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どうかな?

海魔の襲撃によりほとんど休んでいない船員さんの代わりに見張りをして早3時間。


「ん~、特に異常もありませんね~」


「ま、それが一番さ。特にあたしなんて海上じゃ接近してくれないと何もできないしねぇ」


「そうですね。海上を得意とする方は少ないですから、安全が一番です。私たち密偵組は特にですね。ほとんどの者が範囲攻撃出来ませんので」


「そういえばステアさんが使ってた槍みたいなのって何ですか?」


「あれはレイピアです。柄に水の魔石がはまっていて、突きの時には水をまとわせるので槍のように見えるんです。槍だと持ち運びに不便ですし、速度が落ちますので」


「じゃあ、レイピアが得意なんじゃなくて、任務から使う武器を選んだんですか?」


「そうですね。ですが、もう長く使っているので一番得意ですよ」


「あっ、じゃあ折角ですし、手に入れたハンドラーの魔石使ってみませんか?」


「ハンドラーの?しかし、私は水しか適性がないので結局自前で作る方が効果も高いのです」


「それなんですが、今は効果的な魔道具が作れるんです!しかも、ハンドラーの魔石なら意識しなくても槍の形になりますから、いざという時に便利ですよ」


「しかし、珍しい海魔の魔石をそんなことに使ってよいので?」


「どの道、使い道も思いつきませんでしたしステアさんに使ってもらえるなら構いません。形は小手とかどうですか?」


「小手…確かにそれぐらいなら邪魔になりませんね」


「じゃあ、ちょっと船上で描きにくいけど描いちゃいますね。邪魔になりそうなデザインなら言ってください」


「よろしくお願いします」


「ふんふ~ん」


「楽しそうに絵を描かれますね。魔道具などの絵なので緊張したりしないのですか?」


「う~ん。どうなんでしょう?でも、絵を描くこと自体が好きですから」


小手のデザインはまずは身を守るために周囲に金属を、後は水が小手に巻き付く感じの細工を上から施すデザインだ。実際には後付けじゃなくて強度の関係から1つの塊からの削り出しだけどね。飾り鎧ならともかく、実用性のある魔道具にするためには必要な事なのだ。


「そうそう、ミスリルの欠片があったよね。これを混ぜるのを試してみよう」


ティタに聞いたところ、ミスリルは銀との親和性が良く、純度の高いもの同士なら再生成できるのだそうだ。ミスリルの量は少ないけど一度やっておかないと、次試せないからね。


「ミスリル!?そのような高価な素材を!元々の素材は何を…」


「何って、魔道具だから銀ですけど?」


「あ~、ステア。アスカの常識はこういうことだ。魔道具なら一般的に入手性の高く、魔力の通りもいい銀が普通だと思ってるんだ」


「えっ!?それが普通ですよね?」


ステアさんに首を向けるとぶんぶんと首を振っている。


「普通は銅ですよ。一回きりのものでなく、繰り返し使えるものも魔石の値段によってはそちらの方がメジャーです。このように見事な細工を施されたものも少ないです。大体は武骨なもので中央部に魔石がはめ込んであるものです」


「そ、そうなんですか?でも、アルバのおじさんの店で見た魔道具は…」


「あのおっさんは細工師だよ。仕入れてる魔道具ももっぱら細工に偏ったもんだったんだよ。だから、ほとんど冒険者は来なかっただろ?」


「そういえば、魔道具は冒険者ショップで扱ってました」


「だから、機能性も薄くて見栄えの…ひょっとしてあれしか見たことなかったのかアスカ?」


「はい。冒険者ショップにはポーションとかを買いに行くぐらいで、携帯食はドルドでしたから」


「あ~、そういうことか。どうせ金持ちの家の子だろうと思って気にもしてなかったけど、あんまり見たことなかったのか」


それに銀のアクセサリーって前世じゃいっぱいあったし、身近なんだろうなって思ってたんだよね。


「ま、まあ、素材がいいのは良いことですし、これからも銀を中心で作っていきますよ」


そんな話をしていると交代の時間になったので、船員さんに挨拶をして船内に戻る。


「折角ですから食事を一緒にどうですか?給仕の人には話をしてきますから」


「よろしいのですか?では、お言葉に甘えて」


「あんた、隠密行動はどうしたんだい?」


「ここまで目立ったらむしろある程度動き回った方が自然なのよ。この後部屋にこもって見なさい。絶対変に印象に残るわ」


「そういうことかい」


その後、給仕のお姉さんに許可をもらってから部屋に入った。


「アスカ~、随分長かったね。ジャネットさんも一緒なの…」


部屋に入ってきた私を見てなぜかリュートは絶句した。どうかしたのかな?


