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転生後に世界周遊 ~転生者アスカの放浪記~【前作書籍発売中】  作者: 弓立歩
ダンジョン都市と港町

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出航待ちの日々

「さて、宿はどこにしようかな~」


バーバルに降り立った私たちは早速、宿探しを始める。


「宿なんてそうそう変わらないと思うけどねぇ。料金で分かるもんだし」


「ジャネットさんのおすすめは?」


「おすすめと言われても、毎回素泊まりで食べに出てたからなんとも」


「むぅ~。でも、考え方によっては開拓しがいがありますね!」


ピィ!


んにゃ~


そうだと言うアルナと、さっさと宿で休みたいキシャルがそれぞれ返事をする。


「まあ、先に船を押さえるとするかね。そしたら、泊まるところも決めやすいだろ?」


「そうですね。アスカ、あっちの船着き場に行こう?」


「わかった!」


出航日を確認するためと、便の予約のために外海向けの港に向かう。


「ん?何だ今頃。今日の船は出ていったぞ」


「私たち、バルディック帝国行きの船に乗りたいんですけど、次の出航は何時ですか?」


「帝国行きは…明後日だ。だが、船室はかなり埋まってるぞ」


「あの…これって使えますか?」


「ん?こ、これは!?失礼しました。確かツインルームがひとつ空いております。お一人様のみ二等船室になりますがよろしいですか?」


「いえ、一部屋で大丈夫です!」


「そうですか!すぐに手配しておきますので、当日は10時までにお越し下さい。お荷物は?」


「ん~。マジックバッグがあるのであんまり…。でも、大きい袋が3袋はあるかもしれません」


「わかりました!では、当日お待ちしております」


「はい!よろしくお願いします」


やけに丁寧な船員さんと別れて、再び町の中心に戻る。


「今日は出先の店、明日が宿って感じかね?」


「そうですね。それで探しましょう!」


私たちは商人たちも泊まるという、1泊大銅貨8枚の宿に決めた。食事、馬車置きが別料金の代わりにしっかりした宿だ。


「荷物も置いたし、飯を食いに行くか!」


「はいっ!」


んにゃ


最近は何時も通りのキシャルとティタにお留守番を頼み、食事に出かける。まだ、16時ぐらいだけどたまにはそんな日があってもいいだろう。


「呼び込みとかあるんですね~」


「まあ、この時間なら人もまばらだし店員も暇つぶしだろ。忙しくなったら引っ込むさ。さばききれない数入っても困るしね」


「おっ!お嬢さん、あんた運がいい。今日はうちの店安いんだよ。どうだ、寄って行かないか?」


「えっと…おじさんの店は何の料理が出るんですか?」


「うちはな、漁師飯だ!見た目はごついが味は旨いぞ」


「行きますっ!」


「いいのアスカ。そんなに簡単に決めちゃって?」


「だって、漁師飯だよ?本来、船の上で食べられる料理が陸で食べられるなんて感動だよ」


それは別に鮮度の問題だけで別に感動するほどではない。何なら火が十分に使えない分、調理法はシンプルだとリュートもジャネットも思ったが、アスカの手前黙っていた。2人とも横でニコニコ笑顔のアスカには言えなかったのである。


「なあ、おっさん。この笑顔は裏切れないだろう?ちゃんとサービスしなよ」


「もちろんだ!」


おじさんに従ってちょっと通りの奥に行く。ああ、この立地なら呼び込みに出るのも仕方ないかも。派手な看板もないし、手前側の店に客も入ってしまいそうだ。


「おう!戻ったぞ」


「はいはい、油売ってないで店の準備してよね。お客が来たのに料理人がいないなんてどうするのよ?」


「その客を連れてきたんだよ」


「あんたが?珍しいこともあるもんね。どれ…本当ね。いらっしゃい、可愛いお嬢さんたち」


「あ、はい。よろしくお願いします」


「礼儀正しい子ね。あんた、変なこと言って連れてきてないわよね?」


「んなことするか!注文取ってろよ」


「はいよ。さ、それじゃあ席に着いてね。どこでもいいから」


まだ店が開いてあまり時間が立っていないせいか、席はどこも空いていた。私たちはちょっと中ほどの4人席に座る。


「あっ、すみません。従魔がいるんですけど大丈夫ですか?」


「従魔?どこにいるんだい?」


「この子です」


ピィ


「あら、可愛らしい小鳥さんね。何を食べるの?」


「野菜なら何でも食べます。後は木の実とかもですけど…」


「なら、一緒に小皿を出すようにするわね」


ピィ~


店員のおばさんの言葉が嬉しかったのか、アルナはおばさんの頭の上を数回舞った後、私の肩に乗る。


「芸までできるなんてお利口さんね」


「あはは、そうですね」


それから、メニューをもらって何を頼むかみんなで相談する。


「あの、これってちょっと高くないですか?」


「ん?ああ、まあね。ここは漁師飯なんだろ?恐らく、今日取れたものを買い付けてるからだよ」


「鮮度の高い魚は美味しいですもんね」


「美味しいというか魔法で保存するにしろ、遠隔地に持っていくには新鮮な方がいいからね。商人の中でも取り合いになるものもあるんだよ」


そう言えばコールドボックス的なものってないんだっけ?あるにはあるけど、お高い水魔石や氷魔石のものに金属をつけたものしかなく、当然馬車に乗せるのも大変だ。マジックバッグなら重量はある程度クリアできるけど、他のものが詰めなくなるので内地で魚介は高額品なんだ。


