?」
「恐らくそういうことですね。そして、帝国側から必要なステータスを提示されていてそれに合致した人に声をかけているようです」
「ん?それにしてはアスカは声をかけられなったね」
「ギクッ」
「ちょーっと、カードみせてみな」
「あ、あはは。別に何もしてませんよ?」
そう言いつつ後ろに下がろうとするけど城壁に阻まれカードを見られる。
「魔力140…なんだこりゃ?アスカあんたまた」
「しーっ、しーっです」
「おっと、そうだったな。で、これで受付を騙したのか?」
「昨日、テクノさんの話を聞いて思いついたんですよ」
「でもなぁ、あんまり目立つなよアスカ。その能力じゃそんなに戦えないはずだからな」
「分かってますよ~。もう、ジャネットさんは心配性なんだから」
「杞憂に終わればいいんだけどね…」
「大丈夫ですかジャネットさん。また、アスカが何かしたんじゃ」
「大丈夫みたいだよ。本人がそう言ってるしね」
「心配性だよリュートは」
「お嬢さんは無自覚だねぇ」
「それより、さっさと倒しに行くよ」
「了解!」
皆各々の武器を構えて西に進んでいく。
「リュート、警戒お願いね。今は私も同じぐらいだから」
「ええっ!?何で!」
「何でもだからおねがい!アルナもキシャルもよろしくね」
ピィ!
んにゃ
2人の協力も得られるし、今日の魔物ぐらいなら余裕だろう。そのまま進んだ私たちは森に入っていく。
「さて、まとまって行動するのも手間だね。討伐はオークが8体、オーガが10体だ。別れるか」
「そうですね。この程度の依頼で時間をかけても無意味です。分け方はどうしますか?」
「アスカとリュートが警戒できるから分けるとして、従魔がいるからアスカにはあと一人いればいいだろ」
「となると、私がアスカ様と。他のみんながチームですね」
「どうしてだステア。別に俺がアスカとでも…」
「アスカ様とというより、私はレイピア。リュート君とは武器が被ります。それにあなたはアスカ様の従魔と役割が被りますよね?」
「ちっ、わぁ~ったよ。こっちの美人で我慢するか」
「はいはい、御託は良いからあんたはこっちだね。それじゃ、リュートもこっちだから行くよ」
「あっ、はい。じゃあ、アスカ。またあとでね」
「うん!リュートも頑張ってね」
「そうそう。合図だけど両方6匹以上倒したら空に火球でもあげてくれ。流石にあたしらもそれぐらいは倒してるだろうからね」
「了解です!」
元気よくジャネットさんに返事を返して私たちは南側に行く。
「アスカ様、どのように魔物を探しますか?」
「んと、サーチを使います」
「聞きなれない魔法ですね。どのようなものでしょうか?」
「う~ん。私のは分かりにくいってリュートに言われたので、アルナにやってもらいますね」
リュートに教えた時や、ちょっと仲良くなった冒険者さんに教える時に言われたのだ。余りに自然過ぎて何をやってるのかわかりにくいって。多分、魔力操作のお陰で微妙な加減が人よりできるせいだと思うけど。
ピィ~
アルナが得意げに探索魔法を使う。アルナも使い慣れてきて中々の腕前だ。
「えっと、風を広げているのですか?」
「はい!こうやって風が木とかにぶつかるわけですけど、当然人とか魔物は特徴的な形ですから。それに波のように何度か出しても位置が変わらない木と違って、動いているのですぐに分かるんです。多分、水でもできますよ。目立つと思いますけど」
「1度見せて…いえ、アスカ様は水は使えないのでしたね」
「それならアクアボールを出してもらえれば近いものを見せられると思います」
「アクアボールですか?」
ステアさんにアクアボールを出してもらう。
「ここに、ウィンド!」
アクアボールにウィンドをぶつけ小さな水滴を作る。これを風でぶわっと広げれば大体同じ効果が得られるはずだ。
「こんな感じです。ただ、水だと水滴の大きさで直ぐに気づかれちゃうので、そこは我慢してくださいね」
わずかな風を感じ取るのは難しいが、不自然な水滴はどう見ても怪しいのだ。
「霧雨みたいに出来れば別だと思いますけど、それはそれで難しいと思います」
「なるほど、確かに水だと霧の出る地方以外では難しいですね。ただ、あえて相手に気づかせて動揺を誘うには良さそうです」
「そういうのなら向いてるかもしれないですね」
「ちょっと練習してもいいでしょうか?」
「はい!時間はまだありますから」
「ティタもてつだう」
「あれ?ティタは宿にいたんじゃ…」
「ひまだからついてきた」
最近は町と言えばずっと宿にいたから気づかなかった。
「でも、そこまで重さを感じなかったけどどうしたの?」
「しゅくしょう、スキルえた」
「えっ!?そうなの?」
ティタは私の従魔になる時に巨大化のスキルを得ていた。それも倍ぐらいになれるものの、せいぜい60cmぐらいだったのだ。
「えっと…消費は?」
確か巨大化スキルの消費は私持ちだったはず…。しかも、大量のMPを消費する。縮小化の消費はといくらぐらいなんだろ?
「だいじょうぶ、じぶんでしょうひしてる。しょうひもすくない」
「ど、どうして?」
「きょだいかのスキル、アスカがねがった。おおきいティタがいい。でも、これはティタのいし」
よくわからないけど、私が消費しないならまあいっか。
「ティタ、てほんみせる。…ミスト」
ティタが霧の魔法を出す。そして、出した霧を一方向に向かって放つ。
「なるほど!実際に水魔法で見てみると違うわね。…あっ、アスカ様の魔法も分かり易かったですよ。ただ、やはり同属性の方が分かり易くて」
「いいんですよ」
「アスカ、かまえる」
「ティタどうしたの?」
「まりょくつけてまいた。まものくる」
「ええっ!?そこまでやったの!ステアさん!」
「はい」
私たちはさっと武器を構える。私が弓でステアさんはレイピアだ。
「キシャルとアルナも頼むね。私、今日は弱いから」
ピィ
んにゃ
珍しく2人ともやる気だ。たまには狩りをしたいということなのかな?そう思ったアスカだったが、実は昨日の夜にティタからアスカのためにたまには働けとお達しが来ていたのだ。なお、珍しくアルナが『最近ティタさんもさぼってる』と言われて今日隠れてティタも来たのだった。
「数は…う~ん、まだ確定しないな。6体はいそうだけど」
「それだけわかれば十分です!行きます」