「ななな、なんて格好してるの!アスカはどうしちゃったんだ!」


「い、いきなりどうしたのリュート?普通にセーラー服を着てるだけだけど…」


「そ、そんな、丈の短いスカート履いて誰かを誘惑にでも行くの!?」


「そんなに短いかなぁ?ミニスカっていうにはまだ長いと思うけど」


私はリュートの言葉に疑問を持ち、ひらりと一回転してみる。


「どうかなぁ?ジャネットさんやステアさんはどう思います?」


「あたしに聞かれてもねぇ。別にアスカが性的に見えるわけでもないし」


「そうですね!リュート殿は仲間でありながらそのような目でアスカ様を見ておられるのですか!」


「いや、そうじゃなくて!2人ともわかるでしょ。こんな姿のアスカが外で…って、その格好でまさか見張りに?」


「そうだよ~。この首の後ろの奴とか遠くからの声を聴くのに便利なんだよ。知ってた?」


私はセーラー服の襟を立てて実践してみる。これは飾りじゃないんだよって歴史の先生が教えてくれたんだ。


「そ、そんなことは良いから早く着替えて!絶対そんな恰好で町を歩いちゃだめだよ」


「え~、可愛いのになぁ~」


あこがれのセーラー服なのにどうやらリュートはお気に召さないらしい。


「ほら、アスカ。甲板にいる時に約束しただろ?その服はおしまいだ」


「ええ~!?あれはリュートが煽情的だって思ったらって話ですよ~」


「せ、煽情的って…」


「いいから着替える。大事な服が食事で汚れるよ」


「そういえばそうですね。じゃあ、着替えを…」


「ま、待って!出てくから」


バタバタとリュートが走って出て行った。


「そんなに気にしなくていいのに。ちゃんと仕切り用の布持ってきてるし」


「アスカ様は魔女ですね」


「はぁ、まあ魔法は使いますけど」


それからしばらくして食事が運ばれてきたのでみんなで食べ始めた。給仕には厨房にヘルプに入っていたテクノさんもやってきて、一緒の食事だ。


「ん~、これって唐揚げ?魚のから揚げってあんまり食べたことないけど美味しいね」


「そ、そうだね」


「も~、どうしたのリュート。せっかく作ってくれたっていうのにあんまり食べてないよね」


「あはは。ちゅ、厨房で味見をしてたからかなぁ」


「そっかぁ。出来たてだもんね、ちょっと多く食べちゃったんだね」


「アスカじゃあるまいし、リュートはそんなことしないよ」


「え~、分かりませんよ。だって、こんなに美味しいんですよ」


「まあそうだけどね。そういやリュートはあたしらがいない間、テクノに料理を教えてもらったのかい?」


「えっ、あっ、いや、聞いては見たんですが多分僕らには向かないかと…」


「ええ~、どうして」


「あ~アスカ…さん。俺の作るのって日持ちがするか、栄養があるかぐらいのもんなんです。後は普通のばっかりで」


「要するに味は二の次です。私も食べましたが正直不味いですね。ただ、糧食とみれば価値はありますが」


「じゃあ、いいです。そういうのはうちはいらないので」


「普通はそういうのがメインだけどな」


「まあ、リーダーの言うことだしね。それより飯だよ。海の上でこれだけ旨い飯が食えるなんて思っても見なかったよ」


「そうですね。海魔も悪いだけじゃないですね~」


「引き上げるだけでも大変なんですけどね…」


「まあ、継続して狩りをするには大変な相手だろうね。だけど、うまく仕留めりゃこの料理に魔石に鱗も使える。一番の問題は生息地と数が来た時の対処だね」


「全くです。これについては課題が残るので、狩り専用の船は無理ですね」


「荷物を運ぶ貨物船にやらせるわけにもいかないよねぇ」


どうやら当分、この美味しい海魔料理は船上のみでの料理になりそうだ。


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