「それにしても大体が大銅貨3枚以上ですね。どのサイズが来るか分かりませんけど、ちょっと覚悟がいりますね」


年中温暖な気候が多いこの世界では野菜はそこまで高くないけど、保存が必要なものはここまでとは。


「とりあえず何か頼みますか。一人一品でいいですか?」


「お試しだからね。時間は早いし、別のところに鞍替えしてもいい」


「なら私はこれにしますね」


お魚っぽいものを選ぶ。


「それならあたしはこれだね」


「ジャネットさんの選んだのって何ですか?」


「そいつは来てのお楽しみだよ」


「じゃあ、僕はこのテンタクラーってやつにするよ」


「リュートはそれにするんだね?」


「うん。ちょっと聞いたことないし、怖いもの見たさって感じかな?」


「そ、そうなんだ。へ~」


いえないなぁ。すでにそれは昨日獲れたてを食べたって。まあ、美味しかったし良いか。


「はい、ご注文は?」


「私はこれと、ジャネットさんがこれ。リュートがこれです」


「飲み物は?」


「あたしとリュートがエールで。アスカは?」


「私はどうしようかな?このジュースで!」


「はいよ。ではちょっと待っててね」


「は~い」


注文を終えて再びメニューに戻る。


「これとか変わった名前ですね。マルダイ?」


「ああそいつは結構うまいよ。ものに寄っちゃサイズも大きいしね」


「値段は…大銅貨8枚ですね。以外にも塩焼きもありますね」


「ま、漁師飯って言っても切るだけじゃメニューが少なすぎるからだろ」


「言われてみればそうですよね!じゃあ、これも追加で」


追加の注文も取ったし、しばらくゆっくり話をしていた。


「それで、次の船旅はどのぐらいかかりますか?」


「何ともねぇ。船員にもよるしね。船員が風魔法が使えればそこそこ早いよ。いないと2週間ちょっとだね。まあ、その場合は風任せになるから目安だけど」


「風魔法の使い手って少ないんですか?」


「いいや、そんなことはないよ。ただ、風を起こして動かすのは船だろ?そこいらの奴じゃなぁ…。そういう奴は船員にならないしね。貴族や商家の使用人とかの方が儲かるし、安全だしね」


「はい、お待たせ。ゴマ鯖の切り身にヤコウガイそれにテンタクラーの足だよ。おチビちゃんにはこれね」


ピィ~


アルナにはお野菜を細かく切った小皿だ。結構いろんな種類のが混ざっていてうれしそうだ。


「うわ~、ジャネットさんが言ってたのって貝だったんですね。結構なサイズですね」


「だろ?こいつはそのままでもいいし、バターとか入れて加熱してもいいんだよ」


「そうなんですか!」


「言ってくれたら途中で火にかけるよ」


「本当ですか!」


「アスカったら、もう自分が頼んだみたいに…」


「いいじゃないか。折角、別のもん頼んでたんだから。リュートのも量あるだろ?」


「本当ですね。足って書いてあったからこういうものだとは思ってましたけど、太いですね」


「そういうもんだよ。なあアスカ?」


「そうそう。リュート、それほんとは醤油とすっごく合うんだよ。リュートは苦手だから無理かな?」


「う~ん。ちょっと苦手なんだよね。っていうかこの黒いのもなんか近い匂いがするね。魚の匂いがきついけど」


「あ~、それって多分魚醤じゃないかな?」


「魚醤?魚の醤油ってこと?」


「そうだよ。多分、醤油より癖があると思うよ」


「大丈夫かな…」


恐る恐るリュートがたれに浸けて食べてみる。


「うっ、これもきつい…」


「ダメかぁ。それじゃ、いつものやつ出して」


「いつものって干し肉とかの調味液?」


「うん。ちょっとだけ借りるね。…ファイア」


小さめに切ったテンタクラーの足に調味液をつけてさっと火であぶる。これでリュートも食べられるはずだ。やっぱり食事はみんな美味しく!が大事だよね。


「じゃあ、これは私が…」


「えっ!?あっ」


リュートが切り分けていた残りのテンタクラーを食べる。もちろん、魚醤をつけてだ。


「ん、んん!?」


「アスカ、大丈夫?」


「美味し~!あんまり馴染みのないやつだけど、元々お魚同士だからか合う。ねぇ、リュート。もうちょっと食べてもいい?」


「う、うん。いいよ」


「ア、アスカ!その顔はやめな!」


「急にどうしたんですかジャネットさん?」


「食いたいなら普通に頼みな」


「はぁ」


ジャネットさんが何を言っているか分からなかったけど、とりあえず返事をしてリュートにもう少し分けてもらう。


「一度醤油も使ってみよう。船の上のやつとは味も違うと思うしね。そういえば、一部をマジックバッグに入れたのに忘れてた。後でお願いしようかなぁ」


そう言いつつ、リュートにちらりと目線を向ける。


「だから、その顔と目をやめろっての」


ポカ


「痛っ!ごめんなさい。リュート、後で話すね」


「分かったよ」


とりあえず、私も自分の頼んだゴマ鯖の切り身に目をやる。


「いただきま~す!」


まだ宴は始まったばかりだ。



一日も経っていないだと…まあ、海上で短縮できますし。海洋生物は今後種類も多くなりそうなので海魔以外は実在の物を使おうかと思います。

